No.02 Tend the Mind心を整える

マインドフルネスとは?初心者のための始め方と効果

マインドフルネスとは、今この瞬間に、評価をはさまずに注意を向けること。研究でわかっている効果と限界を正直に整理し、3分の呼吸から始めるやり方、日常でできる練習、自分の心に気づく道具としての使い方、続けるコツまで紹介します。

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この記事の結論

マインドフルネスとは、意図して、今この瞬間に、良い悪いの判断をはさまずに注意を向けることです。頭を空っぽにする技術ではなく、それた注意に気づいて戻ることをくり返す練習です。不安や再発予防への効果が報告される一方、万能ではありません。

  • マインドフルネスは「無になる」ことではなく、それた注意に気づいて戻る練習
  • 不安や痛みへの効果は報告されているが、過大な宣伝も多く、万能ではない
  • 1日3分の呼吸から始め、自分の心のくせに気づく道具として使うと続けやすい
目次 Contents
  1. マインドフルネスとは? 一言でいうと
  2. なぜ「今ここ」にいるのは、こんなに難しいのか
  3. マインドフルネスの効果:わかっていることと、わかっていないこと
  4. 今日からできる始め方:まずは3分の呼吸から
  5. 呼吸以外の入り口:日常の中のマインドフルネス
  6. 自分の心に気づく道具としてのマインドフルネス
  7. 続けるコツと、つまずいたときの考え方
  8. 上手にやるより、何度でも戻ってくる

気づけば、頭の中がずっとしゃべり続けている。明日の会議のこと、昨日の失言、返していないメッセージ。目の前の食事の味も、帰り道の空の色も、ほとんど覚えていない。そんな毎日に少し疲れて、マインドフルネスという言葉にたどり着いたのかもしれません。

一方で、「瞑想なんて自分には無理」「じっと座っていられない」と感じている人もいるでしょう。あるいは、効果をうたう情報が多すぎて、何を信じればいいのかわからない人もいるはずです。

この記事では、マインドフルネスの意味を、よくある誤解を解きながら整理します。研究でわかっている効果と、まだわかっていないことも、正直にお伝えします。そのうえで、今日から3分で始められるやり方と、日常の中での練習法を紹介します。

もうひとつ、この記事で大切にしたい視点があります。マインドフルネスは、ストレス対策であると同時に、自分の心のくせに気づくための練習でもあるということです。自分を知りたい人にとって、これほど身近な道具はなかなかありません。

マインドフルネスとは? 一言でいうと

マインドフルネスとは、意図して、今この瞬間に、良い悪いの判断をはさまずに注意を向けることです。これは、マインドフルネスを医療の世界に広めたジョン・カバットジンの定義をもとにしています(Kabat-Zinn, 1994)。

言葉のルーツは、仏教の瞑想にあります。古いインドの言葉に、「気づき」や「心にとどめること」を意味する「サティ」があります。これが英語で mindfulness と訳されました。

これを宗教から切り離し、医療の場で使える形にしたのがカバットジンです。1979年、彼はアメリカのマサチューセッツ大学医学部で、8週間のプログラムを始めました。慢性の痛みやストレスを抱える人のためのものです。これが「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」です(Kabat-Zinn, 1990)。

2つの要素:注意を向けることと、受け止め方

研究者たちは、マインドフルネスを2つの要素に分けて説明しています(Bishop ら, 2004)。

ひとつは、注意の向け方です。今この瞬間の体験、たとえば呼吸や体の感覚に注意を向け、それたら気づいて戻すこと。

もうひとつは、受け止め方です。浮かんでくる考えや感情に、好奇心と開かれた態度で接すること。「こんなことを考えてはだめだ」と押しのけず、「今、こんな考えが浮かんでいるな」とそのまま眺めることです。

よくある4つの誤解

マインドフルネスには、誤解もたくさんあります。

  • 頭を空っぽにすること:雑念を消すことが目的ではありません。浮かんだことに気づくのが練習です
  • リラックス法:結果として落ち着くことは多いものの、目的は気づくことです。落ち着かない自分に気づくのも、立派な練習です
  • 前向きに考える方法:考えを良いものに変えようとはしません。ただ、そのまま眺めます
  • 宗教の修行:ルーツは仏教ですが、医療や教育の場では宗教色を抜いた形で使われています

なぜ「今ここ」にいるのは、こんなに難しいのか

「今この瞬間に注意を向ける」。言葉にすると簡単ですが、やってみると驚くほど難しいものです。数秒もしないうちに、注意はどこかへ行ってしまいます。

これは、あなたの集中力が足りないからではありません。人の心は、もともとさまよう性質をもっているのです。

ハーバード大学の研究者たちは、スマートフォンを使って、2,000人以上の大人に一日のさまざまな時間に問いかけました(Killingsworth & Gilbert, 2010)。「今、何をしていますか」「今していること以外のことを考えていますか」。その結果、起きている時間のうち約47%で、人は目の前のこと以外を考えていました。さらに、心がさまよっているときは、そうでないときより幸福感が低い傾向がありました。

ぼんやりしているときの脳の働き

心がさまよっているとき、脳の中では「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる領域が活発に働いていることがわかっています(Raichle ら, 2001)。何もしていないときに活発になる脳のネットワークです。過去をふり返ったり、未来を想像したり、自分について考えたりするときに働きます。

これは悪いものではありません。計画を立てたり、ひらめいたりするのにも欠かせない働きです。ただ、同じ心配をぐるぐるくり返すときにも関わっていると考えられています。

小規模な研究ですが、瞑想の経験が長い人は、瞑想中にこのネットワークの活動が低いという報告もあります(Brewer ら, 2011)。詳しくはデフォルトモードネットワークとは?ぼーっとする効用で扱っています。

NLPには、注意の向きを表す言葉があります。外の世界の五感に注意を向けている状態が「アップタイム」です。頭の中の考えや記憶に注意を向けている状態は「ダウンタイム」と呼ばれます(用語辞典:アップタイム/ダウンタイム)。マインドフルネスの練習は、ダウンタイムに入りこんだ自分に気づき、今の感覚に戻ってくる練習だと言い換えることもできます。

マインドフルネスの効果:わかっていることと、わかっていないこと

マインドフルネスについては、「脳が変わる」「集中力が見違えるほど上がる」といった強い言葉もよく見かけます。ここでは、研究で比較的確かめられていることと、まだはっきりしないことを分けて整理します。

内容
比較的、根拠があること不安、抑うつ、痛みをある程度やわらげる。うつ病をくり返した人の再発予防
まだはっきりしないことストレスや生活の質全般への効果の大きさ。脳の変化が何を意味するか
注意が必要なこと研究の質にばらつきがある。人によっては不快な体験が起きることがある

研究で報告されている効果

瞑想プログラムに関する47の臨床試験をまとめた分析では、不安、抑うつ、痛みに対して、中程度の改善効果が見られました(Goyal ら, 2014)。一方で、ストレスや生活の質については、根拠の強さは低いとされています。また、運動や薬などのほかの方法より優れているという証拠は見つかりませんでした。

もうひとつ、根拠が積み重なっているのが、うつ病の再発予防です。「マインドフルネス認知療法(MBCT)」は、マインドフルネスと認知療法を組み合わせた方法です。もともと、うつ病の再発予防のために開発されました(Segal ら, 2002)。複数の臨床試験のデータを統合した分析では、うつ病をくり返した経験のある人で、再発のリスクを下げることが示されています(Kuyken ら, 2016)。

宣伝と研究のあいだにある距離

2018年には、研究者たちが連名で、マインドフルネスへの過大な期待に警鐘を鳴らす論文を発表しました(Van Dam ら, 2018)。マインドフルネスの定義が研究ごとにばらばらであること。質の低い研究が多いこと。メディアや商品の宣伝が、研究でわかっていることを大きく超えていること。

これは「マインドフルネスに意味がない」ということではありません。役に立つ可能性のある方法だからこそ、期待しすぎず、自分の体験で確かめながら使ってほしい、ということです。

現実的な期待値としては、こう考えるとよいでしょう。考えごとに振り回されていると気づきやすくなる。気持ちが波立っても、少し早く落ち着きを取り戻せるようになる。そうした小さな変化が、練習を続けるうちに少しずつ表れることがある。人生を一変させる方法ではなく、毎日の心の扱い方を少し上手にする練習、くらいに考えておくのがちょうどいいはずです。

今日からできる始め方:まずは3分の呼吸から

ここからは、実際にやってみましょう。最初は3分で十分です。長くやることより、短くても毎日触れることのほうが大切です。

いちばん大切なのは「戻ってくる」こと

やってみると、3分のあいだに何度も考えごとが浮かんだはずです。それで正解です。

マインドフルネスの練習とは、注意がそれないことではなく、それたことに気づいて戻ってくることのくり返しです。筋トレで言えば、それて戻る1回1回が、腕立て伏せの1回にあたります。10回それて10回戻れたなら、10回分の練習ができたのです。

それた自分を責める必要はありません。責める声に気づいたら、それも「考えごと」として眺め、また呼吸に戻ります。

呼吸以外の入り口:日常の中のマインドフルネス

座る練習が苦手な人もいます。マインドフルネスは、日常のどんな動作の中でも練習できます。

食べる

MBSRのプログラムには、レーズン1粒を時間をかけて味わう練習があります。見た目、手触り、香り、口に入れたときの感触、かんだときの味の広がり。ふだん無意識に食べているものも、注意を向けるとまったく違って感じられます。毎食でなくても、最初のひと口だけ味わってみるところから始められます。

歩く

歩きながら、足の裏が地面に触れる感覚に注意を向けます。かかとが着いて、重心が移り、つま先が離れる。駅までの道でも、オフィスの廊下でもかまいません。

体をなぞる(ボディスキャン)

寝る前に布団の中でできるのが、ボディスキャンです。足の指先から始めて、足の裏、ふくらはぎ、膝、太もも、と注意をゆっくり上へ移していきます。それぞれの場所で、温かさ、重さ、しびれ、何も感じないこと、どれもそのまま確かめます。

何も感じない場所があっても、問題はありません。「ここは感じにくいな」と気づけたら、それで十分です。体の声に耳を傾ける練習は、ふだん見過ごしている疲れや緊張に気づくきっかけにもなります。

家事をする

皿を洗うときの水の温度、洗剤の香り、泡の感触。家事は、注意を向ける対象が豊富な練習の場です。

3分間呼吸空間法

MBCTには、日常の中で短く立ち止まるための「3分間呼吸空間法」という練習があります(Segal ら, 2002)。忙しい日の合間や、気持ちがざわついたときに使えます。

感情に飲みこまれそうなときの扱い方は、感情コントロールの方法|ステートを整えるコツでも紹介しています。

自分の心に気づく道具としてのマインドフルネス

ここからは、少し違う角度から見てみます。マインドフルネスは、ストレスを減らすだけでなく、自分を知るための道具にもなります。

心のくせが見えてくる

呼吸に注意を向けていると、何度も同じ種類の考えが浮かんでくることに気づきます。人にどう思われたかを気にする考え。将来への不安。やり残した仕事。

浮かんでくる考えには、その人のくせがあります。何度も戻ってくる考えは、今のあなたが何を気にしているか、何を大切にしているかを映し出しています。

考えは「事実」ではなく「浮かんでいるもの」

もうひとつ、練習の中で育つのが、考えを少し離れたところから眺める力です。「私はだめだ」という考えが浮かんだとき、それに飲みこまれると、本当に自分がだめに思えてきます。でも、「今、『私はだめだ』という考えが浮かんでいる」と眺めると、それは空を流れる雲のように、ひとつの出来事になります。

この、自分の考えを一歩引いて見る力は、メタ認知とも深く関わっています。詳しくはメタ認知とは?自分を客観視する力の鍛え方で扱っています。

練習のあとに、ひとこと書く

自分を知る道具として使うなら、練習のあとに、浮かんだ考えをひとことメモしてみてください。

「仕事のことが3回浮かんだ」「母の言葉を思い出した」。1週間続けると、あなたの心がどこに向かいやすいかが見えてきます。浮かんだ考えをさらに書き出して整理したい人は、ジャーナリングとは?書く瞑想のやり方と効果とも組み合わせられます。

続けるコツと、つまずいたときの考え方

毎日の行動にくっつける

新しい習慣は、すでにある習慣にくっつけると続けやすくなります。朝、コーヒーをいれたら3分座る。歯を磨いたあとに3回だけ呼吸を数える。決まったきっかけがあると、思い出しやすくなります。習慣づくりのコツは、習慣化のコツ|小さな変化が人生を変える理由でも紹介しています。

うまくやろうとしない

「今日はうまく集中できなかった」と感じる日があって当然です。マインドフルネスに、上手・下手はありません。気が散ってばかりの日も、気が散ることに気づけた日です。

音声ガイドやアプリを使う

一人で静かに座るのが難しければ、音声ガイドを使うのもひとつの方法です。声に導かれると、注意を戻しやすくなります。ただ、アプリの宣伝文句には、研究でわかっていることを超えた効果をうたうものもあります。前の章の内容を思い出しながら選んでください。

ストレスとの付き合い方を広く知りたい人は、ストレス対処法|心と体のしくみから整えるもあわせて読んでみてください。

上手にやるより、何度でも戻ってくる

マインドフルネスは、心をコントロールする技術ではありません。さまよう心に気づいて、やさしく今に連れ戻す。その、何度でもやり直せるくり返しです。

注意がそれるたびに、「また戻ればいい」と思えるようになると、日常の見え方も少し変わってきます。失敗しても、考えがぐるぐるしても、戻ってくる場所がある。その感覚は、自分を責めがちな人にとって、大きな支えになるはずです。

今日、どこかで一度だけ、立ち止まってみてください。信号待ちの30秒でもかまいません。足の裏の感覚と、吸って吐く息をひとつ。それが、あなたの心に気づく、最初の練習になります。

A question for you

あなたへの問い

今この瞬間、あなたの体のどこがいちばん緊張していますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

マインドフルネスと瞑想は同じですか?

重なりますが、同じではありません。瞑想は、座って呼吸に注意を向けるなどの練習の形式です。マインドフルネスは、今この瞬間に判断をはさまずに注意を向ける心の在り方のことで、瞑想はそれを育てる方法のひとつです。歩く、食べるなど、日常の動作の中でも練習できます。

雑念ばかり浮かんで集中できません。向いていないのでしょうか?

向いていないわけではありません。雑念が浮かぶのは自然なことで、浮かんだことに気づいて呼吸に戻ることこそが練習です。何十回それても、そのたびに戻れたなら、それだけ練習ができたと考えてください。

1日何分やれば効果がありますか?

研究でよく使われる8週間のプログラムでは、毎日まとまった時間の練習が組まれています。ただ、最初から長時間を目指すと続きにくくなります。まずは1日3分から始め、慣れてきたら少しずつ延ばすのがおすすめです。

マインドフルネスで、うつ病は治りますか?

治療の代わりにはなりません。うつ病をくり返した経験があり、今は回復している人の再発予防として、マインドフルネス認知療法の効果は報告されています。ただし、つらい症状があるときは、まず医療機関に相談してください。

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References

  • Kabat-Zinn, J. (1990). Full Catastrophe Living: Using the Wisdom of Your Body and Mind to Face Stress, Pain, and Illness. Delacorte.
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  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。