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やりたいことがわからない人へ見つけ方と小さな一歩

やりたいことがわからないのは、探し方が合っていないだけかもしれません。「好きは見つけるより育つもの」という研究や、注意のしくみ、コンフォートゾーンの考え方をもとに、頭で探すのをやめて「思い出す・試す」ための具体的なワークと一歩を紹介します。

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この記事の結論

やりたいことがわからないのは、多くの場合、頭の中だけで「ひとつの大きな答え」を探しているからです。興味は最初から完成しているものではなく、試すうちに育つものだと考えられています。時間を忘れた体験を思い出し、気になったことを小さく試すほうが、見つかりやすくなります。

  • やりたいことは「見つける」より「育てる」もの。最初から情熱はなくていい
  • 頭の中で探すより、過去の体験を思い出し、小さく試して反応を確かめる
  • 一歩はコンフォートゾーンの外へ半歩だけ。大きな決断の前に小さな実験を
目次 Contents
  1. やりたいことが見つからない5つの理由
  2. 「好き」は見つけるより、育つもの
  3. 気になるものが目に入るしくみ(RASと選択的注意)
  4. やりたいことを「思い出す」4つのヒント
  5. やりたいことを「試す」小さな実験のすすめ
  6. 一歩が出ないときは、コンフォートゾーンの外へ半歩だけ
  7. やりたいことがなくても、焦らなくていい
  8. 答えを待つより、今日の「気になる」をひとつ試す

「やりたいことは何?」。面接で、友人との会話で、あるいは自分自身から。そう聞かれるたびに、少しだけ胸がざわつく。周りには夢を語る人や、好きなことに打ちこむ人がいるのに、自分には何もない気がする。

やりたいことを探そうと、適職診断を受けたり、本を読んだり、ノートに書き出したりしてきたかもしれません。それでも「これだ」と思えるものが見つからず、焦りだけが募っていく。そんな状態で、このページにたどり着いた人もいると思います。

やりたいことが見つからないのは、あなたに情熱が足りないからではありません。多くの場合、探し方が少し合っていないだけです。やりたいことは、宝探しのように「どこかにある正解」を掘り当てるものではないのかもしれません。

この記事では、やりたいことがわからなくなる理由と、「好きは見つけるより育つもの」という研究を紹介します。そのうえで、頭で探すのをいったんやめる方法をお伝えします。過去を「思い出す」ことと、今を小さく「試す」こと。この2つから、やりたいことに近づいていきます。

やりたいことが見つからない5つの理由

やりたいことがわからない人には、いくつか共通する思いこみや状況があります。自分に当てはまるものがないか、見てみてください。

1. 「人生をかけるほどの何か」を探している

「やりたいこと」と聞くと、多くの人は、人生をかけられるほどの大きな夢を思い浮かべます。その基準で探すと、日々の小さな「楽しい」や「気になる」は、候補から外れてしまいます。

けれども、大きな情熱の多くは、最初は小さな関心から始まります。最初から人生の目標として現れることは、めったにありません。

2. 頭の中だけで探している

「自分は何が好きなんだろう」と考えこむ。これは自然なことですが、頭の中だけで答えを出そうとすると、行き詰まりやすくなります。

人は、自分の好みを、実際にやってみたときの反応で知ることが多いからです。食べたことのない料理の味は、考えてもわかりません。やりたいことも同じで、試す前に正解を出そうとすると、手がかりが足りなくなります。

3. 「できるかどうか」を先に考えて、候補を消している

「絵を描くのは好きだけど、才能はないし」「興味はあるけど、今さら遅い」。やりたいことの芽が出た瞬間に、できない理由で摘みとってしまう。そんな癖がある人は少なくありません。

「やりたいか」と「できるか」は、別の問いです。最初に「できるか」で選別すると、残る候補はごくわずかになります。

4. 疲れていて、欲求そのものが出てこない

毎日が忙しく、休みの日は回復するだけで終わる。そんな状態では、「何かをやりたい」という気持ち自体がわいてきません。やりたいことがないのではなく、エネルギーが残っていないのです。

この場合、やりたいことを探すより先に、休むことが必要です。睡眠をとり、予定のない時間を少しつくる。それだけで、ふと「あれをやってみたい」が戻ってくることがあります。

5. 「好き」は見つけるものだと思っている

5つ目の理由が、もしかするといちばん大きいかもしれません。「好きなことは、どこかに完成した形で存在していて、出会えばすぐにわかる」。そう思っていると、ピンとこないものはすべて「違う」に分類されてしまいます。次の章で、このことを詳しく見ていきます。

「好き」は見つけるより、育つもの

「情熱は見つけるもの」と考えるか、「育てるもの」と考えるか。この違いが、人の行動にどう影響するかを調べた研究があります。

「見つける派」は、興味の幅が狭くなりやすい

心理学者のオキーフ、ドゥエック、ウォルトンらは、興味についての考え方を、大学生を対象に調べました(O’Keefe ら, 2018)。興味は生まれつき決まっていて「見つけるもの」と考える人と、取り組むうちに「育つもの」と考える人を比べたのです。

「見つけるもの」と考える傾向の強い人は、自分の関心分野の外にある話題に、興味を示しにくい傾向がありました。また、本当の情熱なら、やる気が尽きることはないと考えやすい傾向も見られました。そのため、取り組む内容が難しくなると、興味を失いやすかったと報告されています。

裏を返せば、最初から燃えるような情熱を感じなくてもいいということです。「少し気になる」程度の関心でも、関わるうちに本物の興味に育っていく可能性があります。

興味が育つ4つの段階

教育心理学者のヒディとレニンガーは、興味が育つ過程を4つの段階に整理しました(Hidi & Renninger, 2006)。わかりやすく言い換えると、次のような流れです。

段階状態たとえば
1. きっかけ何かに注意を引かれる友人の家で見たコーヒー道具が気になる
2. 持続その場で関わり続ける淹れ方を教わって、何杯か試してみる
3. 芽ばえ自分から関わりたくなる家でも豆を買って淹れてみる
4. 定着自分の一部になる産地や焙煎について自分で調べ、人にも勧める

最初の段階では、環境からの刺激が大きな役割を果たします。人に誘われた、たまたま目にした、という偶然から始まることも多いのです。そして、段階が進むほど、知識と関わりが増え、自分から動くようになります。

この整理から見えるのは、「やりたいこと」はいきなり4段階目の姿で現れるわけではない、ということです。今あなたが感じている小さな「気になる」は、育ちはじめの1段階目かもしれません。

気になるものが目に入るしくみ(RASと選択的注意)

コーチングの世界では、やりたいことを見つける話の中で、「RAS(網様体賦活系)」という脳の部位がよく登場します。「意識した情報だけが目に入るようになる」という説明です。

RASの説明は、半分たとえ話

まず、正確なところを押さえておきます。網様体賦活系は、脳幹にある神経のネットワークで、主に覚醒や意識の水準にかかわっています。「関心のある情報を選んで見せるフィルター」という説明は、注意のしくみを伝えるための大まかなたとえと考えるのが妥当です。詳しくはRAS(網様体賦活系)とは?見たいものしか見えない脳で扱っています。

それでも「意識すると見えてくる」のは本当

一方で、人が注意を向けたものしか見えていない、という現象自体は、心理学でよく知られています。有名なのが、シモンズとチャブリスの実験です(Simons & Chabris, 1999)。バスケットボールのパスの回数を数えていた人の、およそ半数が、画面を横切るゴリラの着ぐるみに気づかなかったのです。

この現象は、やりたいこと探しにも応用できます。たとえば「人に何かを教えること」に関心を向けておく。すると、ふだんは素通りしていた勉強会の告知や、後輩の質問が目に入りやすくなります。関心を言葉にしておくことは、手がかりを拾うアンテナを立てることなのです。

やりたいことを「思い出す」4つのヒント

ここからは、やりたいことに近づくための具体的な方法です。まずは、すでにあなたの中にある材料を「思い出す」ことから始めます。

ヒント1:時間を忘れた体験を、動詞で書く

これまでの人生で、時間を忘れて没頭した場面を思い出してください。心理学者のチクセントミハイは、こうした深い没頭の状態を「フロー」と呼びました。

思い出したら、その活動を名詞ではなく動詞で書きます。「料理」ではなく、「段取りを組む」「人に食べてもらう」「材料を工夫する」。同じ料理でも、どの動詞に夢中だったかで、やりたいことの方向は変わります。動詞は、仕事や趣味の形が変わっても持ち運べる手がかりです。

ヒント2:「やりたくないこと」から逆算する

やりたいことが浮かばなくても、やりたくないことなら、すぐに出てくる人は多いものです。「満員電車に毎日乗りたくない」「意味のわからない作業をしたくない」。

書き出したら、それぞれを裏返します。「満員電車に乗りたくない」は、「時間や場所を自分で選びたい」かもしれません。裏返した言葉の中に、あなたが求めているものが隠れています。

ヒント3:うらやましさを、地図として使う

誰かをうらやましいと感じたことはありませんか。うらやましさは、居心地の悪い感情です。でも、何をうらやましく感じるかには、自分が本当はほしいものが表れています。

ここで大切なのは、相手の何がうらやましいのかを細かく見ることです。友人の海外移住がうらやましいとき、うらやましいのは海外という場所でしょうか。それとも、思いきって環境を変えられる身軽さでしょうか。

ヒント4:子どものころの「放っておかれた時間」を思い出す

宿題も習いごともない時間に、子どものあなたは何をしていたでしょうか。絵を描いていた、虫を観察していた、友だちを集めて遊びのルールを考えていた。

大人の「やりたい」は、評価や収入の計算に覆われがちです。子どものころの自由な時間には、そうした計算の前にあった関心が残っています。そのまま職業になるとは限りませんが、方向を知る手がかりにはなります。

やりたいことを「試す」小さな実験のすすめ

思い出した材料は、まだ仮説です。それが本当にやりたいことかどうかは、試してみないとわかりません。

大きな決断の前に、小さな実験を

組織行動学者のハーミニア・イバーラは、キャリアを大きく変えた人たちを調べました(Ibarra, 2003)。そこで見えてきたのは、多くの人が「まず自分を知り、それから行動する」という順番では動いていなかった、ということです。小さく試し、人と出会い、その経験から自分を知り直していたのです。

デザイン思考を人生設計に応用した『Designing Your Life』でも、同じ考え方が紹介されています。作者のバーネットとエヴァンスがすすめるのは、本格的に動く前の小さな「プロトタイプ」です。話を聞く、短く体験する、といった試作のことです。

小さな実験とは、たとえば次のようなものです。

  • その分野で働く人に、30分だけ話を聞かせてもらう
  • 1回だけの講座やワークショップに参加する
  • 週末に、関連するボランティアに一度だけ参加する
  • 本を1冊読む、関連する動画を1本見て、メモを残す

試したあとは、「反応」を記録する

実験のあとは、結果よりも、自分の反応を記録してください。やっている最中に時間を忘れたか。終わったあとに、エネルギーが増えたか、減ったか。もう一度やりたいと思ったか。

「思っていたのと違った」も、立派な成果です。候補がひとつ減り、本当にやりたいことに一歩近づいたのですから。

偶然を味方につける

キャリア研究者のクランボルツらは、キャリアの多くは予期しない出来事に影響されると考えました。そして、その偶然を活かす姿勢を「計画された偶発性」と呼びました(Mitchell ら, 1999)。そこでは、好奇心や柔軟さ、楽観性などが大切な姿勢として挙げられています。

小さな実験は、偶然に出会う回数を増やす方法でもあります。行った先で出会った人や、たまたま聞いた話が、思いもよらない「やりたいこと」につながることがあるのです。

一歩が出ないときは、コンフォートゾーンの外へ半歩だけ

試してみたいことがあるのに、なぜか動けない。そんなときは、自分の意志の弱さを責める前に、心のしくみを知っておくと楽になります。

慣れた場所にとどまろうとするのは、自然な反応

人には、慣れ親しんだ領域にとどまろうとする傾向があります。この「居心地のいい領域」を、コーチングでは「コンフォートゾーン」と呼びます。新しいことを前にして不安になったり、急に面倒になったりするのは、変化に対する自然な反応です。

成長の話では、「ほどよい緊張が最も成果を高める」という説明に、ヤーキーズ・ドッドソンの法則がよく使われます。ただ、元になった1908年の研究は、ネズミを使った学習実験でした。人の生き方にそのまま当てはめるのは、少し飛躍があります。それでも、怖すぎない程度の新しさが学びにつながる、という感覚は、多くの人の経験とも重なるはずです。

半歩の大きさにする

一歩が大きすぎると、不安が強くなって動けなくなります。そんなときは、一歩を半歩に、半歩をさらに半分にしてみてください。

「転職する」ではなく「求人を3件見る」。「教室に通う」ではなく「体験の申し込みページを開く」。小さくしすぎて恥ずかしいくらいが、ちょうどいい大きさです。動けたという事実が、次の一歩の燃料になります。コンフォートゾーンとの付き合い方は、コンフォートゾーンとは?抜け出し方と成長の関係で詳しく紹介しています。

やりたいことがなくても、焦らなくていい

ここまで、やりたいことを見つける方法を紹介してきました。最後に、少し違う角度からの話をさせてください。

「やりたいこと」の代わりに「在り方」から考える

世の中には、はっきりした「やりたいこと」を持たずに、満ち足りて生きている人がたくさんいます。そういう人の多くは、「何をするか」より「どう在りたいか」を大切にしています。

「人の役に立っていたい」「誠実でいたい」「いつも何かを学んでいたい」。こうした在り方は、どんな仕事や暮らしの中でも満たすことができます。やりたいことが見つからないときは、自分の価値観から考えてみるのもひとつの道です。価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークが、その手助けになります。

自分で選んでいる感覚が、満足を支える

心理学の自己決定理論では、人が意欲的に取り組むための土台のひとつとして、「自律性」を挙げています(Ryan & Deci, 2000)。自分で選び、自分の意志で取り組んでいるという感覚のことです。

つまり、やりたいことの中身と同じくらい、「自分で選んでいる」という感覚が大切なのです。今の仕事や暮らしの中でも、自分で選べる部分を少し増やすだけで、毎日の手ごたえは変わっていきます。仕事選びにつなげたい人は、天職の見つけ方|好き・得意・価値観から探すも参考にしてください。そもそも自分の気持ちがつかめないと感じる人は、「自分がわからない」ときに試したい7つの問いから始めるのもおすすめです。

答えを待つより、今日の「気になる」をひとつ試す

やりたいことは、ある日突然、空から降ってくるものではありません。小さな「気になる」に手を伸ばし、試し、反応を確かめる。そのくり返しの中で、少しずつ形になっていくものです。

だから、今「何もない」と感じていても、大丈夫です。あなたの中には、まだ名前のついていない関心が、きっといくつも眠っています。

今週、ひとつだけ試してみてください。気になっていた本を開く。誰かに話を聞いてみる。行ってみたかった場所に足を運ぶ。うまくいかなくても、それは失敗ではなく、あなたについての新しい情報です。その小さな実験の先に、やりたいことの入口が待っています。

A question for you

あなたへの問い

最近「ちょっと気になる」と感じたのに、まだ試していないことは?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

30代・40代からでも、やりたいことは見つかりますか?

見つかります。興味は、何かに関わり続けるうちに育っていくものだと考えられているからです。年齢を重ねたぶん、過去の体験という材料も増えています。大きな方向転換を急がず、今の暮らしの中で小さく試すところから始めてみてください。

やりたいことが多すぎて、ひとつに絞れません。

無理にひとつに絞らなくてかまいません。候補を「今月試すもの」と「いつか試すもの」に分け、今月の分から小さく始めてみてください。実際に手を動かすと、続けたいものと、思っていたほどではないものが自然に分かれていきます。

好きなことを仕事にしないと、幸せになれませんか?

そうとは限りません。好きなことを仕事にして満たされる人もいれば、仕事とは別の場所で好きなことを続けるほうが合う人もいます。大切なのは、仕事か趣味かという形より、自分の価値観が満たされているかどうかです。

やりたいことがないのは、ダメなことですか?

ダメではありません。はっきりした「やりたいこと」を持たずに、目の前のことを誠実に続けながら充実して生きている人はたくさんいます。やりたいことの代わりに、「どんなふうに過ごしたいか」という在り方から考えるのも、ひとつの方法です。

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References

  • O'Keefe, P. A., Dweck, C. S., & Walton, G. M. (2018). Implicit theories of interest: Finding your passion or developing it? Psychological Science, 29(10), 1653–1664.
  • Hidi, S., & Renninger, K. A. (2006). The four-phase model of interest development. Educational Psychologist, 41(2), 111–127.
  • Ibarra, H. (2003). Working Identity: Unconventional Strategies for Reinventing Your Career. Harvard Business School Press.
  • Burnett, B., & Evans, D. (2016). Designing Your Life: How to Build a Well-Lived, Joyful Life. Knopf.
  • Mitchell, K. E., Levin, A. S., & Krumboltz, J. D. (1999). Planned happenstance: Constructing unexpected career opportunities. Journal of Counseling & Development, 77(2), 115–124.
  • Simons, D. J., & Chabris, C. F. (1999). Gorillas in our midst: Sustained inattentional blindness for dynamic events. Perception, 28(9), 1059–1074.
  • Csikszentmihalyi, M. (1990). Flow: The Psychology of Optimal Experience. Harper & Row.
  • Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
  • Yerkes, R. M., & Dodson, J. D. (1908). The relation of strength of stimulus to rapidity of habit-formation. Journal of Comparative Neurology and Psychology, 18(5), 459–482.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。