No.03 Connect人とつながる

傾聴のコツ聴くことで人とつながる方法

傾聴のコツを、カール・ロジャーズが示した3つの態度から具体的な聴き方まで紹介。相づちや言葉の返し方、アドバイスしたくなったときの対処、沈黙を怖がらない待ち方、研究でわかった聴いてもらうことの力、聴くことで自分を知る視点まで。

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この記事の結論

傾聴とは、相手の言葉だけでなく、その奥にある気持ちや意味まで受けとろうとする聴き方です。コツは、評価やアドバイスをいったん脇に置き、相手の言葉を短く返しながら、沈黙も含めて相手のペースを待つことです。土台には、ロジャーズが示した共感・受容・自己一致の3つの態度があります。

  • 傾聴の土台は、技術より先に共感・受容・自己一致の3つの態度
  • アドバイスや評価をいったん保留し、相手の言葉を短く返す
  • 沈黙は相手が考えている時間。待つことも聴くことの一部
目次 Contents
  1. 傾聴とは? 一言でいうと
  2. 傾聴の土台:ロジャーズの3つの態度
  3. 明日から使える、傾聴の6つのコツ
  4. 沈黙を怖がらない
  5. 聴いてもらうことには、どんな力がある?
  6. 聴くことは、自分を知ることでもある
  7. 聴くことは、相手に「場所」を手渡すこと

友人が悩みを打ち明けてくれたのに、気づけばアドバイスばかりしていた。家族の話を聞きながら、頭の中では夕飯の段取りを考えていた。あとになって、「ちゃんと聞いてあげられなかったな」と思うことはありませんか。

傾聴のコツを調べているあなたは、目の前の人を大切にしたいと思っている人です。一方で、「聴くって、黙ってうなずいていればいいの?」「沈黙になると焦ってしまう」と、具体的なやり方がわからずにいるのかもしれません。

聴くことは、簡単そうで難しいものです。話すことと違って、学ぶ機会もほとんどありません。うまく聴けなかったとしても、それは不器用だからではなく、練習してこなかっただけです。

この記事では、傾聴の土台になる3つの態度と、明日から使える具体的なコツを紹介します。沈黙との付き合い方や、聴くことが自分を知ることにもつながる、という視点もあわせてお伝えします。

傾聴とは? 一言でいうと

傾聴とは、相手の言葉だけでなく、その奥にある気持ちや意味まで受けとろうとする聴き方です。英語では active listening と呼ばれます。

この言葉を広めたのは、心理学者カール・ロジャーズです。ロジャーズは、同僚のファーソンとともに、職場の管理職向けの小冊子で「アクティブ・リスニング」という聴き方を紹介しました(Rogers & Farson, 1957)。カウンセリングの聴き方を、日常の人間関係に活かそうとしたのです。

「アクティブ(能動的)」という言葉には意味があります。傾聴は、ただ黙って耳を貸すことではありません。相手を理解しようと、注意を向け続ける積極的な行為なのです。

傾聴と「ただ聞く」の違い

ふつうに話を聞くとき、私たちの注意の一部は、自分の頭の中にあります。「次に何を言おう」「それは違うんじゃないか」「私のときはこうだった」。傾聴では、こうした自分の声をいったん脇に置き、相手の世界に注意を向けます。

ふつうに聞く傾聴する
注意の向き自分の返事や意見相手の気持ちや意味
聞く目的内容を理解し、答える相手を理解する
沈黙への態度埋めようとする待つ
よく出る言葉「それなら〜したら?」「そうだったんだね」「それで?」

『思ったことがうまく話せない人のNLP会話術』PRでは、聴くことを3つの段階に分けて説明しています。

  • 耳で聞く:音として聞こえているだけで、内容を確かめない
  • 口で聴く:相手の発言を確かめ、事実関係をはっきりさせる
  • 心で聴く:事実と気持ちをひとまとまりで受けとり、言葉にならない思いや背景まで察する

傾聴がめざすのは、3つ目の「心で聴く」です。ただ、いきなりそこを目指さなくて大丈夫です。まず「口で聴く」で事実を確かめていくと、その奥にある気持ちにも耳が向きやすくなります。

傾聴の土台:ロジャーズの3つの態度

ロジャーズは、人が変化し成長するのを支える関係には、聴き手の3つの態度が欠かせないと考えました(Rogers, 1957)。この3つは、傾聴の土台として今も大切にされています。

1. 共感的理解:相手の目で世界を見る

共感的理解とは、相手の感じ方を、あたかも自分のことのように理解しようとすることです。ただし、「あたかも」を忘れないことが大切だとロジャーズは強調しました。相手の気持ちに飲みこまれて、一緒に泣き崩れるのとは違います。

共感は、同意とも違います。相手の考えに賛成できなくても、「この人には、こう見えているのだ」と理解することはできます。

よくある誤解に、「よく聴くとは、相手の愚痴や悪口に同調すること」というものがあります。『心時代の夜明け』PRでは、安易な同調は怒りや不満をあおり、傷のなめ合いで終わりやすいと説明されています。「ひどいね、その人」と一緒に責めるのではなく、「そんなことがあって、悔しかったんだね」と受けとめる。感情に巻きこまれず、事実と気持ちを受けとることが、同調とは違う共感の形です。

2. 無条件の肯定的関心:条件をつけずに受けとる

相手の話に、「こういうことなら受け入れる」という条件をつけないことです。たとえ相手が自分を責めるような話をしても、愚痴ばかりこぼしても、その人を一人の人として大切に思う姿勢を保ちます。

これは、相手の行動をすべて肯定することではありません。行動への評価をいったん保留して、話している人そのものに関心を向けるということです。

3. 自己一致:聴き手が自分に正直でいる

3つ目は、聴き手の側の態度です。自己一致とは、聴き手が自分の感じていることを否定せず、偽らずにいることを指します。ロジャーズは「純粋さ」とも表現しました。

興味がないのに興味があるふりをする。退屈しているのに笑顔を貼りつける。

こうした不一致は、言葉にしなくても相手に伝わります。**本当に聴けないときは、聴けないと正直に伝えるほうが、ふりをして聴くより誠実です。**自己一致について詳しくは、自己一致とは?心と言動がそろう生き方をどうぞ。

明日から使える、傾聴の6つのコツ

ここからは、3つの態度を具体的な行動にしたコツを紹介します。全部を一度にやろうとせず、ひとつ選んで試してみてください。

1. 体ごと、相手に向ける

スマホを伏せる。パソコンの画面から目を離す。体を相手のほうへ向ける。

言葉より先に、こうした姿勢が「あなたの話を聴いています」と伝えます。体や表情が伝えるものについては、非言語コミュニケーションとは?表情・声・しぐさで扱っています。

2. 相づちは短く、相手のペースで

「うん」「なるほど」「それで?」

相づちは、短いほうが相手の話をじゃましません。相手がゆっくり話すなら、相づちもゆっくりと。相手の話す速さに合わせることで、話しやすい空気が生まれます。

3. 相手の言葉を、短く返す

相手が話したことの要点や気持ちを、短く言葉にして返します。「締め切りが重なって、焦っていたんだね」

返してもらうと、相手は「ちゃんと届いた」と感じ、自分の話を聞き直すこともできます。返し方の種類やコツは、バックトラッキングとは?おうむ返しの上手な使い方で詳しく紹介しています。

4. 質問は「もっと聴かせて」のために

質問は、自分が知りたいことを聞き出すためではなく、相手が話を広げられるように使います。「それって、どういうこと?」「そのとき、どう感じた?」。答えが「はい」「いいえ」で終わらない問いが向いています。

質問の種類と使い分けは、オープンクエスチョンとクローズドの使い分けをどうぞ。

5. アドバイスと評価を、いったん保留する

相手が悩みを話しはじめると、つい解決策を言いたくなります。でも、話している人の多くは、まず気持ちを受けとめてほしいと思っています。アドバイスは、相手が「どうしたらいいと思う?」と聞いてきてからでも遅くありません。

『心時代の夜明け』では、相談されてすぐに答えを与えると、相手の依存心を高めかねないと説明されています。本人が自分で考えて育つ機会を、奪ってしまうこともあるからです。受容的に聴いていると、相談者が自分で解決策を見いだすことが多い、というのが著者の見方です。

6. 話の主役を奪わない

「わかる、私もね」と、自分の話にすり替えてしまうことがあります。共感のつもりでも、相手からすると話の主役を奪われた感覚になりがちです。自分の経験を話すのは、相手が話し終えてからにします。

沈黙を怖がらない

傾聴でいちばん難しいのは、沈黙かもしれません。会話が途切れると、何か言わなければと焦ってしまう人は多いはずです。

沈黙は、相手が考えている時間

教育研究者のロウは、授業中の教師が、生徒に質問してから次の言葉を発するまでの「待ち時間」を調べました(Rowe, 1986)。多くの教師の待ち時間は、1秒ほどしかありませんでした。それを3秒以上に延ばすと、生徒の答えが長く、考えの深いものになったと報告しています。

日常の会話でも同じことがいえます。相手が黙ったとき、頭の中では言葉を探していたり、気持ちを整理していたりします。そこで口をはさむと、出かかっていた本音が引っこんでしまうことがあります。

待つためのちょっとした工夫

沈黙が気まずく感じたら、心の中でゆっくり3回呼吸してみてください。それだけで、数秒の間を待てます。相手が話を続けたら、それが待った成果です。

それでも沈黙を破りたくなったら、新しい話題を出すのではなく、相手の最後の言葉を小さく繰り返してみます。「……迷ってるんだ」。それだけで、相手は話の続きに戻りやすくなります。

沈黙を「何も起きていない時間」ではなく、「相手の中で何かが起きている時間」と捉え直してみてください。そう思えると、待つことが少し楽になります。

ただし、すべての沈黙が「考えている」わけではありません。困っている、話したくない、という沈黙もあります。

表情が固くなっていたり、視線が泳いでいたりするなら、「急がなくていいよ」「話せるところだけでいいよ」と声をかけます。沈黙の質の見分け方は、キャリブレーションとは?相手の変化に気づく力が参考になります。

聴いてもらうことには、どんな力がある?

聴いてもらうことは、話し手にどんな影響を与えるのでしょうか。近年、この問いを実験で確かめる研究が増えてきました。

傾聴の目的は、相手を正しい答えに導くことではありません。相手が安心して話せる場をつくると、相手は自分で考えを整理し、答えを見つけていきます。この考え方は、コーチングとは?意味・効果・受けて変わることの土台にもなっています。

聴くことは、自分を知ることでもある

傾聴を練習していると、自分の中にいろいろな反応が起きることに気づきます。アドバイスしたくてたまらなくなる。相手の話にいらいらする。自分の話をしたくなる。

これらの反応は、傾聴の失敗ではなく、あなた自身を知る手がかりです。たとえば、相手の「仕事を休みたい」という話に、強くいらいらしたとします。そのとき、あなたの中には「休んではいけない」という思いがあるのかもしれません。人の話を聴くことは、自分の心の動きを映す鏡にもなるのです。

最初は、5分間アドバイスをがまんするだけでも大変に感じるはずです。それで大丈夫です。がまんできなかった瞬間を覚えておくことが、次の一歩になります。

聴くことは、相手に「場所」を手渡すこと

傾聴に、完璧な受け答えは必要ありません。解決策を出せなくても、気のきいた言葉が見つからなくてもかまいません。あなたが聴き手でいるあいだ、相手は安心して考えを広げられる場所を手にしています。

聴いてもらった人は、話しながら自分の気持ちに気づいていきます。あなたが聴くことで、相手は自分自身の声を聴くのです。

今日、誰かが何かを話しはじめたら、アドバイスの代わりに「それで、どうなったの?」と一言だけ返してみてください。その問いが、相手の話をもう一歩先へ運んでくれます。

A question for you

あなたへの問い

最近、誰かに「ちゃんと聴いてもらえた」と感じたのは、どんなときでしたか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

傾聴と、ふつうに話を聞くことは何が違いますか?

ふつうに聞くときは、話の内容を理解し、自分の意見や返事を考えながら聞くことが多いものです。傾聴では、自分の意見をいったん脇に置き、相手が何を感じ、何を大切にしているかを受けとることに注意を向けます。聴く目的が、自分が返事をするためから、相手を理解するためへと変わります。

相手の話に共感できないときは、どうすればいいですか?

賛成できなくても、傾聴はできます。共感とは、相手の意見に同意することではなく、「この人には、こう見えているのだ」と理解しようとすることだからです。「あなたはそう感じたんだね」と、相手の感じ方そのものを受けとることから始めてみてください。

聴いているだけで疲れてしまいます。

相手の気持ちに入りこみすぎていたり、何とかしてあげなければと力んでいたりすると、聴くことは疲れます。傾聴は、相手の問題を引き受けることではありません。自分に余裕がないときは、「今は十分に聴けないから、明日でもいい?」と正直に伝えることも、誠実な関わり方です。

傾聴は、練習で上達しますか?

上達します。最初は、相づちを短くする、アドバイスを一回がまんする、といった小さなことから始めるのがおすすめです。聴いたあとに「相手はどんな表情で話し終えたか」をふり返ると、自分の聴き方の変化にも気づきやすくなります。

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References

  • Rogers, C. R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21(2), 95–103.
  • Rogers, C. R., & Farson, R. E. (1957). Active Listening. Industrial Relations Center, University of Chicago.
  • Rowe, M. B. (1986). Wait time: Slowing down may be a way of speeding up! Journal of Teacher Education, 37(1), 43–50.
  • Itzchakov, G., Kluger, A. N., & Castro, D. R. (2017). I am aware of my inconsistencies but can tolerate them: The effect of high quality listening on speakers' attitude ambivalence. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(1), 105–120.
  • 『思ったことがうまく話せない人のNLP会話術』第1章 p.25-26
  • 『心時代の夜明け』第4章 p.110, 119-120

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。