No.04 Draw the Future未来を描く
モデリングとは?憧れの人から学ぶ方法
モデリングとは、他者の行動や考え方を観察して学ぶこと。心理学者バンデューラの観察学習とNLPのモデリングの違い、憧れの人が励みにも重荷にもなる理由、真似で終わらせず自分らしく取り入れる5つのステップまで紹介します。
この記事の結論
モデリングとは、他者の行動や考え方を観察し、それを手本にして学ぶことです。心理学ではバンデューラの観察学習として研究され、NLPでは卓越した人のやり方を写しとる手法として発展しました。大切なのは、表面を真似ることではなく、自分に合う形に変えて取り入れることです。
- 人は他者を観察するだけでも学ぶ。心理学ではバンデューラが観察学習として示した
- 憧れの人は、手が届きそうなら励みに、遠すぎると落ちこみの種になりやすい
- 行動だけでなく、考え方や大切にしているものまで観察し、自分の形に変える
目次 Contents
職場に、いつも落ち着いて人の話を聞ける先輩がいる。SNSで見かけた、好きなことを仕事にしている人の暮らしにひかれる。「あんなふうになれたら」と思う一方で、「自分とは違う」とあきらめてしまう。
憧れの人がいるのは、あなたの中に、そちらへ向かいたいという気持ちがあるからです。ただ、どう学べばいいのかわからないと、憧れはいつの間にか、自分と比べて落ちこむ材料に変わってしまいます。
この記事では、憧れの人から上手に学ぶ方法として「モデリング」を紹介します。心理学のモデリングとNLPのモデリングを比べたうえで、真似ではなく、自分らしい形で取り入れるための手順をまとめました。
モデリングとは? 一言でいうと
モデリングとは、他者の行動や考え方を観察し、それを手本(モデル)にして学ぶことです。子どもが親の話し方をまねて言葉を覚えるのも、新人が先輩の仕事ぶりを見て段取りを覚えるのも、モデリングの一種です。
この言葉は、主に二つの分野で使われています。ひとつは心理学で、人が他者の観察から学ぶしくみとして研究されてきました。もうひとつはNLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)です。こちらでは、卓越した人のやり方を写しとる手法として発展しました。
心理学のモデリング:バンデューラの観察学習
見ているだけでも、人は学ぶ
心理学者アルバート・バンデューラは、人が自分で体験しなくても、他者を観察するだけで学ぶことを示しました。
よく知られているのが、1961年の「ボボ人形実験」です。子どもたちに、大人が空気で膨らませた人形を叩いたり蹴ったりする様子を見せます。すると、その子たちは、見なかった子たちより、あとで同じように人形を乱暴に扱いやすかったのです(Bandura ら, 1961)。
よい行動も、よくない行動も、人は見て学ぶ。この「観察学習」の考え方は、のちに社会的学習理論としてまとめられました(Bandura, 1977)。
観察学習の4つのプロセス
バンデューラは、観察から学ぶには4つのプロセスが必要だと考えました。
| プロセス | 中身 | 憧れの人から学ぶときの問い |
|---|---|---|
| 注意 | モデルの行動に目を向ける | 私は、その人の何に注目している? |
| 保持 | 見たことを覚えておく | 見たことを、言葉やメモで残している? |
| 再生 | 覚えたことを実際にやってみる | 自分でも試す機会をつくっている? |
| 動機づけ | やってみようと思える理由がある | それを身につけると、自分に何がいい? |
憧れているのに学べないときは、この4つのどこかで止まっていることが多いものです。見ているけれど覚えていない。覚えているけれど試していない。どこで止まっているかがわかると、次にすることが見えてきます。
「あの人にできるなら」が、自信を育てる
バンデューラは、「自分にはできる」という感覚、自己効力感の研究でも知られています。自己効力感を育てるものとして、彼は自分の成功体験と並べて、「他者の成功を見ること」を挙げました(Bandura, 1977)。
特に、自分と似た人がうまくいく姿を見ると、「自分にもできるかもしれない」と感じやすくなります。くわしくはエフィカシー(自己効力感)とは?高める方法で紹介しています。
NLPのモデリング:卓越した人の「やり方」を写しとる
NLPは、モデリングから生まれたといわれます。1970年代、リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーは、すぐれた成果をあげていた心理療法家たちを観察しました。ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、家族療法のヴァージニア・サティア、催眠療法のミルトン・エリクソンです。
彼らが何をしているのか、どんな言葉を使っているのかを細かく観察し、ほかの人も使える形にまとめようとしたのです(Bandler & Grinder, 1975)。
行動の奥にある「ストラテジー」を探る
NLPのモデリングの特徴は、見える行動だけでなく、その奥にある考え方の手順まで探ることです。この手順は「ストラテジー」と呼ばれます。
たとえば、決断の早い人がいたとします。NLPでは、「その人は決めるとき、頭の中で何を見て、何を自分に問いかけ、何を感じたら決めるのか」を、本人への質問を通して明らかにしようとします。ストラテジーの考え方の土台には、心理学者ミラーらが示したTOTEモデルがあります。目標と現状を照らし合わせながら、行動を調整していくモデルです。くわしくはTOTEモデルとは?目標達成のフィードバックループをどうぞ。
| 心理学のモデリング | NLPのモデリング | |
|---|---|---|
| 主な関心 | 人は観察からどう学ぶのか | 卓越した人は何をしているのか |
| 対象 | 日常のあらゆる行動 | 特定の分野ですぐれた成果を出す人 |
| 方法 | 実験や観察による研究 | 観察と質問で、考え方の手順まで写しとる |
| 根拠 | 多くの実験で確かめられている | 実践の中で発展。研究での検証は少ない |
憧れの人が、励みにも重荷にもなる理由
憧れの人の存在は、いつも励みになるとは限りません。かえって落ちこんでしまうこともあります。その違いを調べた研究があります。
心理学者ロックウッドとクンダは、会計学を学ぶ大学生に、とても優秀な卒業生の記事を読ませました(Lockwood & Kunda, 1997)。すると、入学したばかりの1年生は、自分の将来に前向きになりました。一方、卒業間近の4年生は、かえって自分への評価が下がりました。
1年生には、まだその卒業生のようになる時間が残っています。4年生にとっては、もう追いつけない存在だったのです。憧れの人は、「自分も手が届きそうだ」と感じられるときには励みになり、「とても届かない」と感じるときには重荷になりやすいと考えられています。
モデルを選ぶときは、遠くの成功者だけでなく、少し先を歩いている身近な人にも目を向けてみてください。人と比べてつらくなりやすい人は、他人と比べてしまうのをやめる方法も参考になります。
自分らしく取り入れるモデリングの5ステップ
ここからは、憧れの人から学ぶための具体的な手順を紹介します。
本人に聞けるなら、聞いてみる
モデルが身近な人なら、直接聞いてみるのがいちばんの近道です。行動の奥にある考え方は、外から見ているだけではわからないからです。
- 「あの場面で、どんなことを考えていたんですか?」
- 「そうしようと決めたのは、何がきっかけでしたか?」
- 「最初からできたんですか? 苦手だった時期はありましたか?」
最後の質問は、特におすすめです。今は自然にできているその人にも、苦手だった時期があったと知るだけで、「自分にもできるかもしれない」と思えることがあります。継続的に学べる関係をつくりたいなら、メンタリングとは?メンターとの出会い方も参考にしてください。
試したら、ふり返って調整する
取り入れたやり方を試したら、うまくいったか、自分に合っていたかをふり返ります。合わない部分は捨て、合う部分だけを残していきます。何度か試すうちに、それはモデルのやり方ではなく、あなた自身のやり方になっていきます。
本番の前に、頭の中で試してみる
実際の場面で試す前に、イメージの中で練習しておく方法もあります。『NLPの実践手法がわかる本』PRでは、「ニュービヘイビアジェネレーター」という手順が紹介されています。モデルの姿を映画のように外から眺め、次に自分と入れ替え、最後にその中に入って体で味わう流れです。
外から眺める(ディソシエイト)と、中に入る(アソシエイト)を順に使うのが特徴です。この2つの視点については、アソシエイトとディソシエイトで紹介しています。
この本では、イメージは最初から鮮明でなくてかまわないとされています。ぼんやりした映像でも十分です。
真似で終わらせないための3つのポイント
1. 表面ではなく「理由」を学ぶ
モデルの服装や口ぐせを真似しても、同じ成果が出るとは限りません。大切なのは、その行動を支えている考え方や、大切にしている価値観です。理由がわかれば、状況が変わっても応用がききます。
2. 一人に絞らず、部分ごとにモデルを選ぶ
すべてを兼ね備えた完璧な手本は、なかなかいません。「話し方はAさん」「段取りはBさん」「休み方はCさん」と、部分ごとに違うモデルを選ぶほうが現実的です。複数のモデルから取り入れたものを組み合わせると、誰とも違う、あなたらしい形ができあがります。
3. 自分の強みを消さない
モデルに近づこうとするあまり、自分のよさを消してしまっては本末転倒です。物静かな人が、にぎやかなリーダーを無理に真似る必要はありません。静かなまま、人の話をよく聞くリーダーという在り方もあります。自分の強みを知りたい人は、強みの見つけ方も手がかりになります。
憧れは、あなたの行き先を教えてくれる
誰かに憧れるのは、その人の中に、あなたが大切にしたいものを見つけているからです。だから、憧れの人を観察することは、相手を知ることであると同時に、自分を知ることでもあります。
その人のすべてになる必要はありません。ひとつだけ、自分にも合いそうなやり方を選び、自分の形に変えて試してみる。それをくり返すうちに、憧れていた姿と、あなたらしさが、少しずつ重なっていきます。
まずは、あなたが「いいな」と思う人の、ひとつの場面を思い出してみてください。その人は、そのとき何を大切にしていたのでしょうか。「もし自分がその人だったら」と考えてみたい人は、アズイフフレームの問いも役に立ちます。
A question for you
あなたへの問い
あなたが「あの人のようになりたい」と思うのは、誰のどんな姿ですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
モデリングと、ただの真似は何が違うのですか?
真似は、見える行動をそのまま写すことです。モデリングは、行動の奥にある考え方や判断の基準まで観察し、それを自分の状況に合う形に変えて取り入れます。同じ行動をしても、理由がわかっていなければ、状況が変わったときに応用がききません。
身近に手本になる人がいません。
モデルは身近な人である必要はありません。本や記事、インタビュー動画からも、考え方や習慣を観察できます。また、一人の完璧な手本を探すより、「この人の話し方」「あの人の段取り」と、部分ごとに別の人をモデルにするほうが現実的です。
憧れの人を見ると、かえって落ちこんでしまいます。
研究でも、手の届かない存在に見える人と自分を比べると、落ちこみやすいことが示されています。少し先を歩いている身近な人をモデルに選び直すと、励みとして受け取りやすくなります。比べる対象を「今の相手」ではなく「その人が自分と同じ段階にいたころ」にするのも一つの方法です。
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References
- Bandura, A., Ross, D., & Ross, S. A. (1961). Transmission of aggression through imitation of aggressive models. Journal of Abnormal and Social Psychology, 63(3), 575–582.
- Bandura, A. (1977). Social Learning Theory. Prentice-Hall.
- Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215.
- Lockwood, P., & Kunda, Z. (1997). Superstars and me: Predicting the impact of role models on the self. Journal of Personality and Social Psychology, 73(1), 91–103.
- Bandler, R., & Grinder, J. (1975). The Structure of Magic I: A Book About Language and Therapy. Science and Behavior Books.
- Dilts, R. (1998). Modeling with NLP. Meta Publications.
- Miller, G. A., Galanter, E., & Pribram, K. H. (1960). Plans and the Structure of Behavior. Holt, Rinehart and Winston.
- 『実務入門 NLPの実践手法がわかる本』第1章 p.82-84