No.03 Connect人とつながる
メラビアンの法則とは?よくある誤解と正しい理解
メラビアンの法則(7-38-55のルール)は「見た目が9割」という意味ではありません。元の実験の条件、誤解が広まった理由、言葉と態度がずれたときに何が起きるのかという本来の示唆、日常での活かし方を紹介します。
この記事の結論
メラビアンの法則とは、言葉と声・表情が食い違うとき、聞き手は話し手の気持ちを声や表情から判断しやすい、という実験結果をまとめたものです。「言葉7%・声38%・表情55%」は感情や好意を伝える特殊な条件での数字で、「人は見た目が9割」という意味ではありません。
- 7-38-55は、好意や感情を短い単語で伝える実験から生まれた数字
- 言葉と態度がずれたときに、態度が信じられやすいという話にすぎない
- 本当の示唆は、見た目を磨くことより、言葉と態度をそろえること
目次 Contents
「人は見た目が9割」「話の中身は7%しか伝わらない」。研修や本で、そんな話を聞いたことがあるかもしれません。その根拠として、よく持ち出されるのがメラビアンの法則です。
聞いたときに、少しもやもやしませんでしたか。言葉を選んで、一生懸命に話してきたのに、それがたった7%なのか、と。
そのもやもやは、まっとうな感覚です。メラビアンの法則は、元の実験をたどると、ずっと狭い条件で得られた結果だからです。
この記事では、元の実験の中身と、誤解が広まった理由を整理します。そのうえで、この研究が本当に教えてくれることを紹介します。それは「言葉と態度がずれると何が起きるか」です。日常での活かし方もまとめました。
メラビアンの法則とは? 一言でいうと
メラビアンの法則とは、ひとつの実験結果をまとめたものです。言葉と声・表情が食い違うとき、聞き手は話し手の気持ちを声や表情から判断しやすい、という結果です。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが、1960年代の研究をもとに示しました。
有名な数字は「言葉7%・声の調子38%・表情55%」です。「7-38-55のルール」のほか、日本では言語・聴覚・視覚の英語の頭文字をとって「3Vの法則」とも呼ばれます。
ただし、この数字は「コミュニケーション全体のうち、言葉が伝えるのは7%」という意味ではありません。ある条件で、話し手が相手に好意をもっているかどうかを判断するとき、どの手がかりがどれくらい効いたか。その割合を表したものです。
元の実験は、どんなものだった?
7-38-55という数字は、1967年に発表された2つの実験を組み合わせて導かれました。どちらも、ふだんの会話とはかなり違う条件で行われています。
| 実験1(Mehrabian & Wiener, 1967) | 実験2(Mehrabian & Ferris, 1967) | |
|---|---|---|
| 何を聞かせた/見せたか | 好意的・中立・否定的な意味の単語を、さまざまな声の調子で録音したもの | 「maybe」という一語の録音と、表情の写真 |
| 何を判断したか | 話し手が相手に好意をもっているか | 話し手が相手に好意をもっているか |
| わかったこと | 単語の意味より、声の調子が判断を左右した | 声より表情のほうが判断に効いた(およそ2対3) |
2つの結果をつなぎ合わせると、言葉・声・表情の影響の比が、およそ7対38対55になる。これが数字の出どころです。メラビアンは1971年の著書『Silent Messages』で、この関係を式の形で紹介しました。
実験に使われたのは、一語だけの言葉です。前後の文脈も、話の筋もありません。しかも、言葉の意味と声の調子が食い違う組み合わせが、わざと含まれていました。そのうえで聞き手が判断したのは、「話の内容が伝わったか」ではなく、「この人は好意的か」です。
「見た目が9割」は、なぜ誤解なのか
元の実験と、「人は見た目で9割判断される」という説明のあいだには、少なくとも3つの飛躍があります。
1. 感情や好意の話を、すべての話に広げている
実験で判断されたのは、話し手の気持ちでした。道順の説明や、仕事の報告、企画の中身は対象外です。メラビアン自身も、感情や好意を伝える場面でなければこの式は当てはまらない、という趣旨の注意を述べています。
2. 「食い違っているとき」の話を、いつもの話にしている
言葉と声や表情がそろっているとき、どちらが効くかを比べる意味はほとんどありません。どちらも同じことを伝えているからです。7-38-55は、両者がずれたときに、どちらが信じられやすいかを示した数字です。
3. 実験室の一語を、ふだんの会話に当てはめている
ふだんの会話では、言葉は文になり、話は文脈の中で進みます。一語だけを聞いて気持ちを当てる状況とは、情報の量がまったく違います。実験の結果を、割合ごと日常に持ちこむことはできません。
本当の示唆:言葉と態度がずれると、態度が信じられやすい
では、メラビアンの研究から何を受け取ればいいのでしょうか。いちばん大切なのは、言葉と態度がずれたとき、聞き手は態度のほうを信じやすいという点です。
逆に考えると、言葉がいらないわけではありません。言葉と態度がそろっているとき、言葉はそのまま相手に届きます。ずれているときだけ、言葉が態度に負けるのです。
言葉とは別に、声や表情、タイミングから伝わってしまう意味は、「メタメッセージ」と呼ばれます。コミュニケーション研究のワツラウィックらは、どんな発言にも「内容」と「関係」の2つの面があると考えました。「何を言うか」と同時に、「あなたとの関係をどう見ているか」も伝わっているということです。詳しくはメタメッセージとは?言葉の裏で伝わるもので扱っています。
心と言葉がそろうと、無理をしなくていい
ずれが起きるのは、たいてい、本音と違うことを言おうとしているときです。疲れているのに「平気です」、反対なのに「いいと思います」。表情や声は、意識して整えきれるものではありません。
だから、本当に必要なのは、態度を演出する技術より、言っていることと感じていることをそろえることです。心と言動がそろった状態は「自己一致」と呼ばれます。自己一致とは?心と言動がそろう生き方もあわせて読んでみてください。
日常での活かし方
メラビアンの研究は、話し手としても、聞き手としても使えます。
話すとき:ずれに気づいたら、言葉のほうを本音に寄せる
「大丈夫」と言いたいのに、声が沈んでしまう。そんなときは、表情を無理に明るくするより、言葉のほうを正直にするほうが伝わります。「正直ちょっと疲れているけど、この件は大丈夫」。本音を少し混ぜるだけで、言葉と態度がそろいます。
聴くとき:ずれを見つけたら、決めつけずに確かめる
相手の言葉と表情が食い違っていると感じたら、それは大事な手がかりです。ただ、「本当は怒っているんでしょ」と決めつけると、相手は身構えます。「そう言ってくれてるけど、少し元気がないようにも見えて」と、見えたことをそのまま伝えて、確かめるのがおすすめです。相手の変化に気づく力については、キャリブレーションとは?相手の変化に気づく力が参考になります。
このワークの目的は、本音を全部さらけ出すことではありません。小さなずれに気づけるようになると、言葉と態度がそろう場面が、少しずつ増えていきます。表情やしぐさが伝えることの全体像は、非言語コミュニケーションとは?表情・声・しぐさで紹介しています。
文字のやりとりでは、ずれを補う
メールやチャットには、声も表情もありません。そのぶん、受け取る側は、文の短さや返信の速さ、句読点の有無から気持ちを推し量ります。「了解です。」の一言が、そっけなく感じられることがあるのはそのためです。
気持ちを伝えたい場面では、態度が担っていた部分を、言葉で補うと誤解が減ります。「急ぎで短くなってごめんなさい、内容は了解です」。一文足すだけで、相手が勝手に想像する余地が小さくなります。反対に、大事な気持ちの話ほど、文字だけで済ませず、声で話すことも考えてみてください。
見た目を磨くより、言葉と心をそろえる
メラビアンの法則は、「中身より見た目」を教える法則ではありません。気持ちを伝える場面で言葉と態度がずれると、相手は態度を信じやすい。わかっているのは、そこまでです。
あなたが選んできた言葉は、7%しか届かないわけではありません。言葉は、態度と一緒に届くものです。
次に「大丈夫」と言いそうになったら、一瞬だけ、自分に聞いてみてください。本当に大丈夫か。その小さな確認が、言葉と心をそろえる最初の一歩になります。相手との信頼関係について深めたい人は、ラポールとは?信頼関係を築く5つのコツもどうぞ。
A question for you
あなたへの問い
最近、口では「大丈夫」と言いながら、顔は大丈夫じゃなかった場面は?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
メラビアンの法則は、間違いなのですか?
実験の結果そのものが間違いというわけではありません。問題は、限られた条件で得られた数字を、あらゆるコミュニケーションに当てはめてしまう使い方です。メラビアン自身も、感情や好意についての話でなければこの式は当てはまらない、という趣旨の注意を述べています。
「3Vの法則」とは何ですか?
日本でメラビアンの法則を紹介するときの呼び名で、言語(Verbal)・聴覚(Vocal)・視覚(Visual)の3つの頭文字をとったものです。中身は同じ7-38-55の話なので、同じ誤解に注意が必要です。
プレゼンや面接では、話の中身より見た目を優先すべきですか?
そうとは言えません。プレゼンや面接で伝えるのは、主に情報や考えです。メラビアンの実験は感情を判断する場面のものなので、そのまま当てはめられません。中身を整えたうえで、それを裏切らない声や表情で伝える、と考えるのが自然です。
もう一歩深めたい人へ
PR・Amazonへのリンクを含みますReferences
- Mehrabian, A., & Wiener, M. (1967). Decoding of inconsistent communications. Journal of Personality and Social Psychology, 6(1), 109–114.
- Mehrabian, A., & Ferris, S. R. (1967). Inference of attitudes from nonverbal communication in two channels. Journal of Consulting Psychology, 31(3), 248–252.
- Mehrabian, A. (1971). Silent Messages. Wadsworth.
- Watzlawick, P., Beavin, J. H., & Jackson, D. D. (1967). Pragmatics of Human Communication. W. W. Norton.