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本当の自分とは?見失ったときに立ち返る場所
本当の自分とは、どこかに隠れた正解の人格ではありません。役割の奥で変わらない「核」と、日々の選択から立ち上がる自分という二つの見方から、本当の自分がわからなくなる理由と、近づくための4つのワークを紹介します。
この記事の結論
本当の自分とは、どこかに隠れている完成品の人格ではありません。役割が変わっても大切にし続けている「核」と、その核にもとづいて日々選んだことの積み重ねから、少しずつ立ち上がってくる自分のことです。探し当てるより、帰ってくる場所と考えると見つけやすくなります。
- 本当の自分は、隠れた正解ではなく「核」と「選択」の両方から見えてくる
- 相手によって態度が変わるのは自然なこと。共通して残るものが核の手がかり
- 「本当の自分」探しは、今の自分を否定するためではなく、帰る場所を知るため
目次 Contents
職場ではしっかり者、家ではぼんやり、友人の前ではよく笑う。SNSに書く自分は、少しだけ前向きです。どれも自分のはずなのに、ふと「本当の私はどれなんだろう」とわからなくなる夜があります。
人に合わせることに慣れすぎて、自分が何を感じているのかつかめない。今の生活に大きな不満はないのに、どこか借りものを着ているような感じが抜けない。そんな感覚を抱えて、このページにたどり着いたのかもしれません。
「本当の自分」を探したくなるのは、今の自分をおろそかにしたくないからです。自分の人生を、自分のものとして生きたい。その願いがあるからこそ、ずれに気づけるのです。
この記事では、「本当の自分」について心理学で考えられてきたことを整理します。そのうえで、役割の奥にある「核」と、日々の選択から立ち上がる自分という二つの見方を紹介します。今日から試せるワークと、探す途中で迷子にならないための注意点もまとめました。
本当の自分とは? 一言でいうと
本当の自分とは、どこかに隠れている完成品の人格ではありません。役割が変わっても残る「核」と、その核にもとづく選択の積み重ねから見えてくる自分のことです。
「本当の自分」という言葉からは、宝箱のようなものを思い浮かべるかもしれません。今の自分の下に、まだ見ぬ本物の自分が眠っている。それを掘り当てれば、迷いは消える。そんなイメージです。
けれど実際には、ある日突然「これが本当の私だった」と見つかることは、あまりありません。多くの場合、本当の自分は、すでに日々の中に断片として表れています。好きなことに夢中になっている時間。譲れないことで腹が立った瞬間。誰かといて、肩の力が抜けたひととき。その断片をつなぎ合わせて、少しずつ輪郭をつかんでいくものです。
「本当の自分探し」が苦しくなるのはなぜ?
本当の自分を探すほど、かえって苦しくなる人がいます。それは、探している場所が「今の自分ではないどこか」だからかもしれません。
「本当の自分はもっと自由なはずだ」「もっと才能があるはずだ」。そう考えると、今の自分は偽物ということになってしまいます。探せば探すほど、今いる場所が色あせて見えるのです。この記事では、本当の自分を「今の自分の外側」ではなく、「今の自分の中」に探していきます。
なぜ「本当の自分がわからない」と感じるのか
本当の自分がわからなくなるのには、いくつかの理由があります。あなたが空っぽだからではありません。
1. 相手によって自分が変わるから
上司の前では丁寧に、後輩の前では頼れる先輩として、家族の前では気を抜いて。人は、関係ごとに少しずつ違う顔を見せます。そのたびに「どれが本物なのか」と迷うのは、自然なことです。
作家の平野啓一郎さんは、この現象を「分人」という言葉で説明しています。人は、相手ごとに異なる「分人」をもっていて、その集まり全体が「私」だ、という考え方です。この見方に立つと、相手によって態度が変わることは、偽っている証拠ではなくなります。
2. 期待に合わせることが、長く続いてきたから
親が喜ぶ進路、先生にほめられる態度、職場で求められる役割。期待に応えること自体は、悪いことではありません。ただ、それが長く続くと、「自分は本当はどう感じているのか」を確かめる習慣が失われていきます。
精神分析家のウィニコットは、まわりの期待に過剰に合わせて育った自己を「偽りの自己」と呼びました。周囲に適応するための、いわば防具のようなものです。防具は身を守ってくれますが、ずっと着ていると、その下の自分の感覚がわからなくなります。
3. 「本当の自分」を特別な何かだと思っているから
本当の自分は、今とはまったく違う特別な姿をしている。そう思っていると、ふつうの自分は候補から外れてしまいます。
実際には、本当の自分は意外と地味な姿をしています。朝のコーヒーを丁寧に淹れたい。人の話を途中でさえぎりたくない。小さな不正が許せない。こうした、言われてみれば当たり前の好みやこだわりに、あなたらしさは宿っています。
心理学では「本当の自分」をどう考えてきたか
「本当の自分」は、哲学や心理学で長く議論されてきたテーマです。ここでは、自分探しに役立つ考え方をいくつか紹介します。
「自分である」感覚と、心の健康
心理療法家のカール・ロジャーズは、自分が感じていることと、自分が思う自分の姿とが一致している状態を大切にしました。この一致がくずれると、人は不安や居心地の悪さを感じやすくなると考えたのです。心と言動がそろう生き方については、自己一致とは?心と言動がそろう生き方で詳しく扱っています。
その後の研究でも、「自分らしくいられている」という感覚は、心の健康と関係があると報告されています。たとえばシェルドンらの研究(1997)では、役割ごとの性格の表れ方を調べました。役割によるばらつきが大きい人ほど、幸福感が低い傾向が見られたのです。
ただし、これは「どの場面でもまったく同じであれ」という意味ではありません。調整しているのは自然なことです。気をつけたいのは、自分で選んでいる感覚がないまま、無理を重ねている状態です。
人は「本当の自分」を、良いものとして思い描く
本当の自分をめぐる研究には、意外な発見もあります。ニューマンらの研究(2014)では、ある人物の変化を描いた話を読んでもらいました。そのうえで、「この人の本当の自分が表れたのはどちらか」を判断してもらったのです。
すると多くの人は、その人が善い方向へ変わったときに「本当の自分が出てきた」と考えやすいことがわかりました。悪い方向への変化は、「本当の自分から離れた」と受け取られやすかったのです。
この結果は、私たちの「本当の自分」という考え方に、願いや価値判断が含まれていることを示しています(Strohminger ら, 2017)。本当の自分を探すことは、半分は「どんな自分でありたいか」を考えることでもあるのです。そう思うと、探す作業が少し前向きなものに見えてきませんか。
二つの見方:役割の奥の「核」と、選択から立ち上がる自分
本当の自分を考えるとき、この記事では二つの見方を使います。どちらか一方が正しいのではなく、両方を行き来することで、自分の姿が立体的に見えてきます。
| 見方1:役割の奥の「核」 | 見方2:選択から立ち上がる自分 | |
|---|---|---|
| 本当の自分とは | 役割が変わっても変わらない根っこ | 選んで動いたことの積み重ね |
| 見つけ方 | 内側をふり返り、共通点を探す | 外で小さく試し、手応えを確かめる |
| たとえると | 羅針盤 | 歩いてきた足あと |
| 陥りやすい罠 | 考えるばかりで動けなくなる | 流されて、ただ忙しくなる |
見方1:役割の奥にある「核」
一つ目は、役割や肩書きの奥に、変わらない核があるという見方です。会社員、親、友人という役割をすべて外したときに、なお残っている感覚。それを「本当の自分」と呼ぶ考え方です。
日本のコーチングの一部では、この核を「根源的自我」と呼ぶことがあります。評価や成果に左右されない、自分の存在の根っこにある感覚、という意味合いです。ただし、これは学術用語ではなく、定義も使う人によって少しずつ違います。
NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)にも、近い考え方があります。コニリー・アンドレアスらがまとめた「コア・トランスフォーメーション」という手法です。
この手法では、「それが手に入ったら、さらに何が得られる?」と、望みを奥へ奥へとたどっていきます。すると多くの人が、「安らぎ」「つながり」「ただ在ること」のような、深い状態にたどり着くといいます。この手法は臨床研究で効果が確かめられたものではありません。それでも、「欲しいものの奥にある、本当に求めている状態」を見つける問いとしては、役に立ちます。
見方2:選んだことの積み重ねが、自分になる
二つ目は、本当の自分は「見つける」ものではなく、選んで動くうちに「立ち上がってくる」ものだという見方です。
組織行動学者のハーミニア・イバーラは、キャリアの転機にある人を調べました。そこで見えてきたのは、多くの人が「まず自分を知ってから動く」のではなかったことです。小さく試し、人と出会い、その経験を通して「自分はこういう人間だ」とわかっていきました。考えてから動くのではなく、動きながら考えていたのです。
たとえば、「人に教えるのが好きかもしれない」と思ったとします。頭の中で考え続けても、答えは出ません。友人に得意料理を教えてみる。職場で新人の相談に乗ってみる。そこで感じた手応えや違和感のほうが、ずっと確かな手がかりになります。
核は方角、選択は足取り
二つの見方は、ぶつかり合うものではありません。核は「どちらへ向かいたいか」を教える方角で、選択はその方角へ踏み出す一歩です。
核だけを探していると、考えるばかりで足が止まります。選択だけを重ねていると、気づけば人の期待に流されています。ときどき立ち止まって核を確かめ、また小さく選んで動く。その往復の中で、本当の自分は少しずつ確かなものになっていきます。
本当の自分に近づく4つのワーク
ここからは、手を動かしながら自分に近づいていきます。全部を一度にやる必要はありません。気になったものから試してください。
ワーク1:役割を並べて、共通点を探す
たとえば、職場では資料の誤字に気づき、友人との旅行では全員の荷物を気にかけている。家では家族の体調の変化にいち早く気づく。役割はばらばらでも、「まわりの小さな変化に気づき、気にかける」という共通点が見えてきます。これが、あなたの核に近いものかもしれません。
印をつけた「やけに疲れる役割」も、大切な情報です。そこでは、核とは違う自分を無理に演じている可能性があります。
ワーク2:「素のままでいられた瞬間」を集める
次は、肩の力が抜けた瞬間を思い出します。「自分らしかった」と感じた体験を集めた研究では、満ち足りた気持ちや、人の期待に合わせずにいられた感覚が多く語られました(Lenton ら, 2013)。反対に、「自分らしくなかった」体験には、周囲に合わせて無理をした場面が目立ったといいます。
この1か月で、「素のままでいられた」と感じた場面を3つ書き出してください。誰といたか、何をしていたか、そのとき体はどんな感じだったか。場面を集めていくと、あなたが自然体でいられる条件が見えてきます。
ワーク3:「〜すべき」と「〜したい」を仕分ける
ノートを縦に二つに分け、左に「最近やっている・考えていること」を書き出します。仕事、家事、人づきあい、習い事、将来のことなど、何でもかまいません。
一つずつ見て、右側に「すべき」「したい」「どちらとも言えない」のどれに近いかを書きます。判断に迷ったら、思い浮かべたときの体の感じを確かめてください。「すべき」には肩や胸のこわばりが、「したい」には少しの軽さがともなうことが多いものです。
「すべき」が多くても、自分を責める必要はありません。生活には、すべきこともたくさんあります。このワークの目的は、自分の中にある二つの声を聞き分けることです。
ワーク4:今週ひとつ、核に沿った小さな選択をする
たとえば核が「人の小さな変化に気づくこと」なら、最近元気のない同僚に一声かける。選んで動いた結果は、次に核を確かめるときの材料になります。見方1と見方2を、ここでつなぐのです。
本当の自分探しで迷子にならないための注意点
本当の自分を探す道には、いくつか落とし穴があります。気づいておくだけで、ずいぶん歩きやすくなります。
「今の自分は偽物」と決めつけない
本当の自分を探すうちに、今の自分を否定しはじめることがあります。でも、期待に合わせてがんばってきた自分も、あなたの一部です。その自分がいたからこそ、ここまで生きてこられたのかもしれません。
今の自分を受け入れることは、変わることをあきらめることではありません。ロジャーズは、ありのままの自分を受け入れたとき、はじめて人は変われるという逆説を語っています。ありのままの自分を認める練習は、自己受容とは?ありのままの自分を認める練習で紹介しています。
「本当の自分じゃないから」を言い訳にしない
「この仕事は本当の自分に合っていない」。そう感じるのは、大切なサインかもしれません。けれど、苦手なことや面倒なことを避けるたびにこの言葉を使うと、本当の自分の範囲がどんどん狭くなっていきます。
違和感を覚えたら、すぐに結論を出す前に、「何が合わないのか」を具体的に言葉にしてみてください。仕事そのものなのか、人間関係なのか、進め方なのか。分けてみると、変えられる部分が見つかることもあります。
変わることは、偽物になることではない
新しい挑戦を前に、「こんなの自分らしくない」とためらうことがあります。人前で話す、苦手な分野を学ぶ、新しい人に会いに行く。
けれど、自分らしさは固定されたものではありません。最初はぎこちなくても、続けるうちにそれが自然な自分の一部になることもあります。「らしくない」と感じるのは、偽物になりかけているからではなく、自分の幅が広がりかけているからかもしれません。
自分らしさは、人との間でも育つ
本当の自分は、一人で部屋にこもって考えるだけでは見えにくいものです。人と関わる中で、はじめて見えてくる面があります。
自分では当たり前だと思っていた振る舞いを、「あなたのそういうところに助けられた」と言われて驚いた経験はありませんか。自分には見えず、人には見えている自分がいるのです。この「自分には見えない自分」を知る方法は、ジョハリの窓とは?4つの窓でする自己分析で詳しく紹介しています。
一方で、人の評価に答えを求めすぎると、また誰かの期待に合わせる自分に戻ってしまいます。人からの言葉は、鏡のひとつとして受け取る。最後に「これは自分らしい」と決めるのは、あなた自身です。「私は何者か」という問いをもう少し深めたい人は、アイデンティティとは?「私は何者か」を考えるも参考にしてみてください。
探しに行くより、帰ってくる場所として
本当の自分は、遠くまで探しに行って見つけるものではないのかもしれません。忙しさや人の期待の中で見失いかけたときに、帰ってくる場所。そう考えると、少し肩の力が抜けます。
帰り道の目印は、すでにあなたの中にあります。素のままでいられた時間、譲れなかったこだわり、なぜか続けてしまうこと。どれも、あなたが何を大切にしてきたかを教えてくれます。大切にしているものを言葉にしたい人は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークが手がかりになります。
今日、ふと肩の力が抜けた瞬間があったら、一行だけメモしておいてください。誰といて、何をしていたか。それが、本当の自分に帰るための、最初の目印になります。もっと手前の「自分がわからない」というところから始めたい人は、「自分がわからない」ときに試したい7つの問いからどうぞ。
A question for you
あなたへの問い
最近、肩の力が抜けて「素のままでいられた」のは、誰といたときですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
本当の自分と、偽りの自分の違いは何ですか?
はっきりした境界があるわけではありません。目安になるのは、その振る舞いを自分で選んでいる感覚があるかどうかです。場に合わせていても、自分で納得して選んでいるなら偽りとは言えません。怖さや義務感だけで動き続けているときに、「偽っている」と感じやすくなります。
人によって態度が変わります。私には本当の自分がないのでしょうか?
そうではありません。上司の前と友人の前で話し方が変わるのは、関係に合わせた自然な調整です。大切なのは、どの場面にも共通して残っているものに目を向けることです。たとえば「相手の話を最後まで聞く」がどこでも変わらないなら、それはあなたの核のひとつかもしれません。
本当の自分がわからないまま、仕事や進路を決めてもいいですか?
決めてかまいません。自分のことは、考えるだけでなく、選んで動いてみた結果からもわかってきます。完全にわかってから動こうとすると、いつまでも動けなくなりがちです。小さく試して、その手応えを次の選択に活かしてください。
「根源的自我」とは何ですか?
日本のコーチングの一部で使われる言葉で、役割や評価に左右されない、自分の存在の根っこにある感覚を指します。心理学の学術用語ではありません。この記事では、役割の奥にある「核」を考えるための言葉のひとつとして紹介しています。
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References
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