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自分軸で生きるには?他人軸との違いと整え方

自分軸とは、わがままではなく、自分の価値観を基準に選ぶこと。他人軸で疲れてしまうしくみ、人に振り回される背景にある思い込み、相手の立場に立ちながらも境界を穏やかに引く方法など、自分軸を整える5つのステップを紹介します。

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この記事の結論

自分軸とは、人の評価や期待ではなく、自分の価値観を判断の基準にして選ぶ生き方のことです。人の意見を聞かないわがままとは違い、相手を尊重しながら、最後は自分で決めます。大切にしたいものを言葉にし、自分を縛る思い込みに気づき、相手と自分の課題を分けることで整えていけます。

  • 自分軸は「人の話を聞かない」ことではなく、最後は自分の価値観で決めること
  • 他人軸で疲れるのは、人の評価が自分の価値の条件になっているから
  • 相手の立場にも立ったうえで、相手の課題と自分の課題を分けて境界を引く
目次 Contents
  1. 自分軸とは? 他人軸との違い
  2. 他人軸で疲れてしまうのは、なぜ?
  3. 今のあなたは、どちら寄り?
  4. 自分軸を整える5つのステップ
  5. 他人軸になりやすい場面と、軸を戻すひとこと
  6. 自分軸と他人軸の、ちょうどいいバランス
  7. 軸は、一日で立たなくていい

頼まれると断れない。会議で意見を言おうとしても、周りの反応が気になって飲みこんでしまう。誰かが不機嫌そうだと、自分のせいかもしれないと落ち着かなくなる。一日の終わりに、人に振り回されてへとへとになっている自分に気づく。

「もっと自分軸で生きたほうがいい」。そう言われても、どうすればいいのかわからない。それに、自分の意見を通すのは、わがままなような気もする。そんな迷いを抱えて、このページを開いた人もいると思います。

人に振り回されやすいのは、あなたが弱いからではありません。相手の気持ちに敏感で、周りとの関係を大切にしてきた人ほど、他人の基準で動く癖がつきやすいのです。その優しさは、手放す必要はありません。

この記事では、自分軸とは何か、他人軸との違いを整理します。そのうえで、他人軸で疲れてしまうしくみと、その背景にある思い込みを見ていきます。最後に、相手を尊重しながら自分の基準を取り戻す5つのステップを紹介します。

自分軸とは? 他人軸との違い

自分軸とは、人の評価や期待ではなく、自分の価値観を判断の基準にして選ぶことです。反対に、他人軸とは、「人からどう思われるか」「相手が喜ぶかどうか」が、判断の主な基準になっている状態を指します。

違いを表にまとめました。

場面自分軸他人軸
迷ったとき「自分は何を大切にしたいか」で考える「どうすれば嫌われないか」で考える
頼みごとをされたとき引き受けるか、自分で選ぶ断る選択肢が浮かばない
人と意見が違うとき違いを認めたうえで、自分の考えを伝える相手に合わせて、自分の意見を引っこめる
失敗したとき自分の基準でふり返る人の評価が気になって落ちこむ
一日の終わり疲れていても、手ごたえが残る理由のわからない疲れが残る

「自分軸」「他人軸」は、心理学の専門用語ではありません。ただ、近い考え方は心理学にもあります。カール・ロジャーズは、何が良いかを判断するよりどころがどこにあるかを「評価の所在」と呼びました(Rogers, 1951)。判断の基準を自分の外に置いていた人が、自分の内側の感覚を信頼できるようになっていく。ロジャーズは、それを心理療法で起きる変化のひとつと考えました。

自分軸は、わがままとは違う

自分軸と聞くと、「人の意見を聞かない」「自分の都合を優先する」イメージを持つかもしれません。でも、それはわがままです。わがままは、相手の気持ちを無視して、自分の欲求を通すことです。

自分軸の人は、相手の気持ちも考えます。意見も聞きます。そのうえで、最後は自分の価値観にもとづいて選び、その選択に責任を持ちます。

家族療法家のマレー・ボーエンは、これに近い力を「自己の分化」と呼びました。周りとのつながりを保ちながら、自分の考えや感情を見失わずにいられる力のことです。分化が進んだ人は、人と親しくしながらも、相手の不安に巻きこまれすぎずにいられるとされています。

他人軸で疲れてしまうのは、なぜ?

他人軸で生きていると、なぜこんなに疲れるのでしょうか。そこには、いくつかのしくみがあります。

自分の価値が、人の評価に預けられている

社会心理学者のジェニファー・クロッカーは、人が自分の価値を感じる「条件」に注目しました(Crocker & Wolfe, 2001)。成績、見た目、人からの承認など、人によって何に自分の価値を賭けているかは違います。

**人からの承認に自分の価値を預けていると、自分の価値は毎日、他人の反応しだいで上下します。**ほめられれば上がり、そっけない返事ひとつで下がる。クロッカーらは、こうした条件つきの自尊心を追い求めることには代償がともなうと論じています(Crocker & Park, 2004)。ストレスが増え、人間関係にも負担がかかりやすいというのです。他人軸の疲れは、この上下に一日中つきあっている疲れなのかもしれません。

「嫌われたら終わり」という思い込み

他人軸の奥には、たいてい何かのビリーフ(思い込み・信念)があります。「嫌われたら居場所がなくなる」「人に迷惑をかけてはいけない」「期待に応えられない自分には価値がない」。

こうした思い込みは、過去のどこかでは、あなたを守ってくれたものかもしれません。でも、今の生活でも本当にそうなのかは、一度確かめてみる価値があります。

相手の気持ちまで、自分の責任にしている

誰かが不機嫌だと、自分が何とかしなければと感じる。相手ががっかりすると、自分が悪いことをした気がする。これは、相手の感情と自分の責任の境目が、あいまいになっている状態です。

相手の気持ちを思いやることは大切です。でも、相手がどう感じるかを、最終的に決めるのは相手自身です。そこまで背負おうとすると、どれだけ気をつかっても、疲れが消えることはありません。

「やらされている」感覚が、エネルギーを奪う

心理学の自己決定理論では、人が生き生きと活動するための土台のひとつに「自律性」を挙げています(Ryan & Deci, 2000)。自分の行動を、自分で選んでいると感じられることです。

同じ仕事でも、「自分にとって意味がある」と思って取り組むときがあります。「断れないから仕方なく」取り組むときもあります。二つを比べると、終わったあとの感じ方はずいぶん違うはずです。研究では、罪悪感や不安から動くより、自分で納得して動くほうが、意欲が続きやすいと報告されています。心の健康も保たれやすい傾向があります。他人軸のつらさは、仕事の量だけでなく、この「選んでいない」感覚から来ているのかもしれません。

今のあなたは、どちら寄り?

次の項目のうち、当てはまるものがいくつあるか数えてみてください。これは診断ではなく、ふり返りのための目安です。

  • 頼まれごとを断ったあと、何時間も気になってしまう
  • 「どう思う?」と聞かれると、相手が望む答えを探してしまう
  • 自分の予定より、人の予定を優先しがち
  • 誰かの機嫌が悪いと、理由を自分に探してしまう
  • 何かを決めるとき、まず「人からどう見えるか」を考える
  • 人にほめられないと、自分のしたことに自信が持てない

当てはまる項目が多いほど、他人の基準で動く場面が多いのかもしれません。ただ、数の多い少ないで良し悪しは決まりません。どの場面で他人軸になりやすいかを知ることが、整えるための第一歩です。

自分軸を整える5つのステップ

ここからは、自分軸を取り戻すための具体的なステップを紹介します。すべてを一度にやる必要はありません。

ステップ1:自分の価値観を、3つ言葉にする

自分軸の「軸」にあたるのが、あなたの価値観です。基準になる言葉がないと、迷ったときに頼れるのは、結局、人の評価だけになってしまいます。

最近、心が満たされた場面や、腹が立った場面を思い出してみてください。そこで大切にされていたもの、踏みにじられたものが、あなたの価値観の候補です。3つほど言葉にできたら、手帳やスマホのメモに書いておきます。体験から価値観を見つける方法は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークで詳しく紹介しています。

ステップ2:「〜すべき」の奥にある思い込みを見つける

他人軸で動いてしまった場面を、ひとつ思い出してください。そのとき、頭の中にどんな「〜すべき」「〜してはいけない」があったでしょうか。

見つかったら、その思い込みに対して、3つの問いを投げかけてみます。「それは本当にいつも正しい?」「そうならなかった例はある?」「その思い込みを持ち続けると、どんな得と損がある?」。たとえば「断ったら嫌われる」と思っていても、実際に断った経験をふり返ると、関係が続いている例も見つかるはずです。思い込みの外し方は、ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方で詳しく扱っています。

ステップ3:相手の立場に立ってから、自分の立場に戻る

自分軸を持つことは、相手の立場を考えないことではありません。むしろ、相手の立場にしっかり立ってみると、自分がどこまで背負えばいいのかが見えてきます。

NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)には、「知覚位置」という考え方があります。自分の目で見る「第1の位置」、相手の目で見る「第2の位置」、第三者の目で見る「第3の位置」。この3つの視点を行き来して、関係をとらえ直すのです。

ポイントは、最後は自分の椅子に戻ってくることです。相手の椅子に座ったままでいると、他人軸に戻ってしまいます。

知覚位置はNLPの技法で、それ自体の効果を確かめた研究は多くありません。ただ、似た考え方は心理学にもあります。つらい出来事を、少し離れた視点から見つめ直す「自己距離化」は、感情に飲みこまれずに考えるのを助けると報告されています(Kross & Ayduk, 2011)。視点の切り替え方は、ポジションチェンジとは?相手の立場で見る練習でも紹介しています。

ステップ4:「相手の課題」と「自分の課題」を分ける

心理学者アルフレッド・アドラーの考えをもとにした『嫌われる勇気』は、「課題の分離」という考え方を広く知らしめました。その選択の結果を最終的に引き受けるのは誰か。そこから、誰の課題なのかを見分けるという考え方です。

たとえば、あなたが誘いを断ったとき、それをどう受けとめるかは相手の課題です。あなたにできるのは、誠実に、ていねいに伝えることまで。相手が少しがっかりしても、その感情を消すことまでは、あなたの仕事ではありません。

これは、相手を突き放すことではありません。相手の感情を尊重し、相手には自分で気持ちを立て直す力があると信じることでもあるのです。

ステップ5:小さな「ノー」と「イエス」を、自分で選ぶ

自分軸は、大きな決断の場面より、日々の小さな選択で育ちます。

いきなり大切な人の頼みを断る必要はありません。まずは、気のりしない誘いに「今回はやめておくね」と伝える。会議で、ひとことだけ自分の意見を足す。ランチのお店を、自分から提案する。小さく選んで、何も壊れなかったという経験が、少しずつ自信になります。

断るのが苦手な人は、すぐに答えずに「少し考えさせて」と保留する言葉から始めるのもおすすめです。相手を責めずに自分の考えを伝える方法は、アサーティブとは?DESC法で上手に伝える方法で紹介しています。

他人軸になりやすい場面と、軸を戻すひとこと

他人軸は、いつも同じように表れるわけではありません。場面ごとに、よくある形と、軸を戻すためのひとことを紹介します。

職場:頼まれると、すべて引き受けてしまう

頼まれた瞬間に「はい」と言ってしまう人は、答えるまでの時間を少しだけ延ばしてみてください。「今の仕事との優先順位を確認してもいいですか」。この一言で、自分の状況をふまえて選ぶ余地が生まれます。

家族:親の期待と、自分の選択がぶつかる

家族の期待は、長い時間をかけて体にしみこんでいるぶん、離れるのが難しいものです。いきなり反論するより、「心配してくれてありがとう。そのうえで、私はこうしたいと思っている」と、感謝と自分の考えを分けて伝えると、対立になりにくくなります。

恋人・友人:相手に嫌われたくなくて、本音が言えない

親しい相手ほど、関係を壊したくない気持ちが強くなります。まずは、小さな好みから伝えてみてください。「今日は和食の気分かな」。小さな本音が受けとめられる経験が、大きな本音を言える関係をつくっていきます。

SNS:反応の数で、気分が上下する

「いいね」の数を何度も確かめてしまうときは、承認が自分の価値の条件になりかけているサインかもしれません。投稿する前に、「これは、反応がゼロでも出したいものか」と自分に聞いてみる。それだけで、基準が少し自分の側に戻ってきます。

自分軸と他人軸の、ちょうどいいバランス

自分軸の大切さを知ると、他人軸をすべて悪いもののように感じるかもしれません。でも、そうではありません。

他人軸は、思いやりの力でもある

相手の気持ちを想像する、場の空気を読む、周りの期待を考える。これらは、人と協力して生きるうえで欠かせない力です。他人軸で動いてきた人は、この力をたくさん育ててきた人でもあります。

問題になるのは、他人の基準しかない状態です。自分の基準を中心に置いたうえで、相手を思いやる力を「使う」。そのバランスがとれると、優しさと自分らしさを両立できます。

価値観を、原則と照らし合わせる

自分軸というと、「自分の価値観さえ守ればいい」と受け取られることがあります。けれど、それだけでは、わがままとの境目があいまいになります。

コヴィーらの『7つの習慣 最優先事項』PRは、ここに一つの線を引いています。同書では、内なる「コンパス」に従って生きるよう勧めます。そのコンパスの針を決めるのは、個人の価値観だけではありません。信頼や誠実さ、健康のように、多くの人に通じる「原則」も含まれます。

同書によると、原則を無視して自分の価値観だけを追いかけると、人を目的のための手段として扱う傲慢さにつながりかねません。だから、価値観を原則と一致させる必要がある、と説明されています。

「私はこうしたい」と決めたら、もう一歩だけ問いを足してみてください。「この選び方は、相手との信頼を損なわないか」。自分軸は、相手を大切にする原則とセットになったとき、穏やかで揺るがないものになります。

場面によって、軸の重さを変えていい

仕事では、チームの方針に合わせる場面が多くなります。家族の中では、相手の事情を優先したほうがいい時期もあります。それは他人軸に負けたのではなく、自分の価値観にもとづいて「今は合わせる」と選んでいる、ということです。

大切なのは、合わせているときも、「自分で選んで合わせている」という感覚を持っていることです。その感覚がある限り、軸は自分の中にあります。人の目が気になって仕方ないときは、人の目が気になる理由と、気にしすぎない方法も参考にしてみてください。

軸は、一日で立たなくていい

自分軸は、ある日突然できあがるものではありません。小さな選択のたびに、「私はどうしたい?」と自分に聞く。その問いを何度もくり返すうちに、少しずつ太くなっていくものです。

人に合わせてしまう日があっても、自分を責めなくて大丈夫です。気づいたときに、また自分の基準に戻ればいい。戻ってくる回数が増えることこそが、軸が育っているしるしです。

今日、何かを決めるとき、ひと呼吸おいてみてください。そして、「人にどう思われるか」の前に、「私は何を大切にしたいか」を思い出してみる。その小さな順番の入れ替えが、あなたの軸をつくっていきます。

A question for you

あなたへの問い

最近、人の顔色ではなく自分の基準で決められたことは何ですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

自分軸で生きると、人間関係が悪くなりませんか?

一時的にぎくしゃくすることはあるかもしれません。ただ、自分軸は相手を無視することではないので、伝え方を工夫すれば、関係を大きく損なうことは多くありません。むしろ、本音を言える関係になることで、信頼が深まることもあります。

自分軸がわかりません。何から始めればいいですか?

まずは、自分が大切にしている価値観を、3つほど言葉にするところから始めてみてください。心が動いた場面や、つい腹が立つ場面をふり返ると、手がかりが見つかります。基準になる言葉があると、迷ったときに立ち返る場所ができます。

他人軸は、すべて悪いものですか?

悪いものではありません。相手の気持ちを想像したり、周りの期待を考えたりする力は、人と協力して生きるうえで欠かせないものです。問題になるのは、他人の評価だけが判断の基準になり、自分の気持ちが置き去りになっているときです。

職場では、自分軸で動くのが難しいです。

仕事には役割や指示があるので、すべてを自分の基準で決めることはできません。それでも、仕事への向き合い方や、人への接し方には、自分の価値観を反映できる余地があります。まずは「何を引き受け、何を保留するか」を自分で選ぶところから始めてみてください。

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References

  • Rogers, C. R. (1951). Client-Centered Therapy: Its Current Practice, Implications, and Theory. Houghton Mifflin.
  • Crocker, J., & Wolfe, C. T. (2001). Contingencies of self-worth. Psychological Review, 108(3), 593–623.
  • Crocker, J., & Park, L. E. (2004). The costly pursuit of self-esteem. Psychological Bulletin, 130(3), 392–414.
  • Bowen, M. (1978). Family Therapy in Clinical Practice. Jason Aronson.
  • Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
  • Dilts, R., & DeLozier, J. (2000). Encyclopedia of Systemic Neuro-Linguistic Programming and NLP New Coding. NLP University Press.
  • Kross, E., & Ayduk, O. (2011). Making meaning out of negative experiences by self-distancing. Current Directions in Psychological Science, 20(3), 187–191.
  • 『7つの習慣 最優先事項』第1章・第4章 p.32, 54, 70
  • 岸見一郎・古賀史健 (2013). 『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』ダイヤモンド社.

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。