No.04 Draw the Future未来を描く

人生に迷ったときに立ち止まって考えたいこと

人生に迷ったとき、焦って答えを出す前に知っておきたい考え方を紹介。迷いを「次の章へ移る前の合図」として捉える視点、迷いの中身の見分け方、心と頭を整える方法、小さな実験で一歩を踏み出すワークまで。

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この記事の結論

人生に迷うのは、これまでの生き方の地図が、今の自分に合わなくなってきた合図です。焦って大きな決断をするより、まず心と体を整え、何に迷っているのかを書き出して見分けること。そのうえで、小さな実験を重ねながら進む方向を確かめていくのがおすすめです。

  • 迷いは失敗ではなく、古い章が終わり、新しい章が始まる前の移行期
  • まず体を休め、頭の中を書き出し、迷いの中身を見分ける
  • 正解を考え続けるより、小さく試して確かめるほうが道は見えやすい
目次 Contents
  1. 人生に迷うのは、地図が合わなくなった合図
  2. 迷いは「次の章」が始まる前の移行期
  3. 人生に迷ったとき、まず整えたい3つのこと
  4. 何に迷っているのかを見分ける
  5. 焦らずに進むための考え方
  6. 迷いの中で踏み出す、小さな一歩
  7. 迷っている時間も、あなたの物語の一部

このままでいいのだろうか。でも、どこへ向かえばいいのかもわからない。仕事、住む場所、人間関係。これまで当たり前だと思っていたことが、急に色あせて見える。人生に迷ったとき、足元の地面がやわらかくなったような、心もとない感じがします。

周りの人は、迷わずに自分の道を進んでいるように見えます。それに比べて、自分だけが立ち止まっている気がして、焦りが募る。早く答えを出さなければと思うほど、頭の中で同じ考えがぐるぐる回ってしまう。

でも、迷っているのは、あなたが自分の人生に本気で向き合っているからです。何も考えずに流されていたら、迷いは生まれません。迷いは、今の生き方を見直す大切な機会でもあります。

この記事では、人生に迷うとはどういうことかを整理し、迷いを「次の章へ移る前の合図」として捉える見方を紹介します。焦らずに心と頭を整える方法、迷いの中身を見分けるコツ、小さく動いて道を確かめるワークもまとめました。

人生に迷うのは、地図が合わなくなった合図

人生に迷うとき、多くの場合、何かが「終わりかけて」います。これまで頼りにしてきた目標や役割、価値観が、今の自分にしっくりこなくなっているのです。

たとえば、こんな場面です。がむしゃらに働いて昇進したのに、うれしさより空しさを感じる。子どもが手を離れて、自分の時間が急に増えた。大切な人を失って、何のために頑張ってきたのかわからなくなった。どれも、これまでの地図が、今いる場所に合わなくなった状態です。

迷いは、あなたが壊れたしるしではなく、成長して古い地図が小さくなったしるしとも言えます。子どものころの服が着られなくなるのと同じで、それは前に進んできた証拠でもあるのです。

迷いと、ただの落ちこみの違い

ただし、迷いと、心の不調による落ちこみは、ときに見分けにくいものです。何をしても楽しくない、眠れない、食欲がない。そんな状態が続くなら、人生の方向より先に、心と体が休息を求めているのかもしれません。

迷いは「次の章」が始まる前の移行期

人生の転機について考えるうえで、役に立つ二つの見方を紹介します。

終わり、ニュートラルゾーン、新しい始まり

アメリカの組織コンサルタント、ウィリアム・ブリッジズは、人生の転機を「トランジション(移行)」と呼んで研究しました(Bridges, 1980)。彼は、転職や引っ越しのような外側の「変化」と、心の中で起きる「移行」を分けて考えました。

ブリッジズによると、移行は次の3つの段階をたどります。

段階起きていることよくある気持ち
終わりこれまでの役割や考え方を手放す喪失感、さびしさ、とまどい
ニュートラルゾーン古いものは終わったが、新しいものはまだ始まっていない迷い、宙ぶらりん、むなしさ
新しい始まり新しい方向や役割が、少しずつ形になる小さな手応え、慎重な期待

ここで大切なのは、移行は「始まり」からではなく「終わり」から始まる、という点です。そして、終わりと始まりのあいだには、どちらでもない時期があります。ブリッジズはそれを「ニュートラルゾーン」と呼びました。

人生に迷っているとき、あなたはこのニュートラルゾーンにいるのかもしれません。何も決まらない時期は、不安で、早く抜け出したくなります。ブリッジズは、この時期を、古いものを整理し、新しいものが芽生える大切な時間と捉えました。

終わったものに、区切りをつける

移行が「終わり」から始まるのなら、次に進むためには、何が終わったのかを認める必要があります。ところが私たちは、終わりを見ないまま、すぐに次を探そうとしがちです。

たとえば、長く続けた部署を離れたのに、前の仕事のやり方や評価にしがみついている。もう戻らないとわかっている関係を、心のどこかで待っている。そんなとき、新しい方向はなかなか見えてきません。

終わったものに区切りをつけるのは、それを否定することではありません。「あの時間があったから今の自分がいる」と認め、感謝とともに手放すことです。さびしさや悲しみがわいてきたら、それは大切なものだった証拠です。無理に打ち消さず、しばらく感じていてかまいません。

ヒーローズジャーニーで見ると

神話学者のジョーゼフ・キャンベルは、世界中の神話や英雄物語に、共通する流れがあることを示しました(Campbell, 1949)。主人公は、慣れ親しんだ日常から「冒険への誘い」を受けて旅立ち、試練をくぐり抜けて、何かを手にして帰ってきます。

興味深いのは、多くの物語で、主人公が最初は誘いを断ることです。怖い、自分には無理だ、今のままでいい。物語の中では、このためらいも旅の一部として描かれます。

人生の迷いを、この物語に重ねてみると、見え方が少し変わります。今のあなたは、日常から一歩踏み出す前の、ためらいの場面にいるのかもしれません。迷いは物語の停滞ではなく、次の章に向かう途中の一場面です。人生を物語として捉える方法は、ヒーローズジャーニーとは?人生を物語で捉えるで詳しく紹介しています。

人生に迷ったとき、まず整えたい3つのこと

迷いの中にいるときは、すぐに答えを出そうとするより、まず土台を整えることが先です。

1. 体を休める

睡眠不足や疲れがたまっていると、物事を悲観的に捉えやすくなります。人生の大きな問いは、夜中ではなく、よく眠った朝に考えるほうが、ずっと落ち着いて向き合えます。

迷っているときほど、生活のリズムを保つことを意識してください。眠る、食べる、少し歩く。当たり前のことですが、それが考える力を支えます。

不安で頭がいっぱいになったら、数分だけ呼吸に注意を向けてみるのも一つです。吸う息と吐く息を数えるだけでも、未来への心配から、今この瞬間に意識が戻ってきます。やり方はマインドフルネスとは?初心者のための始め方で紹介しています。

2. 頭の中を、紙の上に出す

迷っているとき、頭の中ではいくつもの考えが絡まり合っています。その状態で考え続けても、同じところをぐるぐる回るばかりです。

考えていることを、すべて紙に書き出してみてください。不安、やりたいこと、やめたいこと、気になっている人の言葉。整理しようとせず、思いつくまま書くのがコツです。書き出すだけで、頭の中に少し余白が生まれます。やり方はブレインダンプとは?頭の中を書き出す方法で紹介しています。

3. 一人で抱えこまない

迷いを誰かに話すと、話しているうちに自分の考えが整理されていきます。相手に答えを求めなくてもかまいません。「最近ちょっと迷っていて」と口にするだけで、気持ちが軽くなることがあります。

話す相手は、あなたの話を否定せず、最後まで聞いてくれる人を選んでください。アドバイスが多すぎる人や、自分の考えを押しつける人と話すと、かえって迷いが深くなることがあります。

身近な人には話しにくいこともあります。そんなときは、利害関係のない第三者を頼る方法もあります。仕事の迷いならキャリアの専門家、生き方全体ならコーチやカウンセラー。話を聞くことを仕事にしている人の前では、身構えずに本音を言葉にしやすくなります。

何に迷っているのかを見分ける

「人生に迷っている」と一言で言っても、その中身は人によって違います。迷いの種類によって、次の一歩も変わってきます。

迷いのタイプは、たとえば次の4つに分けられます。これは研究にもとづく分類ではなく、ふり返りのための目安です。

迷いのタイプ例手がかりになる問い
選択肢が多すぎる転職先の候補が3つあって決められない自分にとって、何がいちばん大切?
選択肢が見えない今の道しかない気がする今まで考えもしなかった道は?
方向そのものが見えない何がしたいのかわからない最近、少しでも心が動いたことは?
他人の期待と自分の思いがぶつかる親は安定を望むが、自分は挑戦したい誰の期待も気にしなくていいとしたら?

選択肢が多すぎるときは、自分の価値観を確かめるのが近道です。何を大切にしたいかがわかれば、選ぶ基準が見えてきます。価値観を言葉にする方法は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークで紹介しています。

方向そのものが見えないときは、考えるより、小さく動いてみるほうが手がかりは見つかりやすくなります。このあと詳しく見ていきます。

その迷いは、誰の声から生まれている?

迷いの中には、自分の本音ではなく、誰かの声から生まれているものもあります。「その年齢でそんな挑戦は無謀だ」「せっかく入った会社なのにもったいない」。親や上司、世間の声が、いつのまにか自分の声のように聞こえていることがあるのです。

迷いを書き出したら、一つずつ「これは誰の声?」と問いかけてみてください。自分の声と他人の声を分けるだけで、迷いの数がぐっと減ることがあります。他人の基準で考えてしまう人は、自分軸で生きるには?他人軸との違いと整え方も参考になります。

焦らずに進むための考え方

迷いから抜け出したいとき、「正しい答えを見つけてから動こう」と考えがちです。でも、人生の大きな問いには、考えるだけでは答えが出ないことも多いのです。

不確かさを、前向きに抱える

キャリアカウンセリングの研究者ジェラットは、ある考え方を提案しました(Gelatt, 1989)。「ポジティブ・アンサーテンティ(前向きな不確かさ)」です。未来は不確かで、情報もいつも不完全である。だからこそ、その不確かさを否定せず、前向きに付き合おうという考え方です。

ジェラットは、望むことについて「焦点を合わせつつ、柔軟であれ」と述べています。方向は大切にしながらも、途中で目的地が変わることを許す。迷いの中にいる人にとって、少し肩の力が抜ける考え方ではないでしょうか。

考えてから動くより、動きながら考える

組織行動学者のハーミニア・イバーラは、キャリアを大きく転換した人たちを調べました(Ibarra, 2003)。その結果、多くの人は、自分のやりたいことを完全にわかってから動いたわけではなかったと報告しています。

彼らは、副業やボランティア、新しい人との出会いなど、小さな「実験」を重ねていました。そして、試す中で「これは違う」「これは近い」と確かめながら、少しずつ新しい自分の姿をつかんでいったのです。

迷っているときは、「何をしたいか」を頭で考え続けるより、小さく試してみる。そして、試したことから学ぶ。このほうが、道は見えやすくなります。

取り返しのつく決断から、先に試す

迷いの中にある決断は、すべてが同じ重さではありません。会社を辞める、家を売るといった決断は、あとから元に戻すのが大変です。一方で、講座を一回受けてみる、週末だけ別の仕事を手伝うといったことは、合わなければやめられます。

迷ったら、決断を「取り返しがつくもの」と「つきにくいもの」に分けてみてください。取り返しがつくものは、考えこむより試してみる。つきにくいものは、試した結果が集まるまで保留にしておく。そう分けるだけで、「今すぐすべてを決めなければ」という焦りが少しやわらぎます。

人と比べない

迷っているとき、周りの人の人生が順調に見えて、焦ることがあります。でも、人の人生には、それぞれの章があります。あなたが今ニュートラルゾーンにいるとき、隣の人はちょうど新しい始まりにいるのかもしれません。

比べるなら、他人ではなく、少し前の自分と比べてください。迷いの中でも、何かを試したり、新しいことに気づいたりしているはずです。

迷いの中で踏み出す、小さな一歩

ここからは、迷いの中でも踏み出せる、具体的な一歩を紹介します。

人生の全体を見渡す

迷っているときは、一つの悩みに意識が集中して、人生全体が見えにくくなっています。仕事、健康、家族、友人、お金、学び、遊び、心の充実。こうした分野ごとに、今の満足度を点数にしてみると、全体のバランスが見えてきます。

仕事に迷っていても、友人関係は満たされているかもしれません。逆に、仕事の問題だと思っていたら、実は休息が足りていないことが本当の原因だった、ということもあります。やり方は、人生の輪(バランスホイール)で人生を見渡すで紹介しています。

迷ったときに、自分に聞きたい問い

考えが堂々めぐりになったら、問いの角度を変えてみます。次の中から、ひとつだけ選んで答えてみてください。

  • 10年後の自分が今の自分を見たら、何と声をかけるだろう?
  • 失敗しても誰にも知られないとしたら、何を試してみたい?
  • 今の生活の中で、これだけは手放したくないものは何?
  • 最近、時間を忘れて取り組めたことは何だった?

すぐに答えが出なくてもかまいません。問いを心のどこかに置いておくと、ふとしたときに答えが浮かんでくることがあります。

小さな実験を設計する

実験のポイントは、結果を「成功か失敗か」で判断しないことです。試してみて「違った」とわかるのも、立派な収穫です。迷いの中で選べる道が一つ減ったのですから、それだけ進んだことになります。

小さな実験を重ねていくと、少しずつ「これかもしれない」と感じる方向が見えてきます。その方向を言葉にしたくなったら、人生の目的の見つけ方|生きる意味に迷ったらも読んでみてください。

迷っている時間も、あなたの物語の一部

人生に迷っている時間は、つらく、長く感じられるものです。でも、その時間は無駄ではありません。古いものを手放し、新しいものが芽生える準備をしている大切な時間です。

焦って答えを出さなくても大丈夫です。今日は体を休め、頭の中を少し書き出し、小さな一歩を一つだけ考えてみる。それで十分です。

いつか振り返ったとき、今の迷いの時間が、新しい章の始まりだったと気づく日が来るかもしれません。そのときまで、迷いながら、一歩ずつ歩いていきましょう。

A question for you

あなたへの問い

もし失敗しても大丈夫だとしたら、来週ひとつ何を試してみますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

人生に迷うのは、何歳ごろが多いですか?

決まった年齢はありません。進学や就職、転職、結婚や離婚、子育ての節目、親の介護、定年など、生活が大きく変わるときに迷いは生まれやすくなります。何歳であっても、迷うのは自然なことです。

迷っているあいだは、何も決めないほうがいいですか?

人生を大きく左右する決断は、心と体が疲れきっているときには急がないのがおすすめです。一方で、何もしないでいると不安がふくらむこともあります。大きな決断は保留にしつつ、小さく試せることから動いてみるのが現実的です。

人生に迷ったとき、誰に相談すればいいですか?

まずは、あなたの話を否定せずに聞いてくれる人が向いています。身近な人に話しにくいときは、キャリアの専門家やコーチ、カウンセラーに相談する方法もあります。気分の落ちこみが続くときは、医療機関や公的な相談窓口を頼ってください。

やりたいことがないまま迷っていても、大丈夫ですか?

大丈夫です。やりたいことは、考えるだけでなく、試したり人と出会ったりする中で見えてくることが多いものです。今は「やりたいことを探す時期」と捉え、小さな興味を一つずつ確かめてみてください。

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References

  • Bridges, W. (1980). Transitions: Making Sense of Life's Changes. Addison-Wesley.
  • Campbell, J. (1949). The Hero with a Thousand Faces. Pantheon Books.
  • Gelatt, H. B. (1989). Positive uncertainty: A new decision-making framework for counseling. Journal of Counseling Psychology, 36(2), 252–256.
  • Ibarra, H. (2003). Working Identity: Unconventional Strategies for Reinventing Your Career. Harvard Business School Press.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。