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ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方
ビリーフ(思い込み・信念)は、過去の経験からつくられた「仮説」にすぎません。思い込みができるしくみ、自分を縛るビリーフに気づくサイン、書き出す・反証を探す・新しい言葉に置き換える・小さく試すという外し方の手順を紹介します。
この記事の結論
ビリーフとは、「自分は〜だ」「人は〜すべきだ」といった、経験からつくられた思い込みや信念のことです。事実ではなく仮説なので、確かめ直すことができます。外すには、思い込みを書き出し、それに合わない事実を探し、少しやわらかい新しい言葉に置き換えて、小さな行動で試してみるのが近道です。
- ビリーフは事実ではなく、過去の経験からつくった「仮説」
- 「いつも」「べき」「どうせ」という言葉が、縛る思い込みのサイン
- 反対の極端に振らず、少しやわらかい言葉に置き換えて小さく試す
目次 Contents
「私なんかが手を挙げても、どうせ選ばれない」「人に頼るのは迷惑だ」「ちゃんとしていないと、見捨てられる」。そんな言葉が、頭の中で当たり前のように響いていることはありませんか。
それが本当かどうかを確かめたことは、あまりないかもしれません。あまりにも当たり前で、疑う対象だとすら思えないからです。けれども、こうした言葉が、あなたの選択の幅を知らないうちに狭めていることがあります。
思い込みに縛られているのは、あなたが頑固だからではありません。思い込みは、かつてのあなたが、つらい経験から自分を守るためにつくった大切なルールでもあります。ただ、今の生活には合わなくなっているものもあるかもしれません。
この記事では、ビリーフ(思い込み・信念)とは何か、どうやってつくられるのかを整理します。そのうえで、自分を縛るビリーフに気づくサインと、思い込みをやわらかくほどいていく手順を紹介します。
ビリーフとは? 一言でいうと
ビリーフとは、「自分は〜だ」「人は〜すべきだ」といった、経験からつくられた思い込みや信念のことです。コーチングやNLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)でよく使われる言葉です。
心理療法の世界でも、似た考え方が早くから使われてきました。認知療法を生んだアーロン・ベックは、人が心の奥に持っている自分や世界についての前提を「中核信念」と呼びました。論理療法のアルバート・エリスは、「〜でなければならない」という硬い思いこみに注目しました。エリスはこれを「非合理的な信念」と呼び、悩みの大きな原因と考えました。
ビリーフは、価値観とも違います。価値観は「何が大切か」、ビリーフは「物事はこうなっている、こうあるべきだ」という前提です。同じ価値観を大切にしながら、ビリーフだけを見直すこともできます。価値観の見つけ方は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークで紹介しています。
大切なのは、ビリーフは事実ではなく「仮説」だという点です。ある時点の経験から、「世界はこうなっているらしい」と結論づけたもの。仮説なら、新しい経験によって確かめ直すことができます。
ビリーフには3つの向きがある
ベックは、心の不調にかかわる考えを、自分・世界・未来の3つの向きで整理しました。この整理は、ふだんの思い込みを見つけるときにも役に立ちます。
| 向き | 自分を縛るビリーフの例 | 自分を支えるビリーフの例 |
|---|---|---|
| 自分について | 私には才能がない | 私は練習すれば上達できる |
| 人や世界について | 人は信用できない | 助けを求めれば、応えてくれる人もいる |
| 未来について | どうせうまくいかない | やってみないとわからない |
ビリーフは、悪いものばかりではありません。「失敗しても学べる」「人には頼っていい」といったビリーフは、あなたを支える力になります。この記事で扱うのは、そのうち自分の可能性や行動を制限しているもの、「リミティングビリーフ」と呼ばれるものです。
ビリーフは、どうやってつくられるのか
たった一度の経験が、ルールになる
子どものころ、発表で言葉に詰まり、クラスで笑われた。その一度の経験から、「人前で話すと恥をかく」というルールが生まれることがあります。
心は、危険を避けるために、ひとつの経験を広く当てはめるルールをつくります。一度熱いものに触ったら、次から気をつける。これは生きるための大切なしくみです。ただ、そのルールが、もう危険のない場面にまで当てはめられると、思い込みとして人を縛るようになります。
何度も聞いた言葉が、自分の声になる
「あなたはお姉ちゃんなんだから」「男の子は泣かない」「そんなことをしたら笑われる」。くり返し聞いた言葉も、ビリーフの材料になります。
最初は他人の言葉だったものが、いつのまにか自分の声として頭の中で響くようになる。そうなると、それが誰かから受けとった言葉だったことすら、忘れてしまいます。
『無意識のすごい見える化』PRでは、こうしてしみこんだルールを「脳内の親」と呼んでいます。幼いころの親の言動や家庭の空気から、無意識に取りこまれた思い込みのことです。著者によると、それが大人になってからも、行動や自己イメージを裏から縛り続けます。
「脳内の親」は研究用語ではなく、著者による見立てです。それでも、頭の中の「べき」に気づいたとき、「これは誰の声だろう」と問う手がかりになります。親を責めるためではなく、その声を今も使い続けるかどうかを、自分で選び直すための問いです。
一度できると、裏づける情報ばかり目に入る
ビリーフが厄介なのは、一度できると、それを裏づける情報ばかりが目に入るようになることです。心理学では、自分の考えに合う情報を集め、合わない情報を見落としやすい傾向を「確証バイアス」と呼びます(Nickerson, 1998)。
「人は信用できない」と思っている人は、裏切られた経験をよく覚えています。一方で、助けてもらった経験は「たまたま」として流しがちです。こうして、ビリーフは自分の正しさを確かめ続け、どんどん強くなっていきます。自分自身についてのビリーフが積み重なったものは、セルフイメージと呼ばれることもあります。その書き換え方は、セルフイメージとは?書き換えて自分を変える方法で扱っています。人がそれぞれ違う「地図」で世界を見ているという考え方は、メンタルモデルとは?「地図は領土ではない」の意味でも紹介しています。
自分を縛るビリーフに気づく4つのサイン
ビリーフは当たり前すぎて、自分では気づきにくいものです。次のようなサインがあったら、そこに思い込みが隠れているかもしれません。
1. 「いつも」「絶対」「どうせ」が口ぐせになっている
「いつも失敗する」「どうせ私なんか」。極端な言葉は、ビリーフが顔を出しているサインです。本当に「いつも」なのか、立ち止まって数えてみると、例外が見つかることが多いはずです。
2. 「〜すべき」「〜してはいけない」が多い
「親には逆らってはいけない」「仕事は一人で終わらせるべきだ」。自分に向けた「べき」が多いときは、そのルールがどこから来たのかを考えてみる価値があります。
3. 同じパターンで、何度もつまずく
似たような人間関係のトラブルが続く。挑戦しようとすると、毎回同じところで手が止まる。くり返すパターンの奥には、たいてい同じビリーフがあります。
4. 小さな出来事に、強い感情がわく
ちょっと返信が遅いだけで、ひどく不安になる。軽く注意されただけで、全否定されたように落ちこむ。出来事の大きさと感情の大きさが釣り合わないときは、出来事がビリーフに触れている可能性があります。
思い込みを外す4つのステップ
ここからは、自分を縛るビリーフをほどいていく手順です。ポイントは、思い込みを力ずくで消そうとしないこと。仮説として扱い、ていねいに確かめ直していきます。
ひとつずつ、くわしく見ていきます。
ステップ1:出来事と、思い込みを分けて書く
エリスは、悩みを「出来事」「ビリーフ」「結果としての感情」に分けて考えました。出来事そのものが感情を生むのではなく、その間にあるビリーフが感情をつくる、という考え方です。
「上司に資料の直しを頼まれた」は出来事です。「私は仕事ができないと思われている」は、ビリーフによる解釈です。この2つを分けて書くだけで、思い込みが事実のふりをしていたことに気づけます。
ステップ2:「それが本当だとしたら?」で奥を探る
浮かんだ言葉の奥に、さらに深いビリーフが隠れていることがあります。認知療法では、「下向き矢印法」と呼ばれる問いかけで、それを探ります。
「仕事ができないと思われている」→「それが本当だとしたら、何がまずい?」→「評価が下がる」→「それが本当だとしたら?」→「居場所がなくなる」。こうして下りていくと、「役に立たない自分には居場所がない」という、根っこのビリーフが見えてくることがあります。
ステップ3:合わない事実を探す
ビリーフは、確証バイアスによって、自分に合う証拠ばかり集めています。だから、意識して反対側の証拠を探します。
「それに合わない出来事は、これまでなかった?」「親しい友人が同じことで悩んでいたら、何と言う?」。完全に否定できなくてもかまいません。例外がひとつでも見つかれば、それは「いつもそうだ」というルールではなく、「そういうこともある」という仮説に変わります。
ステップ4:反対の極端ではなく、やわらかい言葉に置き換える
ビリーフを書き換えるとき、反対の極端に振りたくなることがあります。「私は仕事ができない」を「私は仕事が完璧にできる」に変える。でも、信じていない言葉は、心の中で反論を呼ぶだけです。
おすすめは、少しやわらかい言葉です。「私は、まだ慣れていない仕事では時間がかかる。でも、慣れた仕事はきちんとこなせている」。事実に合っていて、自分でも「まあ、そうかもしれない」と思える言葉を探します。見方を変えて心を軽くする方法は、リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするでも紹介しています。
そして最後に、新しい言葉を小さな行動で試します。「人に頼るのは迷惑だ」を見直したなら、まずは小さなことをひとつ、誰かに頼んでみる。相手がどう反応したかが、新しい言葉の証拠になります。
NLPのビリーフ・チェンジと、研究の現在地
NLPでは、ロバート・ディルツらが、ビリーフを変えるためのさまざまな技法をまとめています(Dilts ら, 1990)。ビリーフに気づく問いかけや、視点を変えて意味をとらえ直す方法などです。
ただ、NLPの技法そのものの効果を、厳密に確かめた研究は多くありません。内省を深めるための道具として役に立つことはあっても、科学的な裏づけは弱いと考えておくのが誠実です。
一方、この記事で紹介した手順の多くは、認知行動療法(CBT)の考え方にもとづいています。認知行動療法は、うつや不安などに対して効果が確かめられてきた心理療法です(Hofmann ら, 2012)。ただし、それは専門家との取り組みとしての効果であり、セルフワークで同じ効果が得られるとは限りません。
思い込みを見直すことは、自分の「当たり前」を手放すことでもあります。自分を縛る思い込みがゆるむと、人の期待より自分の基準で選びやすくなります。その先の生き方は、自分軸で生きるには?他人軸との違いと整え方で紹介しています。
思い込みは、あなたを守ってきた古い地図
ビリーフは、敵ではありません。かつてのあなたが、つらい状況を乗り越えるために描いた、大切な地図です。その地図のおかげで、傷つかずにすんだ場面もきっとあったはずです。
ただ、あなたが歩いている土地は、地図を描いたころから変わっています。古い地図のままでは、もう存在しない崖を避けて、遠回りを続けることになります。
今日、頭の中で「どうせ」「いつも」という言葉が聞こえたら、少しだけ立ち止まってみてください。「本当に、いつも?」と、自分にやさしく聞いてみる。その小さな問いが、古い地図を描き直す最初の一筆になります。
A question for you
あなたへの問い
あなたが「当たり前」だと思っていることを、ひとつ疑うとしたら?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
ビリーフとリミティングビリーフは、どう違いますか?
ビリーフは、思い込みや信念全般を指す言葉です。そのうち、自分の可能性や行動を制限しているものを、リミティングビリーフ(制限となる思い込み)と呼びます。「失敗しても学べる」のように、自分を支えるビリーフもあります。
思い込みは、完全に消すことができますか?
完全に消すことを目指さなくてかまいません。長く持っていたビリーフは、疲れたときなどにまた顔を出すことがあります。大切なのは、それが出てきたときに「あ、いつもの思い込みだ」と気づき、別の見方も選べる状態になることです。
ビリーフと価値観は、何が違うのですか?
価値観は「自分にとって何が大切か」、ビリーフは「物事はこうなっている、こうあるべきだ」という前提です。たとえば「家族」が価値観なら、「家族のためには自分を犠牲にすべきだ」はビリーフです。同じ価値観を大切にしながら、ビリーフだけを見直すこともできます。
ポジティブ思考とは、どう違いますか?
ポジティブ思考は、物事を前向きにとらえようとすることです。ビリーフを見直す作業は、思い込みが事実に合っているかを確かめることで、無理に前向きになる必要はありません。根拠のない楽観ではなく、現実に合った見方を探すのが目的です。
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References
- Beck, A. T. (1976). Cognitive Therapy and the Emotional Disorders. International Universities Press.
- Beck, J. S. (2011). Cognitive Behavior Therapy: Basics and Beyond (2nd ed.). Guilford Press.
- Ellis, A. (1962). Reason and Emotion in Psychotherapy. Lyle Stuart.
- Nickerson, R. S. (1998). Confirmation bias: A ubiquitous phenomenon in many guises. Review of General Psychology, 2(2), 175–220.
- Maier, S. F., & Seligman, M. E. P. (2016). Learned helplessness at fifty: Insights from neuroscience. Psychological Review, 123(4), 349–367.
- Hofmann, S. G., Asnaani, A., Vonk, I. J. J., Sawyer, A. T., & Fang, A. (2012). The efficacy of cognitive behavioral therapy: A review of meta-analyses. Cognitive Therapy and Research, 36(5), 427–440.
- Dilts, R., Hallbom, T., & Smith, S. (1990). Beliefs: Pathways to Health and Well-being. Metamorphous Press.
- 『無意識のすごい見える化』第1章・第4章 p.81, 98-107
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」