No.03 Connect人とつながる
アサーティブとは?DESC法で上手に伝える方法
アサーティブとは、自分も相手も大切にしながら、言いたいことを率直に伝える自己表現のこと。攻撃的・受け身・アサーティブの違い、言えなくなる理由、DESC法の4ステップとクッション言葉、断る・頼む・反対するときの台本まで紹介します。
この記事の結論
アサーティブとは、自分の気持ちや意見を大切にしながら、相手の立場も尊重して、率直に伝える自己表現のことです。我慢でも攻撃でもない第三の道です。言いにくいことは、状況を描写し、気持ちを表現し、具体的に提案し、結果を伝える「DESC法」で組み立てると伝えやすくなります。
- アサーティブは、我慢でも攻撃でもない「自分も相手も大切にする」伝え方
- DESC法は、描写・表現・提案・結果の4ステップで台本をつくる方法
- 「言いすぎた」と感じても、相手には適切に見えていることが多い
目次 Contents
頼まれると、断れない。会議で違和感があっても、空気を読んで黙ってしまう。そして、家に帰ってから「なんであのとき言えなかったんだろう」と、ひとりで反省会をする。そんな自分を変えたくて、このページを開いたのかもしれません。
あるいは反対に、言いたいことを言ったら、きつい言い方になって相手を傷つけてしまった。そんな後悔を抱えている人もいるでしょう。
言えないのも、言いすぎてしまうのも、あなたが人との関係を大切に思っているからこそ悩むのです。足りないのは勇気や性格の強さではなく、「自分も相手も大切にする伝え方」の型を知る機会だったのかもしれません。
この記事では、アサーティブの意味と、言いにくいことを伝えるDESC法、クッション言葉の使い方を紹介します。断る、頼む、反対意見を言うといった場面ごとの台本も用意しました。
アサーティブとは? 一言でいうと
アサーティブとは、自分の気持ちや意見を大切にしながら、相手の立場も尊重して、率直に伝える自己表現のことです。英語の assertive は「自己主張する」という意味ですが、ここでいう主張は、相手を言い負かすことではありません。
アサーティブの考え方は、1940〜50年代の行動療法の中で、「主張訓練」として生まれました(Wolpe, 1958)。その後、アルベルティとエモンズの著書『Your Perfect Right』によって、一般にも広まりました(Alberti & Emmons, 1970)。日本では、心理学者の平木典子が、アサーションを「自分も相手も大切にする自己表現」として紹介しました(平木, 1993)。
誰にでも「自分を表現してよい」権利がある
アサーションの考え方の土台には、「アサーション権」と呼ばれる考え方があります。たとえば、次のようなものです。
- 誰もが、自分の気持ちや考えを表現してよい
- 誰もが、頼まれたことを断ってよい
- 誰もが、間違えることがあってよい
当たり前に見えるかもしれません。でも、「断るのは悪いこと」「間違えてはいけない」と思いこんでいると、自分にこの権利を認められなくなります。そして、同じ権利は相手にもある、というのがアサーションのもうひとつの側面です。
3つのタイプで見る、自分の伝え方
人の伝え方は、大きく3つのタイプに分けられます。同じ場面で比べてみます。
| タイプ | 特徴 | 返し方の例 |
|---|---|---|
| 攻撃的 | 自分を優先し、相手を軽んじる | 「なんで私が? 自分でやってよ」 |
| 非主張的(受け身) | 相手を優先し、自分を後回しにする | 「……うん、わかった」(予定をキャンセルする) |
| アサーティブ | 自分も相手も大切にする | 「今夜は予定があって引き受けられないんだ。明日の午前中なら手伝えるけど、どうかな」 |
攻撃的な伝え方は、その場では言いたいことを通せても、関係にしこりを残します。受け身の伝え方は、その場の衝突は避けられますが、不満が自分の中にたまっていきます。
4つ目のタイプ:遠回しな攻撃
もうひとつ、見落とされがちなタイプがあります。表面上は従いながら、不機嫌な態度や皮肉、わざと遅らせるといった遠回しな形で不満を表すものです。「作為的」や「受動攻撃的」と呼ばれることもあります。
「わかりました」と言いながら、ため息をついてドアを強めに閉める。言葉にしないぶん、相手は何が問題なのかがわからず、関係はこじれていきます。どのタイプも、状況によって誰の中にも顔を出すものです。自分を責める材料ではなく、ふり返りの手がかりにしてください。
アサーティブになれない理由
嫌われるのが怖い
言いたいことを言えない理由として、いちばん多いのは「相手に嫌われたくない」という気持ちかもしれません。その気持ちは、人とのつながりを大切にする自然な心の働きです。人の目が気になるしくみについては、人の目が気になる理由と、気にしすぎない方法で詳しく扱っています。
「言いすぎたかも」という思いこみ
言いにくいことを伝えたあと、「きつく言いすぎたかもしれない」と落ちこむことがあります。でも、その感覚は、相手の受け止め方とずれていることがあります。
**「言いすぎたかも」と感じたときほど、実はちょうどよく伝わっている可能性があります。**ふだん我慢しがちな人ほど、この錯覚を知っておく価値があります。
言い慣れていない
言いたいことを伝えるのは、ひとつの技術です。言い慣れていなければ、うまくできないのは当然です。だからこそ、型を使って練習することが役に立ちます。次に紹介するDESC法は、そのための型です。
DESC法:言いにくいことを伝える4ステップ
DESC法は、バウアー夫妻が、アサーティブに伝えるための台本づくりの方法として示したものです(Bower & Bower, 1976)。4つのステップの頭文字をとっています。
| ステップ | 意味 | 伝えること | 例(残業の依頼を断る) |
|---|---|---|---|
| D:Describe | 描写する | 状況や相手の行動を、事実として描写する | 「明日の朝までに資料をまとめてほしい、ということだよね」 |
| E:Express | 表現する | 自分の気持ちや考えを伝える | 「力になりたいけど、今夜は外せない予定があって、正直困っているんだ」 |
| S:Specify | 提案する | 具体的な提案やお願いをする | 「明日の朝9時から1時間なら手伝えるけど、どうかな」 |
| C:Consequences | 結果を伝える | 提案を受け入れてもらえた場合と、そうでない場合の結果を考えておく | 「それなら確実に仕上げられると思う。難しければ、ほかに頼めそうな人を一緒に考えよう」 |
D:事実と評価を分ける
最初のステップでは、事実を描写します。「いつも勝手に押しつけてくる」ではなく、「退勤間際に、明日朝までの資料を頼まれた」です。評価が混ざると、相手はそこで身構えてしまいます。
E:「私」を主語にする
2つ目のステップでは、自分を主語にして気持ちを伝えます。「あなたは無神経だ」ではなく、「私は困っている」。この伝え方は「アイメッセージ」と呼ばれ、アイメッセージとは?ユーメッセージとの違いと例文で詳しく紹介しています。
S:具体的で、実行できる提案を
3つ目は、提案です。「もう少し考えてほしい」のようなあいまいなお願いでは、相手は何をすればいいか迷います。「明日の9時から1時間なら」のように具体的なほうが、応じやすくなります。提案はひとつに絞らず、2〜3の選択肢を用意しておくと、話し合いの余地が生まれます。
C:相手が「いいえ」と言う可能性も考えておく
最後のステップでは、提案を受け入れてもらえた場合の結果を伝えます。同時に、受け入れてもらえなかった場合の次の手も考えておきます。アサーティブは、相手にも「いいえ」と言う権利があることを認める伝え方だからです。
クッション言葉で、伝えやすくする
言いにくいことの前に、ひと言を添えると、相手は受け止めやすくなります。こうした言葉を「クッション言葉」や「枕詞」と呼びます。
| 働き | クッション言葉の例 |
|---|---|
| 相手の都合を気づかう | 「お忙しいところ恐縮ですが」「少しお時間をいただけますか」 |
| 許可を求める | 「ひとつ、気になったことを言ってもいいですか」 |
| 意見の範囲を限定する | 「あくまで私の見方ですが」「この点に限って言うと」 |
| 相手の意見を受け止める | 「おっしゃることはよくわかります。そのうえで」 |
| 感謝を先に伝える | 「声をかけてくれてありがとう。ただ、今回は」 |
ただし、クッション言葉を重ねすぎると、肝心の内容がぼやけます。「本当に申し訳ないんですが、もし可能であればなんですが、ちょっとだけ」。これでは、何を伝えたいのかが伝わりません。クッションはひとつで十分です。
また、言葉と同じくらい、声や表情も大切です。うつむいて小声で伝えると、言葉が整っていても、相手には「本気ではない」と受け取られることがあります。体が伝えるメッセージは、非言語コミュニケーションとは?表情・声・しぐさで扱っています。
場面別:アサーティブな台本
断る
「誘ってくれてうれしい。ただ、今週は体を休めたいから、今回はやめておくね。来月また声をかけてもらえるとうれしい」
頼む
「今月、締め切りが重なっていて、ひとりでは手が回らなくなりそうなんです。〇〇の作業だけ、お願いできませんか」
反対意見を言う
「この案のスピード感はいいと思います。そのうえで、ひとつ気になるのが予算です。テスト期間を設けてから判断する、という形はどうでしょうか」
相手の行動を改めてほしいと伝える
仕事の場面で相手の行動について伝えるときは、フィードバックとは?成長につながる伝え方の考え方も役に立ちます。相手を責めるのではなく、次にどうしてほしいかを具体的に伝えることがポイントです。
台本は、実際に使わなくてもかまいません。書くだけで、自分が何を望んでいたのかがはっきりします。言えなかった理由も見えてきます。言い方がわからなかったのか、本当は何を望んでいるかがわからなかったのか。その区別がつくだけでも、次の一歩が変わります。
小さな「いいえ」から、自分を取り戻す
アサーティブは、ある日突然、言いたいことを何でも言える人になることではありません。コンビニで「袋はいりません」と言う。友人の誘いに「今日は疲れているから、また今度」と返す。そんな小さな自己表現の積み重ねです。
言いたいことを伝えるのは、相手との関係を壊すためではなく、関係を長く続けるためです。我慢を重ねた関係は、どこかで限界がきます。率直に伝え合える関係は、ぶつかっても修復できます。
今週、ひとつだけ小さな「いいえ」か「お願い」を、言葉にしてみてください。自分の基準で選ぶ感覚を育てたい人は、自分軸で生きるには?他人軸との違いと整え方も手がかりになるはずです。
A question for you
あなたへの問い
最近、本当は「いいえ」と言いたかったのに、言えなかったことは?
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よくある質問
アサーティブとアサーションは、同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われます。アサーションは「自己表現」や「主張」を意味する名詞で、アサーティブはその形容詞です。日本では、心理学者の平木典子さんが、アサーションを「自分も相手も大切にする自己表現」として紹介し、広く知られるようになりました。
アサーティブに話すと、わがままだと思われませんか?
アサーティブは、自分の意見を通すことではなく、相手の意見も尊重しながら率直に伝えることです。言い方を工夫し、相手の言い分も聴く姿勢を示せば、わがままとは受け取られにくくなります。研究でも、自分では言いすぎたと感じた人が、相手からは適切だと見られていたという報告があります。
DESC法は、どんな場面で使えますか?
仕事の依頼を断る、頼みごとをする、相手の行動を改めてほしいと伝える、反対意見を言う、といった言いにくい場面で使えます。いきなりその場で使うのは難しいので、まずは紙に台本を書いてから伝えるのがおすすめです。
もう一歩深めたい人へ
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- Wolpe, J. (1958). Psychotherapy by Reciprocal Inhibition. Stanford University Press.
- Alberti, R. E., & Emmons, M. L. (1970). Your Perfect Right: A Guide to Assertive Behavior. Impact.
- Bower, S. A., & Bower, G. H. (1976). Asserting Yourself: A Practical Guide for Positive Change. Addison-Wesley.
- 平木典子(1993)『アサーション・トレーニング:さわやかな〈自己表現〉のために』日本・精神技術研究所
- Ames, D. R., & Flynn, F. J. (2007). What breaks a leader: The curvilinear relation between assertiveness and leadership. Journal of Personality and Social Psychology, 92(2), 307–324.
- Ames, D. R., & Wazlawek, A. S. (2014). Pushing in the dark: Causes and consequences of limited self-awareness for interpersonal assertiveness. Personality and Social Psychology Bulletin, 40(6), 775–790.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」