No.03 Connect人とつながる

ミラーリングとは?効果とやりすぎない使い方

ミラーリングとは、相手のしぐさや姿勢、言葉を鏡のように映すこと。カメレオン効果やミラーニューロンの研究でわかっていることと誇張されがちな点、やりすぎると逆効果になる理由、自然に使う5つのコツ、自分のまねぐせから心を知る方法まで紹介します。

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この記事の結論

ミラーリングとは、相手のしぐさや姿勢、言葉づかいを鏡のように映すことです。しぐさをまねされた人は相手に好感をもちやすいという研究がありますが、効果は状況しだいで、意図的なまねが見抜かれると逆効果にもなります。まねること自体より、相手への関心を土台にするのが自然な使い方です。

  • 人は親しくなりたい相手のしぐさを、無意識のうちにまねている
  • ミラーニューロンが共感を生むという話は、研究ではまだ議論が続いている
  • まねは一部だけ、少し遅れて。気づかれるほどのまねは逆効果になりやすい
目次 Contents
  1. ミラーリングとは? 一言でいうと
  2. 人は、親しくなりたい相手をまねている
  3. ミラーニューロンとは? 共感との関係
  4. やりすぎると逆効果になる理由
  5. 不自然にならない、5つのコツ
  6. 自分の「まねぐせ」から、心を知る
  7. うつすのは、動きより相手への関心

仲のいい友人とカフェで話していて、ふと気づくと、二人とも同じように頬杖をついていた。そんな経験はありませんか。気の合う相手とは、しぐさや口ぐせまで、いつのまにか似てくるものです。

「ミラーリングで好感度アップ」。そんな紹介を見て、試してみたくなった人もいるでしょう。同時に、「まねなんて、バレたら気まずいのでは」と迷う気持ちもあるかもしれません。その迷いは、とても大切な感覚です。

ミラーリングには、研究で確かめられている面と、誇張されて広まっている面があります。人との距離を縮めたいという気持ちを大切にしながら、その両方を知っておくと、無理のない使い方が見えてきます。

この記事では、ミラーリングの種類と、研究でわかっていること・わかっていないことを整理します。そのうえで、不自然にならない使い方と、自分のまねぐせから心を知る方法を紹介します。

ミラーリングとは? 一言でいうと

ミラーリングとは、相手のしぐさや姿勢、表情、言葉づかいを、鏡のように映すことです。相手が前のめりになったら、こちらも少し前に体を傾ける。相手がコーヒーを飲んだら、少し遅れてこちらも飲む。そんな形で行います。

ミラーリングは、NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)でよく紹介されます。ラポール(安心して話せる信頼関係)を築く方法のひとつ、という位置づけです。相手の話す速さや調子に合わせる「ペーシング」の中でも、目に見える動きをそろえる方法にあたります。

ミラーリングの3つの種類

種類やり方例
ダイレクトミラーリング相手の動きを、鏡に映すように対称にそろえる向かい合った相手が右手を上げたら、こちらは左手を上げる
クロスオーバーミラーリング相手の動きのリズムを、別の動きでそろえる相手の呼吸のリズムに合わせて、指で軽くテーブルをたたく
言葉のミラーリング相手が使った言葉や言い回しを、そのまま使う「段取り」と言った人には「準備」と言い換えず「段取り」と返す

クロスオーバーミラーリングは、NLPで紹介される方法です。同じ動きをしないので気づかれにくいとされますが、この方法の効果を直接確かめた研究は、ほとんど見当たりません。相手のリズムに注意を向ける練習として受け取るのがよいでしょう。

ミラーリングは、相手に合わせる関わり方の一部です。テンポや声の調子などを含めた、より広い合わせ方はペーシングとは?相手に合わせて心を通わせるで扱っています。

人は、親しくなりたい相手をまねている

ミラーリングは、テクニックとして意識する前に、人がふだん自然にしていることです。心理学では、相手のしぐさを無意識にまねることを「ミミクリー」と呼び、たくさんの研究が行われてきました。

よく知られているのが、まねされた人が相手に好感をもちやすくなるという「カメレオン効果」の実験です(Chartrand & Bargh, 1999)。この実験の内容と注意点は、ラポールとは?信頼関係を築く5つのコツで紹介しました。ここでは、もう少し別の角度の研究を見てみます。

つながりたいとき、人はまねが増える

ラキンとチャートランドの実験では、相手と親しくなりたいという気持ちを高めた人ほど、しぐさをまねる量が増えました(Lakin & Chartrand, 2003)。本人は、まねしていることに気づいていませんでした。別の研究では、仲間外れにされる体験をした直後の人が、次に会った相手をより多くまねたことも報告されています(Lakin ら, 2008)。

つまり、まねは「好かれるための技術」である前に、「つながりたい」という気持ちが体に表れたものなのです。まねを意識的に作るより、相手に関心をもったときに自然に生まれる、と考えるほうが実態に近いのかもしれません。

言葉をそのまま返すと、印象が変わる

オランダで行われた実験では、レストランの店員が客の注文を復唱する方法を変えました(van Baaren ら, 2003)。客の言葉をそのまま繰り返した場合は、そうしなかった場合より、受け取るチップが多かったのです。

相手の言葉をそのまま使うことは、「あなたの言ったことを、そのまま受け取りました」という合図になります。言葉で返すこの方法は、バックトラッキングとは?おうむ返しの上手な使い方で詳しく扱っています。

ミラーニューロンとは? 共感との関係

ミラーリングの説明で、よく「ミラーニューロン」という言葉が出てきます。1990年代、イタリアの研究グループが、サルの脳で見つけた神経細胞です(Rizzolatti & Craighero, 2004)。

この細胞は、サル自身がものをつかむときにも、ほかのサルや人がものをつかむのを見ているときにも反応しました。まるで、他者の動きを自分の脳の中で映しているようだったため、「ミラー(鏡)」と名づけられたのです。

「共感の細胞」は言いすぎ

ミラーニューロンの発見は、大きな話題を呼びました。そして、「共感の源」「人の心がわかる細胞」といった説明が広まりました。けれども、こうした説明には慎重になる必要があります。

この記事では、ミラーニューロンを「ミラーリングが効く理由」としては扱いません。人が他者の動きに敏感な生き物であることを示す、興味深い手がかりのひとつとして紹介するにとどめます。

やりすぎると逆効果になる理由

ミラーリングには、使い方を誤ると逆効果になる面があります。研究からは、次のようなことがわかっています。

気づかれると、評価が下がる

ベイレンソンらは、仮想空間のキャラクターに、人の頭の動きを数秒遅れでまねさせる実験を行いました(Bailenson ら, 2008)。まねに気づかなかった人もいましたが、気づいた人は、そのキャラクターを低く評価する傾向がありました。

これは日常の感覚とも重なります。自分の動きをいちいちまねする人がいたら、からかわれているように感じるはずです。ミラーリングは、相手に気づかれた時点で「関心」ではなく「作為」として伝わってしまいます。

効果が見られなかった研究もある

まねの効果は、いつも現れるわけではありません。仮想空間で会話をする実験で、まねをしても信頼や好感が高まらなかったという報告もあります(Hale & Hamilton, 2016)。

ミミクリーの効果は、二人の関係や場面、文化によって変わると考えられています。「ミラーリングをすれば好かれる」という単純な公式は、研究からは支持されていません。

不自然にならない、5つのコツ

それでも、ミラーリングの考え方は、相手に注意を向ける練習として役に立ちます。使うなら、次の点を意識してください。

1. まねる前に、相手に関心を向ける

先に紹介したとおり、まねは「つながりたい」気持ちから自然に生まれます。順番を逆にしないことが大切です。相手の話に興味をもてば、姿勢やテンポは自然と近づいていきます。

2. 全部ではなく、一部だけ

腕の組み方から足の向きまで全部をそろえると、不自然さが目立ちます。合わせるのは、体の傾きや全体の雰囲気など、ひとつかふたつで十分です。相手がくつろいだ姿勢なら、こちらも肩の力を抜く。それくらいの大まかさで、二人の空気はそろっていきます。

3. すぐにではなく、少し遅れて

相手が動いた直後に同じ動きをすると、まねに気づかれやすくなります。数秒から数十秒あけて、話の流れの中で自然に姿勢を変えるくらいがちょうどよい加減です。

4. 動きより、言葉と雰囲気を

しぐさより気づかれにくく、効果も実感しやすいのが、言葉のミラーリングです。相手が大切そうに使った言葉を、言い換えずにそのまま返してみてください。

たとえば、相手が「最近、なんだかモヤモヤしてて」と言ったとします。「ストレスがたまっているんだね」と言い換えると、相手は「ストレスとは少し違うんだけど」と感じるかもしれません。「モヤモヤしてるんだね」と返せば、相手は自分の感覚のまま、話を続けられます。

5. 相手がついてくるか、ときどき確かめる

ミラーリングがうまくいっているかどうかは、相手の反応でわかります。こちらが姿勢を変えたとき、相手も自然に姿勢を変えるなら、二人のリズムはそろっています。相手の小さな変化に気づく方法は、キャリブレーションとは?相手の変化に気づく力で紹介しています。

自分の「まねぐせ」から、心を知る

ミラーリングは、相手に使うだけのものではありません。自分が無意識に誰をまねているかに気づくと、自分の心の動きが見えてきます。

親しくなりたい相手ほど、人はまねが増えるのでした。だとすると、あなたが思わず口ぐせをまねている相手は、あなたが近づきたいと感じている人なのかもしれません。反対に、どうしてもテンポが合わない相手との間には、緊張や遠慮が隠れていることがあります。

まねぐせは、言葉より正直に、あなたの心の距離を映していることがあります。体が発するサインに気づく方法は、非言語コミュニケーションとは?表情・声・しぐさでも扱っています。

相手にまねされていると感じたら

反対に、相手があなたのしぐさや口ぐせをまねているように感じることもあるでしょう。「テクニックを使われているのでは」と身構えたくなるかもしれません。

でも、多くのまねは無意識に起きています。相手があなたと親しくなりたい、あなたの話に引きこまれている、というサインであることも少なくありません。意図を疑うより先に、相手の関心として受け取ってみてもいいはずです。

うつすのは、動きより相手への関心

ミラーリングは、相手の動きを写しとる技術として語られがちです。けれども研究が示しているのは、まねが「つながりたい」という気持ちから自然に生まれる、ということでした。

だから、しぐさをそろえることに気をとられなくて大丈夫です。相手の話に耳を傾け、言葉をていねいに受け取る。そうしているうちに、気づけば二人の姿勢は似てきます。

次に誰かと話すとき、まねをしようとする代わりに、相手が大切そうに使った言葉をひとつ覚えておいてください。その言葉をそっと返すことが、いちばん自然なミラーリングになるかもしれません。

A question for you

あなたへの問い

最近、気づいたら誰かと同じしぐさをしていたことはありますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

ミラーリングの効果は、本当にありますか?

しぐさをまねされた人が、まねした相手に好感をもちやすくなったという実験はあります。ただ、効果が見られなかった研究もあり、状況によって大きく変わると考えられています。「これをすれば好かれる」という確実な方法ではありません。

ミラーリングされていると気づいたら、どう思われますか?

意図的にまねされていると気づくと、多くの人は不自然さや居心地の悪さを感じます。実験でも、まねに気づいた人は相手の評価を下げる傾向がありました。まねは控えめにし、相手への関心を伝えることを優先してください。

恋愛や商談でミラーリングを使ってもいいですか?

相手が話しやすくなるように、ペースや雰囲気をそろえる程度なら、自然な配慮の範囲です。ただ、相手の気持ちを操作するために使うと、関係の土台である信頼を損ないます。テクニックより、相手の話をよく聴くことが近道です。

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References

  • Chartrand, T. L., & Bargh, J. A. (1999). The chameleon effect: The perception–behavior link and social interaction. Journal of Personality and Social Psychology, 76(6), 893–910.
  • Lakin, J. L., & Chartrand, T. L. (2003). Using nonconscious behavioral mimicry to create affiliation and rapport. Psychological Science, 14(4), 334–339.
  • Lakin, J. L., Chartrand, T. L., & Arkin, R. M. (2008). I am too just like you: Nonconscious mimicry as an automatic behavioral response to social exclusion. Psychological Science, 19(8), 816–822.
  • van Baaren, R. B., Holland, R. W., Steenaert, B., & van Knippenberg, A. (2003). Mimicry for money: Behavioral consequences of imitation. Journal of Experimental Social Psychology, 39(4), 393–398.
  • Rizzolatti, G., & Craighero, L. (2004). The mirror-neuron system. Annual Review of Neuroscience, 27, 169–192.
  • Mukamel, R., Ekstrom, A. D., Kaplan, J., Iacoboni, M., & Fried, I. (2010). Single-neuron responses in humans during execution and observation of actions. Current Biology, 20(8), 750–756.
  • Hickok, G. (2014). The Myth of Mirror Neurons: The Real Neuroscience of Communication and Cognition. W. W. Norton.
  • Bailenson, J. N., Yee, N., Patel, K., & Beall, A. C. (2008). Detecting digital chameleons. Computers in Human Behavior, 24(1), 66–87.
  • Hale, J., & Hamilton, A. F. de C. (2016). Testing the relationship between mimicry, trust and rapport in virtual reality conversations. Scientific Reports, 6, 35295.

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。