No.04 Draw the Future未来を描く
人生の輪(バランスホイール)で人生を見渡す
バランスホイール(人生の輪)とは、仕事・健康・人間関係など人生の8つの分野を円に描いて採点し、全体を見渡すワーク。やり方とワークシート、点数より「どこを少し上げたいか」に注目する使い方、注意点までわかりやすく紹介します。
この記事の結論
バランスホイール(人生の輪)とは、仕事・お金・健康・人間関係など人生の分野を円に描き、それぞれの満足度を採点して全体を見渡すワークです。大切なのは点数の高さではありません。「どの分野を、1点だけ上げたいか」に注目すると、次の一歩が見えてきます。
- 人生を8つほどの分野に分けて満足度を採点し、円の形で全体を見渡すワーク
- 分野どうしはつながっている。ひとつが上がると、ほかも動くことがある
- 全部を10点にする必要はない。「1点上げるなら?」と問うのが使い方のコツ
目次 Contents
仕事に打ちこんでいるうちに、気づけば何年も体を動かしていない。家族のために走り回っているけれど、自分のための時間はどこにもない。どこかがうまくいっている一方で、別のどこかが置き去りになっている気がする。
人生全体のバランスを見直したいと感じるのは、毎日を一生懸命に生きている人ほど自然なことです。目の前のことに全力で取り組んでいると、ほかの分野は視界の外に追いやられてしまいます。
そんなときに役立つのが、「バランスホイール(人生の輪)」です。人生をいくつかの分野に分けて円に描き、今の状態をひと目で見渡す方法です。この記事では、バランスホイールの意味と、ワークシートを使ったやり方を紹介します。そのうえで、点数の高さではなく「どこを少し上げたいか」に注目する使い方をまとめました。
バランスホイール(人生の輪)とは?
バランスホイールとは、人生をいくつかの分野に分けて円に描き、それぞれの満足度を採点して全体を見渡すワークです。分野には、仕事・お金・健康・人間関係などが入ります。「人生の輪」「ホイール・オブ・ライフ」とも呼ばれます。
円を8つほどに区切り、中心を0点、外側を10点として、各分野の満足度に印をつけます。印を線でつなぐと、でこぼこした形が浮かび上がります。この形が、今のあなたの人生の「輪」です。
起源は、1960年代に自己啓発プログラムの創始者ポール・J・マイヤーが考えた、と紹介されることが多いようです。ただ、はっきりした記録は確かめにくいのが実情です。現在では、ライフコーチングを中心に、コーチングの現場で広く使われています。
なお、バランスホイールは心理検査のように信頼性が確かめられた尺度ではありません。自分の今を見渡すための、内省の道具として使ってください。
人生の8つの分野
分野の分け方に決まりはありません。ここでは、よく使われる8つの分野を例として紹介します。
| 分野 | 含まれるもの | 自分への問いの例 |
|---|---|---|
| 仕事・キャリア | 職業、働き方、やりがい | 今の仕事に、自分の力を活かせている? |
| お金 | 収入、貯蓄、お金の使い方 | お金のことで、安心して眠れている? |
| 健康 | 体の調子、睡眠、運動、食事 | 朝、体が軽いと感じる日はどれくらい? |
| 家族・パートナー | 家族との関係、恋愛、結婚 | 身近な人と、心が通じ合えている? |
| 友人・人間関係 | 友人、職場の仲間、地域のつながり | 困ったとき、頼れる人はいる? |
| 学び・成長 | 勉強、新しい挑戦、自己理解 | 最近、新しく知ったことやできたことは? |
| 遊び・余暇 | 趣味、休息、楽しみ | 心から楽しいと思える時間はある? |
| 環境 | 住まい、身の回り、地域 | 今の住まいは、くつろげる場所になっている? |
自分にとって大切な分野が入っていなければ、入れ替えてかまいません。「創作」「信仰」「社会への貢献」「ペット」。あなたの人生を表すのに必要な分野を選ぶことも、このワークの一部です。
なぜ人生を「輪」で見渡すと役立つのか
見えていなかった分野に気づける
人は、今いちばん困っていることに、注意を奪われがちです。仕事で悩んでいると、仕事のことばかり考えて、ほかの分野はほとんど意識にのぼりません。
円に描くと、すべての分野を同じ大きさで眺めることになります。「仕事のことで頭がいっぱいだったけれど、実は健康の点数のほうが低かった」。そんな発見が起こるのは、全体を一度に見渡しているからです。
分野どうしは、つながっている
人生の分野は、それぞれ独立しているわけではありません。睡眠不足が続けば、仕事の集中力も、家族への接し方も変わります。逆に、ひとつの分野がよくなると、ほかの分野にもよい影響が広がることがあります。
組織心理学の研究者グリーンハウスとパウエルは、仕事と家庭の関係に注目しました。二つは互いに足を引っぱり合うだけでなく、支え合うこともあると論じたのです(Greenhaus & Powell, 2006)。仕事で身につけた段取りの力が家庭で役立ち、家庭での安心感が仕事への意欲を支える、という関係です。
バランスホイールの本当の価値は、点数を知ることより、分野どうしのつながりを見て「どこを動かせば全体が動くか」を探せることにあります。
「次の一手」が見えやすくなる
人生全体をどうにかしたい、と考えると、あまりに大きすぎて何から始めればいいかわかりません。分野に分けると、「健康なら、まず睡眠から」と、手をつける場所がはっきりします。大きな問いが、扱える大きさの問いに変わるのです。
バランスホイールのやり方
ここからは、実際に描いてみましょう。紙とペンがあれば、15分ほどでできます。
形を見るときの3つの視点
描いた形は、次の3つの視点で眺めると、気づきが深まります。
- 大きさ:輪全体が小さいなら、今はどの分野にも余裕がない時期なのかもしれません。まずは休むことが「次の一手」になることもあります。
- へこみ:ほかより極端にへこんでいる分野は、ほかの分野にも影響を与えていることがあります。
- 転がり心地:この輪が車輪だとしたら、どれくらいガタガタ揺れそうでしょうか。揺れの原因になっている分野はどこでしょう。
採点のコツ
- 「理想」ではなく「満足度」で:世間的に見てどうかではなく、あなた自身がどれくらい満たされているかで採点します。
- 直感を信じる:迷ったら、最初に浮かんだ数字を選びます。正確さより、今の実感が大切です。
- 他人と比べない:同じ収入でも、満足度は人によって違います。誰かの輪と比べるものではありません。
人と比べて落ちこみやすい人は、他人と比べてしまうのをやめる方法もあわせて読んでみてください。
点数より「どこを少し上げたいか」に注目する
円を描き終えると、つい点数の低いところに目が行きます。でも、このワークで大切なのは、点数そのものではありません。
低い点数は、変えたい気持ちのしるし
点数が低い分野は、「問題がある分野」ではなく、「今の状態に満足していない分野」です。言いかえれば、そこには変えたいという気持ちがあります。
一方、点数が低くても、今は気にならない分野もあるでしょう。子育ての真っ最中で、趣味の時間がないのはしかたない、と納得しているなら、無理に上げる必要はありません。
「1点上げるなら?」と問う
全部の分野を10点にしようとすると、途方に暮れてしまいます。そこで、問いを小さくします。「この分野を、1点だけ上げるとしたら、何が変わっていればいい?」。
健康が4点なら、5点の状態を具体的に思い浮かべます。「週に2回、帰りに一駅歩いている」「夜12時前に寝られる日が週3日ある」。1点分の変化なら、今週からでも始められそうな気がしてきます。
ほかの分野も動かす「てこ」の分野を探す
もうひとつの見方は、「ここが上がると、ほかの分野も上がりそうな分野はどこか」を探すことです。
たとえば、睡眠が整えば、仕事の集中力も家族への優しさも上がるかもしれない。友人と会う時間をつくれば、遊びと人間関係の両方が満たされるかもしれない。てこのように全体を持ち上げてくれる分野が見つかれば、少ない力で大きな変化を起こせます。
選んだ行動のために時間をどう確保するか迷ったら、優先順位のつけ方が参考になります。選んだ行動を続けるには、習慣化のコツが役に立ちます。もっと大きな目標につなげたい人は、目標設定の方法|ワクワクするゴールの立て方へ進んでみてください。
バランスは「全部10点」ではない
人生には、季節がある
バランスホイールは、すべての分野を同じ高さにそろえることを目指すものではありません。新しい仕事を覚えている時期、子どもが小さい時期、体調を立て直している時期。人生には季節があり、そのときどきで力を注ぐ分野が変わるのは自然なことです。
大切なのは、偏りがあること自体ではなく、その偏りを自分で選んでいるかどうかです。「今は仕事に集中すると決めている」なら、それは納得のうえのバランスです。「気づいたら仕事しかなくなっていた」なら、見直す価値があります。
何を重く見るかは、人によって違う
人生全体の満足度を測る心理学の尺度の中には、あえて分野ごとに尋ねず、人生全体の評価をたずねるものがあります(Diener ら, 1985)。どの分野をどれくらい重く見るかは人によって違うので、その判断を本人に任せるためです。
同じことが、バランスホイールにも言えます。8つの分野の平均点は、あなたの人生の点数ではありません。どの分野が自分にとって大切かは、あなたの価値観が決めます。価値観を確かめたい人は、価値観の見つけ方のワークを先に試してみるのもおすすめです。
使うときの注意点
自分を採点するための道具ではない
点数をつけると、成績表のように感じてしまうことがあります。でも、バランスホイールは、あなたの価値を測るものではありません。今の状態を、少し離れたところから眺めるための地図です。
定期的に描き直す
3か月から半年に一度、描き直してみてください。前回の円と並べると、「健康は上がったけれど、遊びが下がった」といった変化が見えてきます。変化に気づくこと自体が、次の選択の材料になります。
一人で見るのがつらいときは
ある分野の点数を見て、強い悲しみや苦しさがこみ上げてくることもあります。家族との関係や健康など、すぐには変えられない事情を抱えている人もいるでしょう。そんなときは、その分野を無理に動かそうとしなくていいのです。
人生全体について、対話しながら整えていきたい人には、ライフコーチングという選択肢もあります。くわしくはライフコーチングとは?人生全体を整える対話をどうぞ。
完璧な円より、少しずつ回る輪を
バランスホイールが「輪」の形をしているのには、意味があるのかもしれません。でこぼこした輪でも、少しずつなら前に転がっていけます。完璧な円になるのを待つ必要はないのです。
今日描いた輪は、今のあなたの姿をそのまま映しています。高いところも、低いところも、あなたがここまで生きてきた証です。
まずは、ひとつの分野を1点だけ。小さな変化が、ほかの分野にも静かに伝わっていくのを、楽しみに待ってみてください。
A question for you
あなたへの問い
人生の8つの分野のうち、1点だけ上げるならどこですか?
このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。
よくある質問
8つの分野は、決まっているのですか?
決まっていません。使う人やコーチによって、分野の数も名前もさまざまです。この記事の8分野は一例なので、自分にとって大切な分野に入れ替えたり、6つや10個に変えたりしてかまいません。
どのくらいの頻度で見直せばいいですか?
3か月から半年に一度がひとつの目安です。前回の円と並べてみると、何が変わり、何が変わっていないかがよくわかります。転職や引っ越しなど、大きな変化があったときに描き直すのも役に立ちます。
点数が全体的に低くて、落ちこみました。
点数が低いのは、あなたがだめだからではなく、今の状態に満足していない、つまり変えたい気持ちがあるというしるしです。全部を一度に上げる必要はありません。いちばん小さな力で動かせそうな分野をひとつ選び、1点だけ上げる方法を考えてみてください。
バランスホイールに科学的な根拠はありますか?
バランスホイールは、コーチングの現場で広く使われてきた内省の道具で、心理検査のように信頼性が確かめられたものではありません。点数は他人と比べるものではなく、自分の今を見渡すための目安として使ってください。
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References
- Greenhaus, J. H., & Powell, G. N. (2006). When work and family are allies: A theory of work-family enrichment. Academy of Management Review, 31(1), 72–92.
- Diener, E., Emmons, R. A., Larsen, R. J., & Griffin, S. (1985). The Satisfaction With Life Scale. Journal of Personality Assessment, 49(1), 71–75.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」