No.04 Draw the Future未来を描く

習慣化のコツ小さな行動が人生を変えるしくみ

習慣化のコツを、意志の強さに頼らない「小さく始める・きっかけを決める・環境を整える」の設計で紹介。習慣になるまでの日数の研究、小さな変化が転換点を迎えるしくみ、途切れたときに自分を責めずに再開する方法まで。

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この記事の結論

習慣化のコツは、やる気に頼らず、行動を極端に小さくし、「いつ・どこで」のきっかけを決めて、同じ状況でくり返すことです。研究では、自動的にできるまでの日数は人と行動によって大きく違います。途切れても1日休んだだけなら影響は小さいので、責めずに再開すれば十分です。

  • 習慣は意志ではなく「状況の手がかり」で動く。きっかけを決めるのが近道
  • 定着までの日数は人によって18〜254日と幅広い。21日説にとらわれない
  • 途切れても1日なら影響は小さい。再開しやすい最小版を用意しておく
目次 Contents
  1. 習慣とは? 意志の力で動く行動との違い
  2. 習慣になるまで、どれくらいかかる?
  3. 小さな変化が、大きな変化につながるしくみ
  4. 習慣化のコツ5つ:意志に頼らない設計
  5. 途切れたときに、自分を責めずに再開する方法
  6. やめたい習慣と向き合うときのヒント
  7. 完璧な連続記録より、戻ってこられる道を

新しい年や月の始まりに、「今度こそ毎日続けよう」と決めたことはありませんか。運動、読書、早起き、日記。最初の数日はうまくいくのに、忙しい日が一度挟まると、そのまま止まってしまう。そして、続かなかった自分に少しがっかりする。

もしそんな経験があるなら、まず知っておいてほしいことがあります。続かなかったのは、あなたの意志が弱いからとは限りません。習慣は、気合いで作るものではなく、しくみで育てるものだからです。何度も挑戦してきたこと自体、変わりたいという気持ちが本物である証拠です。

この記事では、習慣が生まれるしくみと、身につくまでの日数についての研究を紹介します。そのうえで、小さな行動が大きな変化につながる理由を見ていきます。途切れても自分を責めずに再開できる、習慣化の設計もまとめました。

習慣とは? 意志の力で動く行動との違い

習慣とは、特定の状況に置かれると、あまり考えずに自然と出てくる行動のことです。朝、洗面所に立つと歯ブラシを手に取る。家に帰るとテレビをつける。そこに「よし、やるぞ」という決意はほとんど要りません。

心理学者のウェンディ・ウッドらは、大学生に日々の行動を記録してもらう調査をしました。すると、行動の4割あまりが、ほぼ毎日、同じような状況でくり返されていました(Wood ら, 2002)。私たちの一日は、思っている以上に習慣でできているのです。

ポイントは、習慣を動かしているのが目標や気分ではなく、「状況の手がかり」だという点です。場所、時刻、直前の行動、一緒にいる人。こうした手がかりと行動が何度も結びつくうちに、手がかりに出会うだけで行動が出てくるようになります(Neal ら, 2006)。

やる気で続けようとするほど苦しくなる理由

やる気は、天気のように日によって変わります。やる気がある日を前提に計画を立てると、疲れた日や落ちこんだ日に、行動がまるごと抜け落ちてしまいます。

習慣化を目指すときは、発想を逆にします。やる気がいちばん低い日でもできる形にしておく。そして、やる気ではなく手がかりが行動を呼び出すように、状況のほうを整えるのです。

習慣になるまで、どれくらいかかる?

「21日続ければ習慣になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、形成外科医マクスウェル・マルツの著書(1960年)にある「変化に慣れるには最低でも21日ほどかかる」という観察が、形を変えて広まったものとされます。研究で確かめられた数字ではありません。

実際に習慣ができるまでを追いかけた研究があります。ロンドン大学のフィリッパ・ラリーらは、96人の参加者に「昼食のときに水を1杯飲む」「夕食前に15分走る」など、新しい行動をひとつ選んでもらいました。そして、毎日同じ状況で続けてもらい、どれくらい自動的にできるかを12週間記録しました(Lally ら, 2010)。

わかったこと中身
日数の目安自動的にできるようになるまでの中央値は66日
個人差18日から254日まで、人と行動によって大きく違った
伸び方最初のうちに大きく伸び、だんだん緩やかになっていった
休んだ日の影響1回抜かしても、習慣が育つ流れへの影響は小さかった

コップ1杯の水と、毎日の運動では、身につくまでの時間が違って当然です。大切なのは日数を数えることより、同じ状況でくり返せているかどうかです。

『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』PRでも、習慣を決めるのは日数ではなく、くり返した回数だと説明されています。カレンダーの日付ではなく、「何回やったか」を数える。そう考えると、休んだ日があっても積み上げは消えません。

小さな変化が、大きな変化につながるしくみ

習慣の話では、「バタフライ効果」や「ティッピングポイント(転換点)」という言葉がよく使われます。どちらも魅力的な言葉ですが、もとの意味を知っておくと、使い方を誤らずにすみます。

バタフライ効果は「小さな行動で大成功」という意味ではない

バタフライ効果は、気象学者エドワード・ローレンツの研究から生まれた言葉です。1972年、彼は「ブラジルで1匹の蝶がはばたくと、テキサスで竜巻が起こるか?」という題で講演しました。伝えたかったのは、初めのわずかな違いが、のちに大きな違いを生む系では、長期の予測が難しいということです(Lorenz, 1993)。

つまり、もとの意味は「小さな行動で大きな成果が保証される」ではありません。むしろ「先のことは読みきれない」という話です。それでも、ここから自分の暮らしに持ち帰れる視点はあります。今日の小さな選択がどこへつながるかは、誰にもわかりません。だからこそ、結果を当てにせず、小さく試してみる価値があるのです。

1%の差は、1年でどれくらい開くか

『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』では、小さな改善を複利にたとえています。毎日1%ずつよくなると、1年後には約37倍(1.01の365乗)。毎日1%ずつ悪くなると、ほぼゼロ(0.99の365乗は約0.03)になる、という計算です。

もちろん、現実の成長がこの式どおりに進むわけではありません。これは測った結果ではなく、たとえ話です。それでも、今日の差が小さすぎて見えないことと、その差に意味がないことは別だ、と気づかせてくれます。

転換点は、ある日ふっと訪れる

ティッピングポイントは、ある量を超えたところで、状態ががらりと変わる点を指します。作家マルコム・グラッドウェルの本(2000年)で広く知られるようになりました。

ラリーらの研究が示すように、習慣が自動的になっていく過程そのものは、なだらかな坂のようなものです。ただ、本人の感覚としては、ある日ふと転換点に気づくことがあります。「今日は歩かないと、なんだか気持ちが悪い」。そう感じたとき、行動は「がんばってやること」から「自分のふつう」に変わりはじめています。

さらに、ひとつの習慣が、別の行動を連れてくることがあります。朝に10分歩くようになると、早く寝るようになり、朝食をとるようになる。小さな行動の本当の価値は、それ自体の効果より、次の行動を呼ぶ入口になることにあるのかもしれません。

習慣化のコツ5つ:意志に頼らない設計

ここからは、習慣を育てるための具体的なコツを紹介します。どれも、やる気が低い日にも行動が残るようにするための工夫です。

1. 行動を「ばかばかしいほど」小さくする

スタンフォード大学のB・J・フォッグは、新しい習慣は30秒以内でできるくらい小さく始めるようすすめています(Fogg, 2019)。腕立て伏せなら2回。読書なら1ページ。日記なら1行です。

クリアーも、新しい習慣は2分以内でできる形に縮めることをすすめ、これを「2分間ルール」と呼んでいます。「毎晩読書する」なら「1ページ読む」です。その理由として挙げられているのが、「最適化するまえに標準化せよ」という考え方です。まだ存在しない習慣は、改善のしようがありません。

小さすぎて意味がないように感じるかもしれません。でも、最初に育てたいのは成果ではなく、「この状況になったら、これをする」というつながりです。余裕がある日は、もちろんもっとやってかまいません。

2. 「いつ・どこで」をはっきり決める

「毎日運動する」は、いつやるかが決まっていません。「朝、コーヒーを淹れたら、お湯が沸くまでスクワットを5回する」なら、きっかけと行動がつながっています。

この「もし〜したら、〜する」という形の計画は、実行意図と呼ばれます。94の研究をまとめた分析では、目標を立てるだけの場合より、実行に移しやすくなることが示されました(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。すでに毎日している日課の直後に置くと、きっかけを忘れにくくなります。クリアーはこれを「習慣の積み上げ」と呼んでいます。「〈現在の習慣〉をしたら〈新しい習慣〉をする」という型です。

3. やりやすい環境を、先に整えておく

人は、少しの手間で行動をあきらめます。ギターをケースにしまっていると、取り出すひと手間で弾かなくなる。逆に、スタンドに立てておくだけで、手に取る回数は増えやすくなります。

やりたい行動は手間を減らし、やめたい行動は手間を増やす。スマホを寝室の外で充電する、本を枕元に置いておく。意志で闘うより、環境を少し動かすほうが、ずっと楽に続きます。

4. 終わったら、小さく喜ぶ

行動のすぐあとに「よし」と小さく声に出す。カレンダーに印をつける。フォッグは、行動の直後に自分で感じる小さな達成感が、習慣を根づかせる助けになると考えています。

記録をつけるなら、続いた日数を競うより、「やった日」に印をつける程度で十分です。数字が途切れることを恐れはじめると、記録が重荷に変わります。続けたことの振り返りには、ジャーナリングを組み合わせるのもおすすめです。

5. 「どんな自分でありたいか」とつなげる

「本を読まなきゃ」と思うより、「私は学びつづける人でいたい」と思うほうが、行動に意味が宿ります。小さな行動をくり返すたびに、「自分はそういう人だ」という感覚も少しずつ育っていきます。

自分についての思い込みが行動を止めている気がする人は、セルフイメージとは?書き換えて自分を変える方法も参考にしてください。

途切れたときに、自分を責めずに再開する方法

どれだけ上手に設計しても、習慣はときどき途切れます。旅行、体調不良、仕事の山場。途切れること自体は、失敗ではありません。問題になりやすいのは、そのあとの心の動きです。

「一度破ったら、もうどうでもいい」の罠

依存症の再発予防の研究では、決めたルールを一度破ったとき、「どうせ自分はだめだ」と考えて、一気に元に戻ってしまう現象が知られています。心理学者のマーラットとゴードンは、これを「禁欲違反効果」と呼びました(Marlatt & Gordon, 1985)。

日常の習慣でも、似たことが起こります。3日休んだ瞬間に、それまでの30日が無駄になった気がして、やめてしまう。でも、ラリーらの研究を思い出してください。1回抜かしても、習慣が育つ流れへの影響は小さかったのです。

もうひとつの壁は「退屈」

『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』では、習慣の最大の敵は失敗ではなく「退屈」だと述べられています。最初の新鮮さが消え、同じことのくり返しに飽きてきたとき、人はやめる理由を探しはじめます。クリアーはそこで、「退屈に恋をする」姿勢を求めています。

飽きてきたと感じたら、それは習慣が「ふつう」になりつつある合図かもしれません。やり方を大きく変えるより、淡々と続ける自分を認めてあげてください。

再開を、あらかじめ設計に入れておく

おすすめは、続けるための計画と同じくらい、「戻るための計画」を用意しておくことです。たとえば、こんな形です。

  • 休んだ翌日は、いつもの半分以下の「最小版」だけやる
  • 「2日続けて休まない」をゆるい目安にする
  • 再開できた日は、続いた日以上に自分をねぎらう

体や心は、慣れた状態を保とうとする性質をもっています。変化が続かないのは、ある意味で自然な反応です。くわしくはホメオスタシスとは?変われないのは脳の仕組みで紹介しています。

やめたい習慣と向き合うときのヒント

夜ふかし、だらだらスマホ、間食。やめたい習慣も、同じしくみで動いています。だからこそ、我慢の量で勝負するより、しくみに働きかけるほうがうまくいきやすくなります。

クリアーは、習慣を「きっかけ→欲求→反応→報酬」の4つのステップで説明しています。やめたい習慣にも、この流れのどこかに手を入れる余地があります。

まずは、その行動の直前に何があるかを観察します。疲れて帰宅したとき、ひとりで暇なとき、仕事の区切りがついたとき。きっかけがわかれば、その状況に出会う回数を減らす工夫ができます。

次に、その習慣が何を満たしてくれているのかを考えます。夜のスマホは、一日の終わりに「自分の時間」がほしいという気持ちを満たしているのかもしれません。そうなら、取り上げるだけでは物足りなさが残ります。同じ欲求を満たす、別の行動を用意してください。

やめたいのにやめられない行動の裏には、本人も気づいていない「得」が隠れていることがあります。気になる人は二次的利得とは?やめられない行動の隠れた理由も読んでみてください。始めること自体が重いと感じるなら、先延ばし癖の直し方が手がかりになります。

完璧な連続記録より、戻ってこられる道を

習慣化というと、毎日欠かさず続けるイメージがあるかもしれません。でも、本当に人生を変えていくのは、途切れない記録ではなく、途切れても戻ってこられる道のほうです。

今日決めるのは、大きな目標でなくてかまいません。すでにある日課のあとに置ける、30秒の行動をひとつだけ。うまくいかない日があれば、その翌日に、もっと小さな形で戻ればいいのです。

その小さな行動が、どこへつながっていくかはわかりません。ただ、くり返すたびに、「自分は自分との約束を守れる」という感覚が少しずつ積み重なっていきます。それはきっと、どんな習慣よりも長く残る財産になります。

A question for you

あなたへの問い

毎日「なんとなく」続いていることは、どんなきっかけで始まりますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

習慣化には何日かかりますか?

ロンドンで行われた研究では、自動的にできるようになるまでの中央値は66日でした。ただし幅は18日から254日と大きく、行動の難しさや人によって変わります。「◯日で身につく」という数字より、同じ状況でくり返せているかを目安にしてください。

三日坊主の自分は、意志が弱いのでしょうか?

意志の強さだけの問題ではありません。多くの場合、始める行動が大きすぎるか、いつやるかのきっかけが決まっていないことが原因です。行動を小さくし、すでにある日課の直後に置くと、意志に頼る場面が減ります。

1日サボったら、最初からやり直しですか?

やり直しではありません。習慣の研究では、1回行動を抜かしても、習慣が育つ流れに大きな影響はなかったと報告されています。こわいのはサボった日そのものより、「もうだめだ」とやめてしまうことです。翌日に、いちばん小さな形で戻れば十分です。

悪い習慣をやめるには、どうすればいいですか?

やめたい行動を引き起こしているきっかけを見つけ、そのきっかけに出会う回数を減らすのが基本です。そのうえで、同じ欲求を満たす別の行動を用意します。我慢だけで止めようとすると、反動が来やすくなります。

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References

  • Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.
  • Wood, W., Quinn, J. M., & Kashy, D. A. (2002). Habits in everyday life: Thought, emotion, and action. Journal of Personality and Social Psychology, 83(6), 1281–1297.
  • Neal, D. T., Wood, W., & Quinn, J. M. (2006). Habits—A repeat performance. Current Directions in Psychological Science, 15(4), 198–202.
  • Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.
  • Fogg, B. J. (2019). Tiny Habits: The Small Changes That Change Everything. Houghton Mifflin Harcourt.
  • Marlatt, G. A., & Gordon, J. R. (Eds.). (1985). Relapse Prevention: Maintenance Strategies in the Treatment of Addictive Behaviors. Guilford Press.
  • Lorenz, E. N. (1993). The Essence of Chaos. University of Washington Press.
  • Gladwell, M. (2000). The Tipping Point: How Little Things Can Make a Big Difference. Little, Brown.
  • ジェームズ・クリアー『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』第1章 p.26-27、第3章 p.62、第5章 p.91-92、第11章 p.165-169、第13章 p.189-191、第19章 p.275
  • 『1日1アイデア』習慣化の項目 p.120

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。