No.03 Connect人とつながる
非言語コミュニケーションとは?表情・声・しぐさ
非言語コミュニケーションとは、表情や視線、声の調子、しぐさ、距離など、言葉以外で伝わるもののこと。種類と伝わり方、読みとるときの注意点、伝えるときのコツに加え、自分の体が発するサインに気づいて自分を知る方法まで、研究をもとに紹介します。
この記事の結論
非言語コミュニケーションとは、表情、視線、声の調子、しぐさ、姿勢、相手との距離など、言葉以外の手段で伝わるやりとりのことです。言葉と同じくらい多くのことを伝えますが、決まった意味の辞書で読みとれるものではありません。相手を読むだけでなく、自分の体のサインに気づく手がかりにもなります。
- 表情・視線・声・しぐさ・距離など、言葉以外で伝わるものすべてを指す
- 「腕組み=拒絶」のような決まった辞書はない。文脈と変化を見る
- 自分の肩や呼吸、声の変化は、自分の気持ちを知らせるサインになる
目次 Contents
「怒ってないよ」と言う人の声が、明らかに怒っている。「大丈夫です」と答えた後輩の顔が、少しも大丈夫そうに見えない。言葉と表情が食い違うとき、私たちはたいてい、言葉より表情のほうを信じます。
反対に、自分では普通に話しているつもりなのに、「怒ってる?」「元気ないね」と言われて驚いたことはありませんか。言葉にしていないことまで、体は伝えてしまうことがあります。
非言語コミュニケーションについて調べているあなたは、言葉の奥で行き交っているものに、もう気づいている人です。その感覚を、もう少していねいに使えるようになると、人との関わりも、自分自身との関わりも変わっていきます。
この記事では、非言語コミュニケーションの種類と伝わり方、読みとるときの注意点、伝えるときのコツを紹介します。そして最後に、自分の体が発するサインに気づいて、自分を知る方法もお伝えします。
非言語コミュニケーションとは? 一言でいうと
非言語コミュニケーションとは、表情や視線、声の調子、しぐさ、距離など、言葉以外で伝わるやりとりのことです。英語の nonverbal から、ノンバーバルコミュニケーションとも呼ばれます。言葉によるやりとりは、バーバルコミュニケーションと呼ばれます。
非言語コミュニケーションの種類
| 種類 | 含まれるもの | 例 |
|---|---|---|
| 表情 | 顔の動き全般 | 笑顔、眉をひそめる、口をきゅっと結ぶ |
| 視線 | 目を合わせる頻度、視線の向き | 目を見て話す、視線をそらす |
| 身振り・姿勢 | 手の動き、うなずき、体の向き | 前のめりになる、腕を組む、うなずく |
| 声の質 | 声の大きさ、高さ、速さ、間、ため息 | 早口になる、声が小さくなる、沈黙 |
| 距離 | 相手との物理的な距離、座る位置 | 近づいて話す、正面ではなく横に座る |
| 接触 | 触れること | 握手、肩に手を置く |
| 外見・持ち物 | 服装、髪型、身だしなみ | 面接のスーツ、休日の服 |
声の大きさや速さ、間は、言葉と一緒に出てくるものですが、言葉そのものではありません。そのため、非言語コミュニケーションに含めて「準言語(パラ言語)」と呼ぶことがあります。
距離について研究した文化人類学者のホールは、人が相手との関係によって、無意識に距離を使い分けていると指摘しました(Hall, 1966)。親しい人とは近く、仕事の相手とは少し離れて。満員電車で居心地が悪いのは、この距離感がくずれるからです。
言葉以外は、どれくらい伝わる?
「人は見た目が9割」「言葉で伝わるのはたった7%」。こうした話を聞いたことがあるかもしれません。これは、心理学者メラビアンの研究が、もとの条件を離れて広まったものです(Mehrabian, 1971)。
元の実験は、言葉と声の調子や表情が食い違うときに、相手の好意や嫌悪をどう判断するかを調べたものでした。どんな会話でも言葉が7%しか伝わらない、という意味ではありません。くわしくはメラビアンの法則とは?よくある誤解と正しい理解で扱っています。
ほんの数十秒で、印象はできあがる
とはいえ、非言語の情報が強い影響力をもつことは、多くの研究が示しています。心理学者のアンバディとローゼンタールは、大学の授業の様子を、音声を消した短い動画にしました(Ambady & Rosenthal, 1993)。その動画を、授業を受けていない人たちに見せて、教員の印象を評価してもらったのです。
すると、30秒、さらには数秒にまで短くした無音の動画からの印象が、学期末の受講生による評価とかなり一致していました。私たちは、言葉の中身を聞く前から、相手の表情や身振りで印象を形づくっているのです。
言葉と非言語は、どちらかが勝つというより、重なり合って一つのメッセージになります。言葉の裏で伝わるもののしくみは、メタメッセージとは?言葉の裏で伝わるものでも紹介しています。
非言語を「読む」ときの3つの注意
非言語の情報は大切ですが、読みとるときには注意が必要です。しぐさの意味を決めつけると、かえって相手を誤解してしまいます。
1. しぐさに「決まった意味」はない
「腕組みは拒絶のサイン」「鼻をさわるのは嘘のサイン」。こうしたしぐさの辞書は、わかりやすい反面、根拠が弱いものが多くあります。腕を組むのは、寒いからかもしれないし、そのほうが落ち着くからかもしれません。
表情についても同じです。表情と感情の関係を調べた研究を、まとめて見直した報告があります(Barrett ら, 2019)。それによると、同じ感情でも、人や状況によって表情はさまざまです。表情だけから感情を一つに決めるのは難しい、と指摘されています。
2. 文化や個人によって違う
うなずきや相づちの量も、文化によって違います。日本語の会話では、英語の会話に比べて相づちが多いことが、研究で報告されています(Maynard, 1986)。相づちが少ない人を見て「聞いていない」と思うのは、早合点かもしれません。
個人差もあります。もともと表情が控えめな人、目を合わせるのが苦手な人もいます。その人の「ふつう」を知らないうちは、判断を保留しておくのが安全です。
3. 見るのは「型」より「変化」
だから、非言語を読みとるときは、決まった型に当てはめるより、その人の中での変化に目を向けます。いつもよく笑う人が笑わなくなった。いつも早口の人が、急に言葉を選びはじめた。
そんな変化に気づいたら、「何かあった?」と言葉で確かめます。変化を観察する方法は、キャリブレーションとは?相手の変化に気づく力で詳しく扱っています。
非言語で伝えるときのコツ
非言語は、読みとるだけでなく、自分から伝えるものでもあります。言葉を変えなくても、体の使い方を少し変えるだけで、伝わり方は変わります。
体の向きと姿勢
話を聴くときは、体ごと相手に向けます。顔だけ向けて、体はパソコンに向いたままだと、「半分しか聴いていない」というメッセージが伝わります。
視線
ずっと目を見つめ続ける必要はありません。話の区切りや、大事なところで目を合わせるくらいで十分です。正面から見つめられるのが苦手な人には、横並びや斜めの位置に座ると、話しやすくなることがあります。
声と間
大切なことを伝えるときは、少しゆっくり話し、言い終えたあとに間をとります。早口で一気に伝えると、内容より焦りが伝わってしまうことがあります。相手の話す速さに合わせることも、安心感につながります。
言葉と体をそろえる
謝りながら笑っている。「ありがとう」と言いながら、目はスマホを見ている。言葉と体がちぐはぐだと、相手はどちらを信じていいのか迷います。多くの場合、受けとられるのは体のほうです。
謝るときは、手を止めて相手を見る。感謝するときは、少しだけ笑顔を添える。言葉と体をそろえるだけで、同じ言葉がまっすぐ届くようになります。心と言動がそろう状態については、自己一致とは?心と言動がそろう生き方も参考になります。
オンラインでは、少し大きめに
画面越しでは、表情や身振りが伝わりにくくなります。うなずきをいつもより少し大きくする、カメラを目の高さに置く、相づちを声に出す。こうした工夫で、伝わる情報の少なさを補えます。
相手の姿勢やテンポに自然と合っていくことの意味は、ミラーリングとは?効果とやりすぎない使い方で扱っています。
自分の体が発するサインに気づく
ここまで、相手との非言語のやりとりを見てきました。でも、非言語のメッセージを受けとっているのは、相手だけではありません。あなた自身も、自分の体から、たくさんのメッセージを受けとっています。
苦手な人からのメールを開く前に、肩がぎゅっと上がる。気が進まない誘いに返事をするとき、呼吸が浅くなる。好きなことを話しているとき、声が少し高く、速くなる。体は、頭で考えるより先に、あなたの気持ちを知らせていることがあります。
体の変化は、気持ちを知る手がかり
「なんとなく疲れる」「理由はわからないけど、気が重い」。そんなとき、体の変化に目を向けると、手がかりが見つかることがあります。
ある人と話したあとにいつも肩がこっているなら、その人の前で無理をしているのかもしれません。ある仕事の話になると声が明るくなるなら、そこにあなたの好きなことが隠れているのかもしれません。自分の体のサインに気づけると、言葉にならない気持ちを早めにすくいとれるようになります。
自分の声を録音して聞いてみるのも、ひとつの方法です。電話や会議の自分の声を聞くと、「こんなに早口だったのか」「この話のとき、声が沈んでいる」と、ふだん気づかない変化が見えてきます。最初は照れくさいものですが、自分を外から知る貴重な材料になります。
自分の体の変化に気づく力は、相手の変化に気づく力ともつながっています。自分の状態を整える方法は、感情コントロールの方法|ステートを整えるコツで紹介しています。
体から気持ちを変えることはできる?
「笑顔をつくると楽しくなる」「力強いポーズをとると自信がわく」。体から心に働きかける方法も、よく紹介されます。ただ、研究の結果は、思われているほど単純ではありません。
効果が控えめでも、背すじを伸ばして深く呼吸すると落ち着く、という実感をもつ人は多いはずです。大切なのは、体を「気持ちを操作するスイッチ」としてではなく、「気持ちを知らせてくれる相棒」として扱うことです。
言葉の外側にも、あなたがいる
非言語コミュニケーションは、相手の本音を見抜くための技術として語られがちです。けれども、その本当の価値は、言葉だけではすくいきれないものに気づかせてくれる点にあるのかもしれません。
相手の沈黙や、ふとした表情の変化に気づく。自分の肩の力みや、声の弾みに気づく。どちらも、言葉の外側で起きている大切な出来事です。
今日、誰かと話したあとに、ほんの少しだけ自分の体に注意を向けてみてください。肩は上がっていなかったか。呼吸は深かったか。その小さな気づきが、相手を知ることにも、自分を知ることにもつながっていきます。
A question for you
あなたへの問い
緊張しているとき、あなたの体のどこに最初に変化が出ますか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
非言語コミュニケーションの例には、どんなものがありますか?
笑顔やしかめ面などの表情、目を合わせる・そらすといった視線、うなずきや身振り、姿勢、声の大きさや速さ、相手との距離、服装などが含まれます。メールやチャットでの返信の速さや、絵文字の使い方も、言葉以外で伝わるものといえます。
「人は見た目が9割」は本当ですか?
そう言い切れる根拠はありません。よく引用されるメラビアンの研究は、言葉と態度が食い違う特殊な条件で、話し手の好意や嫌悪を判断する実験でした。言葉の中身も、態度も、どちらも伝わっています。
しぐさから相手の本音や嘘を見抜けますか?
見抜けると考えないほうが安全です。腕組みひとつとっても、寒い、落ち着く、考えごとをしているなど、理由はさまざまです。研究でも、しぐさや表情から嘘を見抜く精度は偶然を少し上回る程度とされています。気になる変化に気づいたら、言葉で確かめるのが確実です。
非言語コミュニケーションは、練習で上達しますか?
上達します。まずは、自分の姿勢や声の調子に気づくことから始めるのがおすすめです。会話のあとに「どんな姿勢で話していたか」をふり返ったり、自分の話す声を録音して聞いてみたりすると、ふだん気づいていない癖が見えてきます。
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References
- Mehrabian, A. (1971). Silent Messages. Wadsworth.
- Hall, E. T. (1966). The Hidden Dimension. Doubleday.
- Ambady, N., & Rosenthal, R. (1993). Half a minute: Predicting teacher evaluations from thin slices of nonverbal behavior and physical attractiveness. Journal of Personality and Social Psychology, 64(3), 431–441.
- Barrett, L. F., Adolphs, R., Marsella, S., Martinez, A. M., & Pollak, S. D. (2019). Emotional expressions reconsidered: Challenges to inferring emotion from human facial movements. Psychological Science in the Public Interest, 20(1), 1–68.
- Maynard, S. K. (1986). On back-channel behavior in Japanese and English casual conversation. Linguistics, 24, 1079–1108.
- Ranehill, E., Dreber, A., Johannesson, M., Leiberg, S., Sul, S., & Weber, R. A. (2015). Assessing the robustness of power posing: No effect on hormones and risk tolerance in a large sample of men and women. Psychological Science, 26(5), 653–656.
- Wagenmakers, E.-J., et al. (2016). Registered Replication Report: Strack, Martin, & Stepper (1988). Perspectives on Psychological Science, 11(6), 917–928.
- Coles, N. A., et al. (2022). A multi-lab test of the facial feedback hypothesis by the Many Smiles Collaboration. Nature Human Behaviour, 6, 1731–1742.