No.04 Draw the Future未来を描く
ディズニー戦略とは?夢を形にする3つの視点
ディズニー戦略とは、夢想家・実務家・批評家の3つの視点を切り替えて、夢やアイデアを現実の計画にする方法です。成り立ちと3つの役割の問い、一人でできるワークと記入例、批評家に夢を潰させないコツまで紹介します。
この記事の結論
ディズニー戦略とは、夢想家(ドリーマー)・実務家(リアリスト)・批評家(クリティック)の3つの視点を、順番に切り替えながら考える方法です。NLPのロバート・ディルツが、ウォルト・ディズニーの創作の進め方を分析してまとめました。視点を混ぜずに分けることで、夢を潰さずに現実の計画へ落としこめます。
- 夢想家・実務家・批評家の3つの視点を、混ぜずに順番に切り替える
- 批評家が見るのは計画の穴で、夢そのものや夢を描いた人ではない
- 批判は「どうすれば?」という問いに変えて、夢想家と実務家に返す
目次 Contents
やってみたいことがある。でも、考え始めたとたんに、「お金はどうするの」「失敗したら恥ずかしい」という声が聞こえてくる。気づけば、夢はノートの片隅で止まったまま。反対に、勢いで始めてみたものの、計画が甘くて途中で行き詰まったこともある。
夢を語るだけでも、現実を見すぎても、物事はなかなか形になりません。必要なのは、夢を描く力と、計画を立てる力と、穴を見つける力を、うまく組み合わせることです。
ディズニー戦略は、そのための考え方の型です。この記事では、ディズニー戦略の成り立ちと3つの役割、一人でできるワークと記入例を紹介します。あなたの中の批評家に、夢を潰させないコツもまとめました。
ディズニー戦略とは? 一言でいうと
ディズニー戦略とは、夢想家・実務家・批評家という3つの視点を、順番に切り替えながら考える方法です。英語では「ディズニー・ストラテジー」と呼ばれます。
この考え方をまとめたのは、NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)の研究者ロバート・ディルツです。ディルツは、歴史上の天才たちの考え方を分析する研究を行い、その中でウォルト・ディズニーを取り上げました(Dilts, 1994)。
ディルツは、ディズニーの伝記や、ともに働いた人たちの証言をもとに、彼の創作の進め方を分析しました。そこから見えてきたのが、ディズニーが3つの異なる視点を行き来しながら作品をつくっていた、という姿です。
なお、ここでいうディズニー戦略は、ディズニー社の経営戦略のことではありません。ウォルト・ディズニー個人の、創造的な考え方の型です。
3つの役割
| 役割 | 問い | 姿勢 |
|---|---|---|
| 夢想家(ドリーマー) | 何がしたい? どうなったら最高? | 制限を外して、自由に思い描く |
| 実務家(リアリスト) | どうやって実現する? | 夢を具体的な手順と計画にする |
| 批評家(クリティック) | 何が足りない? どこでつまずく? | 計画の弱点や見落としを見つける |
3つの役割は、どれが偉いということはありません。夢想家だけでは夢は宙に浮いたまま、実務家だけでは心が動かず、批評家だけでは何も始まりません。3つがそろって、はじめて夢が形になります。
なぜ3つの視点を分けるのか
ディズニー戦略の要は、3つの視点を「混ぜない」ことです。
アイデアを考えているときに、同時に「でも、それは無理だ」と考えると、アイデアは育つ前に消えてしまいます。反対に、計画の穴を探しているときに夢の話が混ざると、冷静に点検できません。頭の中で役割が混ざると、どの役割もうまく働かなくなるのです。
この考え方は、ほかの創造的な思考法とも共通しています。ブレインストーミングを提唱したオズボーンは、アイデアを出す段階では判断を先送りすることを原則にしました(Osborn, 1953)。デボノの「6つの帽子」も、考え方の種類を帽子の色で分け、一度に一つの考え方に集中する方法です(de Bono, 1985)。
ディズニー戦略の特徴は、役割ごとに場所や姿勢まで分けることです。NLPでは、場所や体の構えを変えることで、その役割の心と体の状態(ステート)に入りやすくなると考えます。
あなたは、どの役割が強い?
人にはそれぞれ、ふだん強く働いている役割があります。どれが強いかによって、つまずき方も変わってきます。これは研究にもとづく分類ではなく、ふり返りのための目安です。
| 強い役割 | よくある様子 | 足りない役割を補う問い |
|---|---|---|
| 夢想家 | アイデアは次々に浮かぶが、形にならない | 最初の一歩は、いつ何をする? |
| 実務家 | 忙しく動いているが、心が躍らない | そもそも、本当はどうなったら最高? |
| 批評家 | 欠点がすぐ見えて、なかなか始められない | 制限がなかったら、何がしたい? |
たとえば、批評家が強い人は、慎重で失敗が少ない一方、新しいことに踏みだしにくくなります。自分の強い役割がわかると、意識して呼び出すべき役割が見えてきます。批評家の声が大きすぎて動けない人は、失敗が怖いあなたへ|失敗をフィードバックに変えるもあわせて読んでみてください。
3つの役割で使う問い
ここからは、それぞれの役割で使う問いを紹介します。
夢想家の問い
夢想家の役割は、制限を外して、望むことを自由に思い描くことです。ここでは「できるかどうか」は考えません。
- 何がしたい? 本当はどうなったら最高?
- それが実現したら、何が見えて、どんな気持ちになる?
- 誰が喜んでいる?
- お金も時間も能力も、制限がなかったら?
夢想家の時間は、目を少し上に向けて、のびのびと考えるのがおすすめです。未来の場面を具体的に描く方法は、ビジュアライゼーションとは?未来を思い描く技術で紹介しています。
実務家の問い
実務家の役割は、夢を実現するための具体的な手順を考えることです。夢を疑うのではなく、「どうすれば実現できるか」を前提に考えます。
- 実現するために、何が必要?
- 最初の一歩は? その次は?
- いつまでに、誰と、何をする?
- 実現した場面から逆にたどると、どんな道筋が見える?
実務家は、夢が実現したところから逆算して考えることもあります。この考え方は、バックキャスティングとは?未来から逆算する思考で詳しく紹介しています。
批評家の問い
批評家の役割は、計画の弱点や見落としを見つけることです。ただし、批評家が見るのは「計画」であって、「夢」や「夢を描いた人」ではありません。
- この計画で、うまくいかないとしたら、どこ?
- 見落としている人や、影響を受ける人は?
- 今の生活で失うものはない?
- 何があれば、もっとよくなる?
一人でできるディズニー戦略ワーク
ディズニー戦略は、一人でもできます。ポイントは、役割ごとに座る場所を変えることです。
チームで使うとき
ディズニー戦略は、会議やチームのアイデア出しにも使えます。会議の時間を「夢想家の時間」「実務家の時間」「批評家の時間」に区切り、全員で同じ役割を担います。
大切なのは、役割を人に割り当てないことです。「あの人はいつも批評家」と固定すると、対立が生まれやすくなります。全員が順番に、同じ帽子をかぶるように役割を切り替える。そうすると、批判も個人攻撃ではなく、計画をよくするための問いとして受け取りやすくなります。
観察者の場所を経由する理由
場所を移るたびに観察者の場所を経由するのは、前の役割の気持ちを持ちこまないためです。夢想家の高揚感のまま実務家に移ると、計画が甘くなります。批評家の厳しさのまま夢想家に戻ると、自由に描けなくなります。観察者の場所で一息つくことで、役割の切り替えがはっきりします。自分を外から眺める視点は、ポジションチェンジとは?相手の立場で見る練習とも通じています。
批評家に夢を潰させないコツ
ディズニー戦略でいちばんつまずきやすいのが、批評家の扱いです。批評家が強すぎると、夢はすぐにしぼんでしまいます。
批評家は、最後に呼ぶ
批評家は、夢想家と実務家が十分に働いたあとで登場させます。アイデアがまだ小さいうちに批評家を呼ぶと、育つ前に消えてしまいます。
批判を「問い」に変える
批評家の言葉は、そのままだと「無理だ」「甘い」という否定になりがちです。それを「どうすれば〜できる?」という問いに変えて、夢想家と実務家に返します。
「お金が足りない」なら、「どうすれば、最初の資金を用意できる?」。「時間がない」なら、「どうすれば、週に3時間を確保できる?」。問いに変えると、批判は夢を止める壁から、計画を磨く材料に変わります。
批評家の言い分にも耳を傾ける
批評家は、敵ではありません。あなたが傷ついたり、失敗したりしないように守ろうとしている存在です。だから、批評家を黙らせるのではなく、「何を心配しているの?」と聞いてみてください。
その心配が、実は大切な見落としを教えてくれていることもあります。家族との時間が減る、体を壊すかもしれない。そうした声は、計画に組みこむべき大切な条件です。
周りの人からの否定的な声に悩んでいる人は、ドリームキラーとは?夢を否定する人との付き合い方も参考にしてください。
記入例:ディズニー戦略を回してみる
最初の夢は「店を開きたい」という漠然としたものでした。3つの役割を回すことで、夢の温度を保ったまま、現実に試せる一歩が見えてきました。大きな計画を具体的な行動に分ける方法は、チャンクダウンとは?考えを整理する技術も参考になります。
研究から見たディズニー戦略
ディズニー戦略は、ディルツがディズニーの伝記や証言をもとにまとめた、いわば「考え方のモデル」です。ディズニー本人がこの方法を体系として語ったわけではありません。また、この型そのものの効果を検証した研究は、ほとんど見当たりません。
一方で、アイデアを出す段階と評価する段階を分ける考え方は、多くの創造的な思考法に共通しています。ブレインストーミングも、その一つです。ディズニー戦略は、その考え方を一人でも使いやすい形にした道具として受け取るのがよいでしょう。
優れた人の考え方を学び、自分のものにする方法は、モデリングとは?憧れの人から学ぶ方法で詳しく紹介しています。
夢を守りながら、現実に橋をかける
夢を語ると、「現実を見なさい」と言われることがあります。でも、ディズニー戦略が教えてくれるのは、夢と現実はどちらかを選ぶものではない、ということです。夢を描く時間、計画を立てる時間、穴を見つける時間。それぞれに十分な時間をとれば、夢は少しずつ現実に近づいていきます。
あなたの中には、すでに3つの役割がそろっています。ただ、ふだんは混ざり合って、声の大きい批評家が勝ってしまっているだけかもしれません。
今日、気になっている夢を一つ選んで、まずは夢想家の場所だけに立ってみてください。批評家の出番は、もう少しあとで大丈夫です。
A question for you
あなたへの問い
あなたの中の批評家は、いつも何と言って夢を止めていますか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
ディズニー戦略は、ディズニー社の経営戦略のことですか?
違います。ここでいうディズニー戦略は、NLPの研究者ロバート・ディルツが、ウォルト・ディズニー個人の創作の進め方を分析してまとめた考え方の型です。ディズニー社が経営方針として公表しているものではありません。
3つの役割は、どの順番で回せばいいですか?
基本は、夢想家→実務家→批評家の順です。批評家から出た問いを夢想家や実務家に返し、案が練られるまで何周か回します。最初から批評家を入れると、アイデアが育つ前に消えてしまいやすいので注意してください。
チームでも使えますか?
使えます。会議の時間を「夢想家の時間」「実務家の時間」「批評家の時間」に分けると、アイデア出しと評価が混ざらずに進めやすくなります。役割を人に固定するより、全員で同じ役割を順番に担うほうが、対立が生まれにくくなります。
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References
- Dilts, R. (1994). Strategies of Genius, Volume I: Aristotle, Sherlock Holmes, Walt Disney, Wolfgang Amadeus Mozart. Meta Publications.
- Osborn, A. F. (1953). Applied Imagination: Principles and Procedures of Creative Thinking. Charles Scribner's Sons.
- de Bono, E. (1985). Six Thinking Hats. Little, Brown and Company.