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メンタルモデルとは?「地図は領土ではない」の意味

メンタルモデルとは、心の中にある「世界はこう動いている」という地図のこと。「地図は領土ではない」という言葉の意味、心の地図がつくられるしくみ、人によって見え方が違う理由、地図を描き直して生きづらさを和らげるワークを紹介します。

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この記事の結論

メンタルモデルとは、人が心の中にもっている「世界はこう動いている」という地図のようなイメージです。同じ出来事でも、人はそれぞれの地図を通して見ています。「地図は領土ではない」とは、その地図が現実そのものではなく、描き直せるものだという意味です。

  • メンタルモデルは、経験からつくられた「世界はこう動く」という心の地図
  • 地図は、省略・歪曲・一般化によって、現実を簡単にしたものになる
  • 事実と解釈を分けるだけで、古い地図を描き直すきっかけが生まれる
目次 Contents
  1. メンタルモデルとは? 一言でいうと
  2. 「地図は領土ではない」とはどういう意味か
  3. 心の地図は、どうやってつくられるのか
  4. 同じ出来事でも、人によって見える世界が違う
  5. 心の地図が、生きづらさを生むとき
  6. 自分の地図を描き直す3つのワーク
  7. 地図は、何度でも描き直せる

同じ会議に出ていたのに、同僚は「いい雰囲気だった」と言い、あなたは「ぴりぴりしていた」と感じた。友人からの返信が遅いとき、ある人は「忙しいんだな」と思い、別の人は「嫌われたかも」と不安になる。

同じ出来事を見ているはずなのに、受け取り方がまるで違う。そんな場面に出会うと、「自分の感じ方がおかしいのかな」と思うことがあるかもしれません。

そうではありません。人はそれぞれ、自分の中にある「心の地図」を通して世界を見ています。見えている景色が違うのは、地図が違うからです。

この記事では、その心の地図を表す「メンタルモデル」という考え方を紹介します。「地図は領土ではない」という有名な言葉の意味を手がかりにします。そのうえで、地図がつくられるしくみと、古くなった地図を描き直すワークを紹介します。

メンタルモデルとは? 一言でいうと

メンタルモデルとは、人が心の中にもっている「世界はこう動いている」という地図のようなイメージのことです。

私たちは、出来事が起きるたびに一から考えているわけではありません。「こう言えば、相手はこう反応する」「この道を行けば、駅に着く」。経験からつくった地図を頼りに、先を予測しながら動いています。

言葉の由来

この考え方の源の一つは、イギリスの心理学者ケネス・クレイクです。クレイクは1943年の著書で、人は頭の中に現実の「小さな模型」をつくり、それを使って先を予測していると論じました。

その後、認知科学者のジョンソン=レアードが、人がどう推論するかを説明する理論として、メンタルモデルを発展させました。経営学者のピーター・センゲは、組織が学ぶための土台の一つとして、メンタルモデルを挙げています。人や組織が無意識にもっている前提やイメージを見直すことが、変化の出発点になると考えたのです。

ビジネスでいう「メンタルモデル」との違い

ビジネスの分野では、「メンタルモデル」が、物事を考えるための思考の枠組みの集まりを指すこともあります。投資家のチャーリー・マンガーが、さまざまな分野の考え方を組み合わせて判断することを「メンタルモデルの格子」と呼んだことで広まった使い方です。

この記事では、そうした思考の道具ではなく、一人ひとりが無意識にもっている「心の地図」の意味で使います。

「地図は領土ではない」とはどういう意味か

「地図は領土ではない」は、ポーランド出身の学者アルフレッド・コージブスキーの言葉です。地図はどれだけ精密でも、土地そのものではありません。地図には描かれていない小道もあれば、地図ができたあとに変わった景色もあります。

コージブスキーは、言葉や考えも同じだと考えました。私たちが「現実」だと思っているものは、現実そのものではなく、頭の中で描いた地図にすぎない。そう気づくことで、言葉や思い込みに振り回されにくくなるというのです。

この言葉は、NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)でも、大切な前提の一つとされています。NLPの前提については、NLPの前提とは?生きやすくなる考え方で詳しく紹介しています。

日常に置きかえると、二つのことがわかる

この言葉を日々の暮らしに置きかえると、二つのことが見えてきます。

一つは、自分と違う受け取り方をする人も、その人なりの地図に従っているだけだということです。相手が間違っているとは限りません。自分の地図には描かれていない道を、相手は知っているのかもしれません。

もう一つは、自分の地図は描き直せるということです。「私はこういう人間だ」「世の中はこういうものだ」という見方も、地図の一つです。現実そのものではないからこそ、新しい経験に合わせて更新できます。

ここで大事なのは、地図を持つこと自体は悪くないという点です。地図がなければ、私たちは一歩も動けません。問題になるのは、地図を現実そのものだと思いこみ、描き直せなくなったときです。

心の地図は、どうやってつくられるのか

心の地図は、生まれてから今までの経験、まわりの人から聞いた言葉、文化や時代の空気などから、少しずつ描かれていきます。そして描かれるとき、現実はそのまま写されるのではなく、簡単にされていきます。

NLPの創始者であるバンドラーとグリンダーは、そのしくみを三つに整理しました。

しくみ意味例
省略情報の一部を抜き落とす10回ほめられても、1回の注意だけを覚えている
歪曲情報を自分なりに解釈し直す返信が遅い=怒っている、と受け取る
一般化一つの経験を、全体に広げる一度失敗した→自分は何をやってもだめだ

三つのしくみは、どれも悪者ではありません。省略がなければ、情報の多さに押しつぶされます。一般化がなければ、ドアを開けるたびに開け方を考えなければなりません。ただ、同じしくみが、ときに現実とずれた地図をつくってしまうのです。

記憶も、地図に合わせて描き直される

イギリスの心理学者バートレットは、1932年の著書で興味深い実験を報告しました。イギリスの参加者に、なじみのない文化の民話を読んでもらい、時間をおいて思い出して書いてもらったのです。

すると多くの人が、なじみのない部分を省いたり、自分たちの文化に合う話に変えたりして思い出しました(Bartlett, 1932)。人は、出来事をそのまま記憶しているのではなく、すでにもっている枠組みに合わせて組み立て直しているのです。

同じ出来事でも、人によって見える世界が違う

心の地図が違えば、同じ出来事でも、意味がまったく変わります。

センゲらが紹介した「推論のはしご」という考え方も、この流れを理解するのに役立ちます。人は、目の前の事実の中から一部を選び、意味をつけ、前提を加え、結論を出し、行動します。この階段を、多くの場合、一瞬で駆け上がっているのです。

たとえば、会議で同僚が腕を組んでいた(事実)。そこから「不満そうだ」と意味をつけ、「この企画に反対なのだろう」と前提を加える。そして「あの人は私を認めていない」と結論を出し、次の会議では目を合わせなくなる。実際には、ただ部屋が寒かっただけかもしれません。

駆け上がるのが速いほど、自分が「事実」ではなく「解釈」にもとづいて動いていることに気づきにくくなります。はしごを一段ずつ降りて、「実際に見えた事実は何だったか」を確かめる。それが、地図を見直す第一歩です。

脳が情報を選んで受け取るしくみについては、RAS(網様体賦活系)とは?見たいものしか見えない脳でも紹介しています。

心の地図が、生きづらさを生むとき

地図の多くは、それが描かれた時期には役に立っていたものです。たとえば、子どものころに「わがままを言うと叱られる」経験が続いたとします。そこで「自分の希望は言わないほうが安全だ」という地図ができるのは、身を守るための賢い工夫でした。

けれど、大人になって環境が変わっても、同じ地図を使い続けていると、道に迷います。職場で意見を求められても言えない。パートナーに頼みごとができない。地図が描かれたときとは、もう土地が変わっているのです。

古くなった地図のサイン

自分の地図が古くなっているかどうかは、いくつかのサインで気づけることがあります。似たような場面で、同じように苦しくなることがくり返される。頭の中の言葉に、「いつも」「みんな」「絶対」がよく出てくる。人から別の見方を示されると、強く反発したくなる。

こうしたサインがあったら、そこに古い道が残っているのかもしれません。責める材料ではなく、描き直す場所を教えてくれる目印として受け取ってください。

心理療法家のアルバート・エリスは、人を苦しめるのは出来事そのものではなく、出来事についての信じこみだと考えました。この考え方は、のちの認知行動療法の土台の一つになっています。地図の中でも、とくに自分を縛っている一本一本の道については、ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方で詳しく扱っています。

自分の地図を描き直す3つのワーク

地図は、一度で全部描き直す必要はありません。気になる一本の道から、少しずつ確かめていけば十分です。

ワーク1:事実と解釈を分ける

たとえば、「友人がランチの誘いを断った。私と話したくないのだろう」。事実は「誘いを断った」だけです。「話したくない」は解釈です。「本当に予定があった」「疲れていた」と、別の解釈を並べてみると、気持ちが少し軽くなることがあります。

ものの見方を変える方法は、リフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするでも紹介しています。

ワーク2:相手の地図を想像する

すれ違った相手を一人思い浮かべ、「この人の地図では、あの出来事はどう見えていたのだろう」と想像してみてください。相手の立場、背負っている事情、これまでの経験。全部はわからなくても、想像するだけで、自分の地図の外側に目が向きます。

想像するときは、次のような問いが手がかりになります。

  • この人は、あの場面で何を守ろうとしていたのだろう?
  • この人がこれまでに経験してきたことから、何を当然だと思っていそうだろう?
  • この人から見た私は、どんなふうに映っていただろう?

答えは推測でかまいません。正解を当てることより、「相手には相手の地図がある」と実感することに意味があります。

相手の立場に立って考える方法は、ポジションチェンジとは?相手の立場で見る練習で詳しく紹介しています。

ワーク3:小さな実験で、地図を確かめる

古い地図が本当に正しいかは、小さく試してみるとわかります。「頼みごとをすると迷惑がられる」という地図があるなら、信頼できる人に、ごく小さな頼みごとをしてみる。

たとえば、同僚に「この資料、5分だけ見てもらえる?」と頼んでみる。快く引き受けてもらえたら、「頼みごとは迷惑」という道の横に、「小さな頼みごとなら喜んで応じてくれる人もいる」という道が一本増えます。

結果が地図どおりだったら、それも大切な情報です。地図と違う結果が出たら、そこに新しい道を一本描き足します。考えるだけでは変わらない地図も、実際の経験には書き換えられやすいものです。

地図は、何度でも描き直せる

あなたの心の地図は、これまでの人生を生き抜くためにあなた自身が描いてきた、大切な道具です。古くなった部分があっても、それを描いた過去の自分を責める必要はありません。

ただ、地図は領土ではありません。今の土地に合わなくなったところは、描き直してかまわないのです。

今日、何かにもやっとしたら、「これは事実? それとも私の地図?」と、自分に一度だけ聞いてみてください。その問いが、新しい道を描くための、最初の一本の線になります。

A question for you

あなたへの問い

あなたが長く使っている「心の地図」の中で、もう古くなった道はどこですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

メンタルモデルと思い込み(ビリーフ)は、どう違いますか?

ビリーフは「人に頼るのは迷惑だ」のような、一つひとつの信じこみを指すことが多い言葉です。メンタルモデルは、そうした信じこみや経験、イメージが組み合わさってできた、世界全体についての地図を指します。ビリーフは、地図に描かれた一本一本の道のようなものです。

「地図は領土ではない」なら、何が正しいかはわからないのですか?

そういう意味ではありません。地図には、現実に近くて役に立つものと、古くなって迷いやすいものがあります。大切なのは、自分の地図を絶対視せず、新しい情報や人の視点で確かめ直すことです。地図は、使いながら更新していくものです。

ビジネスでいう「メンタルモデル」とは同じ意味ですか?

重なる部分はあります。ビジネスの分野では、組織の人々が共有している暗黙の前提を指したり、物事を考えるための思考の枠組みの集まりを指したりします。どちらも、頭の中にある「世界の見取り図」という点では、この記事で紹介する意味とつながっています。

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References

  • Korzybski, A. (1933). Science and Sanity: An Introduction to Non-Aristotelian Systems and General Semantics. International Non-Aristotelian Library.
  • Craik, K. J. W. (1943). The Nature of Explanation. Cambridge University Press.
  • Johnson-Laird, P. N. (1983). Mental Models. Harvard University Press.
  • Bartlett, F. C. (1932). Remembering: A Study in Experimental and Social Psychology. Cambridge University Press.
  • Bandler, R., & Grinder, J. (1975). The Structure of Magic I. Science and Behavior Books.
  • Senge, P. M. (1990). The Fifth Discipline: The Art and Practice of the Learning Organization. Doubleday.
  • Ellis, A. (1962). Reason and Emotion in Psychotherapy. Lyle Stuart.

本当の人生を生きる 編集部

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