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自己一致とは?心と言動がそろう生き方
自己一致とは、感じていること・気づいていること・表していることがそろった状態。ロジャーズの自己一致とNLPの「一致・不一致」をつなぎ、言動のずれが生まれる理由と、ずれを責めずに気づき、調和させる手順を紹介します。
この記事の結論
自己一致とは、心理学者ロジャーズの言葉で、実際に感じていること、それに気づいていること、外に表していることがそろっている状態です。ずれは誰にでもあり、責める対象ではありません。気づいて言葉にすることが、心と言動をそろえる第一歩になります。
- 自己一致は、感じていること・気づいていること・表していることがそろう状態
- ずれは「こうでなければ認められない」という思い込みから生まれやすい
- ずれは直すべき欠点ではなく情報。両方の言い分を聞くと調和に近づく
目次 Contents
本当は疲れているのに、「大丈夫です」と笑ってしまう。会議で反対だったのに、うなずいて終わってしまう。家に帰ってから、「なんであのとき言わなかったんだろう」と自分を責める。言っていることと、本当の気持ちがばらばらな感じは、じわじわと心を消耗させます。
そんな自分を「偽物みたいだ」と感じている人もいるかもしれません。でも、そのずれに気づいて苦しいと感じられるのは、自分の本音を大切にしたいと思っているからです。
この記事では、心理学者カール・ロジャーズの「自己一致」と、NLPの「一致・不一致」という考え方をつなげて紹介します。ずれが生まれる理由を知り、責めずに気づき、少しずつそろえていく手順を見ていきましょう。
自己一致とは? 一言でいうと
自己一致とは、実際に感じていること、それに気づいていること、外に表していることが、そろっている状態です。英語では congruence といいます。
この言葉を心理学で広めたのは、来談者中心療法を生んだロジャーズです。ロジャーズは、カウンセラーが相手の変化を支えるための条件として、3つの態度を挙げました(Rogers, 1957)。自己一致(純粋さ)、無条件の肯定的関心、共感的理解です。
つまり自己一致は、もともと「援助する人の在り方」として語られた言葉でした。カウンセラーが心の中で退屈しているのに、関心があるふりをしていると、相手はどこかでそれを感じとる。だからこそ、まず援助者自身が偽らずにいることが大切だ、というわけです。
ロジャーズは同時に、自己一致を人が健やかに生きるための姿としても描きました。
不一致はどこから生まれる?
ロジャーズの理論では、人は成長の中で「自己概念」、つまり「自分はこういう人間だ」というイメージをつくっていきます。問題は、その自己概念が「こうであれば認められる」という条件と結びついてしまうときです。
たとえば、「怒らない子はいい子」と言われて育った人がいるとします。その人にとって、怒りは「いい子の自分」と合わない感情です。だから、怒りを感じても、気づかないふりをしたり、「怒ってなんかいない」と言い換えたりします。こうして、体験と自己概念の間にずれが生まれます。ロジャーズはこの状態を「不一致」と呼びました(Rogers, 1959)。
自己一致に近づくと、何が変わる?
ロジャーズは、人が自分の体験に開かれていくと、どんな変化が起きるかも書いています(Rogers, 1961)。都合の悪い気持ちも、否定せずに感じられるようになる。人の評価より、自分の感覚を判断の手がかりにできるようになる。そして、決まった型に自分をはめるより、そのときどきの自分を生きられるようになる。
ロジャーズはこうした在り方を「十分に機能する人間」と呼びました。完成した理想像というより、自分の体験をごまかさずに受け取りながら生きる姿です。
NLPでいう「一致」と「不一致」
NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)でも、一致・不一致は大切な考え方です。
NLPの創始者たちが観察したセラピストの一人に、家族療法家ヴァージニア・サティアがいます。サティアは、言葉と、声・表情・姿勢がそろったコミュニケーションを「一致した」伝え方と呼びました(Satir, 1972)。反対に、ストレスがかかったときに人がとりやすい4つの伝え方を、不一致の表れとして挙げています。
NLPではこれを受けて、不一致を2つに分けて説明することがあります。
- 同時の不一致:「いいですよ」と言いながら、声が沈んでいる、首が小さく横に振れている
- 時間差の不一致:引き受けたときは乗り気だったのに、翌日には「やっぱり嫌だ」と感じる
同時の不一致は、言葉と体が別々のことを言っている状態です。言葉の裏で伝わるものについては、メタメッセージとは?言葉の裏で伝わるものでも扱っています。
| ロジャーズの自己一致 | NLPの一致・不一致 | |
|---|---|---|
| 注目するもの | 体験と自己概念のずれ | 言葉と非言語、場面ごとの反応のずれ |
| 主な場面 | カウンセリング、人格の成長 | コミュニケーション、目標や決断 |
| 共通点 | ずれに気づくことが変化の出発点になる | 同左 |
ずれは、責めるものではなく情報
ここで覚えておきたいのは、不一致は誰にでもあるということです。ずれがあるのは、あなたが不誠実だからではありません。
心理学者ヒギンズは、自己像のずれを2種類に分けました(Higgins, 1987)。「実際の自分」と「理想の自分」のずれは、落胆や悲しみと結びつきやすい。「実際の自分」と「こうあるべき自分」のずれは、不安や焦りと結びつきやすい、というものです。もやもやの種類から、どんなずれが起きているかを推し量れるのです。
心の中で矛盾する考えを抱えたときの不快感は、認知的不協和とは?心のモヤモヤの正体で詳しく紹介しています。
自己一致は「何でも言うこと」ではない
自己一致を「本音を全部ぶつけること」と誤解すると、かえって人間関係を壊してしまいます。ロジャーズも、感じたことをすべて口に出す必要はないと考えていました。
大切なのは、心の中で自分の気持ちに気づいていることです。「本当は腹が立っている。でも今は言わないことを選ぶ」。そう自覚していれば、言わないこと自体は不一致ではありません。苦しくなるのは、気持ちそのものをなかったことにするときです。
ずれに気づき、調和させる手順
ずれをそろえる近道は、片方を黙らせることではありません。両方の言い分を聞くことです。
たとえば、飲み会の誘いに「行きます」と答えたのに、体が重いとします。一方の私は「付き合いを大切にしたい」。もう一方の私は「今週は休みたい」。前者が守りたいのは仲間との関係、後者が守りたいのは自分の体です。
そこで、「今日は1時間だけ参加します」と伝える。あるいは「今回は休むけど、来月は行きたい」と伝える。どちらの願いも切り捨てない答えは、たいてい見つかります。
心の中の二つの声を統合する方法は、心の葛藤を統合する|パートとビジュアルスカッシュで、もう少し本格的に扱っています。
こんなサインは、ずれの合図かもしれない
ずれは、気づかないうちに積み重なります。次のようなサインが続くときは、心と言動がずれていないか確かめてみてください。
- 「〜しなきゃ」「〜すべき」が口ぐせになっている
- 引き受けたことを、なぜか先延ばしにしてしまう
- あとになってから、相手への不満がこみ上げてくる
- 人と会ったあと、内容に比べて疲れすぎている
- 褒められても、「本当の自分を知らないから」と感じる
先延ばしは、時間差の不一致として表れることがあります。頭では「やる」と決めたのに、心のどこかが納得していない。だから体が動かないのです。怠けではなく、言い分のある声がもうひとつある、と考えてみてください。
小さな約束を守ることから
自己一致は、自分への誠実さ、つまりインテグリティとも言い換えられます。そのいちばん身近な練習は、自分との小さな約束を守ることです。
「今日は23時に寝る」「この仕事が終わったら、5分散歩する」。小さな約束を守れると、「私は自分の言葉を大切にできる」という感覚が育ちます。反対に、守れない約束ばかりだと、自分の言葉を自分で信じられなくなっていきます。
守れなかったときは、責めるより、約束が大きすぎなかったかを見直してください。ありのままの自分を認める練習については、自己受容とは?ありのままの自分を認める練習も参考になります。
「本当の自分」がわからなくなっていると感じる人は、本当の自分とは?見失ったときに立ち返る場所もあわせて読んでみてください。
そろわない日があっても、気づけたら一歩前進
自己一致は、いつも完璧に心と言動がそろっている状態ではありません。ロジャーズ自身、人生のあらゆる場面で完全に一致している人はいない、と書いています。
ずれに気づくたびに、「今、ずれているな」と心の中でつぶやいてみてください。それだけで、気持ちをなかったことにせずにすみます。
今日のどこかで、本当の気持ちと違う返事をしてしまったら、夜にひとつだけメモしてみましょう。「本当はこう感じていた」。その一行が、あなたの心と言葉をつなぎ直す、小さな橋になります。
A question for you
あなたへの問い
最近、口では「はい」と言いながら、心で違うことを感じたのはいつ?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
自己一致していれば、思ったことを何でも言っていいのですか?
そういう意味ではありません。ロジャーズも、感じたことをすべて口に出す必要はないと考えていました。大切なのは、自分の気持ちに気づいていて、表すことと心の中が食い違っていないことです。言わないと選ぶことも、自己一致の一部になりえます。
自己一致と自己受容は、どう違いますか?
自己受容は、自分のありのままを認めることです。自己一致は、感じていることと表していることがそろっていることです。自分の気持ちを否定せずに認められると、それを隠す必要が減るので、二つは深く関係しています。
職場では本音を出せません。自己一致は無理でしょうか?
職場で役割を演じることと、自分を偽ることは同じではありません。「今は本音を言わないと自分で選んでいる」と気づいていれば、心の中のずれは小さくなります。苦しさが強いときは、本音を出せる場を職場の外につくることも助けになります。
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References
- Rogers, C. R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21(2), 95–103.
- Rogers, C. R. (1959). A theory of therapy, personality, and interpersonal relationships, as developed in the client-centered framework. In S. Koch (Ed.), Psychology: A Study of a Science, Vol. 3 (pp. 184–256). McGraw-Hill.
- Rogers, C. R. (1961). On Becoming a Person. Houghton Mifflin.
- Satir, V. (1972). Peoplemaking. Science and Behavior Books.
- Bandler, R., Grinder, J., & Satir, V. (1976). Changing with Families. Science and Behavior Books.
- Higgins, E. T. (1987). Self-discrepancy: A theory relating self and affect. Psychological Review, 94(3), 319–340.
- Festinger, L. (1957). A Theory of Cognitive Dissonance. Stanford University Press.