No.03 Connect人とつながる

ミルトンモデルとは?心に届くあいまいな言葉

ミルトンモデルとは、催眠療法家ミルトン・エリクソンの話し方をまとめたNLPの言語パターンです。エリクソンの人物像、あいまいな言葉が届く理由、引用・挿入質問・アナログマーキングを励ましに使う例と、操作との境界を紹介します。

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この記事の結論

ミルトンモデルとは、精神科医ミルトン・エリクソンの話し方を、NLPの創始者たちがまとめた言語パターンです。あえてあいまいな言葉を使い、聞き手が自分の経験で中身を埋められるようにします。相手を動かす技術ではなく、相手の力を信じて言葉を手渡す姿勢として使うのが健全です。

  • ミルトンモデルは、エリクソンの話し方をまとめた「あいまいさ」の技法
  • 中身を決めない言葉は、聞き手が自分の経験で埋めるから心に残る
  • 引用や挿入質問は、押しつけずに励ますための言葉として使える
目次 Contents
  1. ミルトンモデルとは? 一言でいうと
  2. ミルトン・エリクソンという人
  3. なぜ「あいまいな言葉」が心に届くのか
  4. 代表的なパターンを、励ましの言葉として使う
  5. 操作との境界線と、科学的な位置づけ
  6. 答えを渡すより、答えが見つかる余白を渡す

落ちこんでいたとき、誰かの何気ない一言に救われた。そんな経験はありませんか。不思議なことに、心に残っている言葉は、立派な助言より、ふわっとしたひと言だったりします。「まあ、そのうち見えてくるよ」のように。

ミルトンモデルについて調べているあなたは、人に届く言葉を探しているのかもしれません。あるいは、「催眠のような話し方で人を動かす」という説明を見て、少し身構えているのかもしれません。

この記事では、ミルトンモデルのもとになったミルトン・エリクソンという人と、その言葉の特徴を紹介します。そのうえで、代表的なパターンを、相手を動かす道具ではなく、励ましの言葉として使う方法を考えます。

ミルトンモデルとは? 一言でいうと

ミルトンモデルとは、あえて中身を決めない言葉で、聞き手が自分の経験から答えを見つけられるようにする話し方です。アメリカの精神科医ミルトン・エリクソンの言葉づかいを、NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)の創始者たちがまとめました。

リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーは、1975年に、エリクソンの話し方を分析した本を出しています。その直前に発表したのが、あいまいな言葉を具体的にしていく質問の型「メタモデル」でした。ミルトンモデルは、その逆向きの技法として位置づけられています。

メタモデルミルトンモデル
向きあいまい → 具体的具体的 → あいまい
目的抜け落ちた情報を取り戻す聞き手が自分の経験で中身を埋める
例「具体的には、何が不安?」「不安の中にも、何か大事なものがあるのかもしれませんね」

メタモデルの詳しい使い方は、メタモデルとは?言葉の奥にある本音を聴く質問で紹介しています。

ミルトン・エリクソンという人

ミルトン・エリクソン(1901〜1980年)は、催眠療法の第一人者として知られる精神科医です。1957年には、アメリカ臨床催眠学会の設立にかかわり、初代会長を務めました。

彼の観察力の原点として、よく語られる話があります。17歳でポリオにかかり、体がほとんど動かなくなったエリクソンは、ベッドの上で家族を観察して過ごしました。口では「はい」と言いながら、表情は「いいえ」と言っている。そうした言葉と態度のずれに、敏感になったといいます。のちに彼は、長いリハビリを経て再び歩けるようになりました。

エリクソンの療法の特徴は、相談者がもちこむものを、何でも生かすことでした。「利用(ユーティライゼーション)」と呼ばれる姿勢です。抵抗も、口ぐせも、趣味も、変化のための資源として扱いました。また、彼は助言の代わりに、たくさんの物語を語りました。答えを教えるのではなく、相談者が自分で気づく余地を残したのです。

なぜ「あいまいな言葉」が心に届くのか

ふつう、伝わる言葉は「具体的な言葉」だと考えます。それなのに、なぜあいまいな言葉が心に残るのでしょうか。

聞き手が、自分の経験で中身を埋めるから

「あなたには、まだ気づいていない力があるのかもしれません」。この言葉には、どんな力なのかが入っていません。すると聞き手は、無意識のうちに自分の経験を探して、中身を埋めようとします。NLPでは、この働きを「TDサーチ(意味を探して自分の経験をたどる心の働き)」と呼びます。

自分で見つけた答えは、人から与えられた答えより、ずっと自分のものに感じられます。あいまいさは、相手が自分で答えを見つけるための余白なのです。

押しつけられた感じがしないから

「あなたは、もっと自信をもつべきです」と言われると、人は反発したくなります。「自信って、ある日ふと戻ってくることもありますよね」と言われると、受け取るかどうかを自分で選べます。命令の形をとらない言葉は、相手の自由を残します。

今の状態を認めてから、そっと誘うから

エリクソンの言葉は、相手にとって明らかに本当のことから始まることが多かったといいます。「今、この話を聞きながら、いろいろなことを考えているかもしれませんね」。否定しようのない事実を言われると、聞き手は「そうだな」とうなずきます。

うなずきが重なったあとに、少しだけ先の可能性を添える。「その中に、もう答えの手がかりがあるのかもしれません」。相手の今に合わせてから、ゆっくり方向を示す。この流れは、ペーシング(相手の話し方や調子に合わせること)と同じ考え方です。いきなり変化を求めないから、相手は置いていかれません。

代表的なパターンを、励ましの言葉として使う

ミルトンモデルには、多くのパターンがあります。ここでは、日常の励ましに使いやすい5つを選びました。

引用:誰かの言葉を借りて伝える

自分の意見として言うと押しつけになる言葉も、誰かの言葉として紹介すると、やわらかく届きます。

「前に、ある先輩が言っていたんです。『迷っている時間も、ちゃんと進んでいる時間だよ』って」

聞き手は、話し手から言われたのではなく、ひとつの話として受け取れます。受け取るかどうかを、相手が決められるのです。

挿入質問:問いを、文の中にそっと入れる

「何から始めればいいか、もう少しで見えてきそうですね」。これは質問の形をしていませんが、聞き手の頭の中では「何から始めよう」という問いが動き出します。直接聞かれるより、答えを迫られる圧力がありません。

アナログマーキング:声や間で、言葉を際立たせる

アナログマーキングとは、文の中の一部を、声の調子や間、しぐさで少しだけ際立たせることです。紙にマーカーで印をつける技法ではありません。

たとえば「焦らなくても、あなたのペースで、大丈夫ですよ」と言うとします。「あなたのペースで」の前に少し間を置き、そこだけ声をゆっくりにします。言葉全体はさりげないまま、届けたい部分が相手の心に残りやすくなります。

前提:小さな希望を、文の前提に置く

「次に挑戦するときは、何を変えてみたい?」。この質問は、「次がある」ことを前提にしています。「また挑戦するの?」と聞くより、相手は自然に次の一歩を考えはじめます。

ネスト:物語の中に物語を入れる

ある話の途中で別の話を始め、さらに別の話へ入り、最後に順に閉じていく。エリクソンがよく使った語り方で、「ネスト(入れ子)」と呼ばれます。聞き手は筋を追ううちに、教訓を押しつけられた感じなく、自分なりの意味を受け取ります。たとえ話の力については、メタファーとは?たとえ話が心を動かす理由で詳しく紹介しています。

操作との境界線と、科学的な位置づけ

ミルトンモデルは、「無意識に働きかけて人を動かす技術」として紹介されることがあります。ここは慎重に考えたいところです。

境界線は、言葉の形より、使う目的にあります。相手が望む方向を応援するために使うなら、それは励ましです。相手が気づかないうちに、話し手の都合のいい行動へ誘導するなら、それは操作です。商品を買わせる、断りにくくする、といった使い方は、相手の自由を奪います。

エリクソンが大切にしたのは、相談者の中にすでにある力を信じることでした。ミルトンモデルを学ぶ価値は、パターンそのものより、その姿勢にあるのかもしれません。NLPの考え方全体の中での位置づけは、NLPとは?神経言語プログラミングの基本と活かし方で整理しています。集中や没入の状態そのものに興味がある人は、トランス状態とは?集中と没入の心理学も参考になります。

自分に向けて書いた場合は、印をつけた言葉を、手帳やスマホのメモに残しておいてください。落ちこんだ日に読み返すと、他人から言われるのとは違う形で、心に入ってくることがあります。

答えを渡すより、答えが見つかる余白を渡す

人を励まそうとすると、私たちはつい、正しい答えを渡したくなります。「こうすればいいよ」「気にしすぎだよ」。でも、本当に心に残るのは、自分で見つけた答えです。

ミルトンモデルのあいまいな言葉は、その答えが見つかるための余白をつくります。言葉を減らすことは、相手を信じることでもあります。

次に誰かを励ますとき、助言をひとつ減らして、「あなたなら、そのうち見つけられる気がする」と言ってみてください。その余白に、相手は自分の力を見つけるかもしれません。無意識の働きについては、潜在意識とは?顕在意識との違いと付き合い方も手がかりになります。

A question for you

あなたへの問い

あなたの心に今も残っている、誰かの何気ない一言は何ですか?

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よくある質問

ミルトンモデルとメタモデルの違いは何ですか?

向きが反対です。メタモデルは、あいまいな言葉を質問で具体的にしていく型です。ミルトンモデルは、あえてあいまいな言葉を使い、聞き手が自分で中身を埋められるようにします。NLPでは、2つを状況に応じて使い分けると考えます。

ミルトンモデルで、人を思いどおりに動かせますか?

そうした効果を確かめた研究はほとんどありません。また、相手の同意なく行動を誘導する目的で使うなら、それは操作です。ミルトンモデルは、相手の力を信じて励ます言葉の参考として使うのがおすすめです。

ミルトン・エリクソンは、どんな人ですか?

20世紀のアメリカの精神科医で、催眠療法の第一人者です。相談者の言葉や状態をそのまま治療に生かす柔軟なやり方で知られ、家族療法や短期療法など、多くの心理療法に影響を与えました。

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References

  • Bandler, R., & Grinder, J. (1975). Patterns of the Hypnotic Techniques of Milton H. Erickson, M.D., Volume 1. Meta Publications.
  • Haley, J. (1973). Uncommon Therapy: The Psychiatric Techniques of Milton H. Erickson, M.D. W. W. Norton.
  • Rosen, S. (Ed.). (1982). My Voice Will Go with You: The Teaching Tales of Milton H. Erickson. W. W. Norton.
  • Montgomery, G. H., DuHamel, K. N., & Redd, W. H. (2000). A meta-analysis of hypnotically induced analgesia: How effective is hypnosis? International Journal of Clinical and Experimental Hypnosis, 48(2), 138–153.
  • Witkowski, T. (2010). Thirty-five years of research on Neuro-Linguistic Programming. NLP research data base. State of the art or pseudoscientific decoration? Polish Psychological Bulletin, 41(2), 58–66.

本当の人生を生きる 編集部

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