No.05 On Coachingコーチングを知る

経験学習モデルとは?経験を成長に変える4ステップ

経験学習モデルとは、経験をふり返り、教訓にし、次に試すことで成長につなげるコルブの考え方。4つのステップを日常の例で説明し、毎日5分のジャーナリングへの落とし込み方、失敗経験から学びを取り出すコツ、学習スタイル論の注意点も紹介します。

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この記事の結論

経験学習モデルとは、教育学者デイビッド・コルブが示した、経験から学ぶための4つのステップです。具体的な経験をし、それをふり返り、自分なりの教訓にまとめ、次の場面で試す。この循環を回すことで、同じ経験でも成長につながりやすくなります。

  • 経験→ふり返り→教訓化→試す、の4つを回すと経験が学びに変わる
  • ふり返りは反省会ではない。事実と気持ちを分け、うまくいった点も拾う
  • 学習スタイルに合わせると学びが深まる、という説には研究の裏づけが弱い
目次 Contents
  1. 経験学習モデルとは? 一言でいうと
  2. 経験を学びに変える4つのステップ
  3. 経験が学びにならない3つのつまずき
  4. 毎日5分のふり返りに落とし込む
  5. 失敗経験から、学びを取り出すコツ
  6. よくある誤解:学習スタイルとアクティブラーニング
  7. 経験は、ふり返ったときに「経験」になる

毎日、それなりに忙しく働いている。いろいろなことを経験しているはずなのに、成長している実感がない。気づけば、1年前と同じところで同じようにつまずいている。そんなもどかしさを感じていませんか。

それは、あなたの経験が足りないからではありません。経験は、積み重ねるだけでは学びになりにくいのです。経験を学びに変えるには、ちょっとした「型」があります。

この記事では、経験から学ぶための考え方として広く知られる「経験学習モデル」を紹介します。4つのステップを身近な例で整理し、毎日のふり返りに落とし込む方法や、失敗経験から学びを取り出すコツまでお伝えします。

経験学習モデルとは? 一言でいうと

経験学習モデルとは、アメリカの教育学者デイビッド・コルブが1984年に示した、経験から学ぶ過程を表すモデルです。

コルブは、人は「経験する→ふり返る→教訓にする→試す」という循環を回すことで学ぶと考えました。土台にしたのは、教育哲学者ジョン・デューイや心理学者クルト・レヴィンらの考えです。学びを一回きりの出来事ではなく、くり返し回るサイクルとして描いたのです。

このモデルは、学校教育だけでなく、企業の人材育成やリーダー育成の分野でも広く使われています。日本でも、経験学習の研究で知られる松尾睦が、職場で人が育つしくみとして紹介しています(松尾, 2011)。

経験を学びに変える4つのステップ

4つのステップを、一つの例で追ってみます。会議で企画を説明したところ、質問にうまく答えられず、企画が保留になった場面です。

ステップすること自分への問い
1. 具体的経験何かを実際に体験する何が起きた?
2. 内省的観察経験をいろいろな角度からふり返る何に気づいた? ほかの人からはどう見えた?
3. 抽象的概念化ふり返りから、自分なりの教訓を引き出すここから言えることは何?
4. 能動的実験教訓を次の場面で試してみる次は何を変えて試す?

1. 具体的経験:まずは体験する

企画を説明し、質問に答えられなかった。これが具体的経験です。学びの材料は、成功も失敗も含めた、実際の体験です。

2. 内省的観察:いろいろな角度から見る

次に、その経験をふり返ります。答えられなかったのは、どの質問だったか。そのとき自分はどんな気持ちだったか。聞いていた人からは、どう見えていたか。

ポイントは、すぐに「だめだった」と結論を出さないことです。事実と、自分の気持ちと、ほかの人の視点を、まずは並べて眺めます。

3. 抽象的概念化:自分なりの教訓にする

ふり返りから、ほかの場面にも使える教訓を引き出します。たとえば、「質問されそうな点を、事前に3つ想定しておくと落ち着いて話せる」。

教訓は、立派な理論である必要はありません。自分の言葉で書いた、小さな「マイ・ルール」で十分です。

4. 能動的実験:次の場面で試す

最後に、教訓を実際に試します。次の会議の前に、想定質問を3つ書き出してから臨んでみる。

試した結果は、また新しい具体的経験になります。こうして、サイクルは次の周へと回っていきます。

経験が学びにならない3つのつまずき

4つのステップは単純に見えますが、多くの人がどこかで止まってしまいます。

経験しっぱなしになる

忙しいと、経験したら次の経験へと、ふり返らないまま進んでしまいます。ステップ1だけをくり返している状態です。経験の量は増えても、同じパターンが続きます。

ふり返りが「反省会」になる

ふり返りが、自分を責める時間になってしまうこともあります。「なんであんなこともできないんだ」。自己批判は、学びの材料を見えにくくします。責められるのがつらくて、ふり返り自体を避けるようにもなります。

教訓が抽象的すぎて、試せない

「もっとしっかり準備する」は、教訓としては抽象的すぎます。次に何をすればいいのかがわからず、ステップ4に進めません。教訓は、明日試せるくらい具体的にしておくのがコツです。

学びやすい経験を選ぶ

松尾は、経験から学ぶ力が高い人の特徴として、3つの要素を挙げています。少し背伸びした課題に挑む「ストレッチ」、経験をふり返る「リフレクション」、仕事にやりがいや楽しさを見いだす「エンジョイメント」です。

つまり、ふり返りの質だけでなく、どんな経験を選ぶかも大切だということです。いつも同じ、できることばかりをしていると、ふり返っても新しい発見は少なくなります。少しだけ難しいことに手を伸ばし、それを楽しむ工夫をする。そのうえでふり返ると、サイクルはよく回ります。自分の考え方そのものを一段上から眺める力は、メタ認知とは?自分を客観視する力の鍛え方で紹介しています。

毎日5分のふり返りに落とし込む

経験学習のサイクルは、特別な研修がなくても回せます。おすすめは、短いジャーナリング(書くふり返り)です。

書くふり返りをもっと深めたいときは、ジャーナリングとは?書く瞑想のやり方と効果も参考にしてください。

失敗経験から、学びを取り出すコツ

失敗は、経験学習のいちばん大きな材料です。けれど、つらい経験ほど、ふり返るのに勇気がいります。

気持ちを先に書き出す

悔しさや恥ずかしさが強いうちは、冷静な分析は難しいものです。まず、「悔しかった」「情けなかった」と、気持ちをそのまま書き出します。気持ちを外に出すと、出来事を少し離れたところから眺めやすくなります。

結果と、人格を分ける

「企画が通らなかった」は結果で、「私には能力がない」は人格への評価です。経験学習で扱うのは、前者だけです。失敗をフィードバックとして受け取る考え方は、失敗が怖いあなたへ|失敗をフィードバックに変えるで紹介しています。

同じ失敗をくり返すなら、前提を疑う

教訓を試しても同じ結果になるなら、教訓の奥にある前提を問い直す時期かもしれません。この考え方はダブルループ学習とは?前提から問い直す学び方で詳しく扱っています。

よくある誤解:学習スタイルとアクティブラーニング

「自分に合う学習スタイル」説には注意

コルブは、4つのステップのどこを好むかによって、人の学習スタイルを4つに分ける考え方も示しました。ただし、「自分の学習スタイルに合わせて教えると、学びが深まる」という説は、研究では十分に支持されていません(Pashler ら, 2008)。

自分の好みを知るのは、ふり返りのきっかけとしては役に立ちます。でも、「私は考えるタイプだから、試すのは苦手」と決めつけると、サイクルの一部を飛ばす言い訳になりかねません。4つのステップすべてを回すことが、経験学習の要です。

アクティブラーニングとの関係

アクティブラーニングは、授業の中で、学ぶ人が話し合いや作業に能動的に参加する学び方です(Bonwell & Eison, 1991)。理系の大学の授業を比べた研究のまとめがあります(Freeman ら, 2014)。講義を聞くだけの授業より、試験の成績が上がり、不合格になる割合が下がると報告されています。

経験学習とアクティブラーニングに共通するのは、「聞いて終わり」にせず、自分で試し、ふり返ることを学びの中心に置く点です。新しいことを身につけるときの段階は、学習の4段階とは?「できない」から始まる成長でも紹介しています。

経験は、ふり返ったときに「経験」になる

同じ一日を過ごしても、ふり返る人とふり返らない人では、残るものが違います。経験は、ふり返り、言葉にし、次に試したときに、はじめて自分の血肉になります。

完璧なふり返りは必要ありません。今日の出来事を一つ選んで、「明日は何を試そう」と考えるだけで、サイクルは一周分回り始めます。

まずは今夜、5分だけ時間をとってみてください。小さな「マイ・ルール」が一つ増えるたびに、あなたの経験は、少しずつ確かな成長に変わっていきます。

A question for you

あなたへの問い

今日の出来事から、明日試してみたいことを一つ挙げるとしたら?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

経験学習モデルの4つのステップは、順番どおりに進める必要がありますか?

基本の流れは順番どおりですが、厳密である必要はありません。ふり返りの途中で別の経験を思い出したり、試しながら教訓を修正したりすることもあります。大切なのは、経験しっぱなしにせず、ふり返りと試すことを含めて一巡させることです。

ふり返りの時間がとれません。どうすればいいですか?

1日5分でも十分です。通勤中や寝る前に、今日の出来事を一つ選んで、「何が起きた?」「次はどうする?」の2つだけ考えてみてください。毎日でなくても、週に一度まとめてふり返るだけで、経験の残り方は変わります。

経験学習とアクティブラーニングは同じですか?

重なる部分はありますが、同じではありません。アクティブラーニングは、主に授業の中で学ぶ人が話し合いや作業に能動的に参加する学び方を指します。経験学習は、仕事や生活を含むあらゆる経験から学ぶ過程全体を説明するモデルです。

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References

  • Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development. Prentice-Hall.
  • Dewey, J. (1938). Experience and Education. Macmillan.
  • Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105–119.
  • Di Stefano, G., Gino, F., Pisano, G. P., & Staats, B. R. (2014). Making experience count: The role of reflection in individual learning. Harvard Business School Working Paper, No. 14-093.
  • Freeman, S., Eddy, S. L., McDonough, M., Smith, M. K., Okoroafor, N., Jordt, H., & Wenderoth, M. P. (2014). Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(23), 8410–8415.
  • Bonwell, C. C., & Eison, J. A. (1991). Active Learning: Creating Excitement in the Classroom. ASHE-ERIC Higher Education Report No. 1.
  • 松尾睦(2011)『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。