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エフィカシー(自己効力感)とは?高める方法
エフィカシー(自己効力感)とは、「この課題なら自分はやれる」と思える感覚のこと。自己肯定感との違い、心理学者バンデューラが示した4つの源、小さな成功体験と言葉の環境から育てる5つの方法、チームで共有する集合的効力感まで紹介します。
この記事の結論
エフィカシー(自己効力感)とは、ある課題や状況に対して「自分ならやれる」と思える感覚のことです。存在そのものを認める自己肯定感とは違い、行動ごとに育ちます。最も強い源は自分でやり遂げた体験なので、課題を小さく分けて成功を積み、似た人の成功を見て、励ましの言葉がある環境に身を置くことで高まります。
- 自己効力感は「やれる」という行動の感覚。存在を認める自己肯定感とは別物
- いちばん強い源は、小さくてもいいから自分でやり遂げた経験
- 見本・言葉・体の状態も効力感を左右する。チームでは共有の自信になる
目次 Contents
やってみたいことはある。でも、「どうせ自分には無理だ」という声が先に聞こえてきて、一歩が出ない。人からは「あなたならできるよ」と言われるのに、自分ではそう思えない。
自信がないのは、性格だからしかたない。そう思っている人もいるかもしれません。けれども、「自分ならやれる」という感覚は、生まれつき決まっているものではありません。心理学では、経験や環境によって育っていくものだと考えられています。
この記事では、その感覚を表す「エフィカシー(自己効力感)」について紹介します。自己肯定感との違い、効力感が育つ4つの源、日常で高める5つの方法を順に見ていきます。最後に、チームで共有する「集合的効力感」にも触れます。
エフィカシー(自己効力感)とは? 一言でいうと
エフィカシー(自己効力感)とは、ある課題や状況に対して「自分ならやれる」と思える感覚のことです。心理学者のアルバート・バンデューラが1977年に提唱した概念で、英語では self-efficacy といいます。
バンデューラは、2つの見通しを区別しました。「この行動をすれば、こういう結果になる」という結果の見通しと、「その行動を、自分はやれる」という効力の見通しです。毎日ジョギングすれば体力がつく、とわかっていても、自分が続けられると思えなければ、人は走り出しません。自己効力感は、この後者の見通しのことです。
日本のコーチングでは、カタカナで「エフィカシー」と呼ぶことが多くあります。ゴールを達成する能力についての自己評価、という意味です。研究で使われる自己効力感と、ほぼ同じ考え方です。
コーチングでは、エフィカシーをゴール設定とセットで扱います。今の自分には少し大きすぎるゴールを描き、そこに向かう中で「自分ならやれる」という感覚を育てていく、という考え方です。ゴールの立て方は、目標設定の方法|ワクワクするゴールの立て方で紹介しています。
自己肯定感との違い
自己効力感は、自己肯定感と混同されやすい言葉です。違いを表にまとめました。
| 自己肯定感 | 自己効力感 | |
|---|---|---|
| 向いている対象 | 自分という存在 | 特定の課題や行動 |
| 中心にある感覚 | 「自分には価値がある」 | 「これなら自分はやれる」 |
| 範囲 | 全体的 | 課題ごとに違う |
| 育ち方 | 受けとめられた経験、自分への思いやり | やり遂げた経験、見本、励まし |
自己効力感は、課題ごとに違うのが特徴です。料理には自信があるけれど、人前で話すことには自信がない。そういうことは珍しくありません。自分の存在に対する感覚を育てたい人は、自己肯定感を高める方法|根っこから育てる考え方も参考にしてください。
自己効力感が高いと、何が変わる?
自己効力感は、行動のさまざまな場面に影響します。バンデューラによれば、効力感が高い人は、難しい課題を避けずに選びやすくなります。より多くの努力をし、困難にぶつかっても粘り強く続けやすいとも考えました。
職場での研究をまとめた分析でも、自己効力感と仕事の成果のあいだには、はっきりした関連が見られました(Stajkovic & Luthans, 1998)。「やれる」と思えることは、実際の行動を後押しする力になるのです。
自己効力感を育てる4つの源
バンデューラは、自己効力感が育つ源を4つ挙げました。
| 源 | 中身 | たとえば |
|---|---|---|
| 達成の経験 | 自分でやり遂げた経験 | 苦手だった発表を、最後までやりきった |
| 代理の経験 | 自分に似た人が成功するのを見る | 同期が資格に合格したのを見て、自分もと思う |
| 言葉による励まし | 信頼できる人から「やれる」と言われる | 先輩に「あなたなら任せられる」と言われる |
| 体と気分の状態 | 体や気分の状態を、どう受けとるか | 緊張の震えを「準備ができたサイン」ととらえる |
このうち、最も強い源は、自分でやり遂げた経験だとされています。学校での研究をまとめたレビューでも、達成の経験が効力感を最もよく予測していました(Usher & Pajares, 2008)。人に何度「できる」と言われるより、自分で一度やり遂げた経験のほうが、心に深く残るのです。
自己効力感を下げてしまう3つの癖
効力感を高める方法の前に、知らないうちに効力感を削っている癖を見ておきます。
1. 失敗を「能力がない証拠」と受けとる
うまくいかなかったとき、「自分には才能がない」と結論づけてしまう。この受けとり方をしていると、失敗のたびに効力感が下がります。
同じ失敗でも、「やり方が合っていなかった」「練習が足りなかった」と受けとれば、次に打てる手が見えてきます。能力は伸ばせるものだという見方については、マインドセットとは?しなやかな心の持ち方で詳しく扱っています。
2. 成功を「たまたま」で片づける
うまくいったときに、「運がよかっただけ」「周りが助けてくれたから」と考える。謙虚さは美徳ですが、成功をすべて自分の外に置いてしまうと、達成の経験が効力感に結びつきません。
周りへの感謝はそのままに、「自分がしたこと」もひとつ数えてみてください。「準備を前倒ししたのは自分だ」。それだけで、成功が自分の経験として残ります。
3. いきなり大きすぎる目標に挑む
意気ごんで大きな目標を立て、続かずにやめてしまう。それをくり返すと、「自分は何をやっても続かない」という思いこみが育ってしまいます。
目標が大きいこと自体は悪くありません。ただ、効力感を育てるには、途中に小さな「やれた」を置いておく必要があります。
自己効力感を高める5つの方法
ここからは、4つの源をもとに、日常で自己効力感を高める方法を紹介します。
1. 課題を小さく分けて、成功を積む
達成の経験を積むいちばんの方法は、課題を小さく分けることです。「英語を話せるようになる」は大きすぎて、何をすれば成功なのかがわかりません。「今日、英語のフレーズを3つ声に出す」なら、今日のうちに成功できます。
ポイントは、少しがんばれば届く大きさにすることです。簡単すぎると達成感が得られず、難しすぎると失敗が続きます。慣れた範囲の少しだけ外側を選ぶ考え方は、コンフォートゾーンとは?抜け出し方と成長の関係でも紹介しています。
2. 「やれた証拠」を記録する
小さな成功は、記録しないとすぐに忘れてしまいます。人の心は、うまくいかなかったことのほうを強く覚えやすいからです。
「どうやってやれたのか」を書くのが大切です。成功の理由が自分の工夫にあると気づくと、「次も同じようにやれば、できる」という見通しが生まれます。
3. 自分に似た人の成功を見る
自分と年齢や境遇が近い人が成功している姿を見ると、「あの人にできるなら、自分にも」と思いやすくなります。これが代理の経験です。
ポイントは、遠い成功者より、身近で自分に似た人を見ることです。手の届かない人の成功は、かえって「自分とは違う」と感じさせることがあります。憧れの人から学ぶ方法は、モデリングとは?憧れの人から学ぶ方法で紹介しています。
4. 言葉の環境を整える
信頼できる人からの励ましは、効力感を支えます。逆に、「どうせ無理だよ」と言われ続ける環境では、効力感は育ちにくくなります。
周りの言葉をすべて選ぶことはできません。でも、挑戦を応援してくれる人と話す時間を少し増やすことはできます。そして、いちばん長く聞いている言葉は、自分が自分にかける言葉です。「無理かも」の代わりに、「どこからならできる?」と自分に聞いてみてください。心の口ぐせとの付き合い方は、セルフトークとは?心の口ぐせを味方にするで詳しく扱っています。
5. 緊張を「準備のサイン」ととらえ直す
大事な場面の前に、心臓がドキドキする。手が冷たくなる。そんな体の反応を、「自分は向いていない証拠だ」と受けとると、効力感は下がります。
こんな実験があります(Jamieson ら, 2010)。試験の前に、「緊張による体の反応は、成績を助けることもある」と学生に伝えておく。すると、そう伝えられた学生のほうが、数学の問題で高い成績をとったのです。体の反応そのものを消すのではなく、その意味のとらえ方を変えることで、力を出しやすくなるのです。
チームで育てる「集合的効力感」
自己効力感は、個人だけのものではありません。集団の中で、「自分たちならやれる」という信念が共有されていることがあります。バンデューラは、これを「集合的効力感(コレクティブ・エフィカシー)」と呼びました(Bandura, 1997)。
集合的効力感は、チームの成果と結びつく
学校を対象にした研究があります(Goddard ら, 2000)。「この学校の先生たちなら、生徒の学力を伸ばせる」という教師集団の信念が、生徒の成績と関連していました。さまざまなチームを対象にした分析でも、集合的効力感とチームの成果のあいだに、関連が見られています(Stajkovic ら, 2009)。
チームの「やれる」を育てるには
集合的効力感も、個人の効力感と同じ源から育ちます。チームで取り組むなら、次のような工夫が役に立ちます。
- 大きな目標を小さく分け、チームとして達成した経験を積む
- うまくいった取り組みを、「誰が」「どうやって」まで具体的にふり返る
- 似た状況のチームが乗り越えた例を共有する
- 失敗したときに、個人を責めるのではなく、やり方を見直す話し合いをする
リーダーの立場にいるなら、メンバーとの1対1の対話も大切です。「先月より、ここが進んだね」と具体的に伝える。うまくいかなかった仕事は、一緒にやり方を見直す。一人ひとりの「やれた」が確かになるほど、チームの「やれる」も厚みを増していきます。
一人ひとりの効力感が高くても、チームとして「やれる」と思えていなければ、力はまとまりません。共有された小さな成功が、チームの自信を育てていきます。
「やれた」の小さな証拠を、今日ひとつ増やす
自己効力感は、自分を奮い立たせて手に入れるものではありません。小さな「やれた」を積み重ね、それを自分の目で確かめることで、少しずつ育っていくものです。
「どうせ無理だ」という声が聞こえても、それを打ち消す必要はありません。ただ、今日できそうな小さな一歩を選んで、やってみる。そして、やれたらノートに書く。その証拠が増えるほど、「無理だ」の声は、少しずつ静かになっていきます。
今日、ひとつだけ試してみてください。やろうと思っていたことを、思いきり小さくして、今日のうちにやり遂げる。その一回の「やれた」が、明日のあなたの自信の種になります。
A question for you
あなたへの問い
最近、小さくても「やればできた」と感じたことは何ですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
エフィカシーと自己効力感は、同じものですか?
もとは同じ言葉で、心理学者バンデューラが提唱した self-efficacy の訳です。日本のコーチングでは、カタカナで「エフィカシー」と呼び、目標を達成する能力についての自己評価という意味で使うことが多いです。この記事では、研究で使われている「自己効力感」の意味を中心に紹介しています。
自己効力感は、高ければ高いほどいいのですか?
必ずしもそうではありません。準備が足りないのに「できる」と思いこむと、努力を減らしてしまうことがあると報告されています。大切なのは、根拠のある自信です。小さな成功の記録や、実際の練習の積み重ねに支えられた効力感のほうが、困難な場面でも揺らぎにくくなります。
失敗が続いて、自信をなくしてしまいました。
失敗が続くと、効力感が下がるのは自然なことです。課題を今の自分が確実にできる大きさまで小さく分け、そこから成功を積み直してみてください。過去にやり遂げた経験を書き出すことも、「自分にはできることもある」と思い出す助けになります。
子どもや部下の自己効力感を高めるには、どうすればいいですか?
結果をほめるより、本人がやり遂げた過程を具体的に認めるのが効果的です。また、少しがんばれば届く課題を任せて、成功を経験できるようにすることも大切です。あなた自身が、失敗しても立て直す姿を見せることも、よい見本になります。
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キャロル・S・ドゥエック(著)/今西康子(訳)/草思社(2016年)
失敗を恐れて挑戦できない人へ。能力は伸ばせると考える「しなやかマインドセット」の研究を紹介していて、自分や周りの人への声かけを見直すヒントになります。
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References
- Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215.
- Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. W. H. Freeman.
- Stajkovic, A. D., & Luthans, F. (1998). Self-efficacy and work-related performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 124(2), 240–261.
- Usher, E. L., & Pajares, F. (2008). Sources of self-efficacy in school: Critical review of the literature and future directions. Review of Educational Research, 78(4), 751–796.
- Vancouver, J. B., Thompson, C. M., Tischner, E. C., & Putka, D. J. (2002). Two studies examining the negative effect of self-efficacy on performance. Journal of Applied Psychology, 87(3), 506–516.
- Sitzmann, T., & Yeo, G. (2013). A meta-analytic investigation of the within-person self-efficacy domain: Is self-efficacy a product of past performance or a driver of future performance? Personnel Psychology, 66(3), 531–568.
- Jamieson, J. P., Mendes, W. B., Blackstock, E., & Schmader, T. (2010). Turning the knots in your stomach into bows: Reappraising arousal improves performance on the GRE. Journal of Experimental Social Psychology, 46(1), 208–212.
- Goddard, R. D., Hoy, W. K., & Hoy, A. W. (2000). Collective teacher efficacy: Its meaning, measure, and impact on student achievement. American Educational Research Journal, 37(2), 479–507.
- Stajkovic, A. D., Lee, D., & Nyberg, A. J. (2009). Collective efficacy, group potency, and group performance: Meta-analyses of their relationships, and test of a mediation model. Journal of Applied Psychology, 94(3), 814–828.