No.04 Draw the Future未来を描く
エコロジーチェックとは?その目標は本当に自分のため?
エコロジーチェックとは、目標や変化が自分の内側と周りの人や環境に合っているかを確かめるNLPの考え方です。内的・外的エコロジーの違い、「手に入れたら何を失う?」などの問い、引っかかりが見つかったときの目標の整え方を紹介します。
この記事の結論
エコロジーチェックとは、目標や変化が、自分の価値観や体、家族や仕事などの周りと調和しているかを確かめる、NLPの考え方です。「それを手に入れたら何を失う?」などと問いかけ、引っかかりが見つかったら、あきらめるのではなく大切なものを守れる形に目標を整えます。
- 目標の「副作用」を前もって確かめ、叶ったのにうれしくない事態を防ぐ
- 内側(価値観・体・感情)と外側(人・時間・お金)の両方を点検する
- 引っかかりは却下のサインではなく、目標をよりよく整えるための情報
目次 Contents
ずっと目指してきたことが、やっと叶った。それなのに、思っていたほどうれしくない。むしろ、何か大事なものを置いてきた気がする。そんな経験をしたことはありませんか。
あるいは、目標を立てたのに、なぜか気が進まない。周りから見れば申し分のない目標なのに、体が重い。そんな自分を「やる気がない」と責めてきた人もいるかもしれません。
その気の進まなさは、怠けではなく、心からの問いかけかもしれません。「それを手に入れたら、何が起きる? 本当にそれでいい?」と。
この記事では、NLPの「エコロジーチェック」という考え方を使って、目標が本当に自分の望みに合っているかを確かめる方法を紹介します。目標を立てたあとの、仕上げの点検として使ってください。
エコロジーチェックとは? 一言でいうと
エコロジーチェックとは、目標や変化が、自分の内側と周りの環境の両方と調和しているかを確かめることです。NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)で使われる言葉です。
「エコロジー」は、もともと生態系を表す言葉です。森の中で一種類の生き物が急に増えたり減ったりすると、ほかの生き物にも影響が及びます。人の暮らしも同じです。ひとつの変化は、体や気持ち、人間関係、時間やお金の使い方に、波のように広がっていきます。
この発想の背景には、NLPの創始者たちに影響を与えた人類学者グレゴリー・ベイトソンの考え方があります。ベイトソンは、人の心を、周りとのやりとりの中で働くひとつのシステムとして捉えました。
NLPでは、エコロジーチェックを、目標を叶う形に整える条件のひとつに数えます。目標の立て方の全体は、アウトカムとは?叶う目標に整える5つの条件で紹介しています。
なぜ「叶ったのに、うれしくない」が起きるのか
目標には、たいてい表に見えない「代償」がついてきます。昇進すれば、責任と一緒に、自由に使える時間が減るかもしれません。独立すれば、裁量と一緒に、収入の不安定さがついてきます。
代償があること自体は、問題ではありません。困るのは、代償に気づかないまま進んで、あとから大切なものを失っていたと知ることです。
いまの状態にも、守っているものがある
もうひとつ見落としやすいのが、変わらないことの「得」です。たとえば、人前に出るのが苦手な自分を変えたいとします。でも苦手なままでいれば、目立って批判される怖さからは守られています。
こうした隠れた得は、二次的利得と呼ばれます。変化がそれを奪うとき、心はブレーキをかけます。くわしくは二次的利得とは?やめられない行動の隠れた理由をどうぞ。
内的エコロジーと外的エコロジー
エコロジーチェックでは、自分の内側と外側の両方に目を向けます。それぞれ、内的エコロジー、外的エコロジーと呼ばれます。
| 点検するもの | 問いの例 | |
|---|---|---|
| 内的エコロジー | 価値観、感情、体、ほかの目標、「自分らしさ」 | 叶えた自分を想像すると、体はゆるむ? こわばる? |
| 外的エコロジー | 家族やパートナー、職場、友人、時間、お金、健康 | 叶えたとき、身近な人の暮らしはどう変わる? |
この表は研究にもとづく分類ではなく、点検のもれを減らすための目安です。
内的エコロジー:自分の中に反対している声はないか
目標を思い浮かべたとき、「やりたい」という声と同時に、小さな「でも」が聞こえることがあります。その「でも」は、あなたの中の別の大切なものを代弁しています。
「挑戦したい」と「安心していたい」。どちらも本物の気持ちです。片方を黙らせて進むと、あとで反動が来ます。両方の声を聞くのが、内的エコロジーの点検です。自分の中の対立する声を扱う方法は、心の葛藤を統合する|パートとビジュアルスカッシュでも紹介しています。
外的エコロジー:周りにどんな波が届くか
外的エコロジーでは、目標が周りの人や暮らしに与える影響を確かめます。資格の勉強のために毎晩2時間を使うなら、その2時間はどこから来るのか。家族との時間か、睡眠か。
周りに配慮するというのは、周りの許可を取ることではありません。影響を知ったうえで選び、必要なら話し合っておく。そのほうが、目標を途中で手放さずにすみます。
目標を点検する問い
エコロジーチェックの中心は、問いかけです。NLPでは、次の4つの問いがよく使われます。数学の座標にならって「デカルト座標の質問」と呼ばれます。
- それが手に入ったら、何が起きる?
- それが手に入ったら、何が起きなくなる?
- それが手に入らなかったら、何が起きる?
- それが手に入らなかったら、何が起きないまま?
1つ目は誰でも考えます。大切なのは2つ目と4つ目です。2つ目からは「目標と引きかえに失うもの」が、4つ目からは「今のままでいることで守られているもの」が見えてきます。
ほかにも、次のような問いが役に立ちます。
- それを手に入れたら、何を失う?
- 叶った自分を、大切な人はどう見るだろう?
- 1年後、3年後も、それを望んでいると思う?
- それは、誰のための目標?
「誰のための目標か」を見分ける
問いの中でも、「それは、誰のための目標?」は見落とされがちです。目標の中には、親や周りの期待、世間の「普通」から借りてきたものが混ざっていることがあります。
見分ける手がかりとして、次のように自分に聞いてみてください。「この目標を叶えても、誰にも知られず、誰にも褒められないとしたら、それでも欲しい?」。答えが「それなら別にいらない」なら、欲しいのは目標そのものではなく、評価や安心なのかもしれません。それ自体は悪いことではありません。ただ、本当に欲しいものがわかれば、もっと近い道が見つかることもあります。
引っかかりが見つかったら、どうするか
点検で引っかかりが見つかると、「やっぱりこの目標はだめなんだ」と感じるかもしれません。でも、引っかかりは却下のサインではなく、目標をよりよくするための材料です。整え方には、次のような方法があります。
- 守りたいものを条件として書き足す(例:週に2日は定時で帰りながら)
- 時期や範囲を変える(例:いきなり独立せず、まず副業で試す)
- 失うものを、別の方法で満たす(例:一人の時間が減るなら、朝の15分を確保する)
- 影響を受ける人と、前もって話し合う
どうしても引っかかりが消えないなら、その目標は、誰かの期待や「こうあるべき」から借りてきたものかもしれません。そのときは、自分が本当に大切にしているものから見直してみてください。価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークが手がかりになります。
エコロジーチェックで気をつけたいこと
点検しすぎて、動けなくならない
失うものを数えはじめると、どんな目標にもリスクは見つかります。エコロジーチェックの目的は、ゼロリスクの目標を探すことではありません。代償を知ったうえで「それでも進みたい」と選べる状態をつくることです。
反対意見と、エコロジーの問題を混同しない
周りの反対は、外的エコロジーを考えるうえで大切な情報です。ただ、反対の理由が、相手自身の不安や価値観から来ていることもあります。反対の中身を聞いて、あなたが見落としていた現実的な影響があれば取り入れる。そうでなければ、受け止めたうえで自分で選んでかまいません。
気が進まないことを、すべて「本心ではない」と決めつけない
新しいことを始めるときは、誰でも多少の不安を感じます。その不安は、目標がずれているサインとは限りません。慣れない場所に踏み出すときの、自然なゆらぎであることも多いのです。迷ったら、小さく試してから判断する方法もあります。
叶えたい未来に、大切なものを連れていく
エコロジーチェックは、目標にブレーキをかけるための道具ではありません。叶えたい未来に向かうとき、今のあなたが大切にしているものを、置き去りにしないための道具です。
目標が叶った日の自分を想像して、心から「よかった」と思えるか。その問いをくぐった目標は、少しかたちが変わるかもしれません。でもそのぶん、あなたの毎日になじみ、最後まで歩きやすくなります。
いま気が進まない目標があるなら、自分を責める前に、ひとつだけ聞いてみてください。「これが叶ったら、私は何を失う?」。その答えの中に、あなたが本当に守りたいものが見えてくるはずです。
A question for you
あなたへの問い
その目標が叶ったとき、あなたが失いたくないものは何ですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
エコロジーチェックで引っかかりが出たら、目標はやめるべきですか?
やめる必要はありません。引っかかりは、目標のどこを調整すればいいかを教えてくれる情報です。時期をずらす、範囲を変える、守りたいものを満たす方法を別に用意するなど、形を変えることで前に進めることが多くあります。
家族に反対されている目標は、エコロジーが悪いということですか?
そうとは限りません。反対の理由が相手自身の不安や価値観にあることも多いからです。大切なのは、反対の中に、あなたが見落としていた現実的な影響が含まれていないかを確かめることです。そのうえで、話し合いで調整できる点を探します。
エコロジーチェックには、科学的な根拠がありますか?
NLPの実践の中で使われてきた考え方で、手順そのものの効果が研究で確かめられているわけではありません。一方、目標どうしの対立や、目標が自分の価値観に合っているかが、満足度や続けやすさにかかわることは心理学でも研究されています。
もう一歩深めたい人へ
PR・Amazonへのリンクを含みます-
NLPの基本がわかる本
山崎啓支/日本能率協会マネジメントセンター(2007年)
NLPの考え方を図解でざっと把握したい人へ。前提や主要スキルを一つずつ解説しているので、用語に慣れるための最初の一冊として使えます。
Amazonで見る -
エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする
グレッグ・マキューン(著)/高橋璃子(訳)/かんき出版(2014年)
やることが多すぎて自分を見失いそうな人へ。本当に大切なことを選び、それ以外を手放すための考え方と方法がまとめられています。
Amazonで見る
References
- Bateson, G. (1972). Steps to an Ecology of Mind. Chandler Publishing.
- O'Connor, J., & Seymour, J. (1990). Introducing NLP: Psychological Skills for Understanding and Influencing People. Thorsons.
- Dilts, R. B., & DeLozier, J. (2000). Encyclopedia of Systemic Neuro-Linguistic Programming and NLP New Coding. NLP University Press.
- Emmons, R. A., & King, L. A. (1988). Conflict among personal strivings: Immediate and long-term implications for psychological and physical well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 54(6), 1040–1048.
- Sheldon, K. M., & Elliot, A. J. (1999). Goal striving, need satisfaction, and longitudinal well-being: The self-concordance model. Journal of Personality and Social Psychology, 76(3), 482–497.