No.02 Tend the Mind心を整える
二次的利得とは?やめられない行動の隠れた理由
二次的利得とは、困った行動や状態から、本人も気づかないうちに得ている隠れたメリットのこと。疾病利得との関係、NLPの「肯定的意図」という考え方、やめられない行動の例と、責めずに別の満たし方を探すワークを紹介します。
この記事の結論
二次的利得とは、やめたいのにやめられない行動や、困っている状態から、本人も気づかないうちに得ている副次的なメリットのことです。その行動は、何かを守る役割を果たしていることがあります。責めて止めるより、その役割を見つけ、別の方法で満たす道を探すほうが、変化は続きやすくなります。
- 二次的利得は、困った行動の裏で、本人も気づかずに得ているメリット
- 行動が守っているもの(肯定的意図)を見つけると、責めずに扱える
- 同じ願いを満たす別の方法が見つかると、古い行動は手放しやすくなる
目次 Contents
明日こそ早く寝ようと思うのに、気づけば深夜までスマホを見ている。締め切りが近いのに、なぜか部屋の片づけを始めてしまう。やめたいと本気で思っているのに、同じことをくり返す。
そのたびに「自分はだらしない」と責めているなら、少しだけ待ってください。やめられない行動には、あなたがまだ気づいていない「理由」が隠れていることがあります。
その理由を、心理学やNLPでは「二次的利得」と呼びます。この記事では、まず二次的利得とは何かを整理します。そのうえで、やめられない行動の裏にある願いを見つけ、別の方法で満たすための手順を紹介します。
二次的利得とは? 一言でいうと
二次的利得とは、困っている行動や状態から、本人も気づかないうちに得ている副次的なメリットのことです。
もとになったのは、精神分析の創始者フロイトが論じた「疾病利得」という考え方です。病気そのものが、心の中の苦しい葛藤から逃れる役目を果たすことがある。これを一次的な利得と呼びました。
そのうえで、病気になったことで周りが優しくなる、責任を免れるなど、外から得られる利益を二次的な利得と呼んだのです。医療の分野では、今もこの意味で使われることがあります。
「仮病」とは違う
ここで誤解しやすいのが、二次的利得を「得をしたいから、わざとやっている」と受け取ることです。二次的利得は、本人の意図とは別のところで働いています。
不調や痛みを「休みたいだけでしょう」と決めつけるのは誤りです。相手を深く傷つけるうえに、必要な治療から遠ざけることにもなります。この言葉は、人を責めるためではなく、行動のしくみを理解するために使うものです。
NLPでいう二次的利得と「肯定的意図」
NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)では、二次的利得をもっと広い意味で使います。病気に限らず、やめたいのにやめられない行動すべてに、隠れたメリットがあると考えるのです。
その背景にあるのが、「すべての行動には、肯定的意図がある」というNLPの前提です。肯定的意図とは、その行動が本人にとって果たしている、何かを守ったり満たしたりする目的のことです。
大切なのは、行動と意図を分けて考えることです。深夜までスマホを見る行動は困りものでも、その奥にある「一日の終わりに、自分だけの時間がほしい」という意図は、まっとうな願いです。
なお、この前提は科学的に証明された法則ではありません。行動の意味を探るための「仮の見方」として使われています。NLPの前提の考え方は、NLPの前提とは?生きやすくなる考え方でまとめています。
やめられない行動に隠れた利得の例
よくある行動と、その裏に隠れていることが多いものを整理しました。
| やめられない行動 | 得ていることが多いもの | 守っている願いの例 |
|---|---|---|
| 先延ばし | 今の不安や不快からの一時的な解放 | 失敗したと評価されたくない |
| 深夜までのスマホ | 誰にも邪魔されない時間 | 自分のための時間がほしい |
| 愚痴が止まらない | 共感してもらえる安心 | わかってほしい、つながりたい |
| 「忙しい」が口ぐせ | 必要とされている実感 | 価値のある人間でいたい |
| 完璧になるまで出さない | 批判を受けずに済む | 認められたい、恥をかきたくない |
| 体調を崩しがち | 堂々と休める、頼れる | 休みたい、甘えたい |
先延ばしについては、心理学でも似た見方があります。先延ばしは、目の前の不快な気分をすぐに和らげるための行動として説明されることがあります(Sirois & Pychyl, 2013)。気分は一時的に楽になりますが、そのぶん未来の自分が困るのです。詳しくは先延ばし癖の直し方|心理学でわかる原因と対策で紹介しています。
なぜ、意志の力だけではやめられないのか
隠れた利得がある行動を、意志の力だけで止めようとすると、たいていうまくいきません。行動は止められても、その行動が満たしていた願いは、満たされないまま残るからです。
スマホを我慢して早く寝ても、「自分の時間がほしい」という願いは消えていません。すると別の形、たとえば翌朝の二度寝や、仕事中のネットサーフィンとして顔を出したりします。
依存症などの支援で使われる方法に、動機づけ面接があります。そこでは、人が「変わりたい」と「変わりたくない」の両方を抱えることを、自然なこととして扱います(Miller & Rollnick, 2013)。変わりたくない側の理由を無視して説得すると、人はかえって変わらない理由を探しはじめるのです。
変わりたくない理由の一部が、二次的利得だといえます。それを見ないふりをせず、テーブルの上に出すことが、変化の第一歩になります。似た働きで、うまくいきかけると自分で壊してしまう心理は、セルフサボタージュとは?自分の足を引っ張る心理で扱っています。
隠れた利得を見つけて、別の満たし方を探す
ここからは、実際に手を動かします。目的は、行動を力ずくで止めることではありません。行動が守っている願いを見つけ、もっと自分にやさしい方法で満たすことです。
たとえば、深夜のスマホの意図が「自分だけの時間がほしい」だったとします。別の満たし方として、「帰宅後の15分を、誰にも話しかけられない時間にする」「朝、家族より20分早く起きてお茶を飲む」などが考えられます。
願いが別の形で満たされはじめると、深夜のスマホにしがみつく理由が少しずつ薄れていきます。
心の中で「交渉」するNLPの技法
NLPには、この考え方を手順にした「6ステップ・リフレーミング」という技法があります(Bandler & Grinder, 1982)。困った行動を生み出している心の一部と対話し、その意図を確かめ、同じ意図を満たす新しい行動を一緒に探す、という流れです。
内省の手順としては役に立ちますが、効果を厳密に確かめた研究は多くありません。心の中の「一部」と対話するという発想は、心の葛藤を統合する|パートとビジュアルスカッシュでも紹介しています。
新しい方法が、別の何かを壊さないか確かめる
別の満たし方を選んだら、それが生活のほかの部分とぶつからないかも見ておきます。早起きして自分の時間をつくるのはいい案でも、睡眠時間がさらに削れるなら本末転倒です。目標が自分全体にとって無理がないかを確かめる方法は、エコロジーチェックとは?その目標は本当に自分のため?で紹介しています。
二次的利得を考えるときの注意
自分を責める道具にしない
「私は得をしたくて、わざと先延ばしにしているんだ」。そう受け取ってしまうと、二次的利得の考え方は、新たな自分責めの材料になります。隠れた利得は、あなたが弱いから生まれるのではありません。手持ちの方法で、精いっぱい自分を守ってきた結果です。
人に向けて使わない
家族や同僚の行動を見て、「それは二次的利得だよ」と指摘するのはおすすめしません。言われた側は、責められたと感じるだけです。この考え方は、まず自分の内側を理解するために使ってください。
環境の問題を見落とさない
やめられない行動の原因が、自分の内側ではなく環境にあることもあります。長時間労働で自分の時間がまったくないなら、深夜のスマホは利得というより、追いつめられた結果かもしれません。心の工夫だけで解決しようとせず、環境を変える選択肢も残しておいてください。
やめられなかったあなたは、何かを守ってきた
やめられない行動は、だらしなさの証拠ではありません。多くの場合、あなたがうまく言葉にできなかった願いを、不器用なやり方で満たしてきたものです。
だから、まずは責めるより先に、「今まで何を守ってくれていたの?」と聞いてみてください。答えが見つかったら、その願いを、もう少しやさしい方法で満たしてあげればいいのです。
行動を変えるのは、そのあとで十分です。願いがちゃんと満たされはじめると、古い行動は、思っていたより静かに手を離してくれることがあります。見方を変えて意味を捉え直す方法は、リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするも参考になります。
A question for you
あなたへの問い
やめたいその習慣は、あなたの何を守ってくれていますか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
二次的利得と疾病利得は同じ意味ですか?
もとは同じ流れの言葉です。疾病利得は精神分析に由来し、病気によって周囲の配慮や責任の免除などを得ることを指します。そのうち外から得る利益を二次的利得と呼びます。NLPやコーチングでは、病気に限らず、やめられない行動全般の隠れたメリットという広い意味で使います。
二次的利得があるということは、わざとやっているのですか?
わざとではありません。二次的利得は、多くの場合、本人も気づいていないところで働いています。病気や不調を「得をしたいから」と決めつけるのは誤りで、相手を深く傷つけます。自分にも他人にも、責めるためではなく、理解するために使う考え方です。
肯定的意図とは何ですか?
NLPの考え方で、困った行動にも、本人にとって何かを守ったり満たしたりする目的がある、という見方です。科学的に証明された法則ではなく、行動の意味を探るための前提として使われます。目的と行動を分けて考えると、目的はそのままに行動だけを変える道が見えてきます。
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References
- Bandler, R., & Grinder, J. (1982). Reframing: Neuro-Linguistic Programming and the Transformation of Meaning. Real People Press.
- Dilts, R., & DeLozier, J. (2000). Encyclopedia of Systemic Neuro-Linguistic Programming and NLP New Coding. NLP University Press.
- Miller, W. R., & Rollnick, S. (2013). Motivational Interviewing: Helping People Change (3rd ed.). Guilford Press.
- Sirois, F., & Pychyl, T. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation: Consequences for future self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115–127.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」