No.05 On Coachingコーチングを知る

コーチングセッションの流れ初回から振り返りまで

コーチングセッションの流れを、体験セッション、初回の合意づくり、毎回の進み方、終わったあとの振り返りまで具体的に紹介。時間や頻度の目安、守秘義務の範囲、受ける前の準備も、初めての人向けにまとめました。

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この記事の結論

コーチングセッションは、多くの場合「体験セッション→契約と初回の合意づくり→毎回のセッション→終了時の振り返り」の順に進みます。毎回のセッションは、テーマを決め、問いと対話で考えを深め、次の一歩を自分で決めて終わるのが基本の流れです。

  • 毎回の流れは「テーマを決める→対話で深める→次の一歩を決める」が基本
  • 守秘義務は法律ではなく契約と倫理規定の約束。範囲と例外を最初に確かめる
  • 効果を左右するのはセッションの外。終わった直後の振り返りが気づきを残す
目次 Contents
  1. コーチングセッションとは? 一言でいうと
  2. 申し込みから終了まで、全体の流れ
  3. 1回のセッションは、こう進む
  4. 受ける前に知っておきたい守秘義務
  5. セッションの効果を高める、前後の過ごし方
  6. よくある不安と、その扱い方
  7. 最初の一回は、「気になる」ひとつを持っていけばいい

コーチングに興味はあるけれど、申し込むボタンの前で手が止まっている。何を話せばいいのかわからない。沈黙が続いたら気まずい。話したことが、どこかに漏れたりしないだろうか。

初めてのことに慎重になるのは、自然なことです。自分の内側を人に話すのですから、どんな場なのかを先に知っておきたいと思うのは当然です。

この記事では、コーチングセッションの流れを、申し込みから終わりまで順番にたどります。1回のセッションの中で何が起きるのか、守秘義務はどこまで守られるのか、受ける側として何を準備すればいいのか。読み終えるころには、最初の一回の景色が具体的に浮かぶはずです。

コーチングセッションとは? 一言でいうと

コーチングセッションとは、あなたが決めたテーマについて、対話で考えを深め、次の行動を自分で決める時間です。カフェでの相談や雑談との違いは、目的と約束があることです。

国際コーチング連盟(ICF)は、コーチングを「思考を刺激する創造的なプロセスを通じて、クライアントが可能性を最大限に発揮できるよう支えるパートナーシップ」と説明しています。主役はコーチではなく、あなたです。コーチは答えを教える人ではなく、あなたが自分の答えにたどり着くのを支える伴走者です。コーチングそのものの考え方は、コーチングとは?意味・効果・受けて変わることで詳しく紹介しています。

1回の時間と頻度の目安

決まりはありませんが、よく見られる目安は次のとおりです。

項目よくある形選ぶときの考え方
1回の時間30〜60分深く考えたいテーマなら長め、行動の確認中心なら短めでも
頻度2〜4週間に1回間が短すぎると試す時間がなく、長すぎると勢いが落ちる
期間3〜6か月で区切る区切りがあると、変化をふり返る節目がつくれる
形式対面・オンライン・電話落ち着いて話せる環境を確保できるかで選ぶ

セッションとセッションの間は、決めた行動を試す期間です。むしろ、変化の多くはこの「間」で起こります。

申し込みから終了まで、全体の流れ

コーチングは、1回で完結するものではありません。何回かのセッションを通じて、少しずつ考えと行動が動いていきます。全体は、おおむね次の4段階で進みます。

1. 体験セッションで相性を確かめる

多くのコーチは、本契約の前に体験セッションを用意しています。有料か無料か、時間の長さはコーチによってさまざまです。

ここで確かめたいのは、コーチの話のうまさより、「この人の前で、自分は正直に話せそうか」という感覚です。コーチングの研究をまとめた分析では、コーチとクライアントの関係の質が、成果と結びついていることが報告されています(Graßmann ら, 2020)。相性は、気のせいではなく大事な判断材料です。選び方のポイントはコーチの選び方|後悔しないための7つのポイントにまとめています。

2. 契約と、最初の「合意」をつくる

続けると決めたら、期間・回数・料金・キャンセルの扱い・守秘義務などを取り決めます。ICFが定めるコーチの中核能力にも、「合意を確立し、維持する」が含まれています。

初回のセッションでは、コーチング全体で何を目指すのかを話し合います。「半年後、どうなっていたらこの時間をとってよかったと思えますか」。こうした問いで、ぼんやりした願いを少しずつ言葉にしていきます。この時点で、きれいな目標がなくても大丈夫です。

3. 継続のセッションで、試しては話す

2回目以降は、毎回のテーマを決めて対話し、次の一歩を決めます。そして次の回で、試してみてどうだったかを話す。この往復をくり返します。

途中で、最初に決めた目標そのものが変わることもあります。それは失敗ではありません。話すうちに、本当に向き合いたいことが見えてきた、ということです。

4. 終わりにふり返り、次を決める

期間の最後には、全体をふり返るセッションを行うことが多いです。始めたころと比べて、何が変わったか。何がまだ途中か。これから一人でどう進めるか。

継続するか終えるかは、あなたが決めてかまいません。コーチングのゴールは、コーチがいなくても自分で考え、動ける状態になることです。

1回のセッションは、こう進む

ここからは、1回のセッションの中身を見ていきます。コーチによって進め方は違いますが、多くは「始め・中・終わり」の3つの段階をたどります。

始め:前回からの変化と、今日のテーマ

最初は、前回から今日までの出来事を軽く話します。決めた行動を試せたか、試せなかったか。試せなかったときも、責められることはありません。「何が止めたのか」は、それ自体が大事な材料になります。

次に、今日のテーマを決めます。「このセッションが終わるとき、何が手に入っていたらいいですか」。この問いに答えることで、30分や60分の使い道がはっきりします。

中:問いと対話で、考えを深める

セッションの中心は、コーチの問いとあなたの答えの往復です。コーチは、あなたの言葉をそのまま返したり、気になった言葉を掘り下げたりします。質問の種類についてはオープンクエスチョンとクローズドの使い分けも参考になります。

考えている途中で、沈黙が生まれることがあります。それは気まずい時間ではなく、あなたの中で何かが動いている時間です。慣れたコーチほど、急いで沈黙を埋めません。

コーチが自分の観察や提案を伝えることもあります。その場合も、「一つ気づいたことを伝えてもいいですか」と許可をとってから話すのが基本です。受け取るかどうかは、あなたが決めます。

終わり:気づきを言葉にして、次の一歩を決める

最後の数分で、今日の気づきを自分の言葉で言います。「今日いちばん大きかった気づきは何でしたか」。言葉にすると、気づきが頭の中に残りやすくなります。

そのうえで、次回までに試すことを決めます。大きな決断でなくてかまいません。「週末に、気になる会社の人の話を一人聞いてみる」くらいの具体的な行動が、次のセッションの材料になります。

この流れは、ジョン・ウィットモアが広めたGROWモデル(目標・現状・選択肢・意志の順に考える型)とも重なります。自分一人で使える形はGROWモデルとは?自分でできる目標達成の型で紹介しています。

受ける前に知っておきたい守秘義務

セッションでは、仕事の悩みや家族のこと、人に言えない迷いも話題になります。だからこそ、話した内容がどう扱われるかは、最初に知っておきたいところです。

守秘義務は「法律」ではなく「約束」

日本では、医師や公認心理師のように、法律で秘密を守る義務が定められた職業があります。一方、コーチは国家資格ではないため、守秘義務は主に契約と、所属団体の倫理規定にもとづく約束です。

たとえばICFの倫理規定は、クライアントの情報について厳格に秘密を守ることを、コーチに求めています。誰に何を共有するかも、事前に明確に取り決めるべきだとしています。信頼できるコーチなら、守秘の範囲を契約時に自分から説明してくれるはずです。

例外と、会社が費用を出す場合

守秘義務には例外があります。代表的なのは、本人や他人の命に危険が迫っているときや、法律で開示を求められたときです。

会社の制度でコーチングを受ける場合は、あなた・コーチ・会社の三者の関係になります。何を会社に報告するかは、最初の取り決めで決まります。気になるときは、次のような点を確認しておくと安心です。

  • 会社や上司に伝わるのは何か(出席の有無、テーマ、話の中身)
  • セッションのメモや録音は残るか、どう保管されるか
  • コーチが事例として誰かに相談するとき、名前は伏せられるか

セッションの効果を高める、前後の過ごし方

コーチングの効果は、セッション中だけで決まるわけではありません。前と後の数分の使い方で、得られるものが変わります。

事前:テーマは「気になること」1行で十分

セッションの前に、「最近ひっかかっていること」をメモしておきます。きれいなテーマでなくてかまいません。「なぜか日曜の夜に気が重い」のような、言葉にしきれない感覚こそ、扱う価値があります。

事後:直後の振り返りが、気づきを残す

セッション直後は、気づきがいちばん鮮やかな時間です。ところが、日常に戻ると驚くほど早く薄れていきます。終わったらすぐ、短い時間で書き残しておくのがおすすめです。

書き方に正解はありません。続けるうちに、セッションごとのメモが、あなたの変化の記録になっていきます。書くことを習慣にしたい人は、ジャーナリングとは?書く瞑想のやり方と効果も役に立ちます。

よくある不安と、その扱い方

「話すことがない」と感じたら

セッションの前に、話すことが見つからない日もあります。そのときは、そのまま「今日は何を話したいかわからない」と伝えてかまいません。何も浮かばない状態から始めて、思わぬテーマにたどり着くことは珍しくありません。

期待した答えがもらえない

「どうすればいいか教えてほしい」と思って受けると、問いばかりが返ってきて戸惑うかもしれません。コーチングは、答えを渡すことより、あなたが自分の答えを見つけることを大切にする関わり方です。知識や手順が必要なら、それを率直にコーチに伝えてください。ほかの支援を紹介してもらえることもあります。

途中で、つらい気持ちがあふれたら

話しているうちに、思ってもいなかった涙が出ることもあります。それは悪いことではありません。ただ、気分の落ちこみや眠れない状態が長く続いているなら、話は別です。コーチングより先に、医療やカウンセリングを考えたほうがよい場合があります。違いはコーチングとカウンセリングの違い|どちらを選ぶ?で整理しています。

最初の一回は、「気になる」ひとつを持っていけばいい

コーチングセッションは、立派な目標を発表する場ではありません。まだ言葉になっていない迷いを、少しずつ言葉にしていく場です。

うまく話そうとしなくて大丈夫です。わからないことは、わからないまま持っていけばいい。コーチは、その「わからない」から一緒に歩き始める人です。

申し込むかどうか迷っているなら、まず紙に一行だけ書いてみてください。「もし話すとしたら、何について話したいか」。その一行が、最初のセッションのテーマになります。

A question for you

あなたへの問い

次のセッションで、あなたが本当に話したいことは何ですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

話すテーマが決まっていなくても、セッションを受けていいですか?

かまいません。「なんとなくもやもやしている」という状態から始めるのは、よくあることです。冒頭でコーチと一緒に、今日いちばん扱いたいことを探す時間をとるので、準備はメモ1行で十分です。

セッションは何回くらい受けるものですか?

決まった回数はありません。3〜6か月ほどの期間で区切る契約がよく見られますが、テーマや予算によって変わります。期間を区切っておくと、途中と最後に「何が変わったか」を確かめやすくなります。

会社の制度で受けるコーチングの内容は、上司に伝わりますか?

会社が費用を出すコーチングでは、何を会社に報告するかを最初に取り決めるのが一般的です。出席の有無や大まかなテーマだけを共有し、話の中身は伝えない形が多く見られます。不安があれば、初回の前にコーチに範囲を確認してください。

オンラインのセッションでも大丈夫ですか?

オンラインや電話でセッションを行うコーチは多く、形式そのものが向き不向きを決めるわけではありません。大切なのは、途中で人に聞かれたり邪魔されたりしない場所を確保することです。イヤホンを使い、通知を切っておくと集中しやすくなります。

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References

  • International Coaching Federation (2020). ICF Code of Ethics.
  • International Coaching Federation (2019). ICF Core Competencies.
  • 国際コーチング連盟(ICF)公式サイト
  • Graßmann, C., Schölmerich, F., & Schermuly, C. C. (2020). The relationship between working alliance and client outcomes in coaching: A meta-analysis. Human Relations, 73(1), 35–58.
  • Theeboom, T., Beersma, B., & van Vianen, A. E. M. (2014). Does coaching work? A meta-analysis on the effects of coaching on individual level outcomes in an organizational context. The Journal of Positive Psychology, 9(1), 1–18.
  • Whitmore, J. (2017). Coaching for Performance (5th ed.). Nicholas Brealey Publishing.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。