No.04 Draw the Future未来を描く

アンラーニングとは?古い自分を手放す学び直し

アンラーニングとは、合わなくなった知識ややり方、考え方を意識して手放し、学び直すこと。仕事のスキルだけでなく「こうあるべき」という自分像にも使える考え方として、手放しにくい理由、4つのステップ、転機での心の揺れとの付き合い方を紹介します。

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この記事の結論

アンラーニングとは、これまで身につけた知識ややり方、考え方のうち、今の自分や状況に合わなくなったものを意識して手放し、学び直すことです。過去を否定することではありません。役目を終えたものに気づき、残すものと手放すものを選び直す作業です。

  • アンラーニングは忘れることでも過去の否定でもなく、選び直すこと
  • 成功体験や「こうあるべき」自分像ほど、手放しにくく、見えにくい
  • 手放すと一時的にぎこちなくなる。それは学び直しが進んでいる証拠
目次 Contents
  1. アンラーニングとは? 一言でいうと
  2. なぜ、手放すのはこんなに難しいのか
  3. 仕事でのアンラーニング:役割が変わるとき
  4. 「こうあるべき」自分像も、手放していい
  5. 人生の転機は、アンラーニングの季節
  6. アンラーニングの4つのステップ
  7. 手放すときの、心の揺れとの付き合い方
  8. 空いた手で、新しいものを受け取る

これまでのやり方で、それなりにうまくやってきた。なのに、新しい職場や役割では、なぜか空回りしてしまう。経験を積んできたはずなのに、自分が急に役に立たなくなった気がする。そんな戸惑いを感じていませんか。

あるいは、仕事の話ではないかもしれません。「しっかりしていなければ」「人に頼ってはいけない」。長く自分を支えてきた考え方が、いつのまにか自分を苦しめている。そう気づきはじめた人もいると思います。

今までのやり方が通じなくなるのは、あなたが衰えたからではありません。状況が変わり、あなた自身も変わったからです。古い地図で新しい土地を歩けば、道に迷うのは当然です。

この記事では、「アンラーニング」という考え方を紹介します。仕事のスキルだけでなく、「こうあるべき」という自分像を手放すことにも使える、人生の転機での学び方です。

アンラーニングとは? 一言でいうと

アンラーニングとは、身につけた知識ややり方、考え方のうち、今に合わなくなったものを意識して手放し、学び直すことです。日本語では「学習棄却」と訳されてきました。最近は「学びほぐし」と言いかえられることもあります。

もともとは、組織の学習を研究する分野で使われてきた言葉です。組織が変わるには、新しいことを学ぶだけでなく、古いやり方を捨てることも必要だ。研究者のボー・ヘドバーグは、1980年代のはじめにそう論じました(Hedberg, 1981)。日本では、松尾睦が働く個人のアンラーニングを研究し、その考え方を紹介しています。

忘れることとも、否定することとも違う

アンラーニングは、記憶を消すことではありません。過去の自分を「間違っていた」と否定することでもありません。

たとえるなら、着なくなった服の整理に近いものです。気に入っていた服も、体型や暮らしが変われば合わなくなります。捨てるか、しまっておくか、手直しするか。一枚ずつ選び直すことで、クローゼットに新しい服の場所ができます。

なぜ、手放すのはこんなに難しいのか

新しいことを学ぶより、古いやり方を手放すほうが難しい。多くの人がそう感じています。理由は、いくつかあります。

うまくいったやり方ほど、手放しにくい

手放しにくいのは、失敗したやり方より、成功したやり方です。「この方法で評価されてきた」という実績があるので、合わなくなっても、なかなか疑えません。

たとえば、念入りな準備でミスを防ぎ、信頼を得てきた人が、スピード重視の部署に移ったとします。今度は、七割の完成度で出して直すことが求められます。それでも、つい準備に時間をかけてしまう。準備こそが自分を助けてきた経験があるからです。

体に染みついたやり方は、意識にのぼらない

長く続けてきたやり方は、考えなくても体が動くほど自動化されています。自動化されたものは、ふだん意識にのぼりません。手放す以前に、そもそも「自分がそうしている」ことに気づきにくいのです。

できないことに気づき、意識しながら練習し、やがて意識しなくてもできるようになる。この流れは「学習の4段階」として知られています。アンラーニングは、この最後の段階から、あえて一度「意識する」段階に戻る作業でもあります。くわしくは学習の4段階とは?「できない」から始まる成長をどうぞ。

古いやり方が、自分を守っていることがある

発達心理学者のロバート・キーガンとリサ・ラスコウ・レイヒーは、人が変わりたいのに変われない理由を研究しました。人は、変わりたいという願いと同時に、それを打ち消す「隠れた目標」をもっていることがあるといいます(Kegan & Lahey, 2009)。

「人に頼れるようになりたい」と願いながら、心のどこかで「弱い人だと思われたくない」と自分を守っている。その奥には、「頼ったら見捨てられる」といった大きな思い込みが隠れていることもあります。古いやり方は、ただの癖ではなく、あなたを何かから守ってきた鎧なのかもしれません。

仕事でのアンラーニング:役割が変わるとき

仕事の場面では、役割や環境が変わるときに、アンラーニングが必要になりやすいものです。

  • プレーヤーから管理職へ:自分で成果を出す → 人を通じて成果を出す
  • 転職したとき:前の職場の「当たり前」 → 新しい職場の文化を学び直す
  • 専門職から独立へ:決められた仕事を正確にこなす → 何をするかを自分で決める
  • 技術や道具が変わったとき:慣れた手順 → 新しい手順

いずれも、新しい知識を足すだけでは足りません。前のやり方が無意識に顔を出すので、意識して「今回は、前と同じやり方をしない」と決める場面が出てきます。

仕事のやり方を、目先の改善でなく前提から問い直す学び方は、「ダブルループ学習」とも呼ばれます。ダブルループ学習とは?前提から問い直す学び方もあわせて読んでみてください。

「こうあるべき」自分像も、手放していい

アンラーニングは、仕事のスキルだけの話ではありません。むしろ、自分探しをしている人にとって大きいのは、自分自身についての考え方の学び直しです。

「長女だから、しっかりしていなければ」「弱音を吐くのは甘えだ」「人に迷惑をかけてはいけない」。こうした考えは、多くの場合、子どものころや苦しい時期に、自分を守るために身につけたものです。当時のあなたにとっては、必要な知恵でした。

ただ、状況が変わっても同じ決まりを守り続けると、それは自分を縛る鎖に変わります。大切なのは、古い自分像を責めることではなく、「ここまで守ってくれてありがとう」と役目を終わらせることです。

成人の学びを研究したジャック・メジローは、人が大きく変わる学びに注目しました。そこには、当たり前だった前提の見直しが含まれると考えたのです(Mezirow, 1991)。自分を縛る思い込みについては、ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方でも詳しく扱っています。

人生の転機は、アンラーニングの季節

就職、結婚、出産、離婚、病気、親の介護、退職。人生の転機は、それまでのやり方が通じなくなる時期でもあります。

人生の移行期を研究したウィリアム・ブリッジズは、転機は「終わり」から始まると考えました(Bridges, 1980)。何かが終わり、どっちつかずの「ニュートラルゾーン」を通って、ようやく新しい始まりが来る。私たちはつい新しい始まりばかりに目を向けますが、その前に「何を終わらせるか」があるのです。

ブリッジズは、このどっちつかずの時期を、ただの空白ではなく、新しい自分が育つ大切な時間と捉えました。古い自分を手放したあと、まだ新しい自分が見えない。その心細さは、アンラーニングが進んでいる証拠でもあります。人生の迷いの中にいる人は、人生に迷ったときに立ち止まって考えたいことも手がかりになります。

アンラーニングの4つのステップ

アンラーニングは、次の4つのステップで進めると取り組みやすくなります。

  1. 気づく:うまくいかない、窮屈だ、という違和感を見過ごさない
  2. 棚卸しする:何が合わなくなっていて、何はまだ役に立つのかを分ける
  3. 小さく試す:新しいやり方を、失敗しても困らない場面で試す
  4. 振り返る:試した結果をふり返り、残すか、さらに変えるかを決める

ポイントは、いきなり全部を変えようとしないことです。古いやり方をすべて捨てると、足場がなくなって不安になります。役に立つ部分は残しながら、合わない部分だけを少しずつ入れ替えていきます。

手放す候補は、こんなサインで見つかる

最初の「気づく」がいちばん難しいステップです。古いやり方は無意識に働いているからです。次のようなサインがあったら、手放す候補が隠れているかもしれません。

  • 同じようなつまずきを、場所や相手を変えてくり返している
  • 「前はこうだった」「普通はこうする」が口ぐせになっている
  • 自分と違うやり方をする人に、強くいら立つ
  • フィードバックを受けると、内容より先に反論が浮かぶ
  • 頑張っているのに、以前より疲れやすく、手応えがない

どれも、あなたがだめだという意味ではありません。地図と土地がずれてきた、というお知らせです。

手放すときの、心の揺れとの付き合い方

アンラーニングの途中では、心が揺れます。前のやり方のほうが楽だった。自分が自分でなくなる気がする。そう感じるのは、自然なことです。

一時的にぎこちなくなるのは、学び直しのしるし

新しいやり方は、最初はうまくいきません。古いやり方なら簡単にできたことに、時間がかかる。周りの目も気になる。それは、能力が落ちたのではなく、意識しながら練習する段階に戻っているからです。

揺り戻しがあっても、やり直せばいい

疲れているときや追いこまれたときは、慣れた古いやり方に戻りがちです。人の心と体には、慣れた状態を保とうとする働きがあります。戻ってしまったら、責めるのではなく、「今、戻ったな」と気づくだけで十分です。気づけたら、また新しいやり方を選び直せます。変化に逆らう心の働きは、ホメオスタシスとは?変われないのは脳の仕組みで詳しく紹介しています。

手放すことは、喪失でもある

慣れた自分像を手放すと、寂しさや心細さを感じることがあります。それは、それだけ長くそのやり方と一緒に生きてきた証拠です。無理に前向きになろうとせず、その寂しさもそのまま感じてかまいません。

空いた手で、新しいものを受け取る

両手いっぱいに荷物を抱えていると、新しいものは受け取れません。アンラーニングは、何かを失うことではなく、手を空けることです。空いた手で、今のあなたに必要なものを受け取るための準備です。

古いやり方は、あなたを守り、ここまで連れてきてくれました。だからこそ、感謝して置いていけます。全部を一度に手放す必要はありません。今日ひとつ、「このルールは、もう少しゆるめてもいいかもしれない」と思えるものがあれば、それで十分です。

その小さなゆるみから、新しい自分の芽が出てきます。

A question for you

あなたへの問い

かつてあなたを助けてくれたけれど、今は窮屈なルールは何ですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

アンラーニングとリスキリングは、どう違いますか?

リスキリングは、新しい知識やスキルを身につけることに重きがあります。アンラーニングは、今までのやり方や前提のうち合わなくなったものを手放すことに重きがあります。新しいことを学んでも古いやり方が残っていると使いこなせないため、両方はセットで考えるとうまくいきます。

手放すと、これまでの経験が無駄になりませんか?

無駄にはなりません。アンラーニングで手放すのは、経験そのものではなく、その経験から引き出した「いつもこうすればいい」という決まりです。経験から学んだ大切な部分は残したまま、今の状況に合わない使い方だけを見直します。

年齢を重ねると、アンラーニングは難しくなりますか?

経験が多いほど、手放す対象も増えるので、手間がかかる面はあります。一方で、経験が豊かな人ほど、何が本質で何が手段だったかを見分けやすいとも言えます。年齢より、自分のやり方を問い直す余白をもてるかどうかが大きくかかわります。

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References

  • Hedberg, B. (1981). How organizations learn and unlearn. In P. C. Nystrom & W. H. Starbuck (Eds.), Handbook of Organizational Design (Vol. 1, pp. 3–27). Oxford University Press.
  • 松尾睦 (2021).『仕事のアンラーニング:働き方を学びほぐす』同文舘出版.
  • Argyris, C., & Schön, D. A. (1978). Organizational Learning: A Theory of Action Perspective. Addison-Wesley.
  • Mezirow, J. (1991). Transformative Dimensions of Adult Learning. Jossey-Bass.
  • Kegan, R., & Lahey, L. L. (2009). Immunity to Change: How to Overcome It and Unlock the Potential in Yourself and Your Organization. Harvard Business Press.
  • Bridges, W. (1980). Transitions: Making Sense of Life's Changes. Addison-Wesley.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。