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自己受容とは?ありのままの自分を認める練習
自己受容とは、よいところもダメなところも含めて、評価せずに「今の自分はこうだ」と認めること。自己肯定感との違い、受け入れると変われる理由、責めずに観察する練習やセルフ・コンパッションなど、今日からできる5つの方法を紹介します。
この記事の結論
自己受容とは、長所も短所も含めた今の自分を、良い悪いで評価する前に「こういう自分がいる」と認めることです。自分を好きになることや、開き直ることとは違います。責める声から一歩引いて観察し、つらいときの自分に友人にかけるような言葉をかける練習で、少しずつ育てていけます。
- 自己受容は「自分は素晴らしい」と思うことではなく、評価せずに認めること
- 受け入れると成長が止まるのではなく、むしろ失敗から立ち直りやすくなる
- 責める声を「〜と思った」と眺め、友人にかける言葉を自分にもかける
目次 Contents
失敗した日の夜、頭の中で同じ場面が何度もくり返される。「なんであんなことを言ったんだろう」「どうして自分はいつもこうなんだろう」。人には優しくできるのに、自分にだけはつい厳しくなってしまう。
「ありのままの自分を受け入れよう」。そんな言葉を目にするたびに、少しもやもやするかもしれません。受け入れたいのはやまやまだけれど、ダメなところをダメなまま認めるなんて、甘えのような気もする。そもそも、どうすれば受け入れられるのかがわからない。
自分に厳しくしてしまうのは、それだけ真剣に生きてきたからです。よくなりたい、ちゃんとしたい。その思いがあるからこそ、できていない部分が目について、責める声が大きくなってしまいます。
この記事では、自己受容とは何かを、自己肯定感との違いから整理します。そのうえで、受け入れることがなぜ変化につながるのかを、心理学の研究をもとに見ていきます。最後に、責めずに自分を観察する練習や、セルフ・コンパッションなど、今日からできる5つの方法を紹介します。
自己受容とは? 一言でいうと
自己受容とは、長所も短所も含めた今の自分を、良い悪いで評価する前に「こういう自分がいる」と認めることです。
ポイントは、「評価する前に」という部分です。たとえば、「人前で話すと緊張する」という事実があったとします。「だから私はダメだ」と結論づけるのではなく、「私は人前で緊張するんだな」と、そのまま受けとる。それが自己受容です。
心理療法家のアルバート・エリスは、こうした態度を「無条件の自己受容」と呼びました。エリスは、行動の良し悪しを評価することと、自分という人間の存在まで評価することを分けて考えました。「あの言い方は失敗だった」と行動を見直すことはできます。でも、だからといって「私という人間に価値がない」ことにはならない、という考え方です。
あきらめとも、開き直りとも違う
自己受容は、「どうせ私はこういう人間だから」とあきらめることではありません。「これが私だから、文句ある?」と開き直ることとも違います。
あきらめや開き直りは、実は自分を見ることをやめている状態です。自己受容は、目をそらさずに自分を見たうえで、「今はこうなんだ」と認めることです。そこには、変わる可能性が残されています。
自己受容と自己肯定感の違い
自己受容は、自己肯定感と混同されやすい言葉です。どちらも大切ですが、働き方が違います。
| 自己肯定感 | 自己受容 | セルフ・コンパッション | |
|---|---|---|---|
| 中心にある問い | 自分には価値があるか? | 今の自分はどうなっているか? | 苦しんでいる自分に何をしてあげられるか? |
| 心の向き | 評価する | 認める | いたわる |
| うまくいかないとき | 下がりやすい | 使える | 使える |
| 他人との比較 | 入りこみやすい | 必要ない | 必要ない |
自己肯定感は、心理学では「自尊感情(セルフエスティーム)」と呼ばれるものに近い概念です。自分には価値がある、という評価の感覚なので、うまくいっているときには高まり、失敗すると下がりやすい性質があります。
心理学者のクリスティン・ネフは、自尊感情が他人との比較や成功に左右されやすいことに注目しました。そして、それに代わるものとして「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」を提唱しました(Neff, 2003)。オランダで行われた大規模な調査もあります(Neff & Vonk, 2009)。セルフ・コンパッションは自尊感情に比べて、自分の価値の感覚が揺れにくいことと関連していました。
自己受容とセルフ・コンパッションは、とても近い関係にあります。自己受容が「認める」なら、セルフ・コンパッションは、認めたうえで「いたわる」ところまで進むイメージです。自己肯定感そのものの育て方は、自己肯定感を高める方法|根っこから育てる考え方で紹介しています。
ありのままの自分を受け入れられない3つの理由
頭では「受け入れたほうがいい」とわかっていても、なかなかできない。それには理由があります。
1. 心の中に、厳しい審査員がいる
多くの人の心の中には、自分の言動をいつもチェックしている声があります。「また失敗した」「もっとちゃんとしないと」。この声は、親や先生、周りの大人の言葉を取りこんで育ったものかもしれません。
この審査員は、あなたを守ろうとしているつもりなのです。失敗しないように、嫌われないように。ただ、その声があまりに大きいと、自分を見るたびに裁かれているような感覚になり、受け入れる余地がなくなってしまいます。
2. 受け入れたら、成長が止まると思っている
「ダメな自分を受け入れたら、そこで努力をやめてしまうのでは」。自分に厳しい人ほど、この心配を抱えています。自分を責めることが、成長のエンジンになっていると感じているからです。
この心配がどこまで正しいのかは、次の章で研究を紹介します。
3. 「受け入れる」と「好きになる」を混同している
「ありのままの自分を愛そう」という言葉は、ときにハードルを上げてしまいます。嫌いな部分を好きになるのは、簡単ではありません。
受け入れるとは、好きになることではなく、そこにあると認めることです。「この部分は好きになれない。でも、これも今の私の一部だ」。それで十分なのです。
受け入れることで、人は変われる
自分を責めるのをやめたら、怠けてしまう。そう思いがちですが、研究は少し違う結果を示しています。
自分を思いやった人のほうが、改善しようとした
心理学者のブライネスとチェンは、自分への思いやりが、改善しようとする意欲にどう影響するかを実験で調べました(Breines & Chen, 2012)。
ある実験では、参加者に難しい単語テストを受けてもらい、全員がうまくできなかった状況をつくりました。そのあと、一部の人には自分を思いやるよう促すメッセージを、別の人には自尊心を高めるメッセージを伝えました。すると、自分を思いやるよう促された人たちは、次のテストに向けて、より長い時間勉強したのです。
また別の実験では、自分を思いやるよう促された人のほうが、自分の弱点を改善できると考えやすい傾向も見られました。
自分を責めると、失敗から目をそらしたくなる
なぜ、自分を思いやるほうが改善につながるのでしょうか。ひとつの考え方は、自分を強く責めていると、失敗を見ること自体がつらくなる、というものです。
失敗を見るたびに激しく自分を責めていたら、誰でも失敗から目をそらしたくなります。言い訳をしたり、なかったことにしたり。思いやりをもって向き合えると、失敗を落ち着いて見られるので、そこから学べるのです。
責めすぎないほうが、責任もとりやすい
心理学者のマーク・リアリーらは、嫌な出来事が起きたときの反応を調べました(Leary ら, 2007)。自分を思いやる傾向の強い人は、失敗を思い出しても、否定的な感情に飲みこまれにくい傾向がありました。そのうえで、自分の責任を認めることも、できていたのです。
自分を責めすぎないことは、責任から逃げることではありません。むしろ、落ち着いて「ここは自分のミスだった」と認める余裕をつくってくれます。
受け入れたとき、変わりはじめる
来談者中心療法を生んだカール・ロジャーズは、この逆説を次のように書いています。「奇妙な逆説だが、ありのままの自分を受け入れたとき、私は変わることができる」(Rogers, 1961)。
自己受容を育てる5つの練習
ここからは、自己受容を育てるための具体的な練習を紹介します。どれも、一度で身につくものではありません。思い出したときに、少しずつ試してみてください。
練習1:「〜と思った」をつけて、考えを眺める
自分を責める考えが浮かんだら、その文の最後に「〜と思った」をつけてみます。
「私はダメな人間だ」→「私は『私はダメな人間だ』と思った」
たったこれだけで、考えと自分との間に、少し距離が生まれます。「私はダメだ」は事実ではなく、頭に浮かんだひとつの考えにすぎない、と気づけるのです。
これは、心理療法のひとつであるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の考え方を応用したものです。ACTでは、この方法を「脱フュージョン」と呼びます。考えと一体化している状態から、考えを外から眺める状態に移ること。自分の考えを客観的に見る力は「メタ認知」とも呼ばれます。くわしくはメタ認知とは?自分を客観視する力の鍛え方で紹介しています。
練習2:心の審査員に、名前をつける
自分を責める声に、ニックネームをつけてみます。「反省会の部長」「チェック係さん」。少しユーモアのある名前のほうが、効果的です。
声が聞こえてきたら、「あ、また部長が来た」と心の中でつぶやきます。声を消そうとする必要はありません。その声が自分そのものではなく、自分の中の一部の声だと気づくことが目的です。心の口ぐせとの付き合い方は、セルフトークとは?心の口ぐせを味方にするもあわせて読んでみてください。
練習3:つらいときの「セルフ・コンパッション・ブレイク」
ネフが紹介している、短い練習です。つらいことがあったときに、3つの言葉を自分にかけます。
1つめは、今の気持ちに気づくこと。2つめは、苦しみは人間共通のものだと思い出すこと。3つめは、自分にやさしさを向けること。ネフは、この3つをセルフ・コンパッションの要素としています。
1つめの「気づく」力は、マインドフルネスの練習でも育てられます。呼吸や体の感覚に注意を向け、浮かんでくる考えをそのまま眺める練習です。始め方は、マインドフルネスとは?初心者のための始め方で紹介しています。
練習4:友だちにかける言葉で、自分に話しかける
同じ失敗を友だちがしたら、あなたはどんな言葉をかけるでしょうか。「最低だね」とは言わないはずです。「大変だったね」「それだけがんばったんだよ」と言うのではないでしょうか。
自分を責めているときは、その友だちにかける言葉を、紙に書いてみてください。そして、それを自分宛てに読んでみます。最初は照れくさく感じるかもしれません。でも、自分に対する言葉と、他人に対する言葉の差に気づくだけでも、意味があります。
余裕があれば、数行の手紙にしてみるのもおすすめです。「あなたは、あの場面でこう感じたんだね」と、出来事と気持ちを認める言葉から書きはじめます。そのあとに、「次はどうしたい?」とやさしく問いかける一文を添えると、責めるのでも甘やかすのでもない、ちょうどいい距離の言葉になります。
練習5:受け入れられない自分も、受け入れる
ここまでの練習を試しても、どうしても自分を受け入れられない日はあります。そんなときは、「今日は、自分を受け入れられない自分がいる」と、そのことを認めてみてください。
自己受容は、いつも穏やかな気持ちでいることではありません。受け入れられない気持ちも含めて、「今はこうなんだ」と認めること。一段外側から見ると、受け入れられないことすら、受け入れの対象になります。
自己受容でつまずきやすいポイント
「甘やかし」との違いがわからなくなる
自分にやさしくすることと、甘やかすことは違います。甘やかしは、目の前の気分を楽にするために、長い目で見て自分のためにならないことを選ぶことです。
たとえば、疲れているときに「今日は早く寝よう」と決めるのは、自分へのやさしさです。一方、大事な締め切りから目をそらして夜中まで動画を見続けるのは、甘やかしに近いかもしれません。迷ったら、「1年後の自分は、この選択に感謝するだろうか」と聞いてみてください。
不当な扱いまで受け入れる必要はない
自己受容は、自分の内側に向けた態度です。人から不当に扱われることや、傷つけられる関係を、我慢して受け入れることではありません。
むしろ、自分を受け入れられるようになると、「自分はこんなふうに扱われていい存在ではない」と感じやすくなります。境界線を引くことも、自分を大切にすることの一部です。
人と比べると、受け入れが遠のく
SNSで誰かの成功を見たあと、急に自分がみじめに思えることがあります。比べる対象があると、「今の自分」をそのまま見ることが難しくなります。
比べてしまったら、それに気づいて、「今、比べているな」とつぶやくだけでかまいません。比べる癖そのものについては、他人と比べてしまうのをやめる方法で詳しく扱っています。
完璧な自分より、今日の自分と仲直りする
自己受容は、ある日を境に完成するものではありません。責める声が戻ってくる日もあれば、うまく受け入れられる日もある。その揺れをくり返しながら、少しずつ、自分との関係がやわらかくなっていきます。
ありのままの自分を認めることは、あきらめではなく、出発点です。今の自分がどこにいるかがわからなければ、どこへ向かうかも決められないからです。
今日の終わりに、ひとつだけ試してみてください。うまくいかなかったことがあったら、友だちにかけるような言葉を、自分にもかけてみる。「今日もよくやったね」。その一言から、自分との仲直りが始まります。
A question for you
あなたへの問い
今日の自分に、友だちにかけるような言葉をかけるとしたら?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
自己受容と自己肯定感は、どう違うのですか?
自己肯定感は「自分には価値がある」「自分はよくやれている」と評価する感覚で、うまくいっているときほど高まりやすいものです。自己受容は、評価の前に「今の自分はこうだ」と認めることで、うまくいかないときにも使えます。日本では両方を「自己肯定感」と呼ぶこともありますが、分けて考えると取り組みやすくなります。
自分を受け入れたら、成長しなくなりませんか?
研究では、むしろ逆の結果が報告されています。自分の失敗や弱点に思いやりをもって向き合った人のほうが、改善しようとする意欲が高かったという実験があります。自分を責める気持ちが強すぎると、失敗を直視するのがつらくなり、かえって学びにくくなるのです。
どうしても自分を許せないときは、どうすればいいですか?
無理に許そうとしなくてかまいません。「今の私は、自分を許せないと感じている」と、その気持ちごと認めるところから始めてみてください。自分を責める気持ちが長く続いて苦しいときや、過去のつらい出来事が関わっているときは、カウンセラーなどの専門家に相談することをおすすめします。
自己受容ができてきたかどうかは、どうすればわかりますか?
目安になるのは、失敗したあとの立ち直りの早さや、自分を責める声に気づける回数です。落ちこまなくなることではなく、落ちこんでも「今、落ちこんでいるな」と気づき、そこから戻ってこられるようになることが、自己受容が育っているしるしです。
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References
- Rogers, C. R. (1961). On Becoming a Person: A Therapist's View of Psychotherapy. Houghton Mifflin.
- Ellis, A. (2005). The Myth of Self-Esteem: How Rational Emotive Behavior Therapy Can Change Your Life Forever. Prometheus Books.
- Chamberlain, J. M., & Haaga, D. A. F. (2001). Unconditional self-acceptance and psychological health. Journal of Rational-Emotive & Cognitive-Behavior Therapy, 19(3), 163–176.
- Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2(2), 85–101.
- Neff, K. D., & Vonk, R. (2009). Self-compassion versus global self-esteem: Two different ways of relating to oneself. Journal of Personality, 77(1), 23–50.
- Breines, J. G., & Chen, S. (2012). Self-compassion increases self-improvement motivation. Personality and Social Psychology Bulletin, 38(9), 1133–1143.
- MacBeth, A., & Gumley, A. (2012). Exploring compassion: A meta-analysis of the association between self-compassion and psychopathology. Clinical Psychology Review, 32(6), 545–552.
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- Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (2012). Acceptance and Commitment Therapy: The Process and Practice of Mindful Change (2nd ed.). Guilford Press.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」