No.04 Draw the Future未来を描く

天職の見つけ方好き・得意・価値観から探す

天職の見つけ方を、好き・得意・価値観・人の役に立つことの重なりから探るワークで紹介。天職とは何か、見つからないときに陥りやすい思い込み、今の仕事を天職に近づける方法、適職診断やキャリア相談の賢い使い方まで。

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この記事の結論

天職とは、好き・得意・価値観・人の役に立つことが重なり、「これは自分の仕事だ」と感じられる働き方のことです。どこかに一つだけある職業を探すより、その重なりを手がかりに小さく試し、今の仕事の中でも育てていくものと考えると見つけやすくなります。

  • 天職は一つの職業名ではなく、好き・得意・価値観・役立ちが重なる働き方
  • 「どこかにある」と思うほど迷いやすい。試しながら育てる視点をもつ
  • 診断は答えではなく仮説。今の仕事を少しずつ作り変える道もある
目次 Contents
  1. 天職とは? 一言でいうと
  2. 同じ仕事でも、天職になる人とならない人がいる
  3. 天職が見つからないときの4つの思い込み
  4. 4つの重なりで探す:天職の見つけ方ワーク
  5. 今の仕事を、天職に近づける方法
  6. 適職診断やキャリア相談の賢い使い方
  7. 天職は、名前より手触りで見つかる

今の仕事が嫌いなわけではない。でも、これが自分のやるべきことなのかと聞かれると、自信がない。周りには「この仕事が天職」と言い切れる人がいて、うらやましくなる。自分に向いている仕事がわからないまま、時間だけが過ぎていく気がする。

天職を探しているあなたは、ただ生活のためだけでなく、意味を感じながら働きたいと願っている人です。それは贅沢な望みではありません。人生の多くの時間を過ごす場所だからこそ、自然にわいてくる問いです。

ただ、天職探しには落とし穴もあります。「どこかに自分だけの正解の職業がある」と思いこむと、探せば探すほど見つからない気がしてくるのです。

この記事では、天職とは何かを整理したうえで、好き・得意・価値観・人の役に立つことの重なりを探るワークを紹介します。今の仕事を天職に近づける方法や、適職診断、キャリアの相談先の上手な使い方もまとめました。

天職とは? 一言でいうと

天職とは、好き・得意・価値観・人の役に立つことが重なり、「これは自分の仕事だ」と感じられる働き方のことです。

英語では「コーリング(calling)」と呼ばれます。もともとは「神に呼ばれる」という宗教的な意味をもつ言葉でした。今の心理学では、宗教に限らず、仕事に意味や使命感を感じている状態を指して使われています。

ここで押さえておきたいのは、天職が「職業名」ではなく「働き方」や「仕事との関係」だという点です。同じ看護師でも、天職だと感じている人もいれば、そうでない人もいます。天職かどうかを決めるのは、職種そのものより、その人と仕事の関わり方なのです。

天職・適職・やりたい仕事の違い

似た言葉を比べてみます。

中心にあるもの特徴
適職能力・性格・条件との相性無理なく続けやすい。外から見て判断しやすい
やりたい仕事興味・憧れ気持ちは強いが、中身を知ると変わることもある
天職意味・価値観・役立ち「自分がやる理由」を感じられる。内側から感じるもの

適職とやりたい仕事は、天職の材料になります。相性がよく、興味もあり、そこに意味が加わったとき、人は「これは天職だ」と感じやすくなります。

同じ仕事でも、天職になる人とならない人がいる

心理学者のエイミー・レズネスキーらは、人が仕事とどう向き合っているかを調べました(Wrzesniewski ら, 1997)。その結果、仕事との関係は大きく3つのタイプに分けられると報告しています。

タイプ仕事は何のため?感じ方の例
ジョブ(労働)生活の糧を得るため「週末が待ち遠しい」
キャリア(出世)昇進や評価のため「次のポジションに上がりたい」
コーリング(天職)仕事そのものに意味を感じるため「お金がなくても、何らかの形でこの仕事を続けたい」

興味深いのは、同じ職種の人たちの中にも、3つのタイプが混ざっていたことです。**天職かどうかは、仕事の種類だけでは決まらない。**この発見は、天職を「探す」だけでなく「育てる」こともできる、という見方につながっていきます。

どのタイプが良い、悪いということでもありません。仕事は生活のためと割り切り、意味は家族や趣味の中で感じる。そんな生き方も、ひとつの選択です。

天職が見つからないときの4つの思い込み

天職が見つからないのは、あなたに才能がないからではありません。探し方の前提に、つまずきの種が隠れていることが多いのです。

1. 「どこかに正解の職業がある」と思っている

天職は、どこかにある一つの職業を見つければ手に入る。そう考えていると、職業図鑑や転職サイトを眺めても「これだ」と思えず、焦りばかりが募ります。

心理学者のオキーフ、ドゥエックらの研究では、興味を「もともと決まっていて、見つけるもの」と考える人がいました。こうした人は、そうでない人に比べて、新しい分野に関心を広げにくい傾向が見られました(O’Keefe ら, 2018)。また、興味のある分野が難しくなったときに、関心を失いやすいという結果も出ています。

興味や情熱は、取り組むうちに育っていく面もあります。「見つける」と「育てる」の両方の目をもつと、探し方が変わってきます。

2. 「好き」だけで探している

天職というと、「好きなことを仕事に」という言葉が浮かびます。でも、好きなことでも、得意でなければ苦しくなります。得意でも、誰の役にも立たなければ仕事として続けにくいものです。

好きは大切な入り口です。ただ、それだけで決めようとすると、迷いが深くなります。後で紹介するように、いくつかの要素の重なりで考えるのがおすすめです。

3. 頭の中だけで決めようとしている

向いている仕事がわからないとき、多くの人はまず考えこみます。自己分析を重ね、適職診断を何度も受ける。でも、仕事が自分に合うかどうかは、やってみてはじめてわかる部分が大きいのです。

ボランティアや副業、職場での小さな新しい役割。少しだけ試してみると、頭で考えていたときには見えなかった「意外に楽しい」「思ったより消耗する」が見えてきます。

4. 「天職なら苦しくないはず」と思っている

天職に就けば、毎日が楽しくて苦労はない。そんなイメージをもっていると、少しでもつらくなったとたんに「これは天職ではなかった」と感じてしまいます。

動物園の飼育員を調べた研究があります(Bunderson & Thompson, 2009)。仕事を天職だと感じている人ほど、仕事に深い意味を見いだしていました。一方で、その思いの強さゆえに、低い給与や厳しい条件も受け入れやすい面があったと報告されています。天職は、喜びと同時に、身を削りやすい「両刃の剣」にもなりうるのです。

天職にも、しんどい日はあります。大切なのは、苦労がないことより、苦労しても続けたい理由があるかどうかです。そして、その思いが自分を追いつめていないかにも、ときどき目を向けてください。

4つの重なりで探す:天職の見つけ方ワーク

ここからは、手を動かしながら天職の手がかりを探します。使うのは、次の4つの問いです。

問い中身
好き時間を忘れて取り組めること、自然と関心が向くこと
得意人よりも少ない労力でできること、よく頼まれること
価値観自分が大切にしたい在り方。満たされると自分らしくいられるもの
役立ち誰かに喜ばれること、社会に必要とされていること

この4つが重なるところに、天職の候補があります。仕事として成り立つには、ここに「お金になるか」という視点も加わります。ただ、最初からお金の条件で絞ると、候補が狭くなりがちです。まずは4つの重なりを自由に探し、収入の問題はあとで考えましょう。

ワーク1:「好き」と「得意」を棚卸しする

ポイントは、名詞を動詞に言い換えることです。たとえば「料理が好き」でも、ある人は「手順を工夫すること」、別の人は「人に食べてもらうこと」が好きなのかもしれません。動詞まで分けると、仕事に通じる芽が見えやすくなります。

得意なことは、自分では当たり前すぎて気づきにくいものです。家族や友人に「私がよく頼まれることって何だと思う?」と聞いてみると、意外な答えが返ってきます。自分の強みを詳しく探りたい人は、強みの見つけ方|資質と才能を言葉にするも参考にしてください。

ワーク2:「価値観」と「役立ち」を言葉にする

次は、仕事の意味に関わる二つです。次の問いに答えてみてください。

  • 仕事や活動で、いちばん「やってよかった」と思えたのはいつ? そのとき、何が満たされていた?
  • 逆に、どれだけ給料がよくても続けたくないと思うのは、どんな仕事?
  • 誰かに「ありがとう」と言われて、特にうれしかったのはどんな場面?
  • 身の回りや社会で、「誰かがなんとかすればいいのに」と思っていることは?

たとえば、「やってよかった」と思えたのが、取引先とのトラブルを丁寧に解決した経験だったとします。そこでは「誠実さ」や「信頼を築くこと」が満たされていたのかもしれません。価値観を深く探りたい人は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークで、体験から掘り出す方法を紹介しています。

ワーク3:重なりから「仮の天職」を書き、小さく試す

ワーク1と2で出てきた言葉を見比べて、重なりそうなところを探します。

文はたとえば、こんな形になります。「私は、複雑な情報を整理する力を使って、初めての手続きに戸惑う人を助けたい。そのとき、誰も取り残されない公平さが満たされる」。

この文から、すぐに職業名が決まるわけではありません。行政の窓口、ITのサポート、マニュアルづくり、地域の相談員。さまざまな仕事が候補になります。大切なのは、職業名より先に「どんな働き方なら意味を感じられるか」の手がかりをつかむことです。

小さく試す方法は、さまざまです。興味のある分野の人に話を聞く。休日にボランティアをしてみる。今の職場で、近い役割を引き受けてみる。試して違和感があれば、それも大切な情報です。

今の仕事を、天職に近づける方法

天職を探すというと、転職を考えがちです。でも、今の仕事を少しずつ作り変えて、天職に近づける道もあります。

ジョブ・クラフティング

レズネスキーとダットンは、働く人が自分の仕事を主体的に作り変えることを「ジョブ・クラフティング」と呼びました(Wrzesniewski & Dutton, 2001)。作り変える対象は、主に3つあります。

作り変えるもの例
仕事のやり方(タスク)得意な資料づくりを自分から引き受ける、手順を工夫する
関わる人(関係)尊敬できる先輩に相談する機会を増やす、お客さまと直接話す場をつくる
仕事の意味づけ(認知)「伝票処理」を「お客さまの安心を守る仕事」と捉え直す

この研究では、病院の清掃スタッフの例が紹介されています。清掃を単なる作業と捉える人がいる一方で、患者や家族と言葉を交わし、自分を治療を支えるチームの一員と考える人もいました。仕事の中身は同じでも、その人にとっての意味は大きく変わっていたのです。

まず一つ、小さく変えてみる

ジョブ・クラフティングは、大きな改革でなくてかまいません。来週の仕事の中で、一つだけ「自分らしいやり方」を試してみる。それだけでも、仕事との関係は少しずつ変わっていきます。

それでも価値観と仕事が大きくずれ続けるなら、それは次の道を考えるサインかもしれません。そのときは、副業や学び直しなど、今の生活を保ちながら試せる形から始めると安心です。もっと広い視点で生き方を見直したい人は、人生の目的の見つけ方|生きる意味に迷ったらも読んでみてください。

適職診断やキャリア相談の賢い使い方

天職探しには、診断ツールや専門家の力を借りるのも一つの方法です。ただし、使い方には少しコツがあります。

適職診断は「答え」ではなく「仮説」

職業の選び方に関する研究で有名なのが、心理学者ジョン・ホランドの理論です(Holland, 1997)。ホランドは、人の興味や性格を6つのタイプに分けました。現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的の6つです。そして、タイプに合った環境で働くと、力を発揮しやすいと考えました。

この理論にもとづく検査は、日本でも職業相談の場で使われています。ただ、検査が示すのは「傾向」であって、あなたの天職を言い当てるものではありません。ネット上の手軽な診断の中には、根拠がはっきりしないものもあります。

おすすめは、結果を読んで、納得できた部分と違和感がある部分の両方に印をつけることです。「たしかに」と思った部分は、それを裏づける体験を思い出す。違和感がある部分は、どこが違うのかを言葉にする。そうすると、診断はあなた自身の言葉を引き出す道具に変わります。自分を多面的に見る方法は、自己分析のやり方|一人でできるワーク7選でも紹介しています。

キャリアの専門家に相談する

一人で考えていると、同じところをぐるぐる回ってしまうことがあります。そんなときは、話を聞いてくれる専門家を頼るのも一つです。

日本には、国家資格の「キャリアコンサルタント」がいます。職業選択や能力開発について相談に乗る専門家です。ハローワークなど公的な窓口で相談できる場合もあります。また、対話を通じて自分の答えを見つけるのを支える「キャリアコーチング」を受ける人も増えています。

コーチングがどんなものかを知りたい人は、コーチングとは?意味・効果・受けて変わることが参考になります。相談相手を選ぶときは、結論を押しつけず、あなたの言葉を引き出してくれるかを確かめてください。

偶然を味方にする

キャリアの研究者クランボルツらは、キャリアの多くは予期しない出来事に影響されると考えました。そして、偶然を活かす姿勢を「計画された偶発性(プランド・ハップンスタンス)」と名づけています(Mitchell ら, 1999)。

偶然を活かすために役立つ姿勢として、5つが挙げられています。好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、そして冒険心です。天職は、完璧な計画から生まれるとは限りません。興味のあることに少し手を伸ばし、出会った機会に乗ってみる。その繰り返しの中で、ふと「これかもしれない」と感じる瞬間が訪れることもあります。

天職は、名前より手触りで見つかる

天職は、ある日突然、職業名として目の前に現れるものではありません。「この作業をしているとき、時間を忘れていた」「あの人の役に立てて、うれしかった」。そんな手触りの積み重ねの中で、少しずつ輪郭が見えてくるものです。

今の仕事が天職でなくても、焦る必要はありません。今の仕事の中にも、天職の材料は隠れています。小さな工夫を一つ試し、心が動いたかどうかを確かめてみてください。

今日の仕事の中で、少しでも「これは悪くない」と感じた瞬間があったら、メモしておきましょう。何をしていて、誰が喜んでいたか。その一行一行が、あなたの天職の地図になっていきます。

A question for you

あなたへの問い

時間を忘れて取り組めて、人にも喜ばれたことは何でしたか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

天職と適職は、どう違いますか?

適職は、能力や性格、働く条件が自分に合っている仕事のことです。天職は、それに加えて「この仕事には意味がある」「自分がやる理由がある」と感じられる仕事を指すことが多い言葉です。適職が天職に育っていくこともあります。

天職は一生に一つだけですか?

一つとは限りません。人生の時期によって大切にしたい価値観は変わり、身につく力も増えていきます。若いころは天職だと感じた仕事が、10年後には別の形に変わっていくのも自然なことです。

今の仕事が天職ではないと感じたら、転職すべきですか?

すぐに転職を決める必要はありません。まずは今の仕事の中で、やり方や関わる人、仕事の意味づけを少し変えてみる方法があります。そのうえで、価値観と大きくずれ続けるなら、副業や学び直しなど小さな形で次を試してみるのがおすすめです。

適職診断の結果は、信じていいですか?

結果は答えではなく、仮説として使うのがおすすめです。研究にもとづく検査もありますが、手軽な診断の根拠はさまざまです。結果を見て「たしかに」と感じた部分と、違和感がある部分の両方を、自分の体験と照らし合わせてみてください。

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References

  • Wrzesniewski, A., McCauley, C., Rozin, P., & Schwartz, B. (1997). Jobs, careers, and callings: People's relations to their work. Journal of Research in Personality, 31(1), 21–33.
  • Wrzesniewski, A., & Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of Management Review, 26(2), 179–201.
  • Bunderson, J. S., & Thompson, J. A. (2009). The call of the wild: Zookeepers, callings, and the double-edged sword of deeply meaningful work. Administrative Science Quarterly, 54(1), 32–57.
  • O'Keefe, P. A., Dweck, C. S., & Walton, G. M. (2018). Implicit theories of interest: Finding your passion or developing it? Psychological Science, 29(10), 1653–1664.
  • Duffy, R. D., & Dik, B. J. (2013). Research on calling: What have we learned and where are we going? Journal of Vocational Behavior, 83(3), 428–436.
  • Holland, J. L. (1997). Making Vocational Choices: A Theory of Vocational Personalities and Work Environments (3rd ed.). Psychological Assessment Resources.
  • Mitchell, K. E., Levin, A. S., & Krumboltz, J. D. (1999). Planned happenstance: Constructing unexpected career opportunities. Journal of Counseling & Development, 77(2), 115–124.

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。