No.05 On Coachingコーチングを知る
ライフコーチングとは?人生全体を整える対話
ライフコーチとは、仕事だけでなく生き方や人間関係、暮らし全体を扱うコーチのこと。ライフコーチが何をして何をしないのか、相談できるテーマの例、セッションのイメージ、研究でわかっていること、向いている人と選び方まで紹介します。
この記事の結論
ライフコーチングとは、仕事に限らず、生き方や人間関係、健康や暮らし方など人生全体をテーマに、自分の望みを言葉にして行動に移すのを支えるコーチングです。ライフコーチは答えを与えるのではなく、問いと傾聴で考えを整理し、小さな行動とふり返りに伴走します。
- ライフコーチングは、仕事も暮らしも含めた人生全体を扱うコーチング
- コーチは答えを出す人ではなく、考えを整理し行動に伴走する人
- 心の不調の治療ではない。つらさが強いときは医療やカウンセリングを
目次 Contents
仕事はそれなりに回っている。生活に大きな不満があるわけでもない。それなのに、ふとした瞬間に「このままでいいのかな」という気持ちが浮かぶ。誰かに相談するほどの悩みではない気がして、そのままにしている。そんな人は少なくありません。
その「このままでいいのかな」は、小さいようでいて、とても大切な問いです。仕事、暮らし、人との関係、自分の時間。人生のどこかで、何かが少しずれはじめているサインかもしれません。
ライフコーチングは、そうした言葉になりにくい問いを、一緒に扱うための対話です。この記事では、ライフコーチが何をしてくれるのか、どんなテーマを相談できるのか、セッションの様子まで、具体的に紹介します。
ライフコーチングとは? 一言でいうと
ライフコーチングとは、仕事に限らず、生き方や人間関係、健康や暮らし方など、人生全体を扱うコーチングです。ライフコーチは、その対話の相手になる人です。一対一で行うことが多いため、パーソナルコーチングと呼ばれることもあります。
コーチングそのものは、対話を通じて、相手が自分で答えを見つけ、行動するのを支える関わり方です。ライフコーチングは、その対象を「人生全体」に広げたものだと考えるとわかりやすいでしょう。コーチングの基本については、コーチングとは?意味・効果・受けて変わることで詳しく紹介しています。
ビジネスコーチングとの違い
ビジネスコーチングは、主に仕事の成果やリーダーシップを扱います。会社が費用を出し、仕事上の目標に向けて行うことが多い分野です。
ライフコーチングでは、仕事も人生の一部として扱います。「昇進するべきか」という仕事の悩みが、「本当は家族との時間を大切にしたい」という暮らしの話につながっていく。そうした広がりを、テーマから外れた話として切り捨てないのが特徴です。仕事の場面に焦点を当てたコーチングは、ビジネスコーチングとは?個人と組織での活用で紹介しています。
ライフコーチは何をしてくれる? 何をしない?
ライフコーチに期待できることと、期待しないほうがいいことを、分けて整理します。
| ライフコーチがすること | ライフコーチがしないこと |
|---|---|
| 評価や助言をはさまずに、話を最後まで聴く | 「こうするべき」と答えを決める |
| 考えを広げたり深めたりする問いを投げかける | 心の不調を診断したり、治療したりする |
| もやもやを言葉にして、整理するのを手伝う | あなたの代わりに決断する |
| 小さな行動を一緒に考え、ふり返りに付き合う | 収入や人間関係などの結果を保証する |
| できたことや変化を、言葉にして返す | 宗教や商品、高額な講座をすすめる |
ライフコーチは、人生の答えを知っている先生ではありません。あなたが自分の答えにたどり着くまで、隣を歩く伴走者です。
友人に話すのと、何が違う?
信頼できる友人に話すのも、とても大切なことです。ただ、友人は、あなたとの関係や自分の価値観から、つい助言をしたくなります。「やめたほうがいいよ」「私ならこうする」。それは優しさですが、あなたの答えとは限りません。
ライフコーチは、あなたの選択に利害をもたない立場で、話を聴くことに集中します。友人には気をつかって言えないことも、話しやすくなります。決まった時間に、自分のことだけを話せる場がある。それ自体が、忙しい毎日の中では貴重な時間になります。
ライフコーチングで相談できるテーマの例
ライフコーチングで扱うテーマに、決まりはありません。たとえば、次のような相談がよくあります。
- 生き方:やりたいことがわからない、自分らしく生きたい、このままでいいのか迷っている
- 仕事と暮らし:働き方を変えたい、仕事と家庭のバランスを見直したい
- 転機:結婚や出産、子育ての一段落、退職、引っ越しなどの変化にどう向き合うか
- 人間関係:家族やパートナー、友人との関わり方を変えたい
- 健康と習慣:運動や睡眠、食事など、始めたことを続けたい
- 自分との関係:自分を責めるくせをゆるめたい、自信をもちたい
テーマは、ひとつに決めきらなくても大丈夫です。人生の分野は、互いにつながっています。睡眠の悩みを話しているうちに、仕事を家に持ち帰る働き方が見えてくる。人間関係の話が、自分を後回しにするくせの話になる。ひとつの糸をたぐると、ほかの分野も動きはじめることがよくあります。
やりたいことがわからないという悩みは、ライフコーチングの入口としてとても多いテーマです。一人で考えてみたい人は、やりたいことがわからない人へ|見つけ方と小さな一歩も手がかりになります。
セッションのイメージ:初回から数か月後まで
ライフコーチングの進み方は、コーチによって違います。ここでは、よくある流れを紹介します。
初回:関係をつくり、テーマを探す
初回は、お互いを知る時間です。コーチングの進め方や守秘について説明を受け、どんなふうに関わってほしいかを話し合います。
そのうえで、人生のいろいろな分野を見渡しながら、何を話したいかを探していきます。仕事、家族、健康、お金、趣味、学びなど、分野ごとの満足度を眺めると、手を入れたい場所が見えてきます。
2回目以降:対話と小さな行動のくり返し
2回目からは、テーマに沿って対話を深めます。1回は30分から1時間ほどで、毎週や隔週、月1回などのペースで続けるのが一般的です。
セッションの最後には、次までにやってみる小さな行動を、自分で決めます。次のセッションでは、まずそのふり返りから始めます。うまくいかなかったことも、大切な材料です。
ライフコーチがよく使う問い
セッションの中で、ライフコーチはさまざまな問いを投げかけます。たとえば、次のようなものです。
- 「本当は、どうなったらいいと思っていますか?」
- 「それが叶ったら、あなたの毎日はどう変わりますか?」
- 「今の状態を10点満点でいうと、何点ですか? 1点上がると、何が違いますか?」
- 「同じようなことを、前にうまく乗りこえたときは、何が助けになりましたか?」
- 「誰の期待も気にしなくていいとしたら、何を選びますか?」
どの問いにも、正解はありません。すぐに答えが出ないことも多いものです。その沈黙を急かさずに待つことも、コーチの大切な仕事です。
数か月後:ふり返りと、次の選択
数か月ほど続けたところで、最初に描いた「どうなっていたいか」と比べてふり返ります。何が変わり、何がまだ変わっていないか。続けるか、テーマを変えるか、ここで一区切りにするかを話し合います。
セッションの流れをもっと詳しく知りたい人は、コーチングセッションの流れ|初回から振り返りまでをどうぞ。
ライフコーチングの効果:研究でわかっていること
ライフコーチングの研究は、まだ多くはありませんが、いくつかの報告があります。
オーストラリアの心理学者アンソニー・グラントは、少人数のグループにライフコーチングを行いました。その結果、目標の達成度が高まり、不安やストレスなどの心の状態にも改善が見られたと報告しています(Grant, 2003)。ただし、比較のためのグループがない、小さな研究でした。
その後、比較のためのグループを設けた研究も行われています。認知行動と解決志向の考え方を使ったライフコーチングでは、目標に向かう力や幸福感、希望の高まりが報告されました。その効果は、一定期間続いたとされています(Green ら, 2006)。
ライフコーチングが向いている人・向いていないとき
ライフコーチングが特に役に立ちやすいのは、次のような人です。
- 漠然とした迷いを、言葉にして整理したい
- 頭ではわかっているのに、行動に移せないことがある
- 人生の転機で、これからの方向を考えたい
- 一人で考えると、同じところをぐるぐる回ってしまう
一方で、次のようなときは、ライフコーチングより先に考えたい支援があります。気分の落ちこみが続いて日常生活がつらいとき。過去のつらい出来事が頭から離れないとき。法律やお金など、専門的な判断が必要な問題を抱えているときです。
このワークの考え方は、人生の輪(バランスホイール)で人生を見渡すでも詳しく紹介しています。
受ける前に、少しだけ準備しておくと楽になること
ライフコーチングを受けると決めたら、次のことを軽く考えておくと、初回の対話が進みやすくなります。最近、心が動いた出来事。逆に、もやもやが続いていること。3か月後にどうなっていたらうれしいか。どれも、きれいな答えでなくてかまいません。メモを1枚持っていくだけで、話しはじめのハードルが下がります。
ライフコーチを選ぶときのポイント
ライフコーチは、日本では国家資格がなく、誰でも名乗ることができます。経験や考え方は人によって大きく違うので、次の点を確かめてから選ぶと安心です。
- どこで何を学び、どんな人のコーチングを経験してきたか
- 話した内容の扱い(守秘)について、説明があるか
- 料金と期間、解約の条件が、書面ではっきりしているか
- 体験セッションで、安心して本音を話せると感じたか
- 「人生が確実に変わる」のような、結果を保証する言い方をしないか
中でも大切なのは、話しやすさです。どんなに経歴が立派でも、その人の前で身構えてしまうなら、対話は深まりにくくなります。くわしくはコーチの選び方|後悔しないための7つのポイントで紹介しています。
人生の地図を、自分の手で描き直す
ライフコーチングは、誰かに人生の正解を教えてもらう場ではありません。ずっと胸にあった「このままでいいのかな」を、ようやく声に出せる場所です。声に出してみると、その問いの奥に、あなたが本当に望んでいるものが見えてきます。
コーチングを受けるかどうかは、急いで決めなくてかまいません。まずは今日、人生の輪を描いてみてください。点数の低い分野を責める必要はありません。そこは、これから手を入れられる余白です。
人生の地図は、誰かに描いてもらうものではなく、自分の手で少しずつ描き直していけるものです。
A question for you
あなたへの問い
人生のどの分野に、いちばん手を入れたいと感じていますか?
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よくある質問
ライフコーチとカウンセラーは、何が違いますか?
カウンセラーは主に、心の悩みや不調からの回復を支えます。ライフコーチは、日常生活を送れている人が、これからの生き方を考え、行動に移すのを支えます。扱うテーマが重なることもありますが、心のつらさが強いときはカウンセリングや医療が先です。
ライフコーチングとビジネスコーチングの違いは何ですか?
ビジネスコーチングは、主に仕事の成果やリーダーシップなど、仕事の場面を扱います。ライフコーチングは、仕事も含めた人生全体を扱います。仕事の悩みを話しているうちに、暮らし方や価値観の話に広がっていくのが、ライフコーチングの特徴です。
話すテーマが決まっていなくても、受けられますか?
受けられます。「このままでいいのかわからない」という漠然とした気持ちから始める人も少なくありません。初回は、人生のいろいろな分野を見渡しながら、何を話したいかを一緒に探すところから始めることがよくあります。
ライフコーチになるのに、資格は必要ですか?
日本では、コーチングに国家資格はなく、資格がなくてもコーチを名乗ることはできます。そのため、受ける側は、どこで何を学んだか、どんな経験があるかを確かめることが大切です。国際コーチング連盟(ICF)などの認定資格は、ひとつの目安になります。
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References
- Grant, A. M. (2003). The impact of life coaching on goal attainment, metacognition and mental health. Social Behavior and Personality, 31(3), 253–264.
- Green, L. S., Oades, L. G., & Grant, A. M. (2006). Cognitive-behavioral, solution-focused life coaching: Enhancing goal striving, well-being, and hope. The Journal of Positive Psychology, 1(3), 142–149.
- Whitmore, J. (2017). Coaching for Performance (5th ed.). Nicholas Brealey Publishing.
- Kimsey-House, H., Kimsey-House, K., Sandahl, P., & Whitworth, L. (2018). Co-Active Coaching (4th ed.). Nicholas Brealey Publishing.
- 国際コーチング連盟(ICF)公式サイト
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」