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「自分がわからない」ときに試したい7つの問い

自分がわからないと感じるのは、欠点ではなく出発点です。自分を見失う理由と、人はもともと自分の心を見通しにくいという心理学の知見を紹介。体の感覚・感情・価値観から自分に出会い直す7つの問いと、答えが出ないときの進め方まで。

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この記事の結論

自分がわからないのは、周りに合わせ続けたり疲れがたまったりして、内側の声が聞こえにくくなっている状態です。頭の中で「本当の自分」を探すより、体の感覚、心が動いた瞬間、腹が立つことといった小さな手がかりを、問いを使って一つずつ拾うほうが近道です。

  • 「わからない」は欠点ではなく、借りものの答えに違和感を覚えはじめた合図
  • 人はもともと自分の心を見通しにくい。だから内省より「手がかり集め」が効く
  • 「なぜ?」より「何が?」と問い、体・感情・価値観の順に自分に近づいていく
目次 Contents
  1. 「自分がわからない」とは、どんな状態?
  2. 自分がわからなくなる4つの理由
  3. 実は、人はもともと自分のことを見通しにくい
  4. 自分に出会い直す7つの問い
  5. 答えが出ないときに、思い出してほしいこと
  6. 悩みのかたち別:次に読みたい記事
  7. 「わからない」まま、今日をていねいに過ごす

「自分がわからない」。そう打ちこんで検索するまでに、きっといくつかの場面があったはずです。「で、あなたはどうしたいの?」と聞かれて、言葉が出てこなかった。休みの日に何をすれば楽しいのかわからず、気づけば夕方になっていた。人といるときの自分と、一人のときの自分がまるで別人で、どちらが本物なのかわからなくなった。

周りから見れば、ちゃんとやれているのかもしれません。仕事もこなしているし、人づきあいも悪くない。それなのに、内側だけがぽっかり空いているような感覚がある。その感じは、説明しにくいぶん、一人で抱えこみやすいものです。

先にお伝えしたいのは、「わからない」と感じられること自体が、ひとつの手がかりだということです。周りに合わせた答えで毎日をやり過ごしていると、違和感にすら気づかないまま時間が過ぎます。あなたは、借りものの答えに「何か違う」と感じはじめています。それは、自分に戻ろうとしている合図です。

この記事では、自分がわからなくなる理由と、そもそも人は自分の心を見通しにくいという心理学の知見を紹介します。そのうえで、体の感覚・感情・価値観から少しずつ自分に出会い直すための7つの問いをお渡しします。全部に答えなくてかまいません。ひとつでも引っかかる問いがあれば、そこが入口です。

「自分がわからない」とは、どんな状態?

自分がわからない状態とは、一言でいえば、自分の気持ちや望み、大切なものへの手がかりがつかみにくくなっている状態です。自分が「ない」わけではありません。声が小さくなって、聞きとりにくくなっているのです。

ひとくちに「わからない」といっても、中身は人によって違います。よく見られるのは、次の4つです。

わからないことよくある場面最初の手がかり
自分の気持ち「どう思う?」と聞かれて固まる。泣きたいのに理由がわからない体の感覚と、気持ちの名前
やりたいこと・好きなこと休日に何をしても楽しくない。将来の希望を聞かれて困る時間を忘れた体験
自分の意見相手の意見を聞くと、そちらが正しく思えてしまう小さな選択を自分で決める
どれが本当の自分か場面ごとに性格が変わり、素の自分がわからない場面をまたいで変わらないもの

自分がどれに近いかを、ぼんやりでいいので意識してみてください。後半の7つの問いのうち、どれから試すかの目安になります。

「自分はこういう人間だ」という認識が、どれくらいはっきりしているか。心理学では、これを「自己概念の明確さ」と呼んで研究してきました(Campbell ら, 1996)。この明確さは、人生の時期や環境によって揺れ動きます。進学、就職、転職、結婚、子育ての一段落。役割が変わる節目には、それまでの自分の説明が合わなくなり、明確さが下がるのは自然なことです。

自分がわからなくなる4つの理由

自分を見失うのは、意志が弱いからでも、中身が空っぽだからでもありません。多くの場合、次のような事情が重なっています。

1. 周りに合わせるのが、上手になりすぎた

相手の気持ちを先読みして、場の空気に合わせる。これは、人と生きていくうえで大切な力です。文化心理学では、日本を含む東アジアでは、人との関係の中で自分をとらえる傾向が比較的強いと論じられてきました(Markus & Kitayama, 1991)。

ただ、合わせることが習慣になると、「自分はどうしたいか」を感じる前に、「どうすれば丸く収まるか」を考えるようになります。自分の好みは消えたのではなく、後回しにされ続けて、声が小さくなっているのです。

2. 「べき」と「したい」が混ざっている

「ちゃんとした仕事に就くべき」「親を安心させるべき」。小さいころから受け取ってきた「べき」は、長く抱えるうちに、自分の望みのような顔をしはじめます。

すると、望んでいるはずのことを手に入れても、なぜかうれしくない、ということが起こります。それは、その望みがもともと誰かのものだったからかもしれません。

3. 疲れて、感じるアンテナが鈍っている

忙しさが続くと、人はまず「やらなければならないこと」を処理するモードに入ります。そのあいだ、「楽しい」「嫌だ」といった感覚は、効率の邪魔になるので脇に置かれます。

これが長く続くと、置いたはずの感覚がどこにあるのか、わからなくなります。自分がわからないのは、性格の問題ではなく、単純に休息が足りていないサインであることも少なくありません。

4. 人生の節目で、古い答えが合わなくなった

学生時代は「部活に打ちこむ自分」、会社では「頼られる中堅」。人は、そのときどきの役割で自分を説明しています。役割が変わると、その説明が急に使えなくなります。

これは、壊れたのではなく、更新の途中です。発達心理学者のエリク・エリクソンは、「自分は何者か」という問いを青年期の大きな課題としました。けれども現代では、この問いは大人になってからも、節目のたびにくり返し訪れるものだと考えられています。

実は、人はもともと自分のことを見通しにくい

ここで、少し意外な話をします。「自分のことは自分がいちばんよくわかっている」。多くの人がそう思っていますが、心理学の研究は、そうとは限らないことを示してきました。

選んだ理由を、人は「つくって」いる

1977年、心理学者のニスベットとウィルソンは、よく知られた実験を報告しました。店を訪れた人に、並べた4足のストッキングから品質のいいものを選んでもらう。実は、4足はまったく同じ品物でした。

結果は、右側に置かれたものほど選ばれやすい、というものでした。ところが、選んだ理由を聞かれた人は、手ざわりや編み目など品質を挙げました。置かれた位置の影響を指摘されても、ほとんどの人が否定したそうです。

この研究が示すのは、人は自分の心の動きを、直接のぞけるわけではないということです。私たちは、もっともらしい理由をあとから組み立てて、それを本心だと信じていることがあります。

自分を知るには、自分を「観察」する

社会心理学者のティモシー・ウィルソンは、人の心の多くは意識の外で働いていると論じました(Wilson, 2002)。そして、自分を知るには、内側を見つめるだけでは足りないと述べています。他人を観察するように、自分の行動や反応を観察することが役に立つというのです。

これは、「自分がわからない」と悩む人にとって、少し救いのある話です。わからないのは、あなたの能力不足ではなく、人の心のもともとの性質だからです。

だとすれば、目を閉じて「本当の自分」を探し続けるより、手がかりを集めるほうがうまくいきます。体の反応、心が動いた瞬間、とった行動、人から言われたこと。そうした小さな証拠から、自分という人物を少しずつ描いていくのです。

「なぜ?」と問うほど、迷子になることがある

自分を知ろうとして、「なぜ私はこうなんだろう」と考えこんだ経験はありませんか。この「なぜ」は、意外な落とし穴になることがあります。

組織心理学者のターシャ・ユーリックは、自己認識の高い人は「なぜ」より「何が」と問う傾向があった、と著書で紹介しています。「なぜ仕事がつらいのか」と問うと、答えは自分を責める物語になりがちです。「仕事のどの場面で、何がつらいのか」と問うと、具体的な手がかりが出てきます。

自分に出会い直す7つの問い

ここからは、手がかりを集めるための問いを7つ紹介します。体の感覚から始まり、感情、好み、価値観へと、少しずつ広がる順に並べました。

どれも「何が」「どんな」で始まる問いです。正しい答えはありません。浮かんだことを、そのまま受けとってください。

問い1:今、体はどんな感じがしている?

最初の問いは、頭ではなく体に向けます。肩、あご、みぞおち、おなか。どこかに力が入っていないか、ゆっくり確かめてみてください。

心理学者のユージン・ジェンドリンは、言葉になる前の、体で感じるもやもやした感覚を「フェルトセンス」と呼びました。そして、その感覚に注意を向けて言葉を探す方法を「フォーカシング」としてまとめています。

使い方は簡単です。迷っている選択肢を一つずつ思い浮かべ、そのとき体がどう反応するかを感じます。胸がふっと軽くなるのか、肩がこわばるのか。体の反応は答えそのものではありませんが、頭が見落としている情報を教えてくれることがあります。

問い2:その気持ちに名前をつけるなら?

「なんかモヤモヤする」。そのモヤモヤは、不安でしょうか。さびしさでしょうか。くやしさ、焦り、がっかりした気持ちかもしれません。

気持ちを言葉にすると、少し落ち着くことがあります。感情を表す言葉を選ぶだけで、感情の反応にかかわる扁桃体という部位の活動が弱まった、という脳画像研究もあります(Lieberman ら, 2007)。

心理学者のリサ・フェルドマン・バレットは、感情を細かく言い分ける力を「感情の粒度」と呼びました。「嫌だ」の一言で済ませず、「軽く見られたようで、くやしい」まで言えると、自分が何を大切にしているのかが見えてきます。

問い3:最近、時間を忘れていたのは何をしていたとき?

気づいたら1時間たっていた。そんな瞬間を思い出してください。仕事でも、家事でも、趣味でも、誰かとの雑談でもかまいません。

大きな「好きなこと」でなくていいのです。資料の見出しを整えていたとき。植物の世話をしていたとき。友人の相談に乗っていたとき。時間を忘れる体験には、あなたが自然に向かっていく方向が表れます。

ポイントは、「何をしていたか」だけでなく、「その活動のどの部分に没頭していたか」まで見ることです。料理でも、レシピを考えるのが楽しい人と、手を動かすのが楽しい人がいます。やりたいことを探しているなら、やりたいことがわからない人へ|見つけ方と小さな一歩も手がかりになります。

問い4:つい腹が立つのは、どんなこと?

怒りは扱いにくい感情ですが、自分を知るうえでは貴重な情報源です。人は、どうでもいいことには腹を立てません。

約束を軽く破られると、強くいらだつ。誰かが陰口を言われていると、自分のことでなくても落ち着かない。そうした怒りの裏には、「信頼」や「公平さ」のような、あなたが守りたいものがあります。

「〜されたのが嫌だった」を、「本当は〜であってほしかった」に言い換えてみてください。その「〜であってほしかった」が、あなたの価値観の候補です。体験から価値観を掘り出す方法は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークで詳しく紹介しています。

問い5:誰にも見られず、評価もされないとしたら、何を選ぶ?

服、休日の過ごし方、仕事、住む場所。もし誰にも知られず、誰にも評価されないとしたら、今と同じものを選ぶでしょうか。

この問いは、「人からどう見えるか」というフィルターを、いったん外すためのものです。答えが今と違うなら、その違いの中に、あなたの本音が隠れています。

答えを想像しただけで、「でも、そんなことをしたら」と不安が出てくるかもしれません。それも大事な手がかりです。人の目がどれくらい自分の選択に入りこんでいるかが見えてきます。気になりすぎてつらい人は、人の目が気になる理由と、気にしすぎない方法もあわせて読んでみてください。

問い6:「もうやらなくていい」と言われたら、ほっとすることは?

ここまでの問いは、「好き」や「大切」を探すものでした。この問いは、反対側から近づきます。

毎週の集まり、気のりしない連絡、義務のように続けている習慣。「明日からもうやらなくていいよ」と言われたら、心から安心するものは何でしょうか。

浮かんだものは、あなたが「べき」で続けているものかもしれません。やめられるかどうかは、今は考えなくてかまいません。「本当はやりたくなかった」と認めるだけで、自分の輪郭はかなりはっきりします。足し算より、引き算のほうが見えやすい人もいます。

問い7:ほんの少しだけ「こっちがいい」と思うのは?

最後の問いは、いちばん小さく、いちばん日常的なものです。昼ごはんはどちらにするか。帰り道はどちらを通るか。今夜はテレビを見るか、早く寝るか。

自分がわからない人は、選択の場面で「どっちでもいい」と言いがちです。その「どっちでもいい」を、「どちらかといえば、こっち」に変えてみてください。根拠はいりません。ほんの数パーセントの差で十分です。

心理学者ダリル・ベムの「自己知覚理論」では、人は自分の行動を観察して、自分の態度を知ると考えます(Bem, 1972)。小さな「こっちがいい」を選び、それを行動にする。その積み重ねを、あとから見返したとき、「自分はこういうものを選ぶ人なんだ」という像が浮かびあがってきます。

一度で何かがはっきりしなくても、気にしなくて大丈夫です。数日おいて同じ問いに答えると、前回とは違う言葉が出てくることがあります。その変化も含めて、あなたについての手がかりです。

答えが出ないときに、思い出してほしいこと

問いに向き合っても、何も浮かばない日はあります。そんなときに知っておいてほしいことをまとめました。

「わからない」と書いていい

空白のままにするより、「わからない」と書いたほうが、次につながります。「わからない。でも、少し胸が苦しい」。そこまで書ければ、それはもう立派な手がかりです。

頭の中ではなく、紙の上で考える

頭の中だけで考えると、同じところをぐるぐる回りやすくなります。書き出すと、考えが目の前に置かれ、少し離れて眺められます。書くことを習慣にしたい人は、ジャーナリングとは?書く瞑想のやり方と効果が参考になります。

人に聞いてみる

自分では見えない自分を、周りの人が知っていることがあります。信頼できる人に、「私って、どんなときに楽しそうに見える?」と聞いてみてください。意外な答えが返ってくるかもしれません。自分の見え方と人からの見え方を整理する方法は、自己分析のやり方|一人でできるワーク7選で紹介しています。

わからない時期にも、名前がある

エリクソンは、大人の役割を引き受ける前に自分を探す猶予の時期を、「モラトリアム」と呼びました。もともとは「支払い猶予」を意味する言葉です。この考えを発展させたのが、心理学者のジェームズ・マーシャです。マーシャは、迷いながら探している状態を、アイデンティティのあり方のひとつに位置づけました(Marcia, 1966)。

マーシャの枠組みでは、探すことなく誰かが用意した答えをそのまま引き受けた状態は、迷いのある状態とは区別されます。迷って探した先に、自分で選びとった答えがある。そう読むこともできます。わからない時間は、遠回りではありません。

悩みのかたち別:次に読みたい記事

この記事は、自分を知る旅の入口です。最初の表で選んだ「わからないこと」に合わせて、次の一歩を選んでみてください。

こんな人は次に読みたい記事
自分の気持ちや大切なものを、言葉にしたい価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワーク
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人に合わせすぎて、自分の意見がない自分軸で生きるには?他人軸との違いと整え方
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全部を読む必要はありません。今のあなたに引っかかるものを、ひとつだけ選べば十分です。

「わからない」まま、今日をていねいに過ごす

自分を知ることは、ある日突然、答えが降りてくるような出来事ではありません。小さな手がかりを拾い、並べ、ときどき並べ直す。その地道なくり返しの中で、輪郭が少しずつ濃くなっていくものです。

だから、「わからない」状態のままでも、今日をていねいに過ごすことはできます。ごはんを味わう。気持ちに名前をつける。どちらでもいい選択を、ほんの少しの好みで選ぶ。それだけで、あなたは自分に一歩近づいています。

今夜、眠る前にひとつだけ思い出してみてください。今日、「本当はこうしたかった」と感じた瞬間はなかったか。見つかったら、それを一行だけ書きとめておく。その一行が、明日のあなたへの、いちばん確かな手がかりになります。

A question for you

あなたへの問い

今日、「本当はこうしたかった」と感じた瞬間はありましたか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

自分がわからないのは、心の病気ですか?

それだけで病気というわけではありません。人生の節目や、周りに合わせ続けた時期には、多くの人が経験することです。ただ、何をしても楽しくない、現実感が薄い、眠れないといった状態が2週間以上続くときは、疲れや気分の落ちこみが隠れていることがあります。早めに医療機関や相談窓口を頼ってください。

「自分がない」と言われます。どうすればいいですか?

「自分がない」ように見える人の多くは、意見がないのではなく、相手を優先する癖が強いだけです。まずは昼食のメニューや帰り道のように、誰にも影響しない小さな選択を自分の好みで決める練習から始めてみてください。小さな「こっちがいい」の積み重ねが、意見の土台になります。

自分探しの旅に出れば、自分は見つかりますか?

新しい環境は、ふだん気づかない自分の反応に出会うきっかけになります。ただ、見つかるのは旅先にいる「本当の自分」ではなく、新しい場面で動いた自分の心です。遠くへ行かなくても、日常の中で問いを持ち、反応を記録すれば、同じ手がかりは集められます。

性格診断で、自分のことはわかりますか?

手がかりのひとつにはなります。ビッグファイブのように研究の蓄積がある尺度もありますが、手軽な診断の根拠はさまざまです。誰にでも当てはまる説明を「自分のことだ」と感じやすい心理もあるので、結果は答えではなく仮説として受け取り、自分の体験と照らし合わせてみてください。

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References

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  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。