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優位感覚(VAK)とは?見る・聴く・感じるタイプ
優位感覚(VAK)とは、考えるときに視覚・聴覚・体感覚のどれに頼りやすいかを表すNLPの考え方。代表システム・リードシステム・叙述語などの用語を整理し、研究上の限界、簡易チェック、学び方や伝え方への活かし方を紹介します。
この記事の結論
優位感覚(VAK)とは、ものを考えたり思い出したりするとき、視覚・聴覚・体感覚のどれを使いやすいかという傾向を指すNLPの考え方です。人を型に分ける根拠は弱いとされますが、「今どの感覚で考えているか」に気づく道具としては役立ちます。
- VAKは視覚・聴覚・体感覚の頭文字。考えるときに使う感覚の「くせ」を見る枠組み
- 人を3タイプに分ける説や、学び方を型に合わせる説は研究で支持されていない
- 型の判定より、感覚を切り替えて考え直す・伝え直す道具として使うと役に立つ
目次 Contents
人の顔はすぐ覚えるのに、名前が出てこない。説明を聞くより、図を見たほうが早くわかる。逆に、メモをとるより声に出したほうが頭に入る人もいます。自分の「わかり方」のくせが気になって、このページにたどり着いたのかもしれません。
ネットで「VAK診断」を試して、「あなたは視覚タイプです」と言われた人もいるでしょう。なるほどと思う一方で、「本当にそれだけ?」と引っかかりも残る。その引っかかりは、もっともです。
この記事では、優位感覚(VAK)の意味を整理します。代表システム・リードシステム・叙述語といった、ばらばらに語られがちな用語もひとつにまとめます。研究で何が支持され、何が支持されていないのかも正直にお伝えします。そのうえで、簡易チェックと、学び方・伝え方・自分の考え方を広げる使い方を紹介します。
優位感覚(VAK)とは? 一言でいうと
優位感覚とは、ものを考えたり思い出したりするとき、どの感覚を使いやすいかという傾向のことです。NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)で生まれた考え方です。
VAKは、3つの感覚の頭文字です。
- V(Visual):視覚。絵や映像、色、位置で考える
- A(Auditory):聴覚。音や声、言葉の響き、リズムで考える
- K(Kinesthetic):体感覚。体の感じ、手触り、重さ、気持ちで考える
ここに嗅覚(O)と味覚(G)を加えて「VAKOG」と呼ぶこともあります。さらに、頭の中の言葉による理屈っぽい考え方を「Ad(デジタル、内部対話)」として別に扱う流派もあります。詳しくは用語辞典のデジタル(内部対話)をどうぞ。
たとえば、去年の夏休みを思い出してみてください。海の青さが浮かぶ人もいれば、波の音や誰かの笑い声が聞こえる人もいます。砂の熱さや、帰り道のけだるさがよみがえる人もいるでしょう。同じ「思い出す」でも、入り口になる感覚は人によって違います。この違いに目を向けたのが、VAKという枠組みです。
代表システム・リードシステム・叙述語:用語を整理する
VAKのまわりには似た用語が多く、日本語訳もばらばらです。まず全体を表にまとめます。
| 用語 | ほかの呼び方 | 意味 |
|---|---|---|
| 表象システム | 代表システム、表象系、モダリティ | 人が体験を頭の中で再現するときに使う感覚の種類(VAKOG) |
| 優位感覚 | 優先代表システム、プライマリー表象システム | その中で、とくに使いやすいとされる感覚 |
| リードシステム | 英語で lead system | 記憶や情報を引き出すとき、最初の入り口になる感覚 |
| 叙述語 | プレディケート | 「見える」「聞こえる」「感じる」など、感覚がにじむ言葉 |
リードシステムと優位感覚の違い
リードシステムは「入り口」、優位感覚は「よく使う部屋」と考えるとわかりやすくなります。
たとえば、昔の友人を思い出そうとして、まず顔が浮かぶ(入り口は視覚)。そのあと、一緒にいたときの安心感が胸に広がり、その感じで考えを進める(よく使うのは体感覚)。NLPでは、こうした感覚の受け渡しがあると考えます。
叙述語は、言葉ににじむ感覚の手がかり
叙述語(プレディケート)は、話し手が使う感覚が言葉に表れたものです。
- 視覚寄り:見通しが立つ、はっきりした、明るい話、焦点を当てる
- 聴覚寄り:話がかみ合う、耳が痛い、響く、調子がいい
- 体感覚寄り:しっくりくる、手応えがある、重い話、ぐっとくる
- デジタル寄り:筋が通る、理解できる、論理的に考える
「将来が見えない」と言う人と、「将来が重たく感じる」と言う人。どちらも先行きへの不安ですが、頭の中での描き方は違っているのかもしれません。
アイ・アクセシング・キューとの関係
NLPでは、目の動きから使っている感覚がわかる、という説明もされてきました。上を見ているときは映像を、横を見ているときは音を思い浮かべている、といったものです。ただ、この説も研究では支持されていません。詳しくはアイアクセシングキューとは?目の動きと思考で扱っています。
研究ではどう言われている? 根拠と限界
ここは大切なところなので、はっきり書きます。人を「視覚型」「聴覚型」「体感覚型」に分けられるという説は、研究では十分に支持されていません。
1980年代には、NLPの主張を確かめる研究が多く行われました。心理学者のシャープリーは、それらを2度にわたってまとめています。結論は、優位感覚を安定して見分ける方法は確認できない、というものでした。相手の叙述語に合わせると関係がよくなる、という効果もはっきりしませんでした(Sharpley, 1984; 1987)。その後のレビューでも、評価は大きく変わっていません(Witkowski, 2010)。
「学習スタイル」も同じ問題を抱えている
教育の世界でも、「視覚型の子には図で、聴覚型の子には音声で教えると伸びる」という考え方が広まりました。いわゆる学習スタイル論です。
心理学者のパシュラーらは、この主張を検証した研究を丁寧に調べました。その結果、教え方を本人の型に合わせると成績が上がる、という証拠はほとんど見つからなかったと報告しています(Pashler ら, 2008)。「図のほうが好き」という好みは本当にあっても、好みに合わせれば学びが深まる、とは限らないのです。
一方で、言葉だけより、言葉と図を組み合わせたほうが理解しやすいという研究は積み重なっています(Mayer, 2009)。これは型に関係なく、多くの人にあてはまる話です。
簡易チェック:最近よく使っている感覚は?
ここで、自分の感覚の使い方をふり返ってみましょう。診断ではなく、今の自分のくせを眺めるためのチェックです。
場面によって印がばらけた人も多いはずです。それが自然な姿です。優位感覚は、その人に貼りつく性格というより、場面ごとに選んでいる「いつもの道」に近いものだからです。
感覚ごとに起きやすいこと
ここからは、各感覚を使っているときに起きやすいことを、目安として紹介します。研究にもとづく分類ではありません。自分のくせに気づくための手がかりとして読んでください。
| 使っている感覚 | 得意になりやすいこと | 行き詰まりやすいこと |
|---|---|---|
| 視覚(V) | 全体像をつかむ、イメージを描く | 嫌な場面の映像が何度も浮かぶ |
| 聴覚(A) | 言葉のニュアンスを聞き分ける、話して整理する | 言われた一言が頭の中でくり返される |
| 体感覚(K) | 気持ちを汲む、体で覚える | 気分の重さに引きずられて動けなくなる |
| デジタル(Ad) | 筋道を立てて考える | 理屈の堂々めぐりで答えが出ない |
表の右側を見ると、悩みのくせも感覚と結びついていることがわかります。同じ失敗でも、映像で何度も再生する人、言葉で責め続ける人、体の重さとして抱え続ける人がいます。
そして、悩みが感覚のくせとつながっているなら、別の感覚に移ることが出口になる場合があります。理屈で堂々めぐりしている人が、散歩して体を動かすと、ふっと答えが出る。気分が重くて動けない人が、紙に図を描いてみると、問題が小さく見えてくる。そんな経験に心当たりはないでしょうか。
日常での活かし方:学ぶ・伝える・考え直す
学ぶとき:自分の型に閉じこもらない
「私は聴覚型だから、本は向いていない」と決めると、学びの入り口を自分で狭めてしまいます。研究からいえるのは、ひとつの感覚にしぼるより、いくつかを組み合わせるほうがいいということです。
本を読んだら、要点を図にする。図にしたら、誰かに声で説明してみる。最後に、実際に手を動かして試す。苦手だと思っていた感覚も、使ううちに慣れていきます。
伝えるとき:表現の入り口を増やす
人に何かを伝えるときも、表現の入り口が多いほど届きやすくなります。「見てください」「聞いてください」「試してみてください」を一度の説明の中にちりばめる。たとえ話、図、数字、体験談を組み合わせる。それだけで、受け取り方の違う人にも届きやすくなります。
相手の言葉づかいに少し寄せることも、会話の助けになります。たとえば「なんだかしっくりこない」と言う人がいたとします。「どこが見えていないですか」より、「どのあたりが引っかかりますか」と返すほうが、話が続きやすいことがあります。これは効果が証明された技法というより、相手の言葉を大切に扱う姿勢の表れです。相手のペースに寄り添う方法は、ペーシングとは?相手に合わせて心を通わせるでも紹介しています。
NLPでは、ある感覚の表現を別の感覚の表現に言い換えることを「翻訳」と呼びます(用語辞典:翻訳)。
考え直すとき:感覚を切り替えて眺める
自分を知るうえで、いちばん役に立つのはこの使い方です。悩んでいるとき、その悩みがどの感覚で頭の中にあるかを確かめてみてください。
ステップ6のように、感覚の「質感」を変える考え方は、NLPでサブモダリティと呼ばれます。詳しくはサブモダリティとは?記憶の「質感」を変えるで扱っています。こちらも科学的な裏づけは限られていますが、自分の感じ方を観察する練習として試す価値はあります。
ほかにも、考え方のくせを知る枠組みに関心がある人は、メタプログラムとは?思考のクセから強みを知るも参考になります。
タイプより、「今どの感覚で考えている?」
優位感覚のチェックで「あなたは〇〇タイプ」と言われると、自分が少しわかった気がして安心します。でも、人はそんなに単純ではありません。場面によって、気分によって、私たちは感覚を行ったり来たりしながら考えています。
だから、型を決めるより、問いを持ち歩くほうが役に立ちます。「今、私は絵で考えている? 言葉で考えている? 体で感じている?」。この問いを思い出せると、行き詰まったときに、別の入り口から考え直せるようになります。
今夜寝る前に、今日いちばん印象に残った場面をひとつ思い出してみてください。最初に浮かんだのは、景色でしたか。声でしたか。それとも、そのときの体の感じでしたか。答えはどれでもかまいません。気づいたこと自体が、あなたを知る小さな手がかりになります。
A question for you
あなたへの問い
いちばん鮮明に思い出せる記憶は、絵・音・感触のどれですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
VAK診断の結果は当たっていますか?
「最近の自分はこの感覚をよく使っている」という目安にはなります。ただし、人を視覚型・聴覚型・体感覚型に分けられるという説は、研究では十分に支持されていません。結果は性格の判定ではなく、ふり返りのきっかけとして受け取ってください。
優位感覚は、生まれつき決まっているのですか?
決まっているとは考えないほうが自然です。同じ人でも、仕事の資料を読むときは視覚、人の相談を聞くときは体感覚、というように場面で変わります。使う感覚は練習でも広がります。
学習スタイル(視覚型・聴覚型)に合わせて勉強すると効率が上がりますか?
教え方を本人の「型」に合わせると成績が上がる、という主張には、研究上の裏づけがほとんどありません(Pashler ら, 2008)。言葉と図を組み合わせるなど、複数の感覚を使う工夫のほうが、型を問わず役立つと考えられています。
子どもを「あなたは体感覚タイプ」と決めてもいいですか?
おすすめしません。ラベルをつけると、苦手だと思った感覚を使わなくなるおそれがあります。「今日は図にしてみる? 声に出してみる?」と、いろいろな入り口を試せるようにするほうが、子どもの学び方を広げます。
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References
- Grinder, J., & Bandler, R. (1976). The Structure of Magic II. Science and Behavior Books.
- Bandler, R., & Grinder, J. (1979). Frogs into Princes: Neuro Linguistic Programming. Real People Press.
- Sharpley, C. F. (1984). Predicate matching in NLP: A review of research on the preferred representational system. Journal of Counseling Psychology, 31(2), 238–248.
- Sharpley, C. F. (1987). Research findings on neurolinguistic programming: Nonsupportive data or an untestable theory? Journal of Counseling Psychology, 34(1), 103–107.
- Heap, M. (1988). Neurolinguistic programming: An interim verdict. In M. Heap (Ed.), Hypnosis: Current Clinical, Experimental and Forensic Practices (pp. 268–280). Croom Helm.
- Witkowski, T. (2010). Thirty-five years of research on neuro-linguistic programming. NLP research data base. State of the art or pseudoscientific decoration? Polish Psychological Bulletin, 41(2), 58–66.
- Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105–119.
- Mayer, R. E. (2009). Multimedia Learning (2nd ed.). Cambridge University Press.