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本当の自分とは?見失ったときに立ち返る場所

本当の自分とは、どこかに隠れた正解の人格ではありません。役割の奥で変わらない「核」と、日々の選択から立ち上がる自分という二つの見方から、本当の自分がわからなくなる理由と、近づくための4つのワークを紹介します。

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この記事の結論

本当の自分とは、どこかに隠れている完成品の人格ではありません。役割が変わっても大切にし続けている「核」と、その核にもとづいて日々選んだことの積み重ねから、少しずつ立ち上がってくる自分のことです。探し当てるより、帰ってくる場所と考えると見つけやすくなります。

  • 本当の自分は、隠れた正解ではなく「核」と「選択」の両方から見えてくる
  • 相手によって態度が変わるのは自然なこと。共通して残るものが核の手がかり
  • 「本当の自分」探しは、今の自分を否定するためではなく、帰る場所を知るため
目次 Contents
  1. 本当の自分とは? 一言でいうと
  2. なぜ「本当の自分がわからない」と感じるのか
  3. 心理学では「本当の自分」をどう考えてきたか
  4. 二つの見方:役割の奥の「核」と、選択から立ち上がる自分
  5. 本当の自分に近づく4つのワーク
  6. 本当の自分探しで迷子にならないための注意点
  7. 自分らしさは、人との間でも育つ
  8. 探しに行くより、帰ってくる場所として

職場ではしっかり者、家ではぼんやり、友人の前ではよく笑う。SNSに書く自分は、少しだけ前向きです。どれも自分のはずなのに、ふと「本当の私はどれなんだろう」とわからなくなる夜があります。

人に合わせることに慣れすぎて、自分が何を感じているのかつかめない。今の生活に大きな不満はないのに、どこか借りものを着ているような感じが抜けない。そんな感覚を抱えて、このページにたどり着いたのかもしれません。

「本当の自分」を探したくなるのは、今の自分をおろそかにしたくないからです。自分の人生を、自分のものとして生きたい。その願いがあるからこそ、ずれに気づけるのです。

この記事では、「本当の自分」について心理学で考えられてきたことを整理します。そのうえで、役割の奥にある「核」と、日々の選択から立ち上がる自分という二つの見方を紹介します。今日から試せるワークと、探す途中で迷子にならないための注意点もまとめました。

本当の自分とは? 一言でいうと

本当の自分とは、どこかに隠れている完成品の人格ではありません。役割が変わっても残る「核」と、その核にもとづく選択の積み重ねから見えてくる自分のことです。

「本当の自分」という言葉からは、宝箱のようなものを思い浮かべるかもしれません。今の自分の下に、まだ見ぬ本物の自分が眠っている。それを掘り当てれば、迷いは消える。そんなイメージです。

けれど実際には、ある日突然「これが本当の私だった」と見つかることは、あまりありません。多くの場合、本当の自分は、すでに日々の中に断片として表れています。好きなことに夢中になっている時間。譲れないことで腹が立った瞬間。誰かといて、肩の力が抜けたひととき。その断片をつなぎ合わせて、少しずつ輪郭をつかんでいくものです。

「本当の自分探し」が苦しくなるのはなぜ?

本当の自分を探すほど、かえって苦しくなる人がいます。それは、探している場所が「今の自分ではないどこか」だからかもしれません。

「本当の自分はもっと自由なはずだ」「もっと才能があるはずだ」。そう考えると、今の自分は偽物ということになってしまいます。探せば探すほど、今いる場所が色あせて見えるのです。この記事では、本当の自分を「今の自分の外側」ではなく、「今の自分の中」に探していきます。

なぜ「本当の自分がわからない」と感じるのか

本当の自分がわからなくなるのには、いくつかの理由があります。あなたが空っぽだからではありません。

1. 相手によって自分が変わるから

上司の前では丁寧に、後輩の前では頼れる先輩として、家族の前では気を抜いて。人は、関係ごとに少しずつ違う顔を見せます。そのたびに「どれが本物なのか」と迷うのは、自然なことです。

作家の平野啓一郎さんは、この現象を「分人」という言葉で説明しています。人は、相手ごとに異なる「分人」をもっていて、その集まり全体が「私」だ、という考え方です。この見方に立つと、相手によって態度が変わることは、偽っている証拠ではなくなります。

2. 期待に合わせることが、長く続いてきたから

親が喜ぶ進路、先生にほめられる態度、職場で求められる役割。期待に応えること自体は、悪いことではありません。ただ、それが長く続くと、「自分は本当はどう感じているのか」を確かめる習慣が失われていきます。

精神分析家のウィニコットは、まわりの期待に過剰に合わせて育った自己を「偽りの自己」と呼びました。周囲に適応するための、いわば防具のようなものです。防具は身を守ってくれますが、ずっと着ていると、その下の自分の感覚がわからなくなります。

3. 「本当の自分」を特別な何かだと思っているから

本当の自分は、今とはまったく違う特別な姿をしている。そう思っていると、ふつうの自分は候補から外れてしまいます。

実際には、本当の自分は意外と地味な姿をしています。朝のコーヒーを丁寧に淹れたい。人の話を途中でさえぎりたくない。小さな不正が許せない。こうした、言われてみれば当たり前の好みやこだわりに、あなたらしさは宿っています。

心理学では「本当の自分」をどう考えてきたか

「本当の自分」は、哲学や心理学で長く議論されてきたテーマです。ここでは、自分探しに役立つ考え方をいくつか紹介します。

「自分である」感覚と、心の健康

心理療法家のカール・ロジャーズは、自分が感じていることと、自分が思う自分の姿とが一致している状態を大切にしました。この一致がくずれると、人は不安や居心地の悪さを感じやすくなると考えたのです。心と言動がそろう生き方については、自己一致とは?心と言動がそろう生き方で詳しく扱っています。

その後の研究でも、「自分らしくいられている」という感覚は、心の健康と関係があると報告されています。たとえばシェルドンらの研究(1997)では、役割ごとの性格の表れ方を調べました。役割によるばらつきが大きい人ほど、幸福感が低い傾向が見られたのです。

ただし、これは「どの場面でもまったく同じであれ」という意味ではありません。調整しているのは自然なことです。気をつけたいのは、自分で選んでいる感覚がないまま、無理を重ねている状態です。

人は「本当の自分」を、良いものとして思い描く

本当の自分をめぐる研究には、意外な発見もあります。ニューマンらの研究(2014)では、ある人物の変化を描いた話を読んでもらいました。そのうえで、「この人の本当の自分が表れたのはどちらか」を判断してもらったのです。

すると多くの人は、その人が善い方向へ変わったときに「本当の自分が出てきた」と考えやすいことがわかりました。悪い方向への変化は、「本当の自分から離れた」と受け取られやすかったのです。

この結果は、私たちの「本当の自分」という考え方に、願いや価値判断が含まれていることを示しています(Strohminger ら, 2017)。本当の自分を探すことは、半分は「どんな自分でありたいか」を考えることでもあるのです。そう思うと、探す作業が少し前向きなものに見えてきませんか。

二つの見方:役割の奥の「核」と、選択から立ち上がる自分

本当の自分を考えるとき、この記事では二つの見方を使います。どちらか一方が正しいのではなく、両方を行き来することで、自分の姿が立体的に見えてきます。

見方1:役割の奥の「核」見方2:選択から立ち上がる自分
本当の自分とは役割が変わっても変わらない根っこ選んで動いたことの積み重ね
見つけ方内側をふり返り、共通点を探す外で小さく試し、手応えを確かめる
たとえると羅針盤歩いてきた足あと
陥りやすい罠考えるばかりで動けなくなる流されて、ただ忙しくなる

見方1:役割の奥にある「核」

一つ目は、役割や肩書きの奥に、変わらない核があるという見方です。会社員、親、友人という役割をすべて外したときに、なお残っている感覚。それを「本当の自分」と呼ぶ考え方です。

日本のコーチングの一部では、この核を「根源的自我」と呼ぶことがあります。評価や成果に左右されない、自分の存在の根っこにある感覚、という意味合いです。ただし、これは学術用語ではなく、定義も使う人によって少しずつ違います。

NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)にも、近い考え方があります。コニリー・アンドレアスらがまとめた「コア・トランスフォーメーション」という手法です。

この手法では、「それが手に入ったら、さらに何が得られる?」と、望みを奥へ奥へとたどっていきます。すると多くの人が、「安らぎ」「つながり」「ただ在ること」のような、深い状態にたどり着くといいます。この手法は臨床研究で効果が確かめられたものではありません。それでも、「欲しいものの奥にある、本当に求めている状態」を見つける問いとしては、役に立ちます。

見方2:選んだことの積み重ねが、自分になる

二つ目は、本当の自分は「見つける」ものではなく、選んで動くうちに「立ち上がってくる」ものだという見方です。

組織行動学者のハーミニア・イバーラは、キャリアの転機にある人を調べました。そこで見えてきたのは、多くの人が「まず自分を知ってから動く」のではなかったことです。小さく試し、人と出会い、その経験を通して「自分はこういう人間だ」とわかっていきました。考えてから動くのではなく、動きながら考えていたのです。

たとえば、「人に教えるのが好きかもしれない」と思ったとします。頭の中で考え続けても、答えは出ません。友人に得意料理を教えてみる。職場で新人の相談に乗ってみる。そこで感じた手応えや違和感のほうが、ずっと確かな手がかりになります。

核は方角、選択は足取り

二つの見方は、ぶつかり合うものではありません。核は「どちらへ向かいたいか」を教える方角で、選択はその方角へ踏み出す一歩です。

核だけを探していると、考えるばかりで足が止まります。選択だけを重ねていると、気づけば人の期待に流されています。ときどき立ち止まって核を確かめ、また小さく選んで動く。その往復の中で、本当の自分は少しずつ確かなものになっていきます。

本当の自分に近づく4つのワーク

ここからは、手を動かしながら自分に近づいていきます。全部を一度にやる必要はありません。気になったものから試してください。

ワーク1:役割を並べて、共通点を探す

たとえば、職場では資料の誤字に気づき、友人との旅行では全員の荷物を気にかけている。家では家族の体調の変化にいち早く気づく。役割はばらばらでも、「まわりの小さな変化に気づき、気にかける」という共通点が見えてきます。これが、あなたの核に近いものかもしれません。

印をつけた「やけに疲れる役割」も、大切な情報です。そこでは、核とは違う自分を無理に演じている可能性があります。

ワーク2:「素のままでいられた瞬間」を集める

次は、肩の力が抜けた瞬間を思い出します。「自分らしかった」と感じた体験を集めた研究では、満ち足りた気持ちや、人の期待に合わせずにいられた感覚が多く語られました(Lenton ら, 2013)。反対に、「自分らしくなかった」体験には、周囲に合わせて無理をした場面が目立ったといいます。

この1か月で、「素のままでいられた」と感じた場面を3つ書き出してください。誰といたか、何をしていたか、そのとき体はどんな感じだったか。場面を集めていくと、あなたが自然体でいられる条件が見えてきます。

ワーク3:「〜すべき」と「〜したい」を仕分ける

ノートを縦に二つに分け、左に「最近やっている・考えていること」を書き出します。仕事、家事、人づきあい、習い事、将来のことなど、何でもかまいません。

一つずつ見て、右側に「すべき」「したい」「どちらとも言えない」のどれに近いかを書きます。判断に迷ったら、思い浮かべたときの体の感じを確かめてください。「すべき」には肩や胸のこわばりが、「したい」には少しの軽さがともなうことが多いものです。

「すべき」が多くても、自分を責める必要はありません。生活には、すべきこともたくさんあります。このワークの目的は、自分の中にある二つの声を聞き分けることです。

ワーク4:今週ひとつ、核に沿った小さな選択をする

たとえば核が「人の小さな変化に気づくこと」なら、最近元気のない同僚に一声かける。選んで動いた結果は、次に核を確かめるときの材料になります。見方1と見方2を、ここでつなぐのです。

本当の自分探しで迷子にならないための注意点

本当の自分を探す道には、いくつか落とし穴があります。気づいておくだけで、ずいぶん歩きやすくなります。

「今の自分は偽物」と決めつけない

本当の自分を探すうちに、今の自分を否定しはじめることがあります。でも、期待に合わせてがんばってきた自分も、あなたの一部です。その自分がいたからこそ、ここまで生きてこられたのかもしれません。

今の自分を受け入れることは、変わることをあきらめることではありません。ロジャーズは、ありのままの自分を受け入れたとき、はじめて人は変われるという逆説を語っています。ありのままの自分を認める練習は、自己受容とは?ありのままの自分を認める練習で紹介しています。

「本当の自分じゃないから」を言い訳にしない

「この仕事は本当の自分に合っていない」。そう感じるのは、大切なサインかもしれません。けれど、苦手なことや面倒なことを避けるたびにこの言葉を使うと、本当の自分の範囲がどんどん狭くなっていきます。

違和感を覚えたら、すぐに結論を出す前に、「何が合わないのか」を具体的に言葉にしてみてください。仕事そのものなのか、人間関係なのか、進め方なのか。分けてみると、変えられる部分が見つかることもあります。

変わることは、偽物になることではない

新しい挑戦を前に、「こんなの自分らしくない」とためらうことがあります。人前で話す、苦手な分野を学ぶ、新しい人に会いに行く。

けれど、自分らしさは固定されたものではありません。最初はぎこちなくても、続けるうちにそれが自然な自分の一部になることもあります。「らしくない」と感じるのは、偽物になりかけているからではなく、自分の幅が広がりかけているからかもしれません。

自分らしさは、人との間でも育つ

本当の自分は、一人で部屋にこもって考えるだけでは見えにくいものです。人と関わる中で、はじめて見えてくる面があります。

自分では当たり前だと思っていた振る舞いを、「あなたのそういうところに助けられた」と言われて驚いた経験はありませんか。自分には見えず、人には見えている自分がいるのです。この「自分には見えない自分」を知る方法は、ジョハリの窓とは?4つの窓でする自己分析で詳しく紹介しています。

一方で、人の評価に答えを求めすぎると、また誰かの期待に合わせる自分に戻ってしまいます。人からの言葉は、鏡のひとつとして受け取る。最後に「これは自分らしい」と決めるのは、あなた自身です。「私は何者か」という問いをもう少し深めたい人は、アイデンティティとは?「私は何者か」を考えるも参考にしてみてください。

探しに行くより、帰ってくる場所として

本当の自分は、遠くまで探しに行って見つけるものではないのかもしれません。忙しさや人の期待の中で見失いかけたときに、帰ってくる場所。そう考えると、少し肩の力が抜けます。

帰り道の目印は、すでにあなたの中にあります。素のままでいられた時間、譲れなかったこだわり、なぜか続けてしまうこと。どれも、あなたが何を大切にしてきたかを教えてくれます。大切にしているものを言葉にしたい人は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークが手がかりになります。

今日、ふと肩の力が抜けた瞬間があったら、一行だけメモしておいてください。誰といて、何をしていたか。それが、本当の自分に帰るための、最初の目印になります。もっと手前の「自分がわからない」というところから始めたい人は、「自分がわからない」ときに試したい7つの問いからどうぞ。

A question for you

あなたへの問い

最近、肩の力が抜けて「素のままでいられた」のは、誰といたときですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

本当の自分と、偽りの自分の違いは何ですか?

はっきりした境界があるわけではありません。目安になるのは、その振る舞いを自分で選んでいる感覚があるかどうかです。場に合わせていても、自分で納得して選んでいるなら偽りとは言えません。怖さや義務感だけで動き続けているときに、「偽っている」と感じやすくなります。

人によって態度が変わります。私には本当の自分がないのでしょうか?

そうではありません。上司の前と友人の前で話し方が変わるのは、関係に合わせた自然な調整です。大切なのは、どの場面にも共通して残っているものに目を向けることです。たとえば「相手の話を最後まで聞く」がどこでも変わらないなら、それはあなたの核のひとつかもしれません。

本当の自分がわからないまま、仕事や進路を決めてもいいですか?

決めてかまいません。自分のことは、考えるだけでなく、選んで動いてみた結果からもわかってきます。完全にわかってから動こうとすると、いつまでも動けなくなりがちです。小さく試して、その手応えを次の選択に活かしてください。

「根源的自我」とは何ですか?

日本のコーチングの一部で使われる言葉で、役割や評価に左右されない、自分の存在の根っこにある感覚を指します。心理学の学術用語ではありません。この記事では、役割の奥にある「核」を考えるための言葉のひとつとして紹介しています。

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References

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  • Ibarra, H. (2003). Working Identity: Unconventional Strategies for Reinventing Your Career. Harvard Business School Press.
  • 平野啓一郎 (2012).『私とは何か――「個人」から「分人」へ』講談社現代新書.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。