No.04 Draw the Future未来を描く
TOTEモデルとは?目標達成のフィードバックループ
TOTEモデルとは、テスト・操作・テスト・終了の4段階で行動を捉えるフィードバックループの考え方です。生まれた背景、NLPでの使われ方、PDCAとの違い、うまくいかないときに「やり方を変える」ための点検ワークまで紹介します。
この記事の結論
TOTEモデルとは、Test(確かめる)、Operate(行動する)、Test(もう一度確かめる)、Exit(終える)の4段階で、人の行動を捉える考え方です。目標と今の状態を比べ、ずれがあれば行動し、また確かめる。このループを回し、うまくいかなければやり方を変えることが、目標達成の土台になります。
- 確かめる→行動する→また確かめる→終える、の小さなループで行動を捉える
- PDCAより細かい単位で回り、行動のたびに結果を確かめるのが特徴
- 同じやり方を繰り返さず、うまくいかなければ行動の選択肢を変える
目次 Contents
目標に向かって頑張っているのに、なかなか結果が出ない。それでも、いつもと同じやり方で、もう少し頑張ろうとしてしまう。気づけば、何か月も同じところで足踏みしている。そんな経験はないでしょうか。
足踏みしているのは、努力が足りないからとは限りません。行動の結果を確かめ、やり方を変える「ループ」が、うまく回っていないのかもしれません。
TOTEモデルは、そのループを見える形にしてくれる考え方です。この記事では、TOTEモデルの意味と生まれた背景、NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)での使われ方、PDCAとの違いを整理します。うまくいかないときにやり方を変えるための点検ワークも紹介します。
TOTEモデルとは? 一言でいうと
TOTEモデルとは、「確かめる→行動する→また確かめる→終える」という小さなループで、人の行動を捉える考え方です。4つの段階の頭文字をとって、TOTE(トート)と呼ばれます。
| 段階 | 英語 | すること |
|---|---|---|
| T | Test(テスト) | 目標とする状態と、今の状態を比べる |
| O | Operate(操作) | ずれがあれば、それを埋めるために行動する |
| T | Test(テスト) | 行動のあとで、もう一度比べる |
| E | Exit(終了) | ずれがなくなったら、ループを終える |
たとえば、壁に釘を打つ場面を考えてみます。まず釘を見て、頭が壁から出ているかを確かめます(テスト)。出ていれば、金づちで打ちます(操作)。もう一度確かめ(テスト)、まだ出ていればまた打つ。頭が壁と平らになったら、手を止めます(終了)。
私たちは、こうしたループを、ほとんど意識せずに一日中回しています。料理の味見をして塩を足すのも、運転中にハンドルを細かく調整するのも、同じしくみです。
TOTEモデルが生まれた背景
TOTEモデルは、1960年に心理学者のミラー、ギャランター、プリブラムが著書『プランと行動の構造』で提案しました(Miller ら, 1960)。
当時の心理学では、行動を「刺激に対する反応」として説明する考え方が主流でした。ミラーたちは、それだけでは人の目的をもった行動を説明しきれないと考えました。そこで注目したのが、エアコンの温度調節のような「フィードバック」のしくみです。目標と結果を比べながら動きを調整するこのしくみを、人の行動の基本単位として示したのです。
もう一つの特徴は、ループが入れ子になっていることです。「釘を打つ」というループの中には、「金づちを振り上げる」「振り下ろす」という小さなループが含まれています。大きな目標も、小さなループの積み重ねでできているのです。
NLPでのTOTEモデル
TOTEモデルは、のちにNLPに取り入れられました。NLPの初期の研究者たちは、優れた人が物事をどんな順番で考え、行動しているかを「ストラテジー」と呼んで調べました。そのとき、ストラテジーを記述する枠組みとして使ったのがTOTEです(Dilts ら, 1980)。NLPの全体像は、NLPとは?神経言語プログラミングの基本と活かし方で紹介しています。
NLPでは、TOTEを使うときに、次のような点に注目します。
- 目標は何か(何を目指してループを回しているか)
- テストの基準は何か(何が起きていれば届いたと判断するか)
- どんな行動の選択肢をもっているか
- うまくいかなかったとき、どう反応するか
「柔軟さ」を大切にする理由
NLPでは、「最も柔軟な人が、その場を左右する」という考え方がよく語られます。これは、サイバネティクス(制御と通信の科学)の研究者アシュビーの「必要多様性の法則」をもとにしたものです(Ashby, 1956)。
アシュビーの法則は、もともと機械や生物の制御のしくみについての理論です。それを人の行動に当てはめるのは、NLP流の解釈だと理解しておく必要があります。それでも、TOTEのループで考えると、言いたいことは見えてきます。**行動の選択肢が一つしかなければ、うまくいかないとき、同じ行動を繰り返すしかありません。**選択肢が多いほど、ずれを埋める方法を見つけやすくなるのです。
TOTEモデルとPDCAの違い
目標達成のループというと、PDCA(計画・実行・評価・改善)を思い浮かべる人も多いでしょう。両者は似ていますが、違いもあります。
| TOTEモデル | PDCAサイクル | |
|---|---|---|
| 生まれた分野 | 心理学(行動の説明) | 品質管理(業務の改善) |
| 回る単位 | 一つひとつの行動。数秒のこともある | 計画の期間ごと。週・月・四半期など |
| 中心にあるもの | 目標と現状を比べるテスト | 計画を立てること |
| 向いている場面 | その場でやり方を調整する | チームで計画的に改善を進める |
PDCAは、品質管理の分野で広まり、日本の企業でも広く使われてきました。品質管理の研究者デミングは、後年、PDSAという形を好んで使いました。評価(Check)の代わりに、学ぶこと(Study)を強調したものです(Deming, 1993)。
どちらが優れているということではありません。PDCAで立てた計画を実行する中で、一つひとつの行動はTOTEで調整する。そんなふうに組み合わせることもできます。
うまくいかないときは「やり方」を変える
TOTEモデルで考えると、行き詰まったときに何が起きているかが見えやすくなります。
たとえば、毎朝ジョギングをすると決めたのに、3日で止まってしまったとします。「明日こそは早起きして走ろう」と決意を新たにするのは、同じ行動を繰り返すことです。テストで「走れていない」とわかったら、行動の選択肢を変えてみます。夜に走る。走る代わりに歩く。友人と約束する。ウェアを枕元に置く。続けるための工夫は、習慣化のコツ|小さな変化が人生を変える理由でも紹介しています。
それでもうまくいかないときは、目標やテストの基準そのものを見直します。「発表で一度も詰まらない」という基準は、厳しすぎるかもしれません。「要点を3つ伝えきる」に変えると、ループが回りはじめることがあります。
やり方だけでなく、目標や前提そのものを問い直す学び方は、ダブルループ学習とは?前提から問い直す学び方で詳しく紹介しています。
TOTEで目標達成を点検するワーク
テストの基準を書くのが難しいときは、目標の形そのものを整えてみてください。目標を具体的にする方法は、ウェルフォームドアウトカムとは?実現しやすい目標の5条件で紹介しています。
TOTEを使うときに気をつけたいこと
テストの基準があいまい、または厳しすぎる
「もっと上手に」のような基準では、いつまでもループを終えられません。反対に、完璧を基準にすると、どれだけ行動しても「まだ足りない」と感じ続けます。基準は、具体的で、届きうるものにしておきましょう。
うまくいかなかった結果を、失敗と決めつける
TOTEモデルでは、テストの結果は「失敗」ではなく、次の行動を選ぶための情報です。『NLP 超心理コミュニケーション』PRでは、うまくいかなかった結果を「不一致」と呼んでいます。目標と今がずれているというフィードバックにすぎず、次の操作を選ぶための材料だ、という説明です。
釘が曲がったら、自分を責める前に、打つ角度を変えてみる。テストで返ってきたのは「あなたはだめだ」という判定ではなく、「この角度ではない」という情報です。そう受け取れると、ずれがあるとわかったことが、前に進むための手がかりに変わります。失敗が怖くて動けない人は、失敗が怖いあなたへ|失敗をフィードバックに変えるも読んでみてください。
ループを止める勇気をもつ
目標に届いたら、ループを終える。当たり前のようですが、完璧主義の人ほど、終えるタイミングを逃しがちです。また、状況が変わって、その目標自体が必要なくなることもあります。そのときにループを終えるのも、大切な判断です。
同じ努力より、違う一手を
うまくいかないとき、私たちはつい「もっと頑張る」ことで乗り越えようとします。でも、TOTEモデルが教えてくれるのは、努力の量より、行動の選択肢の幅のほうが大切な場面がある、ということです。
結果を確かめ、ずれがあれば、違うやり方を試してみる。そのループを軽やかに回せるようになると、目標への道のりは、少しずつ楽になっていきます。
今、足踏みしている目標があったら、「まだ試していないやり方は何だろう」と自分に聞いてみてください。目標の立て方から見直したい人は、目標設定の方法|ワクワクするゴールの立て方もあわせてどうぞ。
A question for you
あなたへの問い
うまくいかないのに、同じやり方を続けていることはありませんか?
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よくある質問
TOTEモデルとPDCAサイクルは、どちらを使えばいいですか?
目的によって使い分けるのがおすすめです。チームの業務改善のように、計画を立てて期間ごとに見直すならPDCAが向いています。一つひとつの行動の結果を確かめながら、その場でやり方を調整したいときは、TOTEの考え方が役に立ちます。
TOTEの「テスト」とは、何を確かめることですか?
目標とする状態と、今の状態を比べることです。そのためには、「何が起きていれば目標に届いたと言えるか」という基準が必要です。基準があいまいだと、いつまでも終われなかったり、早く終えすぎたりします。
何度やり方を変えても、うまくいかないときは?
目標や、テストの基準そのものを見直すタイミングかもしれません。その目標は今の自分にとって本当に必要か、基準が厳しすぎないかを確かめてみてください。目標を変えることは、逃げではなく、ループを正しく回すための判断です。
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References
- Miller, G. A., Galanter, E., & Pribram, K. H. (1960). Plans and the Structure of Behavior. Holt, Rinehart and Winston.
- Dilts, R., Grinder, J., Bandler, R., & DeLozier, J. (1980). Neuro-Linguistic Programming: Volume I. The Study of the Structure of Subjective Experience. Meta Publications.
- Ashby, W. R. (1956). An Introduction to Cybernetics. Chapman & Hall.
- Deming, W. E. (1993). The New Economics for Industry, Government, Education. MIT Center for Advanced Engineering Study.
- 『NLP 超心理コミュニケーション』理論編05 p.26