No.03 Connect人とつながる
メタモデルとは?言葉の奥にある本音を聴く質問
メタモデルとは、言葉から抜け落ちた情報を質問で取り戻す、NLPの基本的な技法です。省略・一般化・歪曲の3つのしくみと、本音に近づく質問の例、自分の口ぐせに向けて使うワーク、尋問にしないための注意点を紹介します。
この記事の結論
メタモデルとは、NLPで使われる質問の型です。人は経験を言葉にするとき、情報を省略し、一般化し、歪めます。そこで「具体的には?」「いつもですか?」「何がそう思わせる?」と問い、言葉の奥にある経験や本当の望みに近づきます。
- 言葉は経験の要約。省略・一般化・歪曲で、多くの情報が抜け落ちている
- 「具体的には?」「例外は?」「どうしてそうわかる?」が基本の質問
- 他人より先に、自分の口ぐせに向けると、思い込みがゆるみやすい
目次 Contents
「なんか、うまくいかないんです」。友人にそう打ち明けられて、何と返せばいいかわからなかったことはありませんか。あるいは、自分の口から「どうせ私なんて」という言葉が出て、その先を考えるのをやめてしまったことも、あるかもしれません。
言葉は便利です。でも、短い言葉ほど、その人が本当に感じていることや望んでいることが、こぼれ落ちています。相手の話を「わかったつもり」で流してしまう。自分の気持ちが、もやもやしたまま晴れない。どちらも、その抜け落ちた部分に原因があることが多いのです。
NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)には、この抜け落ちた部分を質問で取り戻す方法があります。それがメタモデルです。
この記事では、細かなパターンの暗記ではなく、3つの見方と基本の質問に絞って紹介します。相手の話を聴くときだけでなく、自分の言葉をほどくときにも使えるように、ワークも用意しました。
メタモデルとは? 一言でいうと
メタモデルとは、言葉から抜け落ちた情報を、質問によって取り戻すための型です。NLPの創始者、リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーが考案しました。1975年の著書『The Structure of Magic』で発表されたものです。NLPで最初に体系化された技法のひとつです。
二人が手本にしたのは、家族療法家のバージニア・サティアと、ゲシュタルト療法を創始したフリッツ・パールズでした。優れたセラピストたちは、相談者のあいまいな言葉を、そのまま受け流さずに聞き返していた。その質問の仕方を観察して、型としてまとめたのがメタモデルです。
「メタ」は「一段上の」という意味です。言葉について、もう一段上から問いかける。そんなイメージで捉えるとわかりやすくなります。
言葉は経験の「地図」:表層構造と深層構造
メタモデルの土台には、「言葉は経験そのものではなく、経験の地図である」という考え方があります。もとは一般意味論の提唱者アルフレッド・コージブスキーの「地図は領土ではない」という言葉です。この考え方は、メンタルモデルとは?「地図は領土ではない」の意味で詳しく扱っています。
バンドラーとグリンダーは、言語学者チョムスキーの変形生成文法から、2つの用語を借りました。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 深層構造 | 本人の中にある、豊かで完全な経験 | 先週の会議で、準備した案を部長に途中でさえぎられ、悔しくて何も言えなかった |
| 表層構造 | 実際に口に出された、短い言葉 | 「職場で認められていない」 |
表層構造の短い言葉には、いつ、誰に、何をされたのかが入っていません。聞き手は、自分の経験で勝手にすき間を埋めて、「わかった」と思ってしまいます。メタモデルの質問は、表層構造から深層構造へと、少しずつ戻っていくための手がかりです。
言葉から情報が抜け落ちる3つのしくみ
メタモデルでは、経験が言葉になるときに起きることを、3つに分けて考えます。どれも、人が膨大な経験を処理するために欠かせない働きです。悪いものではありません。ただ、行きすぎると、自分の可能性まで狭めてしまいます。
| しくみ | 何が起きているか | 例 | 基本の質問 |
|---|---|---|---|
| 省略 | 誰が、何を、どのように、が抜けている | 「もっとがんばらないと」 | 「具体的には、何を?」 |
| 一般化 | 一部の経験を、すべてに広げている | 「いつも失敗する」 | 「一度も例外はなかった?」 |
| 歪曲 | 解釈を、事実のように扱っている | 「返信がないのは、嫌われたから」 | 「どうしてそうわかる?」 |
省略:大事な情報が抜けている
「もっとがんばらないと」という言葉には、何を、誰と比べて、どのくらいがんばるのかが入っていません。「よりよい」「ちゃんと」「うまく」のような比較や評価の言葉は、とくに中身が抜け落ちやすい言葉です。省略については、用語辞典の省略(デリーション)にも詳しいパターンをまとめています。
一般化:一部をすべてに広げている
「いつも」「みんな」「絶対」などの言葉は、ひとつの経験を、すべての場面に広げています。「〜しなければならない」「〜できない」のように、自分に限界を設ける言い方も、一般化の一種です。
歪曲:解釈が事実になっている
「返信がないのは、嫌われたから」。返信がないことは事実ですが、「嫌われた」は解釈です。歪曲には、相手の心を決めつける、原因と結果を短絡的につなぐ、といった形があります。「不安」「関係」のように、本来は動きのある経験を名詞に固めてしまう言い方も、ここに含まれます。
本音に近づく質問の例
ここでは、パターン名にこだわらず、よく使う質問を場面ごとに紹介します。質問は、相手を論破するためではなく、相手が自分の経験に戻れるようにするためのものです。
「具体的には?」で、中身を取り戻す
- 「うまくいかない」→「何が、どんなふうにうまくいかない?」
- 「ちゃんとしたい」→「ちゃんとできている状態って、どんな感じ?」
- 「あの人たちが」→「あの人たちというと、誰のこと?」
「例外は?」で、可能性を広げる
- 「いつも失敗する」→「うまくいったときは、一度もなかった?」
- 「人前で話せない」→「話せないと、何が起きそう?」
- 「休んではいけない」→「休んだら、どうなると思う?」
「〜できない」「〜してはいけない」には、その先に何が起きると思っているのかを聞きます。止めているものの正体が、言葉になって出てくることがあります。
「どうしてそうわかる?」で、解釈と事実を分ける
- 「嫌われている」→「何から、そう感じた?」
- 「あの人のせいで落ちこんだ」→「あの人の何が、どんなふうに気持ちに影響した?」
- 「遅刻するなんて、やる気がない証拠だ」→「遅刻すると、やる気がないことになる?」
「本当は、何を望んでいる?」で、行き先を確かめる
メタモデルの質問は、問題を細かく調べるだけで終わると、相手は疲れてしまいます。ある程度中身が見えてきたら、方向を変えて聞いてみてください。
「本当は、どうなったらいいと思っている?」「それが手に入ったら、何が変わる?」。抜け落ちていたのは、問題の詳細だけでなく、本人の望みであることも多いのです。質問の組み立て方は、オープンクエスチョンとクローズドの使い分けもあわせて参考にしてください。
質問の順番にも、目安があります。まず「何が」「どんなことが」で状況を具体的にする。次に、決めつけや「いつも」が出てきたら、そこをやさしく確かめる。最後に「本当は?」で行き先を聞く。状況、思い込み、望みの順に進むと、相手は自然に自分の考えを整理していけます。
自分の言葉に向けて使う
メタモデルは、他人に使う前に、自分の言葉で試すのがおすすめです。自分の頭の中の声も、省略・一般化・歪曲だらけだからです。
**「どうせ」「いつも」「〜しなければ」という口ぐせは、思い込みが顔を出している場所です。**そこに質問を当てると、固まっていた考えが少しゆるみます。思い込みそのものについては、ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方で詳しく扱っています。
たとえば、「みんなに迷惑をかけている」から始めたとします。「みんなとは?」と聞くと、実は特定の同僚一人の顔が浮かぶかもしれません。「どうしてそうわかる?」と聞くと、その人が一度ため息をついただけ、とわかることもあります。そして「本当は?」と聞くと、「その人ともっと気楽に話したい」という望みが出てくる。言葉が具体的になると、次の一歩も具体的になります。
使うときの注意:尋問にならないために
メタモデルは、使い方を誤ると、相手を追いつめる道具になります。
信頼関係ができてから、ひとつずつ
「具体的には?」「例外は?」と続けざまに聞かれると、人は責められている気がします。まずは相手の話を受け止め、安心して話せる関係があってから、ひとつだけ聞く。それくらいの量で十分です。
「なぜ」より「何が」「どのように」
「なぜできないの?」は、理由ではなく言い訳を求めているように響きます。「何が邪魔をしている?」「どんなふうに難しい?」と聞くと、相手は自分を守らずに、状況を見つめやすくなります。
正しさより、相手の望みに向かう
メタモデルで相手の言葉の矛盾を指摘して、勝った気になる。これは本来の使い方ではありません。目的は、相手が自分の経験を取り戻し、望む方向を見つけることです。
言葉の奥にあるものに、ゆっくり近づく
短い言葉の奥には、その人だけの経験と、まだ言葉になっていない望みがあります。メタモデルは、そこへ近づくための、ていねいな質問の型です。
すべてのパターンを覚える必要はありません。「具体的には?」「例外は?」「どうしてそうわかる?」「本当は、何を望んでいる?」。この4つを手元に置いておくだけで、会話の手触りは変わります。
まずは今日、自分の口から「いつも」が出たら、心の中でそっと聞き返してみてください。「本当に、いつも?」。その小さな問いが、固まった考えに、すき間をつくってくれるはずです。NLPの全体像を知りたい人は、NLPとは?神経言語プログラミングの基本と活かし方も読んでみてください。言葉をあえてあいまいに使う反対側の技法は、ミルトンモデルとは?心に届くあいまいな言葉で紹介しています。
A question for you
あなたへの問い
最近、あなたが「どうせ」「いつも」とつけて話したことは何ですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
メタモデルのパターンは、全部覚える必要がありますか?
覚えなくてもかまいません。省略・一般化・歪曲の3つの見方と、「具体的には?」「例外は?」「どうしてそうわかる?」という基本の問いがあれば、日常では十分に役立ちます。細かなパターン名は、用語辞典で必要なときに確かめてください。
メタモデルとミルトンモデルの違いは何ですか?
向きが反対です。メタモデルは、あいまいな言葉を具体的にしていくための質問の型です。ミルトンモデルは、あえてあいまいな言葉を使い、聞き手が自分の経験で中身を埋められるようにする話し方です。
メタモデルには、科学的な裏づけがありますか?
メタモデルそのものの効果を検証した研究は、多くありません。もとになった変形生成文法の考え方も、言語学ではその後大きく見直されています。一方で、思い込みを具体的な質問で確かめる発想は、認知療法などとも重なります。考えを整理する道具として使うのがおすすめです。
メタモデルの質問をすると、相手を責めているように聞こえませんか?
続けざまに問いつめると、尋問のように聞こえます。信頼関係ができてから、相手の言葉を受け止めたうえで、ひとつずつ聞くのが基本です。「なぜ」より「何が」「どんなふうに」で聞くと、責める響きがやわらぎます。
もう一歩深めたい人へ
PR・Amazonへのリンクを含みます-
NLPの基本がわかる本
山崎啓支/日本能率協会マネジメントセンター(2007年)
NLPの考え方を図解でざっと把握したい人へ。前提や主要スキルを一つずつ解説しているので、用語に慣れるための最初の一冊として使えます。
Amazonで見る -
「良い質問」をする技術
粟津恭一郎/ダイヤモンド社(2016年)
エグゼクティブ・コーチの著者が、相手の気づきを促す「良い質問」とは何かを解説しています。自分への問いかけを見直したい人にも役立ちます。
Amazonで見る
References
- Bandler, R., & Grinder, J. (1975). The Structure of Magic I: A Book About Language and Therapy. Science and Behavior Books.
- Chomsky, N. (1965). Aspects of the Theory of Syntax. MIT Press.
- Korzybski, A. (1933). Science and Sanity: An Introduction to Non-Aristotelian Systems and General Semantics. Institute of General Semantics.
- Beck, J. S. (2011). Cognitive Behavior Therapy: Basics and Beyond (2nd ed.). Guilford Press.
- Witkowski, T. (2010). Thirty-five years of research on Neuro-Linguistic Programming. NLP research data base. State of the art or pseudoscientific decoration? Polish Psychological Bulletin, 41(2), 58–66.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」