No.02 Tend the Mind心を整える
リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くする
リフレーミングとは、出来事を見る枠組みを変えて、意味や気持ちを変えること。内容と状況の2つの型、短所の言い換え例、自分を責める言葉を書き換えるワーク、NLPの6ステップ・リフレーミング、うまくいかないときの注意点まで紹介します。
この記事の結論
リフレーミングとは、出来事そのものは変えずに、それを見る枠組み(フレーム)を変えることで、意味や気持ちを変えることです。「ほかにどんな意味がありうる?」と問う内容のリフレームと、「どんな場面なら役に立つ?」と問う状況のリフレームが基本です。
- リフレーミングは、事実は変えずに見る枠組みを変え、意味と気持ちを変えること
- 「ほかの意味は?」「どんな場面なら役立つ?」の2つの問いが基本になる
- つらさを否定する前向き思考とは違う。気持ちを受け止めてから使うのがコツ
目次 Contents
同じ失敗をしても、すぐに切り替えられる人と、何日も引きずってしまう人がいます。自分は後者だと感じていて、「もっと前向きに考えられたら」と思っているのかもしれません。
「物事は考え方しだい」。そう言われても、落ちこんでいるときに前向きになるのは簡単ではありません。むしろ、無理にポジティブに考えようとして、余計に疲れてしまった経験がある人もいるでしょう。
リフレーミングは、無理に前向きになる方法ではありません。出来事を見る「枠」を少しずらして、別の見え方がないかを探す方法です。気持ちが軽くなるのは、そのおまけのようなものです。
この記事では、リフレーミングの意味と2つの型、短所の言い換え例、自分を責める言葉を書き換えるワークを紹介します。さらに、NLPの「6ステップ・リフレーミング」と、うまくいかないときの注意点もまとめました。
リフレーミングとは? 一言でいうと
リフレーミングとは、出来事は変えずに、見る枠組み(フレーム)を変えることで、意味や気持ちを変えることです。
同じ絵でも、額縁を変えると印象が変わります。重厚な金の額縁に入れれば格式高く見え、素朴な木の額縁に入れれば親しみやすく見える。絵そのものは何も変わっていないのに、見え方が変わるのです。リフレーミングは、出来事に対して同じことをします。
家族療法から生まれ、NLPで広まった
リフレーミングという考え方を広めたのは、アメリカの家族療法の研究者たちです。ワツラウィックらは、1974年の著書で、問題の「事実」は変えずに、その意味づけを変えることで変化が起きると論じました(Watzlawick ら, 1974)。
その本で例に挙げられているのが、『トム・ソーヤーの冒険』の塀塗りの場面です。罰として塀のペンキ塗りを命じられたトムは、楽しくてたまらないふりをします。すると、通りかかった友だちは、ペンキ塗りを特別な遊びのように感じはじめます。とうとう、自分の宝物を差し出してまで「やらせてほしい」と頼むのです。罰という枠が、楽しい特権という枠に変わったのです。
その後、リフレーミングを体系的な技法としてまとめたのが、NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)の創始者たちです(Bandler & Grinder, 1982)。
『NLPの実践手法がわかる本』PRでは、NLPでの変化を「戦略」と「戦術」に分けて説明しています。戦略は、感覚を変えること。そのための戦術が、五感の質を変えるサブモダリティ・チェンジと、意味づけを変えるリフレームです。そして両方を支えるのが、体験の中に入るアソシエイトと、外から眺めるディソシエイトだとされています。この整理でいえば、リフレーミングは、感じ方を変えるための入口のひとつです。
心理学では、似た働きを「認知的再評価」と呼び、感情の扱い方のひとつとして研究されています。
なぜ見方が変わると、気持ちが変わるのか
私たちは、出来事が気持ちを直接生んでいると感じています。「上司に注意された。だから落ちこんだ」。でも、その間には、出来事をどう受け止めたかという段階があります。
心理療法家のアルバート・エリスは、これを「ABC」で説明しました(Ellis, 1962)。
| 意味 | 例 | |
|---|---|---|
| A(出来事) | 実際に起きたこと | 上司に資料の修正を指示された |
| B(受け止め方) | 出来事についての考えや信念 | 「私は仕事ができないと思われている」 |
| C(結果) | そこから生まれる気持ちや行動 | 落ちこむ、上司を避ける |
同じAでも、Bが「上司は細かく見てくれている」なら、Cはまったく違ってきます。リフレーミングは、このBに働きかける方法です。
出来事のとらえ方を変えるくせのある人は、ポジティブな感情を多く感じ、心の健康も良好な傾向があると報告されています(Gross & John, 2003)。
なお、NLPでは、出来事が置かれている状況や文脈を「コンテクスト」と呼びます(用語辞典:コンテクスト)。同じ行動でも、コンテクストが変われば意味が変わる。この考え方が、次に紹介する「状況のリフレーム」の土台になっています。
リフレーミングの2つの型:内容と状況
NLPでは、リフレーミングを大きく2つの型に分けます。
| 型 | 自分への問い | 例 |
|---|---|---|
| 内容のリフレーム | 「これには、ほかにどんな意味がありうる?」 | 「よく注意される」→「それだけ期待されている」 |
| 状況のリフレーム | 「これは、どんな場面なら役に立つ?」 | 「心配性」→「旅行の準備では頼りになる」 |
内容のリフレーム:意味を変える
内容のリフレームは、同じ出来事に別の意味を見いだす方法です。意味のリフレームとも呼ばれます。
たとえば、「転職活動で不採用が続いている」。これを「自分には価値がない」と受け止めると、つらくなります。でも、「合わない会社を早めに見分けられている」と見ることもできます。「面接の練習を積めている」と見ることもできます。事実はひとつでも、意味は何通りもありうるのです。
状況のリフレーム:場面を変える
状況のリフレームは、短所だと思っている特徴が、別の場面では長所になることに目を向ける方法です。
「頑固」は、流されやすい会議では困った特徴に見えるかもしれません。でも、大切な約束や信念を守る場面では、「芯がある」として頼りにされます。特徴そのものに良い悪いがあるのではなく、場面との相性があるだけなのです。
著者は答えを与えず、問いをひとつ置いただけでした。別の見方を自分で見つけたからこそ、納得が生まれたのでしょう。
短所の言い換え例
状況のリフレームを使った、短所の言い換え例をまとめました。研究にもとづく対応表ではなく、見方を広げるための例です。
| 短所だと思っていること | 別の見方 |
|---|---|
| 優柔不断 | 慎重に考えられる、いろいろな可能性を検討できる |
| 心配性 | 先回りして準備できる、危険に気づける |
| 飽きっぽい | 好奇心が旺盛、切り替えが早い |
| 人見知り | 相手をよく観察している、関係を大切に築く |
| せっかち | 行動が早い、決断できる |
| 神経質 | 細かいところに気づける、丁寧 |
| 口下手 | 聞き上手、言葉を慎重に選ぶ |
| 八方美人 | 周りに気を配れる、場の空気を和ませる |
| 理屈っぽい | 筋道を立てて考えられる |
| 頑固 | 芯がある、ぶれない |
大切なのは、言い換えた言葉に自分が納得できるかどうかです。「そう言われればそうかも」と思える見方を選んでください。
自分を責める言葉を書き換えるワーク
リフレーミングがいちばん役に立つのは、自分を責める言葉に気づいたときかもしれません。「私はいつも失敗ばかり」「どうせ私なんて」。こうした言葉は、何度も心の中でくり返されるうちに、事実のように感じられてきます。
たとえば、「私は人前で話すのが下手だ」と書いたとします。事実だけにすると、「先週の会議で、説明の途中で言葉に詰まった」。ほかの意味を探すと、「準備不足だっただけ」「緊張するほど真剣だった」「伝えたい内容がたくさんあった」。役に立つ場面は、「言葉を選んで話すので、軽はずみなことは言わない」。
最後に選んだ一文が、「言葉に詰まったのは、真剣に伝えようとしていたから。次は要点を3つにしぼって話そう」だったとします。それは、無理にポジティブにしたものではありません。事実を見たうえで、次の一歩が見える見方になっています。
自分への語りかけを整える方法は、セルフトークとは?心の口ぐせを味方にするでも紹介しています。責める言葉の奥に、根深い思い込みがあると感じたら、ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方も参考になります。
6ステップ・リフレーミング:やめたい行動の「意図」を探す
やめたいのにやめられない行動があります。夜ふかし、先延ばし、つい言いすぎてしまう口ぐせ。NLPには、こうした行動に使う「6ステップ・リフレーミング」という技法があります。
この技法の前提にあるのは、どんな行動にも、その人を守ろうとする「肯定的な意図」がある、という考え方です。たとえば夜ふかしは、「一日の中で、自分だけの自由な時間を確保したい」という意図から来ているのかもしれません。行動を責めて抑えこもうとしても、その意図が満たされないままなら、行動はなかなか変わりません。
本来は、心の中の「パート(部分)」と対話する形で進める技法です。ここでは、一人でも試しやすいように簡略化した形で紹介します。
ステップ6は、NLPで「エコロジーチェック」と呼ばれる確認です。新しい行動が、自分の生活や周りの人との関係に無理を生まないかを見直します。詳しくはエコロジーチェックとは?その目標は本当に自分のため?をどうぞ。
やめたい行動が、思わぬ「得」をもたらしていることについては、二次的利得とは?やめられない行動の隠れた理由で詳しく扱っています。
リフレーミングがうまくいかないとき
つらさを否定するために使わない
リフレーミングは、つらい気持ちをなかったことにするための方法ではありません。大切な人を失った悲しみに、「いい経験になった」と無理に意味をつけても、心は置き去りにされたままです。
まずは、「つらかった」「悔しかった」と、気持ちをそのまま受け止めること。リフレーミングを使うのは、そのあとです。気持ちを受け止める方法は、感情コントロールの方法|ステートを整えるコツでも紹介しています。
変えられることまで、見方で片づけない
見方を変えることが、いつも役に立つとは限りません。ある研究では、とらえ方を変える力の高さが、心の健康にどう関わるかを調べました。その結果、ストレスの原因が自分ではどうにもならない状況では、心の健康を支えていました。一方、自分で変えられる状況では、かえって抑うつの高さと結びついていたのです(Troy ら, 2013)。
たとえば、職場で理不尽な扱いを受けているとします。それを「これも成長の機会」と受け止め続けると、状況を変える行動が遅れてしまうかもしれません。変えられることは、見方ではなく行動で変える。リフレーミングは、そのための冷静さを取り戻す道具として使ってください。
人に押しつけない
落ちこんでいる人に、すぐ「でも、こう考えればいいじゃない」と別の見方を示したとします。相手は「わかってもらえなかった」と感じやすくなります。人に使うときは、まず相手の話を十分に聞くこと。そのうえで、相手が求めたときに、「こんな見方もあるかもしれないね」と差し出すくらいがちょうどいいのです。
事実はひとつ、見え方はいくつも
リフレーミングが教えてくれるのは、出来事の意味は、最初に浮かんだひとつだけではないということです。落ちこんでいるときほど、私たちはひとつの見方に閉じこめられます。「ほかの見方はないかな」と問いかけることは、その小さな窓を開けることです。
無理に明るい窓を探す必要はありません。今より少しだけ風通しのいい窓が見つかれば、それで十分です。
今日、自分を責める言葉が浮かんだら、ひとつだけ問いかけてみてください。「これは、どんな場面なら役に立つだろう?」。あなたが短所だと思っていたものの中に、まだ名前のついていない長所が隠れているかもしれません。
A question for you
あなたへの問い
あなたが短所だと思っていることは、どんな場面なら役に立ちますか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
リフレーミングとポジティブシンキングは、どう違いますか?
ポジティブシンキングは、物事を良いほうに考えようとする姿勢です。リフレーミングは、良い悪いを決めつけず、別の見方がありうるかを探す方法です。無理に前向きになる必要はなく、自分が本当に納得できる見方を選ぶことが大切です。
リフレーミングの例を教えてください。
たとえば「優柔不断」は「慎重に考えられる」、「心配性」は「先回りして準備できる」と言い換えられます。「雨で予定が中止になった」も、「家でゆっくり休める日になった」と見ることができます。事実は同じでも、見る枠組みが変わると気持ちが変わります。
落ちこんでいる人にリフレーミングをしてあげてもいいですか?
気持ちを十分に聞く前に別の見方を示すと、「わかってもらえなかった」と感じさせることがあります。まずは相手のつらさを受け止め、相手が求めたときや、少し落ち着いたときに、「こういう見方もあるかもね」と添えるくらいがちょうどいいでしょう。
6ステップ・リフレーミングとは何ですか?
NLPの技法で、やめたい行動の奥にある「肯定的な意図」を見つけ、その意図を満たす別の行動を探す手順です。行動を責めて抑えこむのではなく、その行動が何を守ろうとしていたのかに目を向けるのが特徴です。研究での検証は限られているので、内省の道具として使ってください。
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References
- Watzlawick, P., Weakland, J. H., & Fisch, R. (1974). Change: Principles of Problem Formation and Problem Resolution. W. W. Norton.
- Bandler, R., & Grinder, J. (1982). Reframing: Neuro-Linguistic Programming and the Transformation of Meaning. Real People Press.
- Ellis, A. (1962). Reason and Emotion in Psychotherapy. Lyle Stuart.
- Beck, A. T. (1976). Cognitive Therapy and the Emotional Disorders. International Universities Press.
- Gross, J. J., & John, O. P. (2003). Individual differences in two emotion regulation processes: Implications for affect, relationships, and well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 85(2), 348–362.
- Troy, A. S., Shallcross, A. J., & Mauss, I. B. (2013). A person-by-situation approach to emotion regulation: Cognitive reappraisal can either help or hurt, depending on the context. Psychological Science, 24(12), 2505–2514.
- O'Connor, J., & Seymour, J. (1990). Introducing Neuro-Linguistic Programming. Mandala.
- 『思ったことがうまく話せない人のNLP会話術』第6章 p.152
- 『実務入門 NLPの実践手法がわかる本』第2章 p.96-97