No.01 Know Yourself自分を知る

メタ認知とは?自分を客観視する力の鍛え方

メタ認知とは、自分の考えや感情を一歩引いて眺め、調整する力のこと。客観視と自分責めの違い、感情に飲まれたときに一歩引くための言葉かけ、自分のパターンを知るセルフモニタリング記録など、メタ認知の鍛え方を紹介します。

公開 更新 読了 約9分 PR:書籍の紹介に Amazon アソシエイトのリンクを含みます

この記事の結論

メタ認知とは、自分が今何を考え、何を感じているかを一歩引いて眺め、必要に応じて考え方や行動を調整する力のことです。感情に名前をつける、「〜と考えている」と言い直す、記録をつけるといった小さな練習で、少しずつ鍛えられます。

  • メタ認知は、自分の考えや感情を一歩引いて眺め、調整する力
  • 客観視は自分責めとは違う。責めずに「観察する」のがポイント
  • 感情に名前をつける、記録をつけるなど、小さな練習で鍛えられる
目次 Contents
  1. メタ認知とは? 一言でいうと
  2. メタ認知が高いと、何が変わる?
  3. 「客観視」と「自分責め」は違う
  4. 感情に飲まれたとき、一歩引くための言葉かけ
  5. セルフモニタリング記録で、自分のパターンを知る
  6. メタ認知を日常で鍛える小さな習慣
  7. 観客席に、もう一人の自分を

上司のひと言にかっとなって、言わなくていいことまで言ってしまった。あとから「どうしてあんな言い方をしたんだろう」と落ちこむ。不安になると、頭の中で同じ考えがぐるぐる回って止まらない。

そんなとき、「もう少し冷静になれたら」「自分を客観的に見られたら」と思うかもしれません。その「自分を一歩引いて見る力」を、心理学では「メタ認知」と呼びます。

メタ認知は、生まれつきの才能ではありません。ちょっとした言葉かけや記録の習慣で、少しずつ育てていける力です。

この記事では、メタ認知の意味と、客観視が自分責めにならないためのポイントを整理します。そのうえで、感情に飲まれたときに一歩引くための言葉かけと、自分のパターンを知るためのセルフモニタリング記録を紹介します。

メタ認知とは? 一言でいうと

メタ認知とは、自分が今何を考え、何を感じているかを一歩引いて眺め、必要に応じて考え方や行動を調整する力のことです。

「メタ」は「一段上の」、「認知」は「考える・感じる・覚えるといった心のはたらき」を指します。つまりメタ認知は、「自分の心のはたらきについての、もう一段上からの認知」です。

1970年代に、発達心理学者のジョン・フラベルがこの概念を提唱しました。もともとは、子どもが自分の記憶や理解の程度をどう把握しているかを調べる研究から生まれた言葉です。

たとえるなら、試合に出ている自分を、観客席からもう一人の自分が見ているような状態です。プレーに夢中になりながらも、「今、焦ってパスが雑になっているな」と気づける。その気づきがあるから、プレーを立て直せるのです。

メタ認知の2つの要素

メタ認知は、大きく二つの要素に分けて考えられます。

要素中身例
メタ認知的知識自分の考え方や、得意・不得意についての知識「私は疲れていると悲観的に考えやすい」
メタ認知的活動今の自分の状態に気づき(モニタリング)、調整する(コントロール)こと「今、悲観的になっている。少し休んでから考えよう」

心理学者のネルソンとナレンズは、この「気づく」と「調整する」の二つの流れを、記憶の研究の中で整理しました(Nelson & Narens, 1990)。自分を知っているだけでも、気づくだけでも不十分で、両方がそろったときに、メタ認知は力を発揮します。

メタ認知が高いと、何が変わる?

メタ認知がはたらいていると、日々の暮らしの中で、次のような変化が起きやすくなります。

  • 感情に飲まれにくくなる:怒りや不安を感じても、「今、怒っている」と気づけるので、すぐに反応せずにすむ
  • 学びが進む:「ここはまだわかっていない」と気づけるので、つまずきに合ったやり方を選べる
  • 人との関係が楽になる:自分の思い込みに気づけるので、相手の言葉を悪く受け取りすぎずにすむ
  • 同じ失敗をくり返しにくくなる:自分のパターンを知っているので、早めに手を打てる

自分の実力を正しく見積もることにも、メタ認知が関わっています。自己評価のずれについては、ダニング=クルーガー効果とは?自己評価のずれで詳しく扱っています。

メタ認知がはたらきにくくなるとき

メタ認知は、いつも同じようにはたらくわけではありません。疲れているとき、寝不足のとき、空腹のとき、時間に追われているときは、一歩引く余裕がなくなりやすいものです。感情がとても強いときも、観客席の自分は舞台に引きずりこまれてしまいます。

だからこそ、余裕のあるときに「こうなったら、こうする」と決めておくことが役立ちます。「寝不足の夜には、大事なメッセージを送らない」「腹が立ったら、返事は翌朝にする」。前もって決めたルールは、メタ認知が弱まったときの手すりになります。

「客観視」と「自分責め」は違う

自分を客観的に見ようとして、かえって苦しくなる人がいます。「どうして私はいつもこうなんだ」「もっとちゃんとしなきゃ」。これは客観視ではなく、自分を裁く声になっています。

心理学では、自分に注意を向けるはたらきにも二種類あると考えられています。好奇心から自分を見つめる「内省」と、不安から同じことを考え続ける「反すう」です。研究では、内省は知的な好奇心や経験への開かれた態度と、反すうは不安や落ちこみと結びつきやすいことが報告されています(Trapnell & Campbell, 1999)。

メタ認知のポイントは、裁かずに「観察する」ことです。天気を眺めるように、「今、心に雨が降っているな」と気づく。雨を責めても、晴れにはなりません。気づいたうえで、傘をさすかどうかを選べばいいのです。

感情に飲まれたとき、一歩引くための言葉かけ

感情が大きく揺れているときは、頭で「冷静になろう」と思っても、なかなかうまくいきません。そんなときは、自分にかける言葉を少し変えるのが近道です。

1. 感情に名前をつける

「イライラする」「なんか嫌だ」を、「がっかりしている」「焦っている」「恥ずかしい」と、もう少し細かく言葉にしてみます。

感情を言葉にすることは「感情のラベリング」と呼ばれます。こんな研究があります。怒りや恐れを浮かべた顔の写真を見ながら、その感情を表す言葉を選ぶと、感情に関わる脳の部位の反応が弱まったのです(Lieberman ら, 2007)。名前をつけると、感情と少し距離がとれるのです。

2. 「〜と考えている」と付け足す

「私はだめだ」という考えが浮かんだら、「私は『私はだめだ』と考えている」と言い直してみます。

これは、心理療法のACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)で使われる「脱フュージョン」という方法の一つです。考えを事実として受けとるのではなく、「頭に浮かんだ言葉」として眺めます。考えの中身は同じでも、それに縛られる感覚がゆるみます。

3. 自分を名前で呼ぶ

心の中の独り言で、「私」ではなく自分の名前を使ってみます。「〇〇は今、緊張しているね。でも準備はしてきたよ」。

クロスらの研究では、人前で話す前などに自分を名前や「あなた」で呼ぶと、不安がやわらぎやすいことが報告されています(Kross ら, 2014)。友人に声をかけるような距離が生まれるからだと考えられています。心の口ぐせについては、セルフトークとは?心の口ぐせを味方にするもどうぞ。

4. 少し離れた場所から眺める

つらい出来事を思い出すとき、自分の目から見るのではなく、部屋の隅から自分を眺めているように思い浮かべてみます。

こうした「自己距離化」は、嫌な出来事をふり返るときの感情の高ぶりをやわらげ、出来事の意味を整理しやすくすると報告されています(Kross & Ayduk, 2011)。感情との距離のとり方は、アソシエイトとディソシエイト|感情との距離の取り方でも詳しく紹介しています。

セルフモニタリング記録で、自分のパターンを知る

その場で一歩引く練習に加えて、記録をつけるのもメタ認知を育てる方法です。自分の行動や考え、気分を観察して書きとめることは「セルフモニタリング」と呼ばれ、認知行動療法でもよく使われます。

なお、心理学には、人前での振る舞いを場に合わせて調整する傾向を指す「セルフ・モニタリング」という別の概念もあります(Snyder, 1974)。ここで紹介するのは、自分を観察して記録するほうの意味です。

続けていると、「月曜の朝は、いつも不安が強い」「疲れているときほど、人の言葉を悪く受け取る」といったパターンが見えてきます。パターンがわかれば、先回りして手を打てます。書くこと自体の効果については、ジャーナリングとは?書く瞑想のやり方と効果でも紹介しています。

メタ認知を日常で鍛える小さな習慣

特別な時間をとらなくても、日常の中でメタ認知を育てる方法はあります。

1日の終わりに、3つの問い

寝る前に、「今日、いちばん心が動いたのはいつ?」「そのとき、何を考えていた?」「明日、同じ場面があったらどうしたい?」と自分に聞いてみます。答えは、頭の中だけでもかまいません。

予想と結果を比べる

何かを始める前に、「どれくらいかかりそうか」「どれくらいうまくいきそうか」を予想しておきます。終わったら、実際の結果と比べます。予想と結果のずれを知ることは、自分の見積もりのクセに気づく、メタ認知の練習になります。

たとえば、「この資料は30分で終わる」と予想したのに、実際には1時間半かかった。そんなことが何度も続くなら、自分は作業時間を短く見積もりやすい、とわかります。次からは、予想の1.5倍の時間を見込んでおけばいい。小さな予想と答え合わせのくり返しが、自分を知る確かな材料になります。

視点の高さを変えてみる

悩みに近づきすぎているときは、「1年後の自分から見たら、これはどう見える?」と視点を引いてみます。逆に、考えがふわふわしているときは、「具体的に、明日何をする?」と視点を下げます。物事をどの高さから見るかは「抽象度」とも呼ばれます。

今この瞬間に注意を向ける練習としては、マインドフルネスとは?初心者のための始め方も役立ちます。

観客席に、もう一人の自分を

メタ認知は、自分を冷たく突き放す力ではありません。舞台の上でもがく自分を、観客席からあたたかく見守る、もう一人の自分を育てることです。

その観客は、いきなり上手に見守れるようにはなりません。「あ、今イライラしてるな」と気づくだけで、最初は十分です。気づく回数が増えるほど、観客席の自分は少しずつ落ち着いていきます。

今日、感情が大きく動いたら、一度だけ「今、私は〜を感じている」と言葉にしてみてください。その一言が、舞台と観客席のあいだに、小さな間をつくってくれます。

A question for you

あなたへの問い

今この瞬間、あなたの頭の中ではどんな言葉が流れていますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

メタ認知が高い人には、どんな特徴がありますか?

自分の感情の動きに早めに気づけること、自分の理解度や得意・不得意をある程度正確につかめていること、うまくいかないときにやり方を変えられることなどが挙げられます。ただし、生まれつき決まっている力ではなく、練習で伸ばせる面が大きいと考えられています。

客観視しようとすると、自分を責めてしまいます。

それは、客観視ではなく自己批判になっているのかもしれません。「なぜ私はこうなんだ」と理由を問い詰めるより、「今、私はこう感じている」と事実として眺めるほうが、気持ちは落ち着きやすくなります。親しい友人を見守るような目で、自分を見てみてください。

セルフモニタリングとは何ですか?

自分の行動や考え、気分を観察して記録することを指します。認知行動療法などで使われる方法で、記録を続けると自分のパターンが見えてきます。なお、心理学には、人前での振る舞いを場に合わせて調整する傾向を指す「セルフ・モニタリング」という別の概念もあります。

もう一歩深めたい人へ

PR・Amazonへのリンクを含みます
  • こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳

    大野裕/創元社(2003年)

    日本の認知行動療法の第一人者による、書き込み式のワークブックです。気分と考えを書き出して整理する練習を、自分のペースで始められます。

    Amazonで見る
  • 反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

    草薙龍瞬/KADOKAWA(2015年)

    怒りや不安にすぐ振り回されてしまう人へ。ブッダの考え方を「心の反応を見る」という実用的な視点で説明していて、宗教に詳しくなくても読みやすい一冊です。

    Amazonで見る
  • サーチ・インサイド・ユアセルフ 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

    チャディー・メン・タン(著)/柴田裕之(訳)/マインドフルリーダーシップインスティテュート(監訳)/英治出版(2016年)

    Googleで生まれたマインドフルネス研修の内容をまとめた本です。瞑想を感情知性(EQ)や人間関係に結びつけて学びたい人に向いています。

    Amazonで見る

References

  • Flavell, J. H. (1979). Metacognition and cognitive monitoring: A new area of cognitive–developmental inquiry. American Psychologist, 34(10), 906–911.
  • Nelson, T. O., & Narens, L. (1990). Metamemory: A theoretical framework and new findings. Psychology of Learning and Motivation, 26, 125–173.
  • Trapnell, P. D., & Campbell, J. D. (1999). Private self-consciousness and the five-factor model of personality: Distinguishing rumination from reflection. Journal of Personality and Social Psychology, 76(2), 284–304.
  • Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
  • Kross, E., & Ayduk, O. (2011). Making meaning out of negative experiences by self-distancing. Current Directions in Psychological Science, 20(3), 187–191.
  • Kross, E., Bruehlman-Senecal, E., Park, J., Burson, A., Dougherty, A., Shablack, H., Bremner, R., Moser, J., & Ayduk, O. (2014). Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters. Journal of Personality and Social Psychology, 106(2), 304–324.
  • Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (2012). Acceptance and Commitment Therapy: The Process and Practice of Mindful Change (2nd ed.). Guilford Press.
  • Snyder, M. (1974). Self-monitoring of expressive behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 30(4), 526–537.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。