No.02 Tend the Mind心を整える

感情コントロールの方法ステートを整えるコツ

感情コントロールは、感情を抑えこむことではありません。感情を心と体の「ステート」として観察し、名前をつけ、ブレイクステートで切り替え、望む状態を選び直す方法を紹介。感情についての感情(メタステート)の扱い方もまとめます。

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この記事の結論

感情コントロールとは、感情を消したり抑えこんだりすることではなく、気づいて、反応を選べるようになることです。感情を心と体の「ステート(状態)」として観察し、名前をつけ、体から切り替え、望む状態を呼び出す。この3段階で、振り回されにくくなります。

  • 感情を抑えこむと、かえって長引きやすい。目指すのは消すことより気づくこと
  • 感情は心と体の「状態」。呼吸や姿勢を変えると、気持ちも切り替えやすい
  • 「怒る自分が嫌」など、感情についての感情をゆるめると波が小さくなる
目次 Contents
  1. 感情コントロールとは? 抑えこむことではない
  2. 感情を「ステート」として見る
  3. 感情に振り回されるしくみ
  4. ステートを整える3つのステップ:気づく・切り替える・選び直す
  5. 感情についての感情:メタステートを扱う
  6. 場面別:ステートを整えるヒント
  7. 感情は敵ではなく、扱い方を学べる相手

ささいな一言にカッとなって、言わなくていいことを言ってしまった。不安が頭から離れず、夜になっても眠れない。落ちこむと、何日も引きずってしまう。感情に振り回される自分に、うんざりしているのかもしれません。

「もっと感情をコントロールできたら」。そう思って、気持ちを押し殺そうとした経験もあるでしょう。でも、抑えこんだ感情は、たいてい別のところから顔を出します。

うまくいかなかったのは、あなたの意志が弱いからではありません。感情は、消そうとするほど強まりやすい性質をもっているのです。

この記事では、感情を抑えこむのではなく、心と体の「状態」として観察し、整えていく方法を紹介します。NLPの「ステート」という考え方を軸に、心理学の研究で確かめられていることも交えてまとめました。

感情コントロールとは? 抑えこむことではない

感情コントロールとは、感情を消すことではなく、感情に気づいて、どう反応するかを選べるようになることです。心理学では「感情調整」とも呼ばれます。

「コントロール」という言葉から、感情を力で押さえつけるイメージをもつ人は多いかもしれません。ところが研究では、押さえつけるやり方はあまりうまくいかないことがわかっています。

抑えこむと、かえって長引く

有名な実験があります。参加者に「白いクマのことを考えないでください」と伝えると、かえって白いクマのことを考えてしまう。さらに、抑えるのをやめたあと、白いクマを思い浮かべる回数が増えることもありました(Wegner ら, 1987)。考えや感情は、押さえつけようとするほど意識にのぼりやすくなるのです。

感情の扱い方を比べた研究もあります。気持ちを表に出さないように抑えるくせがある人は、ポジティブな感情を感じにくく、人間関係の満足度も低い傾向がありました。一方、出来事のとらえ方を変えるくせがある人は、ポジティブな感情を多く感じ、心の健康も良好な傾向がありました(Gross & John, 2003)。

抑えこむより、気づいて扱い方を選ぶ。ここが、この記事の出発点です。

感情を「ステート」として見る

NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)には、「ステート」という考え方があります。ステート(心と体の状態)とは、その瞬間の考え、感情、体の感覚がひとまとまりになった状態のことです。

たとえば「緊張している」というステートには、いくつもの要素が含まれています。

要素緊張しているときの例
考え「失敗したらどうしよう」
感情不安、焦り
体呼吸が浅い、肩が上がる、手が冷たい
注意の向き周りの視線、自分の欠点

この見方のよいところは、感情を「自分そのもの」ではなく、「今の自分の状態」として扱える点です。「私は怒りっぽい人間だ」ではなく、「今、私は怒りのステートにいる」。そう見ると、状態は変わりうるものになります。

もうひとつのポイントは、要素どうしがつながっていることです。考えを変えるのが難しいときでも、呼吸や姿勢を変えれば、ステート全体が動くことがあります。体は、心の状態を変えるいちばん手近な入り口です。

感情に振り回されるしくみ

感情に振り回されるとき、私たちは「出来事が起きた。だから怒った」と、一直線に感じています。でも、その間には、いくつかの段階があります。

感情研究者のジェームズ・グロスは、感情の扱い方を、感情が生まれるまでの流れに沿って整理しました(Gross, 1998)。

段階扱い方日常での例
1 状況を選ぶそもそもその場面を避ける、選ぶ疲れている日は、苦手な人との打ち合わせを入れない
2 状況を変える場面に手を加える話し合いの前に、議題を共有しておく
3 注意を向けかえるどこに注意を向けるかを変える相手の口調より、話の中身に注意を向ける
4 とらえ方を変える出来事の意味づけを変える「否定された」を「確認したいだけかも」と考え直す
5 反応を整える生まれた感情への反応を変える深呼吸してから返事をする

この表を見ると、感情コントロールの方法は、カッとなった瞬間の我慢だけではないことがわかります。前もって状況を整えることも、注意の向け方を変えることも、立派な感情の扱い方なのです。

怒りを長引かせる「正当化」と「主観視」

不当な扱いを受けたのだから、腹を立てて不機嫌になるのは当然だ。そう感じることは、誰にでもあります。『自己を築く』PRでは、怒りが続くしくみを2つの働きで説明しています。「怒って当然だ」と理由づける正当化と、出来事を「自分への害や侮辱」と結びつける主観視です。

この本では、一歩下がって客観的に眺め、正当化をやめると、感情は消えていくと述べられています。怒りを押し殺すのではなく、怒りに燃料を足すのをやめるイメージです。上の表でいえば、4の「とらえ方を変える」に近い考え方です。

次の章では、特に4と5を中心に、その場でステートを整える3つのステップを紹介します。

ステートを整える3つのステップ:気づく・切り替える・選び直す

ステップ1 気づく:感情に名前をつける

最初のステップは、今のステートに気づき、言葉にすることです。「イライラする」「なんか嫌だ」だけでなく、もう少し細かく名前をつけてみます。

感情を言葉にすることには、気持ちを落ち着かせる働きがあると考えられています。ある脳画像研究では、怒りや恐れの表情の写真を見たとき、その感情に名前をつけると、扁桃体の反応が弱まりました(Lieberman ら, 2007)。扁桃体は、不安や恐怖などの反応に関わる脳の部位です。

さらに、感情を細かく区別できる人ほど、強いストレスのもとでも、感情に振り回されにくい傾向が報告されています(Kashdan ら, 2015)。「イライラ」の中身が、実は「がっかり」なのか、「焦り」なのか、「悔しさ」なのか。区別できると、次にとるべき行動も見えやすくなります。

怒りの場合は、その奥も探ってみてください。『世界一やさしい 自分を変える方法』PRでは、怒りは「二次感情」だと説明されています。先に悲しみや傷つきといった一次感情があり、怒りはそこから自分を守る反応だ、という見方です。研究で確定した区分ではありませんが、名前をつけるときの手がかりになります。

ステップ2 切り替える:ブレイクステート

感情が高ぶっているときは、まず今のステートをいったん断ち切ります。NLPでは、これを「ブレイクステート」と呼びます。今の状態を中断して、ニュートラルな状態に戻すことです。

ブレイクステートには、体と注意を一度に変える方法が向いています。

  • 立ち上がって、その場を少し離れる
  • 冷たい水を飲む、顔を洗う
  • 窓の外を見て、見えるものを5つ数える
  • 「昨日の夕食は何だった?」など、関係のない質問を自分にする
  • 吸う息より吐く息を長くして、ゆっくり呼吸する

呼吸については、吐く息を長めにする短い呼吸法を毎日5分続けると、気分の改善が見られたという研究があります(Balban ら, 2023)。手軽にできるので、試してみる価値はあります。

ステップ3 選び直す:望むステートを呼び出す

いったんニュートラルに戻ったら、今の場面に合ったステートを選び直します。

ひとつは、とらえ方を変える方法です。「無視された」と感じたら、「相手は忙しかっただけかもしれない」と、別の見方を探してみる。出来事の見方を変える方法は、リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするで詳しく紹介しています。

もうひとつは、過去に落ち着いていた、あるいは力を発揮できたときの記憶を思い出す方法です。NLPでは、こうした心の資源を「リソース」と呼びます(用語辞典:リソース)。その記憶を、見えたもの、聞こえた音、体の感じまで丁寧に思い出すと、そのときのステートが少しずつよみがえってきます。決まった動作と結びつけて呼び出しやすくする方法は、アンカリングとは?望む気持ちを呼び出すNLP技法で扱っています。

自分への声かけを変えるのも効果的です。心の中で「私は」ではなく、自分の名前を主語にして語りかけると、落ち着いて状況を見られるようになるという研究があります(Kross ら, 2014)。「〇〇は今、緊張している。でも準備はしてきた」。詳しくはセルフトークとは?心の口ぐせを味方にするをどうぞ。

感情についての感情:メタステートを扱う

感情に振り回されるとき、問題をこじらせているのは、最初の感情ではないことがよくあります。

緊張している自分に、「なんでこんなことで緊張するんだ」と腹を立てる。落ちこんでいる自分を、「いつまでくよくよしているんだ」と責める。すると、緊張の上に怒りが、落ちこみの上に自己嫌悪が重なり、感情の波はどんどん大きくなっていきます。

NLPトレーナーのマイケル・ホールは、こうした「状態についての状態」を「メタステート」と呼びました。心理学にも、自分の感情をどう感じ、どう扱うかという考え方を研究する流れがあります。たとえば、親が子どもの感情をどうとらえるかが、家族の感情のやりとりに影響するという研究です(Gottman ら, 1996)。

上の段をゆるめると、下の段も静まる

メタステートの考え方でおもしろいのは、上に重なった感情を変えると、下の感情の意味も変わるという点です。

緊張している自分に、「緊張するのは、それだけ大事な場面だからだ」と受け止める気持ちを重ねる。すると、緊張そのものは残っていても、それに飲みこまれる感じは弱まります。落ちこんでいる自分に、好奇心を重ねてみる。「この落ちこみは、何を教えてくれているんだろう」。それだけで、落ちこみは責める対象から、調べる対象に変わります。

なお、メタステートはNLPの枠組みで、科学的に検証された理論ではありません。自分の感情の重なりに気づくための見取り図として使ってください。

場面別:ステートを整えるヒント

職場でカッとなったとき

返事をする前に、まず吐く息を長くして一呼吸おきます。それでも収まらなければ、「少し考えてから返事をします」と伝えて、その場を離れてかまいません。席に戻る前に、何に腹が立ったのかを一言で書いておくと、あとで冷静に伝えやすくなります。

不安で眠れない夜

頭の中で考えがぐるぐる回るときは、考えを紙に書き出して、頭の外に出します。そのうえで、布団の中で体の感覚に注意を向けます。足の重さ、シーツの感触、呼吸の動き。今ここの感覚に注意を戻す練習は、マインドフルネスとは?初心者のための始め方と効果で詳しく紹介しています。

落ちこみを引きずってしまうとき

落ちこんだ場面を何度も思い出してしまうこともあるでしょう。そんなときは、その場面を「自分の目」で見るのではなく、少し離れたところから眺める映像として思い浮かべてみてください。感情との距離のとり方は、アソシエイトとディソシエイト|感情との距離の取り方で扱っています。

「許せない」気持ちが続くとき

この本では、マイナスの感情を生き埋めにせず、何かを教えてくれるメッセージとして受け取る姿勢が説かれています。「何のために」と問うと、怒りの矛先は相手から離れ、自分が大切にしたいものへ向かいはじめます。ただ、深く傷ついた出来事について、急いで答えを出す必要はありません。

感情は敵ではなく、扱い方を学べる相手

感情に振り回されていると、感情そのものが敵のように思えてきます。でも、怒りは大切なものを守ろうとし、不安は備えを促し、悲しみは失ったものの大きさを教えてくれます。感情は、あなたを困らせるためではなく、何かを知らせるために生まれています。

だから、目指したいのは感情のない自分ではありません。感情が来たときに、「今、こんな状態にいるな」と気づき、自分で次の一歩を選べる自分です。

今日、心が揺れる瞬間があったら、ひとつだけ試してみてください。その感情に、できるだけぴったりの名前をつけること。名前がついた感情は、少しだけ、あなたの手の届くところに来てくれます。

A question for you

あなたへの問い

最近いちばん心が揺れたとき、体のどこに何を感じていましたか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

感情的になりやすいのは、性格だから変えられませんか?

感情の起きやすさには個人差がありますが、起きたあとの扱い方は練習で変えられます。感情に名前をつける、体から切り替えるといった方法は、くり返すほど早く使えるようになります。性格を変えるより、扱い方の引き出しを増やすと考えてみてください。

ネガティブな感情は、なくしたほうがいいですか?

なくす必要はありません。怒りは大切なものが踏みにじられたこと、不安は備えが必要なことを知らせてくれます。問題になるのは感情そのものより、感情に飲みこまれて望まない行動をとってしまうことです。

ブレイクステートとは何ですか?

NLPの用語で、今の心と体の状態をいったん断ち切り、ニュートラルに戻すことです。立ち上がる、場所を変える、関係のない質問を考えるなど、注意と体の状態を切り替えることで行います。感情が高ぶったときの応急処置として使えます。

怒りを感じたら、その場で我慢したほうがいいですか?

その場で言葉や行動に出すのを待つことは大切ですが、怒りを感じなかったことにする必要はありません。いったん距離をとって落ち着いてから、何に腹が立ったのか、何を大切にしたかったのかを言葉にすると、伝え方を選びやすくなります。

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References

  • Gross, J. J. (1998). The emerging field of emotion regulation: An integrative review. Review of General Psychology, 2(3), 271–299.
  • Gross, J. J., & John, O. P. (2003). Individual differences in two emotion regulation processes: Implications for affect, relationships, and well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 85(2), 348–362.
  • Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5–13.
  • Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
  • Kashdan, T. B., Barrett, L. F., & McKnight, P. E. (2015). Unpacking emotion differentiation: Transforming unpleasant experience by perceiving distinctions in negativity. Current Directions in Psychological Science, 24(1), 10–16.
  • Kross, E., Bruehlman-Senecal, E., Park, J., et al. (2014). Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters. Journal of Personality and Social Psychology, 106(2), 304–324.
  • Balban, M. Y., Neri, E., Kogon, M. M., et al. (2023). Brief structured respiration practices enhance mood and reduce physiological arousal. Cell Reports Medicine, 4(1), 100895.
  • Gottman, J. M., Katz, L. F., & Hooven, C. (1996). Parental meta-emotion philosophy and the emotional life of families: Theoretical models and preliminary data. Journal of Family Psychology, 10(3), 243–268.
  • Hall, L. M. Meta-States: Mastering the Higher Levels of Your Mind. Neuro-Semantics Publications.
  • O'Connor, J., & Seymour, J. (1990). Introducing Neuro-Linguistic Programming. Mandala.
  • 『世界一やさしい 自分を変える方法』第4章 p.246
  • 『自己を築く』第7章 p.169-170
  • 『自分のままで 突き抜ける無意識の法則』第3章 p.99-104
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。