No.02 Tend the Mind心を整える

セルフトークとは?心の口ぐせを味方にする

セルフトークとは、頭の中で自分にかけている言葉のこと。ネガティブな独り言が気持ちと行動を左右するしくみ、無理なポジティブ変換が逆効果になる理由、観察・名前をつける・言い換えるの3ステップと具体例を紹介します。

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この記事の結論

セルフトークとは、頭の中で自分自身にかけている言葉のことです。出来事の受け止め方を通じて、気分や行動に影響します。変えるには、無理にポジティブに言い換えるより、まず観察し、名前をつけて距離をとり、自分が信じられる言葉に置き換えるのが近道です。

  • セルフトークは出来事の「解釈」として働き、気分と行動を左右する
  • 信じられない前向きな言葉は、自信のない人ほど逆効果になりうる
  • 観察→名前をつける→言い換える。二人称や名前で呼ぶと距離がとれる
目次 Contents
  1. セルフトークとは? 一言でいうと
  2. セルフトークが気持ちと行動を左右するしくみ
  3. よくあるネガティブなセルフトークの型
  4. 「ポジティブに言い換えればいい」が効かない理由
  5. セルフトークを味方にする3ステップ
  6. セルフトークは、自己イメージを少しずつ形づくる
  7. セルフトークを変えるときのつまずき
  8. 声を黙らせるより、かける言葉を選び直す

メールを送ったあとで、「あんな書き方をして、変に思われたかも」。会議で黙っていた帰り道に、「どうして私はいつもこうなんだろう」。誰にも聞こえない声なのに、その一言で一日が重くなることがあります。

頭の中の声を静かにしたくて、「前向きに考えよう」と言い聞かせてみた人もいるでしょう。でも、うまくいかない。むしろ「前向きになれない自分」を、また責めてしまう。

その声に気づいて調べ始めたこと自体が、もう変化の入り口です。ふだん、頭の中の言葉は空気のように素通りしていきます。「この声、ちょっと厳しすぎない?」と感じられたのは、声と自分の間にすき間ができはじめている証拠です。

この記事では、セルフトークとは何か、なぜ気持ちや行動を左右するのかを整理します。そのうえで、観察する・名前をつける・言い換えるの3ステップで、心の口ぐせを味方に変える方法を紹介します。

セルフトークとは? 一言でいうと

セルフトークとは、頭の中で自分自身にかけている言葉のことです。「よし、いける」「また失敗した」「まあ、なんとかなるか」。意識していなくても、私たちは一日じゅう、自分に話しかけています。

声に出す独り言も、頭の中だけのつぶやきも、自分に向けた言葉という点では同じです。心理学では両方をまとめてセルフトークと呼ぶことが多く、コーチングでは「内省言語」と呼ばれることもあります。

発達心理学者のヴィゴツキーは、子どもが遊びながら口にする独り言に注目しました。子どもは、難しい課題ほど独り言が増えます。この声に出す言葉が、成長とともに頭の中へ移り、考えるための道具になると考えたのです。大人のセルフトークは、その名残ともいえます。

NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)も、この声に注目します。NLPでは頭の中の言葉を内部対話と呼び、体験を形づくる要素のひとつとして扱います。

セルフトークには「型」がある

セルフトークは、ばらばらに浮かんでいるように見えて、人ごとにくせがあります。うまくいったとき「たまたまだ」と言う人もいれば、「準備したからだ」と言う人もいます。同じ出来事でも、どんな言葉で受け止めるかには、その人らしい口ぐせが出るのです。

この口ぐせは、長い時間をかけて身についたものです。親や先生によく言われた言葉が、いつのまにか自分の声になっていることも少なくありません。だからこそ、気づかないうちに、自分を同じ型にはめ続けてしまいます。

セルフトークが気持ちと行動を左右するしくみ

出来事と気持ちの間に「言葉」がはさまっている

上司から「ちょっと話がある」とだけ連絡が来たとします。「何かミスをしたんだ」と頭の中で言えば、胸がざわつきます。「新しい仕事の相談かな」と言えば、少し身構えるくらいで済みます。出来事は同じでも、気持ちは違います。

認知療法を生んだアーロン・ベックは、出来事と感情の間で一瞬のうちに浮かぶ考えを「自動思考」と呼びました。私たちは、出来事そのものより、それをどう受け止めたかに反応しているというのです。

セルフトークは、この「受け止め方」が言葉になったものです。気分が急に沈んだとき、直前に頭の中で何を言っていたかをたどると、たいていそこに一言が見つかります。

スポーツの研究でわかっていること

セルフトークの効果は、スポーツ心理学で多く調べられてきました。32の研究をまとめた分析では、意図的なセルフトークが成績を高める方向に働くことが示されています(Hatzigeorgiadis ら, 2011)。

おもしろいのは、言葉の種類と課題の相性です。「肘を上げて」のような手順を指す言葉は、細かい技術が要る課題で特に効果が大きい傾向がありました。「いける、押しきれ」のような気持ちを高める言葉にも効果はあり、どんな言葉が合うかは課題によって変わるようです。

ただし、これは練習を重ねた運動課題での結果です。日常の悩みにそのまま当てはまるとは限りません。それでも「自分にかける言葉は、行動の質に影響しうる」という点は、心にとめておく価値があります。

よくあるネガティブなセルフトークの型

自分を苦しめるセルフトークには、いくつか典型的な形があります。認知療法でいう「考え方のくせ」を参考に、日常で出やすいものを整理しました。

型よくある言葉奥にあることが多いもの
全か無か「完璧にできないなら意味がない」失敗への強い不安
一般化「いつもこうだ」「何をやってもだめ」一度の出来事を全体に広げている
べき思考「もっとちゃんとすべきだ」誰かから受け取った基準
レッテル貼り「私はだめな人間だ」行動ではなく存在を評価している
先読み「どうせうまくいかない」傷つく前に期待を下げて身を守る
心の読みすぎ「きっと呆れられている」確かめていない相手の気持ち

ポイントは、どの型にも「守ろうとしている何か」がある点です。「どうせうまくいかない」は、がっかりしないための予防線かもしれません。厳しい声を敵として追い払うより、何を守ろうとしているのかに目を向けると、扱い方が見えてきます。

「ポジティブに言い換えればいい」が効かない理由

セルフトークを変えるというと、「だめだ」を「できる」に置き換える方法がよく紹介されます。でも、それで楽になった実感がない人も多いはずです。

カナダの心理学者ジョアン・ウッドらは、こんな実験をしました。参加者に「私は愛される人間だ」という言葉を、くり返し心の中で唱えてもらったのです(Wood ら, 2009)。

すると、もともと自己評価が高い人は、少し気分がよくなりました。一方、自己評価が低い人は、唱えたあとのほうが気分が悪くなったのです。信じられない言葉を自分に言い聞かせると、「でも実際は違う」という反論が頭に浮かびます。その反論が、かえって今の自分を強く意識させると考えられています。

つまり、言い換えの目標は「正反対の明るい言葉」ではありません。自分が「まあ、それはそうだ」とうなずける言葉を探すことです。「私はできる」が嘘っぽく響くなら、「前回より準備はしてある」で十分です。

この実験は一つの研究で、条件によって結果が変わる可能性もあります。ただ、「言い聞かせても楽にならない」という実感には、ちゃんと理由があるのかもしれません。望む言葉をくり返す方法そのものについては、アファメーションとは?効果的な作り方と例文で、研究の限界も含めて紹介しています。

セルフトークを味方にする3ステップ

ここからは、心の口ぐせを変えていく手順です。いきなり言い換えから始めず、観察、名前をつける、言い換えるの順に進みます。

ステップ1:観察する

最初の一歩は、自分がどんな言葉をかけているかを知ることです。セルフトークは自動的に流れていくので、意識してつかまえないと、ほとんど記憶に残りません。

続けていると、同じ言葉が何度も出てくることに気づくはずです。それがあなたの「心の口ぐせ」です。自分の考えを一段上から眺めるこの力は、メタ認知とは?自分を客観視する力の鍛え方でも詳しく扱っています。

ステップ2:名前をつけて、距離をとる

口ぐせが見えてきたら、その声に名前をつけてみます。「また心配係が出てきたな」「あ、反省会の司会が始まった」。少しユーモアのある呼び名で十分です。

心理療法のACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)には、似た発想の練習があります。「私はだめだ」を、「私は『私はだめだ』という考えを抱いている」と言い直すのです。考えを事実として受け取るのではなく、頭に浮かんだ一つの出来事として眺められるようになります。

名前をつけると、声と自分の間にすき間が生まれます。声を消すのではありません。「声がしている」と気づいたうえで、それに従うかどうかを自分で選べるようにするのです。

ステップ3:言い換える

最後に、言葉を置き換えます。おすすめは、次の3つの条件を満たす言葉です。

  • 事実に沿っている:大げさな希望でも、大げさな絶望でもない
  • 次の行動が見える:「では、何をすればいい?」に答えている
  • 親しい友人にもかけられる:同じ状況の友人に言っても、ひどくない

たとえば「また失敗した。私はだめだ」なら、「今回は締め切りを読み違えた。次は前日に一度確認しよう」。事実と次の一歩だけが残り、存在まるごとの否定は消えています。

「私」ではなく「あなた」や名前で話しかける

言い換えにもう一工夫するなら、自分への呼びかけ方を変えてみてください。ミシガン大学のイーサン・クロスらは、こんな実験をしました(Kross ら, 2014)。緊張する場面の前に、自分のことを「私」ではなく、自分の名前や「あなた」で考えてもらったのです。

その結果、名前や「あなた」で考えた人は、スピーチの前の不安が小さく、話しぶりも落ち着いていると評価されました。自分を少し外から見る形になり、友人に助言するような冷静さが生まれると考えられています。

「私は大丈夫かな」の代わりに、「〇〇さん、準備はしてきたよね」。ちょっと照れくさいですが、試す価値はあります。

セルフトークは、自己イメージを少しずつ形づくる

コーチングでは、セルフトークのくり返しが、自分をどんな人間だと思うか、つまり自己イメージを形づくると考えます。「私は人前で話すのが苦手だ」と言い続けるほど、その人は苦手な人として振る舞い、それがまた口ぐせを強める、という見方です。

この循環をはっきり証明した研究があるわけではありません。ただ、言葉と行動が互いに支え合いながら定着していく感覚は、多くの人に覚えがあるのではないでしょうか。自己イメージそのものの見直し方は、セルフイメージとは?書き換えて自分を変える方法で紹介しています。

コーチングでは「すでに目標を達成した自分なら、自分に何と言うか」を考える方法もよく使われます。望む姿を具体的に思い描く助けにはなります。ただ、唱えれば脳がそう思いこんで現実が変わる、という説明には、十分な根拠がありません。先ほどの実験のとおり、信じられない言葉はかえって苦しくなることもあります。使うなら、理想の自分が「今日やること」を考えるヒントとして使うのがおすすめです。

セルフトークを変えるときのつまずき

責める声を、さらに責めてしまう

「またネガティブなことを考えている。だめだな」。これは、責める声を責める、二重のセルフトークです。気づけたら、それで一歩目は達成です。直そうとするより、「気づけた」と小さく認めることから始めてください。

一度の言い換えで変わると思う

長年の口ぐせは、すぐには消えません。古い言葉が先に浮かび、あとから新しい言葉で言い直す。最初はそれで十分です。言い直す回数が増えるうちに、新しい言葉が先に出てくる日が少しずつ増えていきます。

本当の問題にふたをしてしまう

セルフトークを整えても、職場の働き方がどうしても合わないなど、環境の問題が消えるわけではありません。厳しい声が、実は「ここを離れたほうがいい」と知らせていることもあります。言い換えは、現実から目をそらすためではなく、落ち着いて現実を見るために使ってください。見方を変える方法は、リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするも参考になります。

声を黙らせるより、かける言葉を選び直す

頭の中の声は、あなたを困らせるために話しているわけではありません。多くの場合、失敗しないように、傷つかないように、不器用なやり方で守ろうとしています。

だから、黙らせなくてかまいません。「心配してくれてありがとう。でも、今日はこう考えてみるね」。そんなふうに受け止めて、言葉をひとつ選び直す。その積み重ねが、心の口ぐせを少しずつ変えていきます。

今夜、寝る前に一つだけ。今日の自分に、親しい友人にかけるような言葉を一言かけてみてください。厳しい声とは違う声も自分の中にある、と知ることが出発点になります。今のままの自分を認める練習は、自己受容とは?ありのままの自分を認める練習で続けられます。

A question for you

あなたへの問い

今日、あなたが自分にいちばん多くかけた言葉は何でしたか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

セルフトークと独り言は違うのですか?

声に出すかどうかの違いで、中身は重なります。心理学では、頭の中の言葉も声に出した独り言も、自分に向けた言葉としてまとめてセルフトークと呼ぶことが多いです。考えを整理したいときは、声に出したり書いたりすると、頭の中だけより客観的に眺めやすくなります。

ネガティブなセルフトークは、完全になくすべきですか?

なくす必要はありませんし、なくすこともできません。「このままだと危ない」と知らせる声は、身を守る役割も果たしています。目指すのは黙らせることではなく、声に振り回されずに、必要な情報だけを受け取れる距離をとることです。

アファメーションとセルフトークの違いは何ですか?

アファメーションは、望む自分を表す言葉を意図的にくり返す方法です。セルフトークは、ふだん無意識に自分にかけている言葉全体を指します。いきなり理想の言葉を唱えるより、まず今のセルフトークに気づくところから始めるほうが、違和感が少なく続けやすくなります。

自分を責める声が止まらず、つらいときはどうすればいいですか?

責める声が強く、眠れない、何も楽しめない状態が続くなら、セルフケアだけで抱えこまないでください。心療内科やカウンセラーなどの専門家に相談することをおすすめします。言葉を変える工夫は、そうした支えと並行して使うものです。

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References

  • Kross, E., Bruehlman-Senecal, E., Park, J., Burson, A., Dougherty, A., Shablack, H., Bremner, R., Moser, J., & Ayduk, O. (2014). Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters. Journal of Personality and Social Psychology, 106(2), 304–324.
  • Kross, E. (2021). Chatter: The Voice in Our Head, Why It Matters, and How to Harness It. Crown.
  • Hatzigeorgiadis, A., Zourbanos, N., Galanis, E., & Theodorakis, Y. (2011). Self-talk and sports performance: A meta-analysis. Perspectives on Psychological Science, 6(4), 348–356.
  • Wood, J. V., Perunovic, W. Q. E., & Lee, J. W. (2009). Positive self-statements: Power for some, peril for others. Psychological Science, 20(7), 860–866.
  • Beck, A. T. (1976). Cognitive Therapy and the Emotional Disorders. International Universities Press.
  • Burns, D. D. (1980). Feeling Good: The New Mood Therapy. William Morrow.
  • Vygotsky, L. S. (1986). Thought and Language (A. Kozulin, Trans.). MIT Press. (Original work published 1934)
  • Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (2012). Acceptance and Commitment Therapy: The Process and Practice of Mindful Change (2nd ed.). Guilford Press.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。