No.02 Tend the Mind心を整える
サブモダリティとは?記憶の「質感」を変える
サブモダリティとは、記憶やイメージの明るさ・大きさ・距離・音量など、五感の細かな「質感」のこと。NLPでの意味と研究上の限界を整理し、記憶の質感を変えて気持ちの変化を確かめる体験ワークと、日常での使い方を紹介します。
この記事の結論
サブモダリティとは、NLPの用語で、頭の中のイメージや音、体の感覚がもつ明るさ・大きさ・距離・音量・温度などの細かな性質のことです。同じ記憶でも、この「質感」を変えると気持ちの強さが変わることがあり、自分の感じ方を知る手がかりになります。
- サブモダリティは、イメージや音、体の感覚がもつ明るさや距離などの細かな性質
- 記憶の中身は同じでも、質感を変えると気持ちの強さが変わることがある
- NLP独自の主張は検証が限られる。感じ方を観察する練習として使うのがよい
目次 Contents
何年も前の失敗を思い出すと、今でも顔が熱くなる。一方で、同じくらい昔の出来事なのに、楽しかった記憶は色あせてぼんやりしている。記憶と気持ちの結びつき方に、不思議さを感じたことはないでしょうか。
嫌な記憶を思い出すたびに気持ちが沈むなら、出来事そのものより、その記憶の「見え方」が関わっているのかもしれません。
この記事では、NLPの「サブモダリティ」という考え方を紹介します。記憶やイメージの明るさ、大きさ、距離といった「質感」に目を向ける考え方です。研究上の限界も確かめながら、自分の感じ方を観察する体験ワークを試してみましょう。
サブモダリティとは? 一言でいうと
サブモダリティとは、頭の中のイメージや音、体の感覚がもつ、細かな性質のことです。NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)で使われる言葉です。
「モダリティ」は、見る・聴く・感じるといった感覚の種類を指します。サブモダリティは、その一段下にある性質です。同じ「見る」でも、明るいか暗いか、大きいか小さいか、近いか遠いか。そうした違いがサブモダリティです。
| 感覚 | サブモダリティの例 |
|---|---|
| 視覚 | 明るさ、色かモノクロか、大きさ、距離、位置、動画か静止画か、枠があるか |
| 聴覚 | 音量、高さ、速さ、どこから聞こえるか、誰の声か |
| 体感覚 | 温度、重さ、圧迫感、体のどこで感じるか、動いているか |
感覚の種類そのものについては、優位感覚(VAK)とは?見る・聴く・感じるタイプで詳しく扱っています。
出来事ではなく「質感」が気持ちを左右する
NLPでは、気持ちの強さを決めるのは記憶の中身だけではない、と考えます。その記憶をどんな質感で思い描いているかにも、左右されるというのです。
たとえば、つらい記憶は、大きく、近く、鮮明に見えていることが多い。一方、もう気にならなくなった記憶は、小さく、遠く、ぼんやりしていることが多い。NLPの創始者の一人、リチャード・バンドラーは、この質感を意図して変えることで、気持ちの反応を変えられると主張しました(Bandler, 1985)。
研究からわかること、わからないこと
心理学にも、これと近い発見があります。私たちは記憶を思い出すとき、自分の目から見た視点で思い出すことも、外から自分を眺める視点で思い出すこともあります(Nigro & Neisser, 1983)。
つらい体験を、外から眺める視点で思い返してもらった研究もあります。その人たちは、感情の高ぶりが小さく、くよくよ考えこみにくい傾向がありました(Kross ら, 2005)。また、心の中のイメージが感情を強く動かすことも、多くの研究で示されてきました(Holmes & Mathews, 2010)。
体験ワーク:記憶の質感を変えてみる
ここからは、実際に記憶の質感を変えてみます。最初は、ちょっと嫌だった程度の、軽い記憶を選んでください。
やってみると、ある操作では気持ちがほとんど変わらないのに、別の操作では大きく変わる、ということがあります。この違いが、次に紹介する「ドライバー」の手がかりです。
次は、反対に、うれしかった記憶で試してみてください。イメージを少し近づけ、明るくし、大きくしてみます。そのときの気持ちが、少し強まるかどうか。嫌な記憶だけでなく、よい記憶の扱い方を知っておくことも、自分を支える力になります。
気持ちを大きく動かす「ドライバー」
NLPでは、ほかの質感まで一緒に変えてしまうほど影響の大きいサブモダリティを「ドライバー」と呼びます。人によって、距離がドライバーの人もいれば、明るさや音量がドライバーの人もいます。
ドライバーを知っておくと、自分の気持ちの扱い方のくせが見えてきます。たとえば、距離がドライバーの人がいるとします。その人は、心配ごとが「目の前に迫っている」ように感じたとき、気持ちが一気に重くなるのかもしれません。
自分の中の「確信」と「迷い」の質感を比べる
サブモダリティは、自分を知る道具にもなります。NLPでは、性質の違う2つの体験の質感を比べる方法がよく使われます。
確信していることは真正面に明るく見え、迷っていることは端のほうでちらちら揺れている。そんな違いが見つかるかもしれません。違いを知ると、自分が今どれくらい納得しているのかを、言葉より先に感じとる手がかりになります。
記憶の中に入りこむか、外から眺めるか。この視点の違いは、アソシエイトとディソシエイト|感情との距離の取り方で詳しく扱っています。
日常での使い方
気持ちを引きずる記憶に
嫌な場面が何度も浮かぶときは、ワークで見つけた操作を使ってみます。イメージを遠くへ押しやる、モノクロにする、音を小さくする。イメージを素早く入れ替える応用技法は、スウィッシュとは?嫌なイメージを書き換える技法で紹介しています。
やる気を引き出したいとき
目標を思い描くときに、イメージを近く、明るく、大きくしてみます。遠くのぼんやりした目標より、手が届きそうなくっきりした目標のほうが、心が動きやすいかもしれません。未来を思い描く方法は、ビジュアライゼーションとは?未来を思い描く技術でも扱っています。
過去や未来の配置を見直す
NLPでは、過去や未来を頭の中のどこに置いているかに注目する方法もあります。過去が目の前に大きく置かれていると、過去に引っぱられやすい、という考え方です。詳しくはタイムラインとは?過去と未来の捉え方を変えるをどうぞ。
使うときの注意点
サブモダリティのワークは、出来事の事実を変えるものではありません。変わるのは、思い出したときの感じ方です。出来事から学ぶべきことがあるなら、それはそのまま大切にしてください。
また、つらい記憶やトラウマに関わる記憶には、一人で使わないでください。思い出すこと自体が負担になることがあります。過去のつらい記憶との向き合い方は、嫌な記憶を書き換えるには?過去との向き合い方で、より慎重な方法を紹介しています。
記憶の中身より、見え方に目を向けてみる
過去は変えられません。でも、過去をどんな質感で思い出すかは、少しずつ変えていける可能性があります。そして、自分がどんな質感で世界を感じているかを知ることは、自分を知ることでもあります。
うれしい記憶は明るく近くに、つらい記憶は少し遠くに。そんなふうに、心の中の配置を、自分で少しだけ整えていく。それは、自分の心とのつきあい方を学ぶ、静かな練習です。
今夜、今日いちばんうれしかった場面を思い出してみてください。それは頭の中のどこに、どんな明るさで見えていますか。その答えが、あなただけの心の地図の、最初の目印になります。
A question for you
あなたへの問い
うれしかった記憶は、頭の中のどのあたりに、どんな明るさで見えますか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
モダリティとサブモダリティの違いは何ですか?
モダリティは、視覚・聴覚・体感覚などの感覚の種類のことです。サブモダリティは、その中の細かな性質を指します。たとえば視覚というモダリティの中に、明るさ、色、大きさ、距離といったサブモダリティがあります。
サブモダリティを変えると、過去の出来事も変わりますか?
出来事そのものは変わりません。変わるのは、その出来事を思い出したときの感じ方です。事実を忘れたり、なかったことにしたりする方法ではないので、出来事から学ぶべきことは、そのまま残しておけます。
イメージがはっきり浮かばない人でもできますか?
できます。はっきりした映像でなくても、「なんとなく右のほうにある」「ぼんやり暗い感じ」といったあいまいな感覚で十分です。映像が苦手なら、音の大きさや体の重さなど、感じやすい感覚から試してみてください。
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References
- Bandler, R. (1985). Using Your Brain—for a Change. Real People Press.
- Andreas, S., & Andreas, C. (1987). Change Your Mind—and Keep the Change. Real People Press.
- O'Connor, J., & Seymour, J. (1990). Introducing Neuro-Linguistic Programming. Mandala.
- Nigro, G., & Neisser, U. (1983). Point of view in personal memories. Cognitive Psychology, 15(4), 467–482.
- Kross, E., Ayduk, O., & Mischel, W. (2005). When asking "why" does not hurt: Distinguishing rumination from reflective processing of negative emotions. Psychological Science, 16(9), 709–715.
- Holmes, E. A., & Mathews, A. (2010). Mental imagery in emotion and emotional disorders. Clinical Psychology Review, 30(3), 349–362.
- Witkowski, T. (2010). Thirty-five years of research on neuro-linguistic programming. NLP research data base. State of the art or pseudoscientific decoration? Polish Psychological Bulletin, 41(2), 58–66.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」