No.05 On Coachingコーチングを知る

NLPとは?神経言語プログラミングの基本と活かし方

NLPとは、優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法。成り立ち、主な考え方と技法、「怪しい」と言われる理由と科学的な評価を中立に整理し、自分を知る道具として使うときのコツと注意点を紹介します。

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この記事の結論

NLP(神経言語プログラミング)は、1970年代に優れた心理療法家の話し方や関わり方を観察して生まれた、コミュニケーションと自己変容の手法です。研究では、その理論や効果の多くが裏づけられていません。一方で、自分の思い込みや言葉のくせに気づく内省の道具としては、役立てる余地があります。

  • NLPは1970年代、優れた心理療法家の観察から生まれた手法の体系
  • 理論や効果の多くは研究で裏づけられていない。効果を約束する宣伝に注意
  • 使うなら、自分の思い込みに気づく「仮説の道具」として。人を操作しない
目次 Contents
  1. NLPとは? 一言でいうと
  2. NLPはどう生まれたか
  3. NLPの主な考え方と技法
  4. NLPは怪しい? 科学的な評価
  5. NLPとコーチングの関係
  6. 自分を知る道具として、NLPを使うなら
  7. 道具は、使う人の手の中で意味をもつ

「NLPを学んで、人生が変わった」。そんな体験談を目にして、気になっている。一方で、検索すると「怪しい」「科学的根拠がない」という言葉も並んでいる。いったいどちらを信じればいいのか、迷ってしまいますよね。

結論から言うと、どちらの声にも理由があります。NLPには、自分の思い込みや言葉のくせに気づくための、役に立つ考え方が含まれています。同時に、その理論や効果の多くは、研究では裏づけられていません。

この記事では、NLPの成り立ちと主な考え方を紹介したうえで、科学的な評価を正直に整理します。そのうえで、NLPを「自分を知るための道具」として使うなら、どこに気をつければいいかをお伝えします。

NLPとは? 一言でいうと

NLPは、Neuro-Linguistic Programming の頭文字をとった名前です。日本語では「神経言語プログラミング」と訳されます。優れた心理療法家の観察から生まれた、コミュニケーションと自己変容の手法です。

一言でいえば、人が体験をどう受け取り、言葉にし、行動のパターンをつくるかに注目する技法と考え方の集まりです。

名前の3つの言葉には、それぞれ次のような意味が込められています。

言葉込められた意味
Neuro(神経)人は五感を通して世界を受け取り、体験している
Linguistic(言語)体験は言葉によって整理され、意味づけられる
Programming(プログラミング)考え方や行動には、くり返されるパターンがある

ただし、「神経」という言葉が入っていても、NLPは神経科学の研究から生まれたものではありません。名前の響きから科学的な理論だと受け取られやすいのですが、実際は、心理療法の現場の観察から組み立てられた実践的な体系です。

NLPはどう生まれたか

NLPは、1970年代のアメリカ、カリフォルニア大学サンタクルーズ校で生まれました。中心にいたのは、当時学生だったリチャード・バンドラーと、言語学者のジョン・グリンダーです。

2人は、成果を上げている心理療法家の話し方や関わり方を、細かく観察しました。同じ大学にいた人類学者グレゴリー・ベイトソンの思想からも、大きな影響を受けています。ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、家族療法のバージニア・サティア、催眠療法のミルトン・エリクソンです。「優れた人は、何をどのようにしているのか」を取り出し、ほかの人も学べる形にしようとしたのです。この「優れた人のやり方を写しとる」発想は、モデリングと呼ばれます。

最初の成果は、1975年の『The Structure of Magic』などの本にまとめられました。その後NLPは、心理療法の枠を超えて、ビジネスや自己啓発の分野に広がっていきます。

なお、NLPには、全体を統一して管理する公的な団体がありません。創始者どうしの路線の違いもあり、多くの流派や団体が独自の講座や資格を出しています。同じ「NLP」でも、教える内容や質に幅がある点は、知っておいてください。

NLPの主な考え方と技法

NLPには数多くの技法がありますが、根っこにある考え方はシンプルです。代表的なものを紹介します。

「地図は領土ではない」

NLPの出発点にある考え方です。もとは、言語学者アルフレッド・コージブスキーの言葉です(Korzybski, 1933)。

私たちは、現実そのものではなく、五感と経験と言葉でつくった「心の地図」を見て生きている。だから同じ出来事でも、人によって見え方が違う、という考え方です。こうした基本的な考え方は「NLPの前提」と呼ばれ、NLPの前提とは?生きやすくなる考え方で一つずつ紹介しています。

体験が言葉になるまでの「フィルター」

NLPでは、人が出来事を受け取るとき、3つのフィルターがかかると説明します。一部を落とす「省略」、ゆがめて受け取る「歪曲」、一度の経験を全体に広げる「一般化」です。

たとえば、上司に一度注意されただけで「私はいつも認められない」と感じる。ここには、褒められた場面の省略と、一度の経験の一般化が起きているかもしれません。この3つの働きに問いを向ける技法が、メタモデルです。詳しくはメタモデルとは?言葉の奥にある本音を聴く質問をどうぞ。

よく知られる技法

技法ひとことでいうと
ラポール・ペーシング相手の話し方や調子に合わせ、安心して話せる関係をつくる
メタモデルあいまいな言葉を問いで具体化し、思い込みに気づく
ミルトンモデルあえてあいまいな言葉で、相手の想像に働きかける
アンカリング特定の動作や言葉と、心の状態を結びつける
リフレーミング出来事の枠組みを変え、別の意味を見いだす
優位感覚(VAK)見る・聴く・感じるのどれを使いやすいかに注目する
サブモダリティ記憶の明るさや距離など「質感」を変えて、感じ方を変える

このうち、信頼関係のつくり方はラポールとは?信頼関係を築く5つのコツで、見方の変え方はリフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするで詳しく扱っています。

NLPは怪しい? 科学的な評価

ここからは、NLPの評価を正直に見ていきます。結論を先に言うと、NLPの中心的な主張の多くは、研究では支持されていません。

研究で確かめられたこと、確かめられなかったこと

1980年代には、NLPの理論を実験で確かめる研究が多く行われました。たとえば、人にはそれぞれ得意な感覚(優位感覚)があり、それに言葉を合わせると信頼関係が深まる、という主張です。心理学者のシャープリーは、こうした研究を検討し、主張を支持する結果はほとんど得られていないと結論づけました(Sharpley, 1984, 1987)。優位感覚の考え方の詳細と限界は、優位感覚(VAK)とは?見る・聴く・感じるタイプで紹介しています。

「目の動きで、思い出しているのか作り話をしているのかがわかる」という主張も、実験で否定されています(Wiseman ら, 2012)。35年分の研究をふり返った論文でも、NLPを支持する結果は少数で、支持しない結果のほうが多いと報告されました(Witkowski, 2010)。

心の健康への効果についても、根拠は不十分です。健康上の効果を調べた研究のまとめでは、NLPが効果をもつと言える十分な証拠は見つかりませんでした(Sturt ら, 2012)。心理学の専門家への調査では、心の病の治療法として「信頼できない」側に位置づけられています(Norcross ら, 2006)。

それでも「役に立った」と感じる人がいる理由

では、NLPを学んで「役に立った」と感じる人たちは、思い違いをしているのでしょうか。一概にそうとは言えません。

NLPの技法の中には、研究のある心理学の手法と似た発想を含むものがあります。たとえば、リフレーミングは、出来事のとらえ方を見直して感情を整える「認知的再評価」とよく似ています(Gross, 1998)。アンカリングは、条件づけという古くから知られた学習のしくみと重なります。

また、自分の言葉を書き出して見直す、相手の話をよく聴く、といった行為そのものに意味がある場合もあるでしょう。ただし、それは「NLP独自の理論が正しい」ことの証明ではありません。役立つ部分があることと、理論全体が正しいことは、分けて考える必要があります。

「怪しい」と言われやすい背景

NLPが怪しく見られやすいのは、理論の問題だけではありません。

  • 「一瞬でトラウマが消える」「人を思いどおりに動かせる」など、効果を約束する宣伝が見られる
  • 統一された資格の基準がなく、講座の質や費用に大きな幅がある
  • 高額な上位講座へ次々に誘導されるケースがある

こうした売り方は、NLPの考え方そのものとは別の問題です。でも、学ぶ側にとっては見分けにくいのが実情です。

NLPとコーチングの関係

コーチングの現場では、NLPの技法を取り入れているコーチが少なくありません。「NLPコーチング」という名前で、セッションを提供している人もいます。

コーチングの研究者パスモアらは、NLPの研究を見直しました(Passmore & Rowson, 2019)。そのうえで、コーチングで使う場合にも、効果の根拠は限られていると指摘しています。

コーチングそのものは、対話を通じて相手が自分で答えを見つけ、行動するのを支える関わり方です。NLPはその中で使われることのある道具の一つで、コーチングと同じものではありません。コーチングの全体像はコーチングとは?意味・効果・受けて変わることで紹介しています。コーチを選ぶときは、「NLPを使うかどうか」より、対話の質や倫理への姿勢を見るほうが確かです。

自分を知る道具として、NLPを使うなら

科学的な裏づけが弱いからといって、NLPのすべてを捨てる必要はありません。大切なのは、使い方の姿勢です。次の4つを意識すると、NLPの考え方を健全に活かせます。

  1. 理論ではなく「仮説」として使う:「本当にそうか」を自分の体験で確かめる
  2. 他人を操作するためには使わない:観察は、相手を理解し、自分の伝え方をふり返るためのもの
  3. 心の不調の治療には使わない:つらさが続くときは、医療や心理の専門家へ
  4. 効果を約束する宣伝からは距離をとる:「必ず」「一瞬で」をうたう講座は慎重に

このワークは、NLPの「地図は領土ではない」とメタモデルの発想を借りたものです。効果が研究で確かめられた手順ではありません。自分の受け取り方を眺めるきっかけとして、気軽に試してみてください。

日常での使いどころ

NLPの考え方は、大がかりな技法を使わなくても、日常の小さな場面で試せます。

  • 自分の口ぐせを点検する:「どうせ」「いつも」が出たら、それが事実か解釈かを確かめる
  • 相手の「地図」を尊重する:意見が食い違ったら、どちらが正しいかより、相手には何が見えているかを聞く
  • 目標を具体的にする:「変わりたい」を、「何が起きたら変わったとわかるか」まで言葉にする

どれも、NLPを信じるかどうかとは関係なく試せることです。うまくいったものだけを、自分のやり方として残していけば十分です。心の地図という考え方を心理学の側から知りたい人は、メンタルモデルとは?「地図は領土ではない」の意味も参考になります。

講座やセミナーを検討するときは

NLPを本格的に学びたいなら、申し込む前に次の点を確かめておくと安心です。講師の経歴と、講座の中身が具体的に示されているか。効果を約束していないか。総額の費用と、上位講座への勧誘の有無はどうか。

契約や勧誘でトラブルになったときは、一人で悩まずに消費者ホットライン「188」に相談できます。

道具は、使う人の手の中で意味をもつ

NLPは、魔法でも、まったくの嘘でもありません。研究で支持されなかった理論と、内省の手がかりとして使える考え方が混ざった、ひとつの道具箱です。

だからこそ、「NLPによれば」をそのまま信じるより、「私の場合はどうだろう」と確かめる姿勢が大切になります。その問いかけ自体が、自分を知ることにつながっていきます。

まずは今日、心がざわついた出来事を一つだけ、「事実」と「意味」に分けてみてください。地図と領土の間にある小さな隙間に、あなたが選び直せる余地が見つかるかもしれません。

A question for you

あなたへの問い

あなたが「事実」だと思っていることの中に、「解釈」はまぎれていませんか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

NLPは科学的に証明されていますか?

証明されているとは言えません。優位感覚や目の動きの理論など、NLPの中心的な主張の多くは、研究で支持されませんでした。心の不調の治療法としても、十分な根拠は示されていません。使うなら、科学的な技法ではなく、内省や対話のための考え方として受け取るのが誠実です。

NLPとコーチングは何が違いますか?

コーチングは、対話を通じて相手が自分で答えを見つけ、行動するのを支える関わり方です。NLPは、言葉や体験のとらえ方に注目した技法や考え方の集まりです。NLPの技法をコーチングの中で使う人もいますが、両者は別のものです。

NLPの資格は、取る価値がありますか?

NLPの資格は民間の団体が独自に出しているもので、統一された基準はありません。同じ名前の資格でも、内容や時間、費用は団体によって大きく違います。資格そのものの価値より、学びたい内容と費用が見合うか、宣伝が効果を約束していないかを確かめてください。

NLPを使えば、人の心を操れますか?

そうした宣伝を見かけることがありますが、裏づけはありません。また、相手を思いどおりに動かす目的で使えば、信頼を損ないます。相手をよく観察し、自分の伝え方をふり返るために使うのが、健全な付き合い方です。

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References

  • Bandler, R., & Grinder, J. (1975). The Structure of Magic, Vol. I. Science and Behavior Books.
  • Bandler, R., & Grinder, J. (1979). Frogs into Princes. Real People Press.
  • Korzybski, A. (1933). Science and Sanity. International Non-Aristotelian Library.
  • Sharpley, C. F. (1984). Predicate matching in NLP: A review of research on the preferred representational system. Journal of Counseling Psychology, 31(2), 238–248.
  • Sharpley, C. F. (1987). Research findings on neurolinguistic programming: Nonsupportive data or an untestable theory? Journal of Counseling Psychology, 34(1), 103–107.
  • Witkowski, T. (2010). Thirty-five years of research on neuro-linguistic programming. NLP research data base. State of the art or pseudoscientific decoration? Polish Psychological Bulletin, 41(2), 58–66.
  • Sturt, J., Ali, S., Robertson, W., Metcalfe, D., Grove, A., Bourne, C., & Bridle, C. (2012). Neurolinguistic programming: A systematic review of the effects on health outcomes. British Journal of General Practice, 62(604), e757–e764.
  • Norcross, J. C., Koocher, G. P., & Garofalo, A. (2006). Discredited psychological treatments and tests: A Delphi poll. Professional Psychology: Research and Practice, 37(5), 515–522.
  • Wiseman, R., Watt, C., ten Brinke, L., Porter, S., Couper, S.-L., & Rankin, C. (2012). The eyes don't have it: Lie detection and neuro-linguistic programming. PLoS ONE, 7(7), e40259.
  • Passmore, J., & Rowson, T. (2019). Neuro-linguistic-programming: A critical review of NLP research and the application of NLP in coaching. International Coaching Psychology Review, 14(1), 57–69.
  • Gross, J. J. (1998). The emerging field of emotion regulation: An integrative review. Review of General Psychology, 2(3), 271–299.
  • 消費者庁「消費者ホットライン188」
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

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