No.04 Draw the Future未来を描く
ブレインダンプとは?頭の中を書き出す方法
ブレインダンプとは、頭の中にあることを評価せずにすべて書き出す方法。書き出すと頭が軽くなる理由を研究から紹介し、書き出し方、分類して選ぶまでの4ステップ、やりたいことを見つける自己分析の入口としての使い方まで解説します。
この記事の結論
ブレインダンプとは、やること、気がかり、思いつき、気持ちなど、頭の中にあることを評価せずにすべて紙に書き出す方法です。書き出したあと、種類ごとに分けて「次の一歩」と「今週やること」を選ぶまで進めると、頭のモヤモヤが整理され、行動に移しやすくなります。
- 頭が一度に抱えられる情報はわずか。書き出すと「覚えておく負担」が減る
- 書き出しただけで終えず、分類して「次の一歩」を決めると気がかりが静まる
- 「やりたいこと」の山は、自分を知るための手がかりの宝庫になる
目次 Contents
やらなければいけないことが、頭の中でいくつも渦を巻いている。仕事の締め切り、返していない連絡、買い忘れた日用品、なんとなく気になっている将来のこと。ひとつに集中しようとしても、別のことが割りこんできて、何も手につかない。
頭のモヤモヤを整理したいと思って、このページにたどり着いたのかもしれません。考えがまとまらないのは、あなたの頭の性能が悪いからではありません。人の頭は、たくさんのことを同時に覚えておくようには、もともとできていないのです。
そんなときに役立つのが、ブレインダンプです。頭の中にあるものを、すべて紙の上に出してしまう方法です。この記事では、ブレインダンプの意味と、書き出すと頭が軽くなる理由を紹介します。そのうえで、書き出したあとに分類し、選ぶところまでの手順と、やりたいことを見つけるための使い方をまとめました。
ブレインダンプとは? 一言でいうと
ブレインダンプとは、やること、気がかり、思いつき、気持ちなど、頭の中にあることを評価せずにすべて書き出す方法です。英語の dump は「中身を一気に出す」という意味で、「頭の中身をすべて出す」というイメージです。
仕事術の分野では、デビッド・アレンの方法がよく知られています。著書『Getting Things Done(GTD)』(2001年)で紹介されたものです。アレンは、頭の中にある「気になること」をすべて紙に書き出す作業を、時間管理の出発点にしました。
ブレインダンプのポイントは、質より量です。「こんなことを書いても意味がない」と判断せず、浮かんだものを片っぱしから書いていきます。整理するのは、全部出しきってからです。
ジャーナリングとの違い
よく似た方法に、ジャーナリングがあります。違いは、書く目的にあります。
| ブレインダンプ | ジャーナリング | |
|---|---|---|
| 目的 | 頭の中のものを、すべて外に出す | ひとつのテーマについて、自分と対話する |
| 書き方 | 箇条書きで、短く、たくさん | 文章で、深く |
| 向いているとき | 頭がいっぱいで、何から考えればいいかわからない | 気持ちを整理したい、自分を知りたい |
頭がいっぱいのときはブレインダンプで外に出し、気になったことをジャーナリングで深める。そう使い分けると、二つの方法がうまくつながります。
なぜ書き出すと、頭が軽くなるのか
頭が一度に抱えられることは、思ったより少ない
人が頭の中で一度に保っておける情報の量には、限りがあります。心理学者ネルソン・コーワンは、それまでの研究を整理しました。そして、意識して同時に抱えられるのは、おおよそ4つのまとまり程度だと論じました(Cowan, 2001)。
やることが10個も20個もある状態で、それを全部頭で覚えておこうとすれば、すぐにあふれてしまいます。あふれた分は、「何か忘れている気がする」という漠然とした不安として残ります。
終わっていないことは、心に引っかかり続ける
心理学者ブルーマ・ゼイガルニクは、1927年に、途中で中断した課題は、終わった課題より思い出されやすいと報告しました。「ツァイガルニク効果(ゼイガルニク効果)」と呼ばれる現象です。ただし、その後の追試では結果がまちまちで、記憶への影響については慎重に受け取る必要があります。
それでも、「終わっていないことが頭に引っかかる」という感覚には、多くの人が覚えがあるはずです。その引っかかりを静める方法を示した研究があります。
「次にどうするか」を決めると、気がかりが静まる
心理学者マシカンポとバウマイスターは、まだ達成していない目標を参加者に思い出させました。すると、関係のない作業中にもその目標が頭に浮かび、作業の成績が下がりました(Masicampo & Baumeister, 2011)。
ところが、その目標について「いつ、どこで、何をするか」という具体的な計画を立ててもらうと、この影響は消えていました。目標そのものを達成していなくても、です。
**頭を軽くするのは、気がかりを片づけることそのものより、「次にどうするか」が決まっている状態だと考えられます。**だからこそ、ブレインダンプは書き出して終わりにせず、次の一歩を決めるところまで進めることが大切なのです。
ブレインダンプのやり方:まずは全部書き出す
ここからは、具体的なやり方です。まずは、頭の中にあるものを、ひとつ残らず外に出すところから始めます。
思い出すためのきっかけ
書き出す手が止まったときは、次の分野を順に思い浮かべてみてください。アレンも、こうした「きっかけのリスト」を使って、頭の中を残らず点検することをすすめています。
- 仕事:締め切り、返していない連絡、頼まれごと、会議の準備
- お金:支払い、手続き、買いたいもの
- 家・暮らし:掃除、修理、買い物、役所の手続き
- 体と心:通院、運動、睡眠、気になる体調
- 人間関係:連絡したい人、お礼、謝りたいこと、気になる相手
- 自分のこと:学びたいこと、行きたい場所、いつかやりたいこと
- 気持ち:もやもやしていること、不安、腹が立っていること
書き出すときのルール
- 判断しない:「こんなこと書いても」と思ったら、それも書きます。
- 短く書く:「母」「歯医者」「将来」など、単語だけでかまいません。
- 重複を気にしない:同じことを2回書いてもかまいません。何度も出てくるものは、それだけ気になっているしるしです。
書き出したあとが本番:分類して選ぶ4ステップ
書き出しただけで、頭が少し軽くなったと感じるかもしれません。でも、ここで終えると、紙の上の「やることの山」に圧倒されて、また頭がいっぱいになることがあります。次の4ステップで、山を整理していきます。
ステップ1:4つの種類に分ける
書き出した項目に、印をつけて分類します。
| 種類 | 中身 | 印の例 |
|---|---|---|
| やること | 自分が行動すれば片づくこと | ○ |
| 気がかり | 自分ではすぐに動かせない心配ごと | △ |
| やりたいこと | 義務ではないけれど、心ひかれること | ◎ |
| 考え・気持ち | 行動ではなく、感じていること、考えていること | ― |
ステップ2:「やること」は、次の一歩まで分ける
「確定申告」とだけ書いてあっても、何から手をつければいいかわかりません。「源泉徴収票を探す」のように、すぐに取りかかれる最初の一歩まで分けて書き直します。
アレンは、2分以内で終わることは、その場で片づけてしまうことをすすめています。メール1通の返信なら、リストに書いておくより、今やってしまうほうが早いのです。大きな項目を小さく分けるコツは、チャンクダウンとは?考えを整理する技術でくわしく紹介しています。
ステップ3:「気がかり」は、動かせる部分を探す
「将来のお金が不安」「親の健康が心配」。こうした気がかりは、すぐに片づくものではありません。それでも、「動かせる部分」と「動かせない部分」に分けることはできます。
将来のお金なら、「家計の固定費を一度書き出す」は動かせます。景気の行方は動かせません。動かせる部分が見つかったら、それを「やること」に移します。動かせない部分は、「今は動かせない」と書き添えて、いったん置いておきます。
ステップ4:今週やることを、3つだけ選ぶ
最後に、「やること」の中から、今週取り組むものを3つだけ選びます。全部をやろうとしないのがポイントです。選ばなかったものは、消すのではなく、別のリストに移しておきます。
選ぶ基準に迷ったら、緊急度と重要度で分けるアイゼンハワーマトリクスが役に立ちます。優先順位のつけ方|アイゼンハワーマトリクス入門で、価値観を使った選び方も紹介しています。
「やりたいこと」の山は、自分を知る入口
ブレインダンプには、もうひとつの使い道があります。分類の中で「やりたいこと」の印がついた項目は、自分を知るための手がかりの宝庫です。
やることに追われていると、やりたいことは、頭の片隅に押しやられてしまいます。「いつか陶芸をやってみたい」「海の近くに住んでみたい」。ふだんは口に出さない小さな願いも、ブレインダンプでは、ほかの項目と同じように紙に出てきます。
「やりたいこと」を深める問い
◎の印がついた項目を眺めながら、次の問いを考えてみてください。
- この中で、思い浮かべただけで少し気持ちが明るくなるものは?
- いくつかの項目に共通しているものは?(たとえば「手を動かす」「自然の中」「人に教える」)
- 今月中に、5分でできる「お試し」はある?
共通点が見つかったら、それはあなたが大切にしている価値観や、心がひかれる方向を表しているのかもしれません。やりたいことがわからないと感じている人は、やりたいことがわからない人へ|見つけ方と小さな一歩も手がかりになります。
うまくいかないときのヒント
書き出した量に、圧倒されてしまう
項目が多すぎて、かえって気が重くなることがあります。それは、それだけのものを頭の中で抱えていたということです。書き出せたこと自体が、大きな一歩です。
圧倒されたときは、今日は分類まで進まず、紙を裏返して休んでもかまいません。翌日、ステップ1から取りかかれば大丈夫です。
書いても、不安が消えない
気がかりの中には、書いただけでは軽くならない、重い不安もあります。そんなときは、ブレインダンプで解決しようとしなくていいのです。「今は、こういうことが不安なんだ」とわかっただけでも、意味があります。
不安やストレスが長く続くときの向き合い方は、ストレス対処法|心と体のしくみから整えるで紹介しています。
書き出したのに、やっぱり動けない
やることがはっきりしたのに、どうしても手がつかない。その場合は、次の一歩がまだ大きすぎるのかもしれません。「企画書を書く」を「ファイルを開いてタイトルだけ書く」まで小さくしてみてください。それでも動けないときは、先延ばし癖の直し方も参考になります。
頭を空っぽにすると、本当の声が聞こえてくる
ブレインダンプは、頭の中の騒がしさを、紙の上に移す作業です。頭の中にあるうちは、すべてが同じくらい大きく、急ぎに見えます。紙の上に並べてみると、実はそれほど大きくないものや、今は手放していいものが見えてきます。
そして、ざわつきが静まった頭には、ふだんは聞こえなかった小さな声が届くようになります。「本当は、これがやりたかった」。そんな声です。
今夜、10分だけ紙を広げてみてください。上手に書く必要はありません。頭の中にあるものを、ひとつ残らず外に出す。それだけで、明日の朝の頭は、きっと今より少し静かになっています。
A question for you
あなたへの問い
今、あなたの頭の片隅に、ずっと居座っていることは何ですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
ブレインダンプとジャーナリングの違いは何ですか?
ブレインダンプは、頭の中にあることを、量を重視してすべて吐き出すことが目的です。ジャーナリングは、ひとつの問いや気持ちについて書きながら、自分と対話することに重きを置きます。頭がいっぱいのときはブレインダンプで外に出し、気になったことをジャーナリングで深める、という使い分けができます。
どのくらいの頻度でやればいいですか?
決まった頻度はありません。頭がいっぱいだと感じたときや、週の初めに行うのが使いやすいでしょう。週に一度、15分ほどの習慣にすると、気がかりがたまりにくくなります。
寝る前にやってもいいですか?
寝る前に考えごとが止まらない人には、向いているかもしれません。寝る前に翌日以降のやることリストを書いた人は、寝つきが早かったという研究があります。ただし、書くうちに不安が強まるときは、量を減らしたり、時間帯を変えたりしてください。
もう一歩深めたい人へ
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- Allen, D. (2001). Getting Things Done: The Art of Stress-Free Productivity. Viking.
- Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24(1), 87–114.
- Zeigarnik, B. (1927). Über das Behalten von erledigten und unerledigten Handlungen. Psychologische Forschung, 9, 1–85.
- Masicampo, E. J., & Baumeister, R. F. (2011). Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), 667–683.
- Scullin, M. K., Krueger, M. L., Ballard, H. K., Pruett, N., & Bliwise, D. L. (2018). The effects of bedtime writing on difficulty falling asleep: A polysomnographic study comparing to-do lists and completed activity lists. Journal of Experimental Psychology: General, 147(1), 139–146.