No.03 Connect人とつながる
フィードバックとは?成長につながる伝え方
フィードバックとは、相手の行動とその影響を伝え、次の行動を調整する手がかりを渡すことです。逆効果になるフィードバックの特徴、成長につながる伝え方、フィードフォワードとの違い、受け取る側の心の整え方まで紹介します。
この記事の結論
フィードバックとは、相手の行動とそれが周りに与えた影響を伝え、次の行動を調整するための手がかりを渡すことです。人格ではなく具体的な行動について、事実と影響を分けて話すと届きやすくなります。未来の改善案に焦点を当てるフィードフォワードと組み合わせるのも有効です。
- フィードバックは評価ではなく、行動を調整するための「情報」
- 人格ではなく行動を、事実と影響に分けて伝えると成長につながりやすい
- 受け取るときは、内容と関係と自分への評価を分けると心が揺れにくい
目次 Contents
部下や後輩に、改善してほしいことがある。でも、どう伝えたら相手を傷つけずにすむのかわからない。言ったら関係が気まずくなりそうで、つい先延ばしにしてしまう。そんなふうに迷うのは、相手のことをちゃんと考えているからです。
あるいは、もらう側として悩んでいるのかもしれません。上司の一言が頭から離れず、夜まで落ちこんでしまう。「受け止めなきゃ」と思うほど、苦しくなる。
この記事では、フィードバックとは何かを、もともとの意味から整理します。そのうえで、逆効果になりやすいフィードバックの特徴と、成長につながる伝え方を紹介します。未来に焦点を当てる「フィードフォワード」との違いにも触れます。最後に、受け取る側の心の整え方も扱います。
フィードバックとは? 一言でいうと
フィードバックとは、相手の行動と、それが周りに与えた影響を伝え、次の行動を調整するための手がかりを渡すことです。良い・悪いの判定ではなく、相手が自分の行動を見直すための「情報」と考えると、わかりやすくなります。
もとは工学の言葉で、出力の結果を入力側に戻し、ずれを修正するしくみを指します。1940年代には、数学者ノーバート・ウィーナーがこの考え方を生き物や社会にも広げました。サイバネティクスと呼ばれる学問です。エアコンが室温を測って、設定温度に近づけるよう運転を調整する。あのしくみです。
人の成長も同じです。自分の行動の結果がわからなければ、修正のしようがありません。試して、確かめて、修正する。この循環を目標達成の型として示したのが、TOTEモデルとは?目標達成のフィードバックループです。フィードバックは、自分では見えない「結果」を、外から教えてもらうことなのです。
フィードバックは、なぜ逆効果になることがあるのか
フィードバックは成長に欠かせない。そう思われがちですが、研究を見ると、話はそれほど単純ではありません。
3分の1以上は、かえって成果を下げていた
心理学者のクルーガーとデニシは、フィードバックの効果を調べた多くの研究をまとめて分析しました。全体としては、成果を高める効果が見られました。ところが、3分の1以上のケースでは、フィードバックのあとに成果がかえって下がっていました(Kluger & DeNisi, 1996)。
彼らの分析によると、成果が下がりやすかったのは、注意が課題から「自分自身」に向いてしまうフィードバックでした。「あなたはこういう人だ」という評価を受けると、どうなるか。人は課題を改善することより、傷ついた自分を守ることにエネルギーを使ってしまうのです。
「人」ではなく「課題」と「やり方」に向ける
教育研究者のハッティとティンパーリーは、フィードバックを4つのレベルに整理しました。
| レベル | 何について伝えるか | 例 |
|---|---|---|
| 課題 | 結果が合っているか、何が足りないか | 「この表の数字、先月分が抜けているね」 |
| プロセス | 進め方や考え方 | 「先に結論を書いてから、根拠を並べるとわかりやすくなるよ」 |
| 自己調整 | 自分で確認し、修正する力 | 「提出前に、どこを見直すとよさそう?」 |
| 人 | 本人の人柄や能力への評価 | 「さすが、優秀だね」「君は雑だなあ」 |
このうち、成長につながりにくいとされるのが、4つ目の「人」についての言葉です。褒め言葉であっても、課題について何も教えてくれないからです。成長を支えやすいのは、プロセスと自己調整のレベルだとされています。
成長につながるフィードバックの伝え方
ここからは、伝える側のコツを紹介します。
「状況・行動・影響」に分けて話す
よく使われる型に、SBI(Situation・Behavior・Impact)があります。アメリカのリーダーシップ研究機関、センター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップが広めた型です。
- 状況:「昨日の定例会議で」
- 行動:「Aさんが話している途中に、3回ほど意見をはさんでいたよね」
- 影響:「Aさんが、そのあと発言しなくなったのが気になったんだ」
「話をさえぎるのはよくない」と評価するのではなく、事実と影響を並べるだけです。どうするかは、相手と一緒に考えます。
影響は「私」を主語にして伝える
「みんな迷惑している」は、相手を追いつめる言い方です。「私は、Aさんの意見も聞きたかった」のように、自分が感じた影響として伝えます。自分を主語にする伝え方は、アイメッセージとは?ユーメッセージとの違いと例文で詳しく紹介しています。
相手の見方を、先に聞く
伝える前に、「昨日の会議、自分ではどうだった?」と聞いてみます。本人がすでに気づいていることも多く、その場合は、こちらが言うことはほとんどなくなります。自分で気づいたことのほうが、人から言われたことより、ずっと行動につながりやすいものです。
改善点は少なく、早めに
一度に5つも6つも言われると、人は受け止めきれません。いちばん大切なひとつに絞ります。また、何週間もたってからでは、相手は状況を思い出せません。できるだけ早く、ただし相手が落ち着いて聞けるタイミングで伝えます。
承認を土台にする
日ごろから、相手の行動に気づいて認める言葉をかけていると、改善の話も受け取ってもらいやすくなります。「この人は、自分を見てくれている」という信頼があるからです。認め方については、承認とは?人を勇気づける認め方と伝え方をどうぞ。
相手が反発したら、内容より先に気持ちを受け止める
「そんなつもりじゃなかった」「でも、あのときは」。反論が返ってきたら、言い負かそうとしないことです。反発は、相手が自分を守ろうとしているサインです。「そう受け取られたなら、言い方がよくなかったかもしれない。責めたいわけじゃないんだ」と、まず関係を整えます。
そのうえで、伝えたいことは引っこめずに、もう一度短く言います。相手を尊重しながら自分の考えも伝える話し方は、アサーティブとは?DESC法で上手に伝える方法で紹介しています。
フィードフォワードとは? フィードバックとの違い
フィードフォワードは、過去を振り返る代わりに、未来に向けた提案に焦点を当てる方法です。エグゼクティブ・コーチのマーシャル・ゴールドスミスが広めました。
| フィードバック | フィードフォワード | |
|---|---|---|
| 時間の向き | 過去(すでに起きたこと) | 未来(これからできること) |
| 問いの例 | 「何がよくなかった?」 | 「次はどうするとよさそう?」 |
| 受け手の反応 | 身構えやすいことがある | 受け取りやすく、選べる |
| 向いている場面 | 具体的な事実の共有が必要なとき | 改善のアイデアを広げたいとき |
ゴールドスミスが紹介したやり方は、シンプルです。自分が伸ばしたい行動をひとつ決め、何人かに「これを良くするために、次にできることを2つ教えて」と頼む。言われたことには反論せず、「ありがとう」とだけ返します。
過去の出来事は変えられませんが、未来の行動は変えられます。フィードフォワードは、その「変えられる部分」だけに会話を絞る工夫です。ただし、事実のずれを正す必要があるときは、フィードバックも欠かせません。どちらか一方ではなく、組み合わせて使うのが現実的です。
フィードバックの受け取り方
伝え方より難しいのが、受け取り方かもしれません。ハーバード・ロースクールのストーンとヒーンは、フィードバックを受け取るときに心が反発する理由を、3つに整理しました。
| 反発のきっかけ | 心の中の声 | 整え方 |
|---|---|---|
| 内容 | 「それは事実と違う」 | 何が正しいかを争う前に、相手に何が見えているのかを聞く |
| 関係 | 「あなたに言われたくない」 | 誰が言ったかと、何を言ったかを分けて考える |
| 自分らしさ | 「やっぱり自分はだめだ」 | 言われたのは行動のひとつで、自分全体ではないと確かめる |
たとえば、苦手な上司から「報告が遅い」と言われたとします。「この人に言われたくない」は関係の反発です。「自分は仕事ができない人間だ」は、自分らしさの反発です。どちらも自然な反応ですが、ここで止まると、「報告のタイミングを少し早める」という役に立つ情報まで捨ててしまいます。
すべての指摘を受け入れる必要はありません。仕分けたうえで、使えないと判断した指摘は、手放してかまいません。受け取るかどうかを選ぶのは、あなた自身です。
自分から、具体的に頼む
フィードバックは、待っているより、自分から頼むほうが受け取りやすくなります。心の準備ができているからです。
コツは、聞き方を具体的にすることです。「何かありますか?」と聞くと、「特にないよ」で終わりがちです。「次のプレゼンで、ひとつだけ直すとしたらどこですか?」と聞くと、相手も答えやすくなります。答えをもらったら、反論したくなっても、まずは「ありがとう」で受け取ります。
「失敗はない。フィードバックがあるだけ」
NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)には、「失敗というものはない。フィードバックがあるだけだ」という前提があります。うまくいかなかった結果も、次にどうするかを教えてくれる情報だ、という見方です。
これは科学的な法則ではなく、物事を見るための構えのひとつです。でも、この構えをもつと、自分の行動の結果を、責める材料ではなく、修正の材料として扱いやすくなります。NLPの前提についてはNLPの前提とは?生きやすくなる考え方、失敗が怖い気持ちについては失敗が怖いあなたへ|失敗をフィードバックに変えるで詳しく扱っています。
言葉は、相手の明日のために
フィードバックは、相手を正すためのものではありません。相手が、自分では見えなかった結果を知り、次の一歩を選びやすくするための情報です。そう考えると、伝える側の肩の力も、少し抜けるかもしれません。
受け取る側としても、すべてを抱えこまなくていい。役に立つものだけを拾い、残りは手放す。それも立派な受け取り方です。
次に誰かに何かを伝えるとき、言う前に一度だけ自分に聞いてみてください。「この言葉は、相手の明日の行動を、少しでも楽にするだろうか」。その問いがあれば、言葉はきっと、相手の成長に届く形に整っていきます。
A question for you
あなたへの問い
最近もらった言葉で、あとから役に立ったと感じたものは何ですか?
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よくある質問
フィードバックとフィードフォワードの違いは何ですか?
フィードバックは、すでに起きた行動とその影響を振り返って伝えるものです。フィードフォワードは、これから何をするとよさそうかという未来の提案に焦点を当てます。過去の評価に身構えやすい人には、フィードフォワードのほうが受け取りやすいことがあります。
褒めて、指摘して、また褒める「サンドイッチ型」は効果的ですか?
相手を気づかう工夫としては理解できますが、くり返すと「褒められたら次に指摘が来る」と身構えられることがあります。指摘の部分もぼやけがちです。承認と改善点は分けて、改善点は短く具体的に伝えるほうが伝わりやすいでしょう。
厳しいフィードバックを受けて、落ちこみから立ち直れません。
落ちこむのは、その仕事や関係を大切にしているからです。まずは内容を「行動について言われたこと」と「自分の価値」に分けて書き出してみてください。指摘されたのは行動であって、あなたという人ではありません。つらさが長く続くときは、信頼できる人や専門家に相談してください。
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References
- Kluger, A. N., & DeNisi, A. (1996). The effects of feedback interventions on performance: A historical review, a meta-analysis, and a preliminary feedback intervention theory. Psychological Bulletin, 119(2), 254–284.
- Hattie, J., & Timperley, H. (2007). The power of feedback. Review of Educational Research, 77(1), 81–112.
- Stone, D., & Heen, S. (2014). Thanks for the Feedback: The Science and Art of Receiving Feedback Well. Viking.
- Goldsmith, M. (2002). Try feedforward instead of feedback. Leader to Leader, 25, 11–14.
- Wiener, N. (1948). Cybernetics: Or Control and Communication in the Animal and the Machine. MIT Press.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」