No.04 Draw the Future未来を描く
アズイフフレームとは?「もしも」で可能性を開く
アズイフフレーム(あたかもフレーム)とは、「もし〜だったら」と仮定して考えるNLPの手法。哲学や心理療法にあるルーツ、制限を外すと可能性が開く理由、やりたいことを引き出す「もしも」の質問集、行動に生かす方法と注意点まで紹介します。
この記事の結論
アズイフフレームとは、「もし〜だったら」「あたかも〜であるかのように」と仮定して考えるNLPの手法です。お金や能力、人の目といった制限をいったん外して考えると、ふだんは浮かばない望みや選択肢が見えてきます。やりたいことを探す問いとして使えます。
- 「もし〜だったら」と仮定し、思いこみの制限をいったん外して考える手法
- 哲学のファイヒンガーや、アドラー、ケリーの心理療法にも似た発想がある
- 答えはすぐ実行しなくていい。そこに表れた「本当の望み」を拾うのがコツ
目次 Contents
「やりたいことは何?」と聞かれると、頭が真っ白になる。何か浮かんでも、すぐに「でもお金がない」「もう若くない」「どうせ無理」と打ち消してしまう。気づけば、考えること自体をやめている。
そんな自分に、もどかしさを感じていませんか。でも、すぐに打ち消してしまうのは、あなたが現実をよく見ている、まじめな人だからでもあります。問題は望みがないことではなく、望みが顔を出す前に、制限のほうが先に立ちはだかってしまうことなのです。
この記事では、その制限をいったん脇に置いて考える「アズイフフレーム」を紹介します。もとになった考え方と、やりたいことを引き出す「もしも」の質問集、行動に生かす方法をまとめました。
アズイフフレームとは? 一言でいうと
アズイフフレームとは、「もし〜だったら」「あたかも〜であるかのように」と仮定して考える手法です。英語の as if は「あたかも〜のように」という意味で、日本語では「あたかもフレーム」とも呼ばれます。
これは、NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)の用語です。NLPでは、話し合いや考えごとの「枠組み」をフレームと呼びます。アズイフフレームは、目標を考えるアウトカム・フレームなどと並んで、よく使われる枠組みのひとつです(Dilts & DeLozier, 2000)。
たとえば、こんな問いがアズイフフレームです。
- もしお金の心配がまったくなかったら、何をしている?
- もしあなたが、すでに自信をもって話せる人だったら、明日の会議で何を言う?
- もしあなたが尊敬するあの人だったら、この状況でどうする?
どの問いも、「今の現実」をいったん脇に置いて、別の前提から考えるよう誘っています。
「もしも」の発想は、哲学と心理療法にルーツがある
「もしも」で考えるという発想は、NLPが生まれるずっと前からありました。
「あたかも」の哲学
ドイツの哲学者ハンス・ファイヒンガーは、1911年に『「あたかも」の哲学』を著しました。人は、真実かどうか確かめられない考えを、「あたかも真実であるかのように」扱いながら生きている。そして、そうした仮の考え(フィクション)は、生きるうえで役に立つことがある、と論じたのです。
心理療法の中の「もしも」
この考え方は、心理療法にも受け継がれました。アルフレッド・アドラーの流れをくむ心理療法では、「もし〜だったら、どうふるまう?」と問い、その行動を実際に試してもらう方法が使われてきました。
心理学者ジョージ・ケリーは、さらに一歩進めた方法を考えました(Kelly, 1955)。相談者に、自分とは少し違う人物の役柄を用意し、2週間ほど「あたかもその人であるかのように」暮らしてもらう方法です。「固定役割療法」と呼ばれます。
解決志向ブリーフセラピーの「ミラクル・クエスチョン」も、よく似た問いです。「眠っている間に奇跡が起きて、問題が解決したとします。朝起きたとき、何から奇跡に気づくでしょう?」(de Shazer, 1988)。
なぜ「もしも」で考えると、可能性が開くのか
「できない」の前提を、いったん保留できる
「やりたいことは?」と聞かれたとき、私たちは無意識に、「できるかどうか」でふるいにかけてから答えています。お金、時間、能力、年齢、人の目。ふるいの目が細かいほど、出てくる答えは少なくなります。
「もしも」の問いは、このふるいを一時的に外してくれます。できるかどうかを考える前に、そもそも何を望んでいるのかを、先に見ることができるのです。
「解決したあと」から、今を見られる
悩みの真っただ中にいると、目に入るのは問題ばかりです。「もし1年後、この問題が解決していたら?」と仮定すると、視点が問題の向こう側へ移ります。そこから振り返ると、「何がきっかけで変わったのか」が、不思議と思い浮かびやすくなります。
未来の時点から今を振り返るこの発想は、バックキャスティングとも共通しています。
制限が「本物」かどうかを確かめられる
「もしお金の心配がなかったら?」と考えて出てきた答えが、実はお金がなくても始められることだった。そんなことは珍しくありません。そのとき、「お金がないからできない」という制限は、思いこみだったと気づきます。
こうした思いこみは、ビリーフ(思い込み・信念)と呼ばれます。気になる人は、ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方も読んでみてください。
やりたいことを引き出す「もしも」の質問集
ここからは、やりたいことを探すための「もしも」の問いを紹介します。全部に答える必要はありません。心がひかれた問いを、いくつか選んでください。
制限を外す質問
- もしお金と時間の心配がまったくなかったら、何をして過ごす?
- もし失敗しないとわかっていたら、何を始める?
- もし誰にも反対されず、誰の目も気にしなくていいとしたら、どんな暮らしを選ぶ?
- もし今から何でも学べるとしたら、何を学ぶ?
悩みの向こう側を見る質問
- もし明日の朝、この悩みが消えていたら、最初に何で気づく?
- もし10年後の自分が、この悩みを笑い話として語っていたら、どんな話になっている?
- もしこの悩みが少しだけ軽くなったら、今日の過ごし方はどう変わる?
視点を変える質問
- もし10年後の自分が今の自分を見ていたら、何と声をかける?
- もし尊敬するあの人が自分の立場にいたら、何をする?
- もし子どものころの自分が今の暮らしを見たら、どこを喜び、どこをさびしがる?
答えに出てきたことを、そのまま実行する必要はありません。「世界一周したい」と書いたなら、その奥にある「知らない景色を見たい」「自由に動きたい」という望みのほうが大切です。望みがわかれば、叶え方は世界一周だけではないと気づけます。
やりたいことを探す方法をもっと知りたい人は、やりたいことがわからない人へ|見つけ方と小さな一歩も参考にしてください。
行動に生かす「あたかも」:小さく試してみる
アズイフフレームは、考えるときだけでなく、行動するときにも使えます。「あたかも、もうそうなっているかのように」ふるまってみるのです。
たとえば、「人前で話すのが苦手」な人が、会議の10分間だけ、「話すのが好きな人」のようにふるまってみる。ケリーの固定役割療法をまねて、ごく短い時間の「役柄の実験」をする、というイメージです。
やってみると、意外にうまくいくこともあれば、強い違和感が残ることもあります。どちらも大切な情報です。うまくいけば、「自分にもできる」という手ごたえが残ります。違和感があれば、その在り方は自分には合わないのかもしれません。
憧れの人のふるまいを、もっと体系的に取り入れたい人は、モデリングとは?憧れの人から学ぶ方法も読んでみてください。思い描いた未来を具体的にする方法は、ビジュアライゼーションとは?未来を思い描く技術で紹介しています。
アズイフフレームを使うときの注意点
「もしも」から、現実に戻ってくる
「もしも」の世界は、居心地のいいものです。でも、そこにとどまり続けると、ただの現実逃避になってしまいます。広げたあとは、「では、今できることは?」と問いかけて、現実に戻ってきてください。夢を広げる視点と、現実的に考える視点を切り替える方法は、ディズニー戦略とは?夢を形にする3つの視点でも紹介しています。
自分を偽るために使わない
つらいのに「平気なふり」をする、嫌なのに「楽しんでいるふり」をする。こうした使い方は、アズイフフレームではありません。自分の気持ちを押し殺すと、かえって苦しくなります。試すのは、あなたが本当に近づきたい在り方だけにしてください。
「もしも」は、本当の望みへの裏口
正面から「やりたいことは?」と聞かれると、心の扉はなかなか開きません。現実という門番が、望みを外に出す前に止めてしまうからです。
「もしも」の問いは、その門番の横をそっと通り抜ける裏口のようなものです。裏口から出てきた望みは、小さくて、少し照れくさいかもしれません。けれど、そこにはあなたが本当に大切にしているものが表れています。
今日、ひとつだけ問いかけてみてください。「もし失敗しないとわかっていたら、明日何を始める?」。浮かんだ答えを、笑わずにメモしておく。それが、可能性を開く最初の一歩です。
A question for you
あなたへの問い
もし失敗しないとわかっていたら、明日何を始めますか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
アズイフフレームと、ただの空想は何が違うのですか?
空想は、思い描いて楽しむところで終わります。アズイフフレームは、仮定して考えた答えから、自分の望みや次の一歩を拾い上げるために使います。「もしも」で広げたあと、「では、今できることは?」と現実に戻ってくるのが違いです。
「もしも」の質問に、何も答えが浮かびません。
大きすぎる仮定は、かえって答えにくいことがあります。「もし1か月休みがあったら」のように、少し現実に近い仮定から始めてみてください。答えが浮かばないこと自体も、今は余裕がない、という大切な情報です。
「できる人のふり」をすると、自分を偽ることになりませんか?
人をだますための演技ではなく、自分が試したい在り方を、短い時間だけ実験してみるものと考えてください。やってみて違和感が強ければ、その在り方は自分に合わないとわかります。それも大切な発見です。
もう一歩深めたい人へ
PR・Amazonへのリンクを含みます-
NLPの基本がわかる本
山崎啓支/日本能率協会マネジメントセンター(2007年)
NLPの考え方を図解でざっと把握したい人へ。前提や主要スキルを一つずつ解説しているので、用語に慣れるための最初の一冊として使えます。
Amazonで見る -
スタンフォード式人生デザイン講座
ビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス(著)/千葉敏生(訳)/早川書房(2019年)
スタンフォード大学の人気講義から生まれた、デザイン思考で人生を考える本です(単行本『LIFE DESIGN』の文庫版)。「正解の人生」を探すより、小さく試しながら道を描きたい人に向いています。
Amazonで見る
References
- Vaihinger, H. (1924). The Philosophy of 'As If' (C. K. Ogden, Trans.). Kegan Paul. (Original work published 1911)
- Kelly, G. A. (1955). The Psychology of Personal Constructs. Norton.
- de Shazer, S. (1988). Clues: Investigating Solutions in Brief Therapy. Norton.
- Dilts, R. B., & DeLozier, J. A. (2000). Encyclopedia of Systemic NLP and NLP New Coding. NLP University Press.
- Bem, D. J. (1972). Self-perception theory. Advances in Experimental Social Psychology, 6, 1–62.
- Ranehill, E., Dreber, A., Johannesson, M., Leiberg, S., Sul, S., & Weber, R. A. (2015). Assessing the robustness of power posing: No effect on hormones and risk tolerance in a large sample of men and women. Psychological Science, 26(5), 653–656.