No.02 Tend the Mind心を整える

失敗が怖いあなたへ失敗をフィードバックに変える

失敗が怖くて動けないのは、あなたが真剣だから。研究でわかった「失敗の怖さ」の5つの中身、NLPの「失敗はない、フィードバックがあるだけ」という視点、責める問いを次につながる問いに変えるワークと、怖さを小さくする方法を紹介します。

公開 更新 読了 約9分 PR:書籍の紹介に Amazon アソシエイトのリンクを含みます

この記事の結論

失敗が怖いとき、本当に恐れているのは失敗そのものより、恥をかく、自分の価値が下がる、人をがっかりさせるといった「その先」であることが多いものです。怖さの中身を分けて見つめ、「なぜ失敗したか」ではなく「次に何を変えるか」と問うと、失敗は前に進むための情報に変わります。

  • 失敗の怖さの正体は、恥や自己評価の低下など「その先」にあることが多い
  • 「誰のせいか」より「次に何を変えるか」と問うと、失敗は情報に変わる
  • 最悪の想定を具体化し、小さく試すと、怖さは扱える大きさになる
目次 Contents
  1. 失敗が怖いのは、あなたが真剣だから
  2. 本当に怖いのは「失敗」そのものではない
  3. 「失敗はない、フィードバックがあるだけ」というNLPの視点
  4. 責める問いから、次につながる問いへ
  5. 失敗の怖さを小さくする5つの方法
  6. 失敗が怖い人がはまりやすいパターン
  7. 失敗しない人生より、試してみた人生を

やってみたいことがある。でも、うまくいかなかったらどうしよう。そう考えはじめると、足がすくんで一歩が出ない。準備ばかりが増えて、気づけば始める時期を逃している。

「失敗しても大丈夫」「失敗から学べばいい」。頭ではわかっています。それでも怖いものは怖い。そして、動けない自分にまた落ちこんでしまう。

失敗が怖いのは、あなたが臆病だからではありません。それだけ真剣に、そのことを大切に思っているからです。どうでもいいことなら、失敗しても怖くはありません。

この記事では、失敗の怖さの正体を、研究の知見をもとに分けて見ていきます。そのうえで、NLPの「失敗はない、フィードバックがあるだけ」という視点と、責める問いを次につながる問いに変える方法を紹介します。

失敗が怖いのは、あなたが真剣だから

人は昔から、群れの中で生きてきました。失敗して仲間からの評価を失うことは、ときに生きのびることにも関わる問題でした。失敗を恐れる気持ちは、そう簡単には消えない、深いところにある反応です。

心理学者のアトキンソンは、人が何かに挑むとき、二つの動機がせめぎ合うと考えました(Atkinson, 1957)。成功したいという動機と、失敗を避けたいという動機です。

おもしろいのは、失敗を避けたい気持ちが強い人の行動です。簡単すぎて確実に成功する課題か、難しすぎて失敗しても仕方がない課題を選びやすい、とアトキンソンは予測しました。

いちばん成長につながる「がんばればできそうな課題」は、失敗したときに言い訳ができません。だからこそ、怖くて避けたくなるのです。

本当に怖いのは「失敗」そのものではない

「失敗が怖い」と一言でいっても、その中身は人によって違います。スポーツ心理学者のコンロイらは、失敗の怖さを測る質問票をつくり、怖さを5つの中身に分けました(Conroy ら, 2002)。

怖さの中身心の中の声の例
恥をかく「みんなの前で恥ずかしい思いをする」
自分の評価が下がる「自分には能力がないと証明されてしまう」
将来が不確かになる「この先の計画がすべて崩れる」
大切な人の関心を失う「失敗したら、相手にされなくなる」
大切な人をがっかりさせる「親や上司を失望させてしまう」

この5つは、研究にもとづく分類です。右の列は、それぞれの怖さがどんな声として現れやすいかを示した例です。

自分がどの怖さを強く感じているかによって、効く対処は変わります。恥が怖い人と、将来が崩れるのが怖い人では、必要な準備が違うからです。まずは、自分の怖さの中身を知ることが出発点です。

書き出してみると、怖さの多くが「人からどう見られるか」に集まっている人もいれば、「自分で自分をどう見るか」に集まっている人もいます。どちらであっても、名前がつくと、ぼんやりした不安は少し小さくなります。

「失敗はない、フィードバックがあるだけ」というNLPの視点

NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)には、「失敗というものはない。あるのはフィードバックだけだ」という言葉があります。NLPで大切にされている「前提」と呼ばれる考え方の一つです。

うまくいかなかった結果も、「次に何を変えればいいか」を教えてくれる情報として受け取る、という意味です。料理で塩を入れすぎたら、次は少し減らせばいい。その結果を「私は料理の才能がない」という証拠として扱うか、「塩の量の情報」として扱うかで、次の行動が変わります。

これは科学的に証明された法則ではなく、ものの見方の提案です。失敗のつらさをなかったことにする言葉でもありません。悔しさや恥ずかしさを感じたうえで、そこから情報を取り出すための視点です。NLPの前提については、NLPの前提とは?生きやすくなる考え方でまとめています。

「失敗フレーム」と「フィードバックフレーム」

NLPでは、物事を見るときの枠組みを「フレーム」と呼びます。同じ出来事でも、どのフレームで見るかによって、浮かぶ問いが変わります。

失敗フレーム・非難フレームフィードバックフレーム・アウトカムフレーム
注目するものうまくいかなかったこと、その原因望む結果と、そこへ近づく方法
浮かぶ問い「なぜ失敗した?」「誰のせい?」「何が起きた?」「次に何を変える?」
向かう時間過去未来
残る感情恥、後悔、怒り悔しさはあっても、次への見通し

非難フレームとは、問題が起きたときに「誰が悪いのか」を探すことに注意が向く見方です。責める相手が他人なら人間関係がぎくしゃくし、自分なら自信を失っていきます。どちらにしても、次にどうするかは見えてきません。

責める問いから、次につながる問いへ

たとえば、大事なプレゼンでうまく話せなかったとします。帰り道に頭の中で回る問いは、「どうして私はいつもこうなんだろう」「あんな準備じゃだめに決まっていた」。どれも過去を責める問いです。

同じ出来事を、フィードバックフレームで振り返ってみます。「何がうまくいって、何がうまくいかなかった?」「次に一つだけ変えるとしたら?」「この経験で、何がわかった?」。問いが変わると、頭は答えを探して未来へ動きはじめます。

自分を責めるほど成長できる、というわけではありません。心理学者のブレインズとチェンは、難しい試験で失敗した学生を対象に実験をしました(Breines & Chen, 2012)。失敗のあと、自分を思いやる言葉をかけるよう促された学生は、そうでない学生より、次の試験に向けて長く勉強したのです。

厳しく責めると、失敗を見るのがつらくなり、目をそらしたくなります。思いやりがあると、失敗をまっすぐ見つめる余裕が生まれる。自分にかける言葉の選び方は、セルフトークとは?心の口ぐせを味方にするで紹介しています。

人からのフィードバックの受け取り方や伝え方は、フィードバックとは?成長につながる伝え方で詳しく扱っています。

失敗の怖さを小さくする5つの方法

1. 最悪のケースを、具体的に書き出す

怖さは、ぼんやりしているときほど大きく感じます。「もし失敗したら、具体的に何が起きる?」「そうなったら、どう対処する?」と書き出すと、多くの場合、想像していたより対処できる大きさだとわかります。

仕事の計画では、「このプロジェクトが失敗したと仮定して、その理由を挙げる」という方法も知られています。心理学者ゲイリー・クラインが提案した「プレモーテム(事前の検死)」です(Klein, 2007)。失敗の可能性を先に洗い出せば、備えることができます。

2. 「挑戦」ではなく「実験」と呼ぶ

大きな挑戦だと思うと、失敗の重みも大きくなります。そこで、「ちょっと実験してみる」と呼び方を変えます。実験なら、うまくいかなくても「このやり方ではうまくいかない」というデータが手に入ります。

規模も小さくします。転職が怖いなら、まず興味のある業界の人に話を聞くだけ。小さな実験を重ねることで、慣れた領域の外へ少しずつ出ていけます。詳しくはコンフォートゾーンとは?抜け出し方と成長の関係をどうぞ。

3. 人はそれほど見ていないと知る

恥をかくのが怖い人に知ってほしい研究があります。心理学者ギロビッチらは、大学生に目立つTシャツを着せて、ほかの学生がいる部屋に入ってもらいました(Gilovich ら, 2000)。

本人は、約半数の人に気づかれたと予想しました。でも実際に気づいていたのは、2割ほどでした。人は、自分が思うほど他人から注目されていないのです。この傾向は「スポットライト効果」と呼ばれています。

4. 「やらなかった後悔」を思い出す

失敗して後悔することもあるでしょう。でも、後悔の研究では、こんな傾向も報告されています。短い期間で見ると、人は「やってしまったこと」を後悔しやすい。けれど長い目で見ると、「やらなかったこと」のほうを強く後悔しやすいのです(Gilovich & Medvec, 1995)。

迷ったときは、「10年後の自分は、どちらを後悔しているだろう」と問いかけてみてください。

5. 結果ではなく、試したこと自体を認める

「成功したか」だけで自分を評価すると、挑戦のたびに自分の価値が試されることになります。結果に関係なく、「試した」「準備した」「途中で工夫した」ことを認める習慣をつけると、挑戦の重みが軽くなります。

能力は努力で伸びるという考え方は「成長マインドセット」と呼ばれ、心理学者ドゥエックが広めました(Dweck, 2006)。ただし、その後の大規模な分析では、学業成績との関係や、考え方を教える介入の効果は、全体としては小さいと報告されています(Sisk ら, 2018)。万能の考え方ではありませんが、失敗を見る視点の一つとして役立ちます。詳しくはマインドセットとは?しなやかな心の持ち方で紹介しています。

失敗が怖い人がはまりやすいパターン

失敗の怖さは、ときに形を変えて現れます。準備が終わらない、締め切りぎりぎりまで手をつけない、本番の前日に夜ふかしをしてしまう。

こうした行動の裏には、「本気でやって失敗したら、言い訳ができない」という気持ちが隠れていることがあります。失敗しても「準備不足だったから」と言えるように、無意識に自分の足を引っ張ってしまうのです。このしくみは、セルフサボタージュとは?自分の足を引っ張る心理で詳しく扱っています。

「自分にはできる」という感覚を少しずつ育てる方法は、エフィカシー(自己効力感)とは?高める方法も参考にしてください。

失敗しない人生より、試してみた人生を

失敗の怖さは、きっと完全には消えません。大切なことに挑むかぎり、怖さはついてきます。それは、あなたがそのことを本気で大切にしているしるしでもあります。

だから、怖さがなくなるのを待たなくてかまいません。怖いままでも、踏み出せる小さな一歩はあります。そして、うまくいかなかったときは、「次に何を変える?」と問いかける。それだけで、失敗は行き止まりから、道しるべに変わります。

今日、失敗しても困らないくらい小さな実験を、一つだけ選んでみてください。その結果がどうであれ、あなたの手元には、昨日までなかった情報が残ります。

A question for you

あなたへの問い

もし失敗しても大丈夫だとしたら、あなたは何を試してみたいですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

失敗が怖いのは、性格の問題ですか?

性格だけで決まるものではありません。失敗を恐れる気持ちは誰にでもあり、育った環境や、これまで失敗したときに周りがどう反応したかにも影響されます。怖さの中身を知り、小さな挑戦をくり返すことで、少しずつ付き合い方は変えられます。

「失敗はない、フィードバックがあるだけ」とは、どういう意味ですか?

NLPの前提の一つで、うまくいかなかった結果も、次にどうすればいいかを教えてくれる情報として受け取る、という考え方です。科学的な法則ではなく、ものの見方の提案です。失敗のつらさを否定するものではなく、つらさを感じたうえで、そこから何を学ぶかに目を向けるための言葉です。

失敗が怖くて、何も始められません。まず何をすればいいですか?

まずは、失敗しても困らないくらい小さな行動から始めてください。たとえば、いきなり応募するのではなく、募集要項を読むだけ、と決めます。小さな一歩でも「やってみたら大丈夫だった」という経験が積み重なると、次の一歩の怖さが少しずつ小さくなります。

失敗したときに自分を責めないと、成長できないのでは?

研究では、むしろ逆の結果も報告されています。失敗のあとに自分を思いやる言葉をかけた人のほうが、次の試験に向けて長く勉強したという実験があります。厳しく責めると、失敗そのものから目をそらしたくなるためと考えられています。

もう一歩深めたい人へ

PR・Amazonへのリンクを含みます
  • マインドセット 「やればできる!」の研究

    キャロル・S・ドゥエック(著)/今西康子(訳)/草思社(2016年)

    失敗を恐れて挑戦できない人へ。能力は伸ばせると考える「しなやかマインドセット」の研究を紹介していて、自分や周りの人への声かけを見直すヒントになります。

    Amazonで見る
  • セルフ・コンパッション 有効性が実証された自分に優しくする力

    クリスティン・ネフ(著)/石村郁夫、樫村正美、岸本早苗(監訳)/浅田仁子(訳)/金剛出版(2021年)

    つい自分に厳しくしてしまう人へ。研究者ネフが、自分を責める代わりに思いやりを向ける「セルフ・コンパッション」を、研究と自身の経験を交えて丁寧に解説しています。

    Amazonで見る
  • 道は開ける

    D・カーネギー(著)/香山晶(訳)/創元社(2016年)

    不安や悩みとの付き合い方を古典から学びたい人へ。「今日一日の区切りで生きる」など、具体的なエピソードとともに紹介される考え方は今でも実践しやすいものです。

    Amazonで見る

References

  • Atkinson, J. W. (1957). Motivational determinants of risk-taking behavior. Psychological Review, 64(6), 359–372.
  • Conroy, D. E., Willow, J. P., & Metzler, J. N. (2002). Multidimensional fear of failure measurement: The Performance Failure Appraisal Inventory. Journal of Applied Sport Psychology, 14(2), 76–90.
  • Dilts, R., & DeLozier, J. (2000). Encyclopedia of Systemic Neuro-Linguistic Programming and NLP New Coding. NLP University Press.
  • Breines, J. G., & Chen, S. (2012). Self-compassion increases self-improvement motivation. Personality and Social Psychology Bulletin, 38(9), 1133–1143.
  • Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000). The spotlight effect in social judgment: An egocentric bias in estimates of the salience of one's own actions and appearance. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 211–222.
  • Gilovich, T., & Medvec, V. H. (1995). The experience of regret: What, when, and why. Psychological Review, 102(2), 379–395.
  • Klein, G. (2007). Performing a project premortem. Harvard Business Review, 85(9), 18–19.
  • Dweck, C. S. (2006). Mindset: The New Psychology of Success. Random House.
  • Sisk, V. F., Burgoyne, A. P., Sun, J., Butler, J. L., & Macnamara, B. N. (2018). To what extent and under which circumstances are growth mind-sets important to academic achievement? Two meta-analyses. Psychological Science, 29(4), 549–571.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。