No.02 Tend the Mind心を整える

アソシエイトとディソシエイト感情との距離の取り方

アソシエイトとディソシエイトとは、体験の中に入るか、外から眺めるかという視点の違いのこと。NLPの考え方と心理学の「自己距離化」研究、臨床の解離との違い、つらい記憶から距離をとり、よい体験に浸る具体的な手順を紹介します。

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この記事の結論

アソシエイトは、体験の中に入り、自分の目で見て感じている状態です。ディソシエイトは、体験の外から自分の姿を眺めている状態です。つらい記憶はディソシエイトで距離をとると感情が和らぎやすく、よい体験はアソシエイトで味わうと心に残りやすくなります。目的に合わせて使い分けるのがコツです。

  • アソシエイトは体験の中から、ディソシエイトは外から眺める視点
  • 心理学でも、外から眺める「自己距離化」で感情が和らぐことが示されている
  • つらい記憶からは離れ、よい体験には浸る。視点は自分で選べる
目次 Contents
  1. アソシエイトとディソシエイトとは? 一言でいうと
  2. 心理学でも研究されている「視点」の違い
  3. NLPのディソシエイトと、臨床の「解離」は別のもの
  4. つらい記憶からは、距離をとる
  5. よい体験には、浸る
  6. 場面別:アソシエイトとディソシエイトの使い分け
  7. どちらかに偏っているときは
  8. 近づくことも、離れることも、自分で選べる

何年も前の失敗を思い出しただけで、その場にいるかのように顔が熱くなる。言われた一言が、今も耳元で聞こえる気がする。過去の出来事なのに、感情だけは何度でも新しく戻ってきます。

その一方で、楽しかったはずの旅行を思い出しても、気持ちがついてこない人もいます。うれしかった出来事なのに、どこか遠くの写真を眺めているようなのです。

この二つの違いは、感情の強さそのものより、記憶を「どこから」見ているかにあるのかもしれません。NLPでは、この視点の違いを「アソシエイト」と「ディソシエイト」と呼びます。

この記事では、二つの意味と、心理学の研究でわかっていることを整理します。そのうえで、つらい記憶からは距離をとり、よい体験には浸るという、感情との距離の取り方を具体的な手順で紹介します。

アソシエイトとディソシエイトとは? 一言でいうと

NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)では、体験の味わい方を二つに分けます。

アソシエイト(連合体験)は体験の中に入っている状態です。一方、ディソシエイト(分離体験)は、体験の外から自分を眺めている状態を指します。

たとえば、海辺を歩いた思い出を思い浮かべてみてください。目の前に波が見え、足元の砂の感触や潮の匂いを感じているなら、アソシエイトです。一方、海辺を歩く自分の後ろ姿や横顔が見えているなら、ディソシエイトです。

アソシエイトディソシエイト
視点自分の目から見ている外から自分の姿を見ている
見えるもの目の前の景色。自分の姿は見えない景色の中にいる自分
感情強く、生々しく感じやすい弱まり、落ち着いて眺めやすい
向いている場面喜びを味わう、今に集中する冷静に振り返る、つらさを和らげる

どちらがよい、悪いというものではありません。大切なのは、場面に合わせて選べることです。

心理学でも研究されている「視点」の違い

アソシエイトとディソシエイトはNLPの用語ですが、似た違いは心理学でも研究されています。

記憶には「当事者の視点」と「観察者の視点」がある

心理学者のナイグロとナイサーは、人が思い出を思い浮かべるとき、二つの視点があることに注目しました(Nigro & Neisser, 1983)。体験したときと同じく自分の目から見る「当事者の視点」と、外から自分の姿を見る「観察者の視点」です。

実際には自分の姿を外から見たことはないはずなのに、観察者の視点で思い出すことも珍しくありません。研究では、時間がたった古い記憶ほど、観察者の視点で思い出されやすい傾向が報告されています。

外から眺めると、つらい感情が和らぎやすい

ミシガン大学のイーサン・クロスらは、つらい出来事の振り返り方を比べる実験をくり返しました。怒りや悲しみを感じた出来事を、当事者の視点で思い出す場合と、壁にとまった虫のように外から眺める場合を比べたのです。

すると、外から眺めた人は、思い出したときの感情の高ぶりが小さく、出来事の意味を落ち着いて考えられる傾向がありました(Kross ら, 2005; Kross & Ayduk, 2011)。同じことを何度も考え続ける反すうも、起きにくかったと報告されています。この方法は「自己距離化」と呼ばれています。

人のことなら賢く考えられる

人は、友人の悩みには冷静な助言ができるのに、自分のこととなると視野が狭くなりがちです。ある研究では、恋人とのトラブルを自分ごととして想像し、一人称か三人称で考えてもらいました(Grossmann & Kross, 2014)。すると三人称で考えた人は、他人の悩みを考えるときと同じくらい、広い視野で考えられたのです。

行動を起こしたいときは、外からの視点が役立つことも

おもしろい研究もあります。選挙の前日に、投票所で投票する自分の姿を、外から眺めるように思い描いてもらった人たちがいます。自分の目から思い描いた人たちより、実際に投票に行った割合が高かったのです(Libby ら, 2007)。

外から自分を見ると、「私は投票に行くような人間だ」という自己像につながりやすいと考えられています。研究が示しているのは、どちらの視点が正しいかではなく、目的によって向き不向きがある、ということです。

NLPのディソシエイトと、臨床の「解離」は別のもの

ここで、一つ注意しておきたいことがあります。英語の dissociation は、精神医学では「解離」と訳されます。

解離は、意識や記憶、自分が自分であるという感覚のつながりが、本人の意図とは関係なく途切れてしまう状態です。強いストレスやトラウマと関わることがあり、診断の対象にもなります。

NLPのディソシエイトは、自分で意図して視点を外に移す、一時的な心の使い方です。言葉は似ていても、まったく別のものとして考えてください。

つらい記憶からは、距離をとる

ここからは、実際の使い方です。まずは、思い出すと苦しくなる記憶から、少し距離をとる方法を紹介します。

NLPでは、記憶の中の自分を外から眺め、映像を小さく、遠く、色を薄くしていくと、感情が和らぐと説明します。映像の大きさや明るさといった記憶の「質感」を扱う考え方は、サブモダリティとは?記憶の「質感」を変えるで紹介しています。

ただし、こうしたNLPの技法の効果を厳密に確かめた研究は多くありません。一方、先ほどの自己距離化の研究は、外から眺めることが感情を和らげる助けになりうることを示しています。両方を手がかりに、無理のない範囲で試してみてください。

うまく映像が浮かばなくても大丈夫です。「あのときの〇〇さんは」と、自分を名前で呼んで出来事を書き出すだけでも、外から眺める視点に近づけます。

距離をとることと、目をそらすことは違う

ディソシエイトは、つらい記憶から逃げるための方法ではありません。クロスらの研究でも、外から眺めた人は出来事を避けていたわけではありませんでした。むしろ、何が起きたのか、なぜそう感じたのかを、落ち着いて考え直していたのです。

『コーチング ハンドブック』PRでは、この外に出る動きを「脱同一化」と呼び、鎧のたとえで説明しています。自己否定や否定的な思い込みは、長く身につけてきた分厚い鎧のようなものです。脱同一化とは、その鎧の外へ一歩出て、鎧を着た自分を落ち着いて眺めることだ、というのです。鎧を脱ぎ捨てるのではなく、まず「着ている」と気づくところから始まります。

この場面で起きているのは、アソシエイトとディソシエイトの組み合わせです。5年後の自分の中に入ることで、落ちこんでいる今の自分からは外に出ています。そして、少し先の視点から今を眺めたとき、責める言葉ではなく、次の行動につながる助言が出てきました。距離をとることが、目をそらすことではなく、出来事から学ぶ入り口になった例といえます。

感情を感じないように、いつも体験から目をそらしていると、出来事の意味を整理する機会も失われます。ディソシエイトは、感情に飲みこまれずに出来事と向き合うための「ちょうどいい距離」をつくる道具です。少し落ち着いたら、「あのとき本当は何がほしかったのか」に目を向けてみてください。

記憶との向き合い方は、嫌な記憶を書き換えるには?過去との向き合い方でさらに詳しく扱っています。

よい体験には、浸る

次は反対に、よい体験にアソシエイトして、じっくり味わう方法です。

心理学には「セイバリング(味わうこと)」という研究分野があります。よい体験に意識を向けて、じっくり味わう。あとから思い出して、もう一度浸る。こうしたことが、前向きな気持ちを強め、長続きさせると考えられています(Bryant & Veroff, 2007)。

うれしい出来事があっても、すぐ次の予定に気をとられて、心が素通りしてしまうことがあります。せっかくの体験を、外から眺めて終わらせるのはもったいないことです。

この感覚を、指を軽く握るなどの合図と結びつけておく方法もあります。アンカリングとは?望む気持ちを呼び出すNLP技法で詳しく紹介しています。

場面別:アソシエイトとディソシエイトの使い分け

日常のさまざまな場面での使い分けを、目安としてまとめました。

場面おすすめ理由
怒りが爆発しそうディソシエイト外から眺めると、反応する前に一呼吸おける
失敗を振り返るディソシエイト自分を責めずに、何が起きたかを冷静に見やすい
友人と過ごす時間アソシエイト今この瞬間を味わえる
人の話を聴くアソシエイト中心相手の話に入りこむと、気持ちを感じとりやすい
目標を思い描く両方気持ちを味わうなら中から、行動を促すなら外から

相手の立場や第三者の立場に視点を移す練習は、ポジションチェンジとは?相手の立場で見る練習でも紹介しています。

どちらかに偏っているときは

いつも体験の中にいる人

感情が豊かで、喜びも悲しみも全身で味わえるのは素晴らしい持ち味です。ただ、つらい出来事にも毎回深く入りこんでしまうと、心が疲れきってしまいます。苦しい記憶が浮かんだときだけでも、外から眺める練習をしてみてください。

いつも体験の外にいる人

逆に、いつも冷静で、何が起きても他人事のように感じる人もいます。つらい経験が重なると、心が自分を守るために、体験から距離をとるくせがつくことがあります。冷静さは強みですが、喜びまで遠く感じるなら、よい体験に少しずつ浸る練習が役に立ちます。

始めるなら、感情より体の感覚からが入りやすいでしょう。温かいお茶の湯気、日なたの暖かさ、好きな曲の低音。「今、自分の目と耳と肌で何を感じているか」に注意を向けるだけで、体験の中に一歩戻れます。

自分を外から眺める力そのものは、メタ認知とは?自分を客観視する力の鍛え方で扱っています。眺める力と、浸る力。両方そろうと、感情との付き合いはずっと楽になります。

感情を整える方法全般は、感情コントロールの方法|ステートを整えるコツも参考にしてください。

近づくことも、離れることも、自分で選べる

記憶や感情に、どれくらい近づくか。これまでは、その距離が勝手に決まっているように感じていたかもしれません。でも、視点は少しずつ、自分で選べるようになります。

つらい記憶には、客席から。よかった瞬間には、もう一度その中へ。その使い分けができるようになると、過去は少し扱いやすくなり、今日の小さな喜びは少し長持ちするようになります。

まずは今日のどこかで、「よかった」と思える瞬間に気づいたら、10秒だけ立ち止まってみてください。目に映るもの、聞こえる音、体の感覚を、その中から味わう。それが、感情との新しい付き合い方の始まりです。

A question for you

あなたへの問い

いちばん大切な思い出を、あなたは「中から」と「外から」、どちらで見ていますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

アソシエイトとディソシエイトは、日本語で何と言いますか?

アソシエイトは「連合」「実体験」、ディソシエイトは「分離」「客観視」などと訳されます。NLPの用語で、体験の中に入っているか、外から眺めているかという視点の違いを表します。心理学では、似た違いを「当事者の視点」と「観察者の視点」と呼んで研究しています。

NLPのディソシエイトと、心理学の「解離」は同じですか?

同じではありません。NLPのディソシエイトは、自分で意図して視点を外に移すことを指します。精神医学の「解離」は、意識や記憶、自分という感覚のつながりが、本人の意図とは関係なく途切れてしまう状態です。後者が続いて困っているときは、専門家への相談をおすすめします。

いつも物事を他人事のように感じてしまいます。おかしいのでしょうか?

おかしなことではありません。つらい経験が重なると、心が自分を守るために、体験から距離をとるくせがつくことがあります。冷静さは強みですが、喜びまで遠く感じるなら、小さなよい瞬間に意識して浸る練習が役に立ちます。生活に支障があるほど現実感が薄いときは、専門家に相談してください。

目標を思い描くときは、どちらの視点がいいですか?

目的によって変わります。達成したときの気持ちを味わうなら、アソシエイトで自分の目から見るのが向いています。一方、望む行動をとっている自分を外から眺めると、その行動を実際にとりやすくなったという研究もあります。両方を試して、行動につながりやすいほうを選んでください。

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References

  • Kross, E., & Ayduk, O. (2011). Making meaning out of negative experiences by self-distancing. Current Directions in Psychological Science, 20(3), 187–191.
  • Kross, E., Ayduk, O., & Mischel, W. (2005). When asking "why" does not hurt: Distinguishing rumination from reflective processing of negative emotions. Psychological Science, 16(9), 709–715.
  • Nigro, G., & Neisser, U. (1983). Point of view in personal memories. Cognitive Psychology, 15(4), 467–482.
  • Grossmann, I., & Kross, E. (2014). Exploring Solomon's paradox: Self-distancing eliminates the self-other asymmetry in wise reasoning about close relationships in younger and older adults. Psychological Science, 25(8), 1571–1580.
  • Libby, L. K., Shaeffer, E. M., Eibach, R. P., & Slemmer, J. A. (2007). Picture yourself at the polls: Visual perspective in mental imagery affects self-perception and behavior. Psychological Science, 18(3), 199–203.
  • Bryant, F. B., & Veroff, J. (2007). Savoring: A New Model of Positive Experience. Lawrence Erlbaum Associates.
  • 『コーチング ハンドブック』第4章 p.122、第5章「脱同一化とコーチングの実践」p.134-135
  • Bandler, R. (1985). Using Your Brain—for a Change. Real People Press.
  • American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (5th ed.). American Psychiatric Publishing.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。