No.02 Tend the Mind心を整える

セルフサボタージュとは?自分の足を引っ張る心理

セルフサボタージュとは、うまくいきそうになると自分で自分の邪魔をしてしまうこと。セルフ・ハンディキャッピングの研究、セルフイメージやホメオスタシスとの関係から仕組みを整理し、自分を責めずに気づいて止める4つのステップを紹介します。

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この記事の結論

セルフサボタージュとは、大事な場面やうまくいきそうなときに、自分の行動で自分の目標を妨げてしまうことです。失敗から自分を守る、慣れた自己像に戻ろうとするなど、多くは心の安全装置として働いています。責めて止めるより、パターンに気づき、守ろうとしているものを知るほうが抜け出しやすくなります。

  • セルフサボタージュは、うまくいきそうな場面で自分の邪魔をしてしまうこと
  • 失敗の言い訳づくりや、慣れた自己像に戻ろうとする働きが背景にある
  • 責めずにパターンに気づき、守っているものを知ると、ブレーキは緩む
目次 Contents
  1. セルフサボタージュとは? 一言でいうと
  2. 心理学で研究されている「セルフ・ハンディキャッピング」
  3. なぜ、うまくいきそうになると壊したくなるのか
  4. 自分を責めずに、気づいて止める4つのステップ
  5. セルフイメージを、少しずつ広げる
  6. 身近な人のセルフサボタージュに気づいたら
  7. ブレーキは、あなたを守ろうとしてきた

大事な試験の前の晩に限って、なぜかゲームをやめられない。順調だったはずの恋愛で、急に相手を試すようなことを言ってしまう。昇進の話が出たとたん、小さなミスが続く。

「どうして、うまくいきかけると自分で壊してしまうんだろう」。そんな自分に気づいて、このページを開いたのかもしれません。

自分の足を引っ張っているとわかっているのに、止められない。それは、あなたが自分の幸せを望んでいないからではありません。多くの場合、心のどこかで働いている「安全装置」が、あなたを守ろうとして作動しているのです。

この記事では、セルフサボタージュとは何かを、心理学の研究とセルフイメージの考え方から整理します。そのうえで、自分を責めずに気づき、少しずつブレーキを緩めていくステップを紹介します。

セルフサボタージュとは? 一言でいうと

セルフサボタージュとは、自分の目標や望みを、自分自身の行動で妨げてしまうことです。サボタージュは、もともと「妨害」を意味する言葉です。日本語では「自己妨害」「自己破壊」とも呼ばれます。

医学的な病名ではなく、さまざまな行動のパターンをまとめて呼ぶ言葉です。本人にとっては「なぜかそうなってしまう」という感覚が強く、意図してやっているわけではないことがほとんどです。

よくあるセルフサボタージュの例

場面よくある行動頭の中の声の例
試験・仕事の本番前準備を後回しにする、前日に夜ふかしする「本気を出していないだけ」
新しい挑戦応募の締め切りをうっかり逃す「どうせ受からないし」
人間関係大切にされると、距離をとったり試したりする「いつか離れていくなら、先に」
健康・習慣順調に続いた日に、一気に崩す「もう台無しだから、いいや」
評価された直後次の仕事で手を抜く、ミスが増える「期待されても応えられない」

どれも、外から見れば「もったいない」行動です。でも本人の中では、それなりの理由があって起きています。次の章から、その理由を見ていきます。

心理学で研究されている「セルフ・ハンディキャッピング」

セルフサボタージュに近い現象として、心理学でよく研究されてきたのが「セルフ・ハンディキャッピング」です。失敗したときの言い訳になる不利な条件を、自分から先につくってしまうことを指します。

有名なのは、心理学者バーグラスとジョーンズの実験です(Berglas & Jones, 1978)。参加者は、ほとんど解けない難問に取り組んだあと、「よくできました」と告げられました。自分でも、なぜうまくいったのかわからない成功です。

次のテストの前に、参加者は2種類の薬から一つを選べました。成績を上げるとされる薬と、成績を下げるとされる薬です。すると、根拠のない成功を告げられた参加者は、成績を下げる薬を選ぶ傾向がありました。この傾向は、男性の参加者で特にはっきり見られました。

次も成功できる自信がないとき、成績を下げる薬を飲んでおけば、失敗しても「薬のせい」にできます。成功すれば、「薬があってもできた」とさらに評価が上がります。どちらに転んでも、自分の能力への評価は守られるのです。

日常でいえば、「全然勉強してない」と言いながら試験を受ける。前日に飲みに行く。準備を最後までしない。どれも、失敗したときの自分の評価を守る盾になります。ただし、盾を使い続けるほど、実力を出しきる機会は減っていきます。

なぜ、うまくいきそうになると壊したくなるのか

1. 失敗したときの痛みから、自分を守るため

本気でやって失敗すると、「全力でもこの程度なんだ」と認めることになります。それは、とても痛いことです。だから先に言い訳を用意して、本気を出さないままでいようとします。

失敗の怖さの中身と付き合い方は、失敗が怖いあなたへ|失敗をフィードバックに変えるで詳しく扱っています。

2. 「いつもの自分」に戻ろうとするため

人には、自分が思う「自分らしさ」を確かめたがる傾向があることが知られています(Swann ら, 1992)。「私はうまくいかない人間だ」と思っている人にとって、うまくいっている状況は、どこか落ち着かないものです。

コーチングでは、これを体温を一定に保つ働きになぞらえて、ホメオスタシス(恒常性)の比喩で説明します。慣れたセルフイメージの範囲を超えると、元の範囲に戻そうとする力が働く、という見方です。この比喩がどこまで当てはまるかは、ホメオスタシスとは?変われないのは意志の弱さではないで整理しています。

3. 成功の先にある変化が怖いため

うまくいくことには、変化がともないます。昇進すれば、責任が増え、周りの期待も上がります。人間関係が深まれば、傷つく可能性も大きくなります。

周りから認められても、「自分は実力以上に評価されている。いつか化けの皮がはがれる」と感じる人もいます。この感覚は「インポスター現象」と呼ばれます。もとは、高い成果をあげている女性たちの臨床観察から報告されたものです(Clance & Imes, 1978)。その後の研究で、男女を問わず見られると考えられるようになりました。成功が近づくほど不安が強くなるのは、変化への自然な反応でもあるのです。

4. 今の気分を楽にするため

大事なことを後回しにすると、その瞬間は不安から解放されます。先延ばしは、目の前の嫌な気分をすぐに和らげるための行動として説明されることがあります(Sirois & Pychyl, 2013)。気分は楽になりますが、そのつけは未来の自分が払います。詳しくは先延ばし癖の直し方|心理学でわかる原因と対策で紹介しています。

5. 隠れたメリットがあるため

自分の邪魔をする行動が、別の何かを満たしていることもあります。うまくいかないままでいれば、周りに心配してもらえる。挑戦しなければ、今の居場所を失わずに済む。こうした隠れたメリットは、二次的利得とは?やめられない行動の隠れた理由で詳しく扱っています。

自分を責めずに、気づいて止める4つのステップ

セルフサボタージュに気づくと、「また自分で台無しにした」と責めたくなります。でも、責めることは、それ自体が新しいセルフサボタージュになりかねません。ここでは、責める代わりに、観察して理解するためのステップを紹介します。

ステップ1:パターンに気づく

まず、自分の足を引っ張る行動が、どんな場面で起きやすいかを観察します。最初は、壊してしまったあとで気づくことがほとんどです。それで十分です。「また起きた」ではなく、「こういう場面で起きるんだな」とデータを集めるつもりで振り返ります。

ステップ2:一呼吸おいて、名前をつける

パターンが見えてきたら、その瞬間に気づけるようになることを目指します。「あ、いつもの安全装置が動きだした」。少しユーモアのある名前をつけると、行動と自分の間にすき間が生まれます。

ステップ3:守ろうとしているものを聞く

安全装置が動いていると気づいたら、「今、何から自分を守ろうとしている?」と問いかけてみます。失敗の痛みか、変化への不安か、誰かの期待か。答えが見つかると、その行動を敵として扱わなくて済むようになります。

ステップ4:小さな代わりの行動を決める

守りたいものがわかったら、それを別の方法で守れないか考えます。たとえば、失敗が怖くて準備を後回しにするなら、「完璧な準備」ではなく「15分だけの準備」を決める。

「もし〇〇と感じたら、△△をする」という形で事前に決めておくと、実行しやすくなることが研究で示されています(Gollwitzer, 1999)。

セルフイメージを、少しずつ広げる

コーチングでは、セルフサボタージュの根っこに「自分はこのくらいの人間だ」というセルフイメージがあると考えます。その範囲を超えそうになると、行動がブレーキをかける、という見方です。

この考え方を直接確かめた研究は多くありませんが、自己確証の研究と重なる部分があります。セルフイメージが変わらないまま行動だけ変えようとすると、どこかで揺り戻しが来やすいのです。

セルフイメージを広げるコツは、いきなり大きく変えようとしないことです。「うまくいった自分」に少しずつ慣れていく。小さな成功を、「たまたま」で片づけずに、「自分がしたこと」として受け取る。その積み重ねで、「自分はこのくらい」の範囲は、少しずつ広がっていきます。

うまくいったときに居心地が悪くなったら、それは範囲の端に触れているしるしかもしれません。逃げ出さずに、その居心地の悪さをしばらく味わってみてください。具体的な方法はセルフイメージとは?書き換えて自分を変える方法で紹介しています。自分にかける言葉を変える練習は、セルフトークとは?心の口ぐせを味方にするも参考になります。

身近な人のセルフサボタージュに気づいたら

家族や友人が、うまくいきかけるたびに自分で壊しているように見えることもあるでしょう。そんなとき、「また自分で台無しにしているよ」と指摘するのは、おすすめしません。本人もうすうす気づいていて、そのことに一番傷ついている場合が多いからです。

代わりに、結果ではなく、挑戦したこと自体を認める言葉をかけてみてください。「あそこまで準備したのはすごかったね」。うまくいかなかったときも見捨てられない、という安心感が、ブレーキを緩める助けになることがあります。

ブレーキは、あなたを守ろうとしてきた

セルフサボタージュは、あなたが自分の幸せを望んでいない証拠ではありません。傷つかないように、失望しないように、慣れた場所にいられるように。不器用なやり方で、あなたを守ろうとしてきたブレーキです。

だから、ブレーキを力ずくで外そうとしなくてかまいません。「守ってくれてありがとう。でも、今回は少しだけ進んでみるね」。そう声をかけて、ほんの少しアクセルを踏む。

うまくいきかけて怖くなったら、それはあなたが新しい場所に近づいているしるしです。その怖さごと、一歩だけ前へ進んでみてください。

A question for you

あなたへの問い

うまくいきかけたとき、あなたの中でどんな声が聞こえますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

セルフサボタージュは病気ですか?

病名ではありません。自分の目標を自分の行動で妨げてしまう、さまざまな行動のパターンをまとめて呼ぶ言葉です。誰にでも多少は起こることです。ただ、背景にうつや不安などの心の不調があることもあるので、つらさが強いときは専門家に相談してください。

セルフ・ハンディキャッピングとは何ですか?

失敗したときの言い訳になるような不利な条件を、自分から先につくってしまうことです。試験の前に勉強しない、本番の前日に夜ふかしするなどが例です。失敗しても「準備不足のせい」にでき、自分の能力への評価を守れるため、無意識に選んでしまうことがあります。

うまくいきそうになると、人間関係を壊してしまいます。どうすればいいですか?

まず、壊したくなるのがどんな瞬間かを観察してみてください。相手と近づいたとき、大切にされたときなど、きっかけが見えてくることがあります。「いつか離れていくなら、先に離れたい」という気持ちが隠れていることもあります。くり返し苦しくなるときは、カウンセラーと一緒に見ていくのも一つの方法です。

セルフサボタージュをやめるには、どれくらいかかりますか?

決まった期間はありません。長く身についたパターンほど、すぐには消えません。最初は、壊したあとで気づくところから始まり、やがて壊している最中に、さらには壊す前に気づけるようになります。気づくタイミングが早くなっていくこと自体が、変化のしるしです。

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References

  • Berglas, S., & Jones, E. E. (1978). Drug choice as a self-handicapping strategy in response to noncontingent success. Journal of Personality and Social Psychology, 36(4), 405–417.
  • Swann, W. B., Jr., Stein-Seroussi, A., & Giesler, R. B. (1992). Why people self-verify. Journal of Personality and Social Psychology, 62(3), 392–401.
  • Clance, P. R., & Imes, S. A. (1978). The impostor phenomenon in high achieving women: Dynamics and therapeutic intervention. Psychotherapy: Theory, Research & Practice, 15(3), 241–247.
  • Sirois, F., & Pychyl, T. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation: Consequences for future self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115–127.
  • Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493–503.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。