No.02 Tend the Mind心を整える

ストレス対処法心と体のしくみから整える

ストレス対処法を、心と体のしくみから整理。ストレスとは何か、体の中で起きる反応、同じ出来事でも感じ方が違う理由、コーピングの種類と選び方、自分に合う対処法を見つけるワーク、ストレスから大切な価値観に気づく視点まで紹介します。

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この記事の結論

ストレスとは、外からの刺激に対して心と体が起こす反応のことです。対処法は、原因に働きかける方法と、気持ちを整える方法に大きく分かれます。変えられることには前者を、変えられないことには後者を選び、小さな対処法を数多く持っておくと助けになります。

  • ストレスは刺激そのものではなく、それを「脅威だ」と受け止めたときの反応
  • 変えられることには原因への対処を、変えられないことには気持ちへの対処を
  • 何にストレスを感じるかは、あなたが何を大切にしているかを映している
目次 Contents
  1. ストレスとは? 一言でいうと
  2. ストレスがかかると、体の中で何が起きる?
  3. 同じ出来事でも、ストレスの大きさが人によって違う理由
  4. ストレスは、あなたの大切なものを映す鏡
  5. ストレス対処法(コーピング)の種類
  6. 自分に合った対処法を見つけるワーク
  7. 今日からできる、心と体を整える基本
  8. ストレスをゼロにするより、回復できる自分に

朝起きた瞬間から、体が重い。休日も仕事のことが頭から離れない。人に話すほどのことではない気がするけれど、小さな疲れが積み重なって、心の余白がなくなっている。そんな状態で、このページを開いたのかもしれません。

「ストレス解消には運動」「趣味でリフレッシュ」。よく聞く方法を試しても、いまいち効かない。そもそも、それをする気力が残っていない。そう感じている人も多いはずです。

ストレスへの対処がうまくいかないのは、あなたが弱いからではありません。ストレスのしくみや、自分にとって何がストレスなのかを知らないまま、方法だけを当てはめようとしているからかもしれません。

この記事では、ストレスが心と体に何を起こすのかを整理したうえで、対処法(コーピング)の種類と選び方を紹介します。さらに、「自分は何にストレスを感じるのか」から、あなたが大切にしているものに気づく視点も加えました。

ストレスとは? 一言でいうと

ストレスとは、外からの刺激に対して、心と体が起こす反応のことです。この刺激のほうを「ストレッサー」と呼び、反応のほうを「ストレス反応」と呼んで区別します。

この言葉を医学・生理学の世界に広めたのは、生理学者のハンス・セリエです。もともとは物理学で、物体に力が加わったときの「ゆがみ」を表す言葉でした。セリエは、さまざまな刺激に対して体が共通の反応を示すことに注目し、それをストレスと呼んだのです(Selye, 1956)。

ストレッサーにはいろいろな種類がある

ストレッサーには、いくつかの種類があります。暑さや騒音などの物理的なもの。睡眠不足や病気などの体のもの。人間関係や仕事の悩みなどの心理・社会的なものです。

意外なのは、うれしい出来事もストレッサーになることです。1960年代に作られた生活上の出来事のストレス度を測る尺度には、結婚や、個人的な大きな達成なども含まれていました(Holmes & Rahe, 1967)。望んだ変化でも、生活に合わせ直す負担は生じるのです。

さらに、大きな出来事より、日々の小さな困りごとの積み重ねのほうが、心の健康と強く結びついていたという研究もあります(Kanner ら, 1981)。満員電車、終わらない家事、細かい連絡のやりとり。「これくらいで」と思うようなことこそ、見過ごさないことが大切です。

ストレスがかかると、体の中で何が起きる?

ストレッサーに出会うと、体は「緊急事態モード」に切り替わります。生理学者のウォルター・キャノンは、これを「闘争か逃走か」の反応と呼びました(Cannon, 1915)。

心臓の鼓動が速くなり、呼吸が浅くなり、筋肉に血液が集まります。すぐに戦うか、逃げるかできるように、体が準備をするのです。同時に、副腎からコルチゾールなどのホルモンが出て、エネルギーを使いやすい状態にします。

この反応は、命を守るためのしくみです。猛獣から逃げる場面では役に立ちます。ところが現代のストレッサーは、上司のメールや将来への不安のように、戦っても逃げても解決しないものがほとんどです。それでも体は、同じ緊急事態モードに入ってしまいます。

なお、ストレスへの反応は「闘争か逃走か」だけではありません。誰かを守ろうとしたり、人とのつながりを求めたりする反応もある、という指摘もあります(Taylor ら, 2000)。つらいときに誰かと話したくなるのは、自然な反応なのです。

長く続くと、体がすり減っていく

セリエは、ストレスが続いたときの体の反応を3つの段階で説明しました。

段階体の状態感じやすいこと
警告期ストレッサーに驚き、緊急モードに入る動悸、緊張、一時的な不調
抵抗期ストレッサーに適応し、なんとか持ちこたえるがんばれている感覚。ただし無理がきかなくなる
疲憊期適応する力が尽きてくる強い疲れ、体調不良、気力の低下

抵抗期は、本人が「まだ大丈夫」と感じやすい時期です。その間にも、体の中では負担がたまっていきます。神経内分泌学者のマキューアンは、この積み重なる負担を「アロスタティック負荷」と呼びました(McEwen, 1998)。

ストレスのサインに気づく

ストレスのサインは、心、体、行動の3つに表れます。

  • 心:イライラする、不安になる、集中できない、楽しめない
  • 体:眠りが浅い、食欲が変わる、肩こり、頭痛、胃の不調
  • 行動:お酒やスマホの時間が増える、人と会うのが面倒になる、ミスが増える

ひとつひとつは小さくても、いくつも重なっているなら、体が「休んでほしい」と伝えているサインかもしれません。

同じ出来事でも、ストレスの大きさが人によって違う理由

同じように上司から注意されても、気にしない人もいれば、何日も落ちこむ人もいます。この違いはどこから生まれるのでしょうか。

心理学者のリチャード・ラザルスとスーザン・フォルクマンは、評価の働きに注目しました(Lazarus & Folkman, 1984)。出来事そのものより、その出来事をどう評価するかがストレスを左右する、と考えたのです。評価には2つの段階があります。

  • 一次評価:「この出来事は、自分にとって脅威か? 大事なことか?」
  • 二次評価:「自分には、これに対処する力や手段があるか?」

「自分にとって大事なことがおびやかされている。しかも、対処できそうにない」と評価したとき、ストレスは強くなります。 反対に、大事なことでも「なんとかなりそう」と思えれば、ストレスは小さくなります。

ドキドキを「準備ができている」と受け止める

評価の仕方を変えると、体の反応まで変わるという研究もあります。人前で話す課題の前に、「緊張による体の反応は、体がパフォーマンスに備えているしるしだ」と説明を受けた人たちがいました。彼らは、説明を受けなかった人たちより、心臓や血管の反応が、課題に向き合うのに適した形になっていました(Jamieson ら, 2012)。

ストレスについての考え方そのものが、ストレスへの反応に影響するという報告もあります(Crum ら, 2013)。ストレスは害にしかならないと考える人より、成長の機会にもなると考える人のほうが、心身の調子がよい傾向がありました。

もちろん、考え方を変えればどんなストレスも平気になる、ということではありません。ただ、評価には自分で働きかけられる余地がある。それは知っておく価値があります。出来事の受け止め方を変える方法は、リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするで詳しく紹介しています。

ストレスは、あなたの大切なものを映す鏡

先ほどの一次評価をもう一度見てください。「自分にとって大事なことか?」。どうでもいいことには、人はストレスを感じません。

つまり、強いストレスを感じる場面には、あなたが大切にしているものが関わっています。仕事の評価が気になって仕方ないのは、「認められたい」「役に立ちたい」が大切だからかもしれません。家族とのすれ違いがつらいのは、「つながり」を大切にしているからかもしれません。

ストレスを「なくすべきもの」とだけ見ると、この手がかりを見落としてしまいます。少し視点を変えて、ストレスを自分を知る材料として使ってみましょう。

ステップ4で書いた一文は、あなたの価値観の手がかりです。価値観をさらに深く掘り下げたい人は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークも参考にしてください。

ストレス対処法(コーピング)の種類

ストレスに対処するための工夫を、心理学では「コーピング」と呼びます。ラザルスとフォルクマンは、コーピングを大きく2つに分けました。その後の研究で加わった視点も含めて、表にまとめます。

種類中身例
問題に向けた対処ストレスの原因そのものに働きかける仕事の量を相談する、計画を立て直す、情報を集める
気持ちに向けた対処原因は変えずに、気持ちを整える深呼吸、運動、好きな音楽、見方を変える
人に頼る対処人の助けや共感を得る信頼できる人に話す、手伝いを頼む
意味に向けた対処出来事の中に意味や価値を見いだす「この経験から何を学べるか」を考える

意味に向けた対処は、深刻なストレスを抱えた人たちの研究から注目されるようになりました(Folkman, 1997)。つらい状況の中でも、小さな前向きな出来事に目を向けることが、心の支えになっていたのです。

変えられるか、変えられないかで選ぶ

どの対処法が正しい、ということはありません。目安になるのは、そのストレスの原因が変えられるかどうかです。

変えられるものなら、問題に向けた対処が役に立ちます。締め切りがきついなら、上司に相談して調整する。変えられないものなら、気持ちに向けた対処が助けになります。家族の病気や過去の出来事は、原因そのものを動かすことはできません。そのときは、自分の心と体を整えることに力を注ぎます。

変えられないことに問題解決を挑み続けると、疲れ果ててしまいます。反対に、変えられることを気晴らしだけでやり過ごすと、問題が大きくなることもあります。

書くことも、対処法になる

つらい体験について、感じたことを書き出す方法もあります。心理学者のペネベーカーは、つらい出来事について、数日間にわたって短い時間ずつ書いてもらう研究を重ねました。その結果、心身の健康に改善が見られたと報告しています(Pennebaker, 1997)。頭の中のもやもやを紙に出すだけでも、少し距離をとれることがあります。書く習慣については、ジャーナリングとは?書く瞑想のやり方と効果も参考になります。

自分に合った対処法を見つけるワーク

ストレス対処でいちばん頼りになるのは、ひとつの強力な方法より、小さな方法をたくさん持っておくことです。ひとつの方法に頼っていると、それが使えない状況で行き詰まってしまうからです。

リストは、元気なときにつくっておくのがおすすめです。ストレスが強いときほど、何をすれば楽になるかを考える余裕がなくなるからです。

今日からできる、心と体を整える基本

最後に、どんな対処法の土台にもなる基本を確認しておきます。

眠る

睡眠は、ストレスで消耗した心と体を回復させる時間です。眠れないほど考えごとが続くときは、寝る前に気になることを紙に書き出し、頭の外に置いてから布団に入ってみてください。

体を動かす

ストレス反応は、もともと体を動かすための準備です。散歩やストレッチなど、軽く体を動かすと、高まった緊張を逃がしやすくなります。

呼吸と注意を今に戻す

不安や考えごとがぐるぐる回るときは、呼吸や体の感覚に注意を戻す練習が役立ちます。やり方はマインドフルネスとは?初心者のための始め方と効果で紹介しています。感情の波にのまれそうなときの扱い方は、感情コントロールの方法|ステートを整えるコツもどうぞ。

ストレスをゼロにするより、回復できる自分に

ストレスのない人生はありません。そして、ストレスを完全になくすことを目指す必要もありません。大切なのは、ストレスを感じたときに気づき、回復するための手段をいくつも持っていることです。

ストレスを感じるのは、あなたが大切にしているものがあるからです。その重さは、真剣に生きているしるしでもあります。だからこそ、自分をすり減らしきる前に、立ち止まって休む許可を出してあげてください。

今日、ひとつだけ試してみてください。寝る前に、「今日いちばん心が重くなった場面」と「そのとき大切にしたかったもの」を一行ずつ書くこと。ストレスが、少しだけ、あなたを知る手がかりに変わります。

A question for you

あなたへの問い

最近いちばん心が重くなった出来事は、あなたの何を脅かしていましたか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

ストレス解消法とストレス対処法は、どう違いますか?

ストレス解消法は、たまった疲れや緊張を発散する方法を指すことが多い言葉です。ストレス対処法(コーピング)はもう少し広く、ストレスの原因そのものに働きかけることや、出来事の受け止め方を変えることも含みます。解消法は、対処法のひとつと考えるとわかりやすくなります。

ストレスは、まったくないほうがいいのですか?

ストレスのない状態を目指す必要はありません。新しい仕事や引っ越しなど、望んだ変化もストレスになりますし、適度な緊張は集中を助けることもあります。問題になるのは、強いストレスが長く続き、回復する時間がとれないときです。

自分がストレスをためているかどうか、どうすればわかりますか?

眠りが浅くなる、食欲が変わる、肩こりや頭痛が増える、イライラしやすくなる、好きなことを楽しめなくなる、といった変化がサインになります。ふだんの自分との違いに目を向けてみてください。気になる変化が続くときは、専門家に相談しましょう。

職場のストレスチェックは、受けたほうがいいですか?

厚生労働省のストレスチェック制度は、自分のストレスの状態に気づくきっかけになります。結果は本人に通知され、本人の同意なく会社に伝えられることはない仕組みになっています。結果をもとに、必要に応じて医師の面接を申し出ることもできます。

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References

  • Selye, H. (1956). The Stress of Life. McGraw-Hill.
  • Cannon, W. B. (1915). Bodily Changes in Pain, Hunger, Fear and Rage. D. Appleton and Company.
  • Holmes, T. H., & Rahe, R. H. (1967). The social readjustment rating scale. Journal of Psychosomatic Research, 11(2), 213–218.
  • Kanner, A. D., Coyne, J. C., Schaefer, C., & Lazarus, R. S. (1981). Comparison of two modes of stress measurement: Daily hassles and uplifts versus major life events. Journal of Behavioral Medicine, 4(1), 1–39.
  • Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, Appraisal, and Coping. Springer.
  • McEwen, B. S. (1998). Protective and damaging effects of stress mediators. New England Journal of Medicine, 338(3), 171–179.
  • Taylor, S. E., Klein, L. C., Lewis, B. P., Gruenewald, T. L., Gurung, R. A. R., & Updegraff, J. A. (2000). Biobehavioral responses to stress in females: Tend-and-befriend, not fight-or-flight. Psychological Review, 107(3), 411–429.
  • Folkman, S. (1997). Positive psychological states and coping with severe stress. Social Science & Medicine, 45(8), 1207–1221.
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  • Crum, A. J., Salovey, P., & Achor, S. (2013). Rethinking stress: The role of mindsets in determining the stress response. Journal of Personality and Social Psychology, 104(4), 716–733.
  • Pennebaker, J. W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8(3), 162–166.
  • 厚生労働省「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。