No.03 Connect人とつながる

メタファーとは?たとえ話が心を動かす理由

メタファーとは、あるものを別のものに見立てて語る比喩のこと。直喩との違いと例、人がたとえで考えているという研究、たとえ話が心を動かす理由、コーチングでの使われ方、自分の人生を表すメタファーを見つけるワークを紹介します。

公開 更新 読了 約7分 PR:書籍の紹介に Amazon アソシエイトのリンクを含みます

この記事の結論

メタファー(隠喩)とは、「人生は旅だ」のように、あるものを別のものに見立てて語る比喩です。単なる飾りではなく、人は比喩を通して物事を理解し、考え方まで方向づけられています。自分の状況をたとえで表すと、言葉にしにくい気持ちや次の一歩が見えやすくなります。

  • メタファーは「〜のような」を使わずに、AをBに見立てる比喩
  • 人は比喩で考えている。どんなたとえを選ぶかで、見える解決策も変わる
  • 自分の人生を表すたとえを探すと、言葉にならない気持ちに手が届く
目次 Contents
  1. メタファーとは? 一言でいうと
  2. 私たちは、たとえで考えている
  3. たとえ話が心を動かす3つの理由
  4. 会話でメタファーを使うコツ
  5. コーチングとNLPでのメタファー
  6. あなたの人生を表すメタファーを見つける
  7. たとえを変えれば、物語も変わる

うまく説明できない気持ちを、誰かに話そうとしたとき。「なんていうか、霧の中を歩いている感じで」と、思わずたとえで話していた。そんな経験はありませんか。不思議なことに、たとえで言ったとたん、相手が「ああ、わかる」とうなずいてくれることがあります。

たとえ話に心を動かされた経験も、きっとあるはずです。理屈で説明されても腑に落ちなかったことが、ひとつのたとえ話でストンと入ってくる。

この記事では、メタファーとは何かを整理したうえで、人がたとえを通して考えているという研究を紹介します。そのうえで、たとえ話が心を動かす理由と、自分の人生を表すメタファーを見つけるワークを紹介します。

メタファーとは? 一言でいうと

メタファーとは、あるものを、別のものに見立てて語る比喩のことです。日本語では「隠喩(いんゆ)」と呼ばれます。「人生は旅だ」「彼女はチームの太陽だ」のように、「〜のような」という言葉を使わずに、AをBとして語ります。

比喩にはいくつかの種類があります。よく比べられるのが直喩です。

種類形例
直喩(シミリ)「まるで〜のようだ」とたとえを明示する「心が鉛のように重い」
隠喩(メタファー)たとえだと示さずに見立てる「心に鉛を抱えている」
擬人法人でないものを人のように描く「風がささやく」

コーチングやNLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)では、もう少し広い意味で使われます。たとえ話、寓話、物語など、何かを別のものに託して伝える表現全体を、メタファーと呼ぶことが多いのです。

私たちは、たとえで考えている

メタファーは、詩や小説のための飾りだと思われがちです。これに別の見方を示したのが、言語学者ジョージ・レイコフと哲学者マーク・ジョンソンです。1980年の著書『レトリックと人生』(原題 Metaphors We Live By)で、二人はこう論じました。人は、ふだんの考え方そのものを、メタファーに頼って組み立てている。

たとえば、日本語の時間の言い方を見てみます。「時間を使う」「時間を無駄にする」「時間を節約する」。私たちは、時間をお金のようなものとして話しています。そして、話しているだけでなく、実際にそう感じて行動しています。

人生についても同じです。「道に迷う」「回り道をする」「岐路に立つ」。人生を旅として捉えるメタファーは、とても身近です。人生をどう生きるかを考えるとき、私たちはすでに、このたとえの中で考えているのです。

たとえが変わると、見える解決策も変わる

心理学者のティボドーとボロディツキーは、メタファーが考え方に与える影響を実験で確かめました。ある街の犯罪の増加について、同じデータを読んでもらいます。ただし、説明の冒頭で、犯罪を「街を襲う獣」にたとえるか、「街に広がるウイルス」にたとえるかだけを変えました。

すると、「獣」のたとえを読んだ人は、取り締まりや厳罰を求める解決策を選びやすくなりました。「ウイルス」のたとえを読んだ人は、原因を調べて予防する解決策を選びやすくなりました(Thibodeau & Boroditsky, 2011)。たった一語のたとえが、問題の捉え方を変えたのです。なお、この効果の大きさについては、その後の研究で議論が続いています。

たとえ話が心を動かす3つの理由

1. 目に浮かぶから、感じられる

「不安です」と言われるより、「足もとの床が、少しずつ傾いていく感じ」と言われるほうが、聞き手はその気持ちを想像できます。メタファーは、抽象的な気持ちを、見たり触れたりできるものに置きかえてくれます。

2. 聞き手が、自分の経験で意味を埋めるから

たとえ話は、答えを直接言いません。聞き手は、自分の経験と照らし合わせて、意味を見つけます。このとき、頭で考えるより先に、心の奥で連想が動いていることもあります。意識していない心の働きについては、潜在意識とは?顕在意識との違いと付き合い方で紹介しています。自分で見つけた意味は、人から言われた教訓より、ずっと心に残ります。催眠療法家ミルトン・エリクソンが、助言の代わりに物語を語ったのもこのためだといわれます。エリクソンの言葉の使い方は、ミルトンモデルとは?心に届くあいまいな言葉で紹介しています。

3. 抵抗を和らげるから

「あなたは働きすぎです」と言われると、反論したくなります。「ずっとアクセルを踏みっぱなしの車みたいだね」と言われると、少し笑いながら、自分の状態を眺められます。たとえは、話を自分から少し離れたところに置いてくれるので、受け取りやすくなるのです。

会話でメタファーを使うコツ

たとえ話は、うまく使えば相手の心に届きます。でも、使い方を誤ると、話をはぐらかしているように聞こえることもあります。

相手の世界から、たとえを選ぶ

料理が好きな人には料理のたとえ、山登りが好きな人には山のたとえ。相手がよく知っている世界からたとえを選ぶと、説明しなくても情景が伝わります。自分だけが詳しい分野のたとえは、かえって相手を置いていきます。

相手のたとえを、そのまま借りて返す

相手が「出口のないトンネルにいる感じ」と言ったら、こちらも「トンネル」の言葉を使って聞きます。「そのトンネルの中で、今いちばんつらいのは何?」。別のたとえに言いかえると、相手は「わかってもらえていない」と感じやすくなります。

教訓を、最後に言いすぎない

たとえ話のあとに「つまり、〜ということです」と答えを言ってしまうと、相手が自分で意味を見つける余地がなくなります。話したら、少し黙って、相手の受け取り方に任せてみてください。

コーチングとNLPでのメタファー

コーチングでは、相談者自身が使うメタファーを、とても大切にします。「壁にぶつかっている」と言う人と、「沼にはまっている」と言う人。同じ「行きづまり」でも、感じている状態が違うからです。

相談者のメタファーをそのまま尊重して問いかける方法に、「クリーン・ランゲージ」があります。心理療法家デイヴィッド・グローヴが考案しました。聞き手は自分のたとえを持ちこまず、相手の言葉だけを使って聞きます。

  • 「その壁は、どんな壁ですか?」
  • 「その壁について、ほかに何かありますか?」
  • 「その壁は、どこにありますか?」

問いを重ねるうちに、相談者のメタファーは少しずつ形を変えていきます。「壁」だと思っていたものが、実は「まだ開け方を知らない扉」だった。そんなふうに、たとえが変わると、気持ちや次の行動も変わることがあります。

あなたの人生を表すメタファーを見つける

心理学者ダン・マクアダムスは、人生の物語に注目しました。人は自分の人生を一つの物語として語ることで、「自分は何者か」という感覚を形づくっている、という考え方です。その物語の中心には、しばしばメタファーがあります。

あなたは今、自分の人生を、どんなたとえで捉えているでしょうか。

人生を物語として捉える考え方は、ヒーローズジャーニーとは?人生を物語で捉えるでさらに深めています。また、物事の見方そのものを変えることについては、リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするが参考になります。

たとえを変えれば、物語も変わる

私たちは、気づかないうちに、たとえの中で生きています。人生を「戦い」と捉えている人は、毎日を勝ち負けで測るかもしれません。「旅」と捉えている人は、回り道も景色として楽しめるかもしれません。

どちらが正しいわけでもありません。ただ、今のたとえが苦しいなら、別のたとえを試してみることはできます。

今日の帰り道、あなたの毎日を何かにたとえてみてください。浮かんだたとえが、今の気持ちを、言葉より先に教えてくれるはずです。私たちが世界を捉える「地図」については、メンタルモデルとは?「地図は領土ではない」の意味もどうぞ。

A question for you

あなたへの問い

今のあなたの毎日を天気にたとえると、どんな空模様ですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

メタファーと直喩(シミリ)の違いは何ですか?

直喩は「まるで〜のようだ」と、たとえであることを示す言葉を使います。メタファー(隠喩)は、その言葉を使わずに「AはBだ」と見立てます。「彼は太陽のような人だ」は直喩、「彼はチームの太陽だ」はメタファーです。

日常会話にも、メタファーは使われていますか?

たくさん使われています。「時間を使う」「議論に勝つ」「心が折れる」「壁にぶつかる」など、ふだん比喩だと意識していない言い回しの多くが、メタファーにもとづいています。

自分を表すメタファーが、暗いものばかり浮かびます。

それは、今の気持ちを正直に映しているのかもしれません。無理に明るいたとえに変える必要はありません。そのたとえの中で「少しでも楽になるには、何が起きたらいい?」と考えてみると、次の一歩の手がかりが見つかることがあります。

もう一歩深めたい人へ

PR・Amazonへのリンクを含みます
  • 神話の力

    ジョーゼフ・キャンベル、ビル・モイヤーズ(著)/飛田茂雄(訳)/早川書房(2010年)

    キャンベルとモイヤーズの対談で、神話が人の生き方に何を語るかを語り合った本です。「千の顔をもつ英雄」より読みやすく、英雄の旅の入口として手に取りやすい一冊です。

    Amazonで見る

References

  • Lakoff, G., & Johnson, M. (1980). Metaphors We Live By. University of Chicago Press.
  • Thibodeau, P. H., & Boroditsky, L. (2011). Metaphors we think with: The role of metaphor in reasoning. PLoS ONE, 6(2), e16782.
  • McAdams, D. P. (2001). The psychology of life stories. Review of General Psychology, 5(2), 100–122.
  • Lawley, J., & Tompkins, P. (2000). Metaphors in Mind: Transformation through Symbolic Modelling. Developing Company Press.
  • Gordon, D. (1978). Therapeutic Metaphors: Helping Others Through the Looking Glass. Meta Publications.

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。