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自分らしく生きるとは?他人の期待を降りる方法

自分らしく生きるとは、わがままに振る舞うことではなく、大切にしたいものと日々の選択のずれを小さくしていくこと。他人の期待に合わせてしまう理由、変わろうとしても戻ってしまうしくみ、期待を穏やかに降りる5つのステップを紹介します。

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この記事の結論

自分らしく生きるとは、自分が大切にしている価値観と、日々の選択やふるまいとのずれが小さい状態で暮らすことです。人と合わせないことでも、いつも同じ自分でいることでもありません。誰の期待で動いているのかに気づき、小さな選択から自分の基準に戻していくことで、少しずつ近づけます。

  • 自分らしさとは、価値観と日々の選択のずれが小さい状態のこと
  • 期待に合わせる癖は弱さではなく、かつて自分を守った生き方の名残
  • 変化には揺り戻しがつきもの。一度に変えず、小さな選択から戻していく
目次 Contents
  1. 自分らしく生きるとは? 一言でいうと
  2. 「自分らしさ」についての3つの誤解
  3. なぜ、他人の期待に合わせてしまうのか
  4. 変わろうとしても戻ってしまう理由
  5. 他人の期待を降りる5つのステップ
  6. 自分らしく生きるうえで、気をつけたいこと
  7. 「本当の人生」は、今日の小さな選択から始まる

職場では「頼れる人」、家では「いい娘」や「いい親」、友人の前では「明るい人」。それぞれの場所で期待される役割を、きちんとこなしてきた。それなのに、ふと一人になったとき、「私は誰のために生きているんだろう」と思うことがある。

周りに合わせることは、悪いことではありません。人を思いやれる人ほど、相手の期待に応えようとします。ただ、それが何年も続くと、自分が本当は何を望んでいたのかが、だんだん遠くなっていきます。そして、理由のわからない疲れだけが残ります。

「自分らしく生きたい」と思うのは、わがままでも、甘えでもありません。誰かの期待ではなく、自分の基準で人生を選び直したいという、まっとうな願いです。このサイトの名前「本当の人生を生きる」も、その願いから生まれました。

この記事では、自分らしく生きるとはどういうことかを、心理学の研究をもとに整理します。他人の期待に合わせてしまう理由と、変わろうとしても元に戻ってしまうしくみも見ていきます。そのうえで、期待を穏やかに降りていくための5つのステップを紹介します。

自分らしく生きるとは? 一言でいうと

自分らしく生きるとは、自分が大切にしている価値観と、日々の選択やふるまいとのずれが小さい状態で暮らすことです。好き勝手に振る舞うことでも、誰の意見も聞かないことでもありません。

たとえば、「誠実さ」を大切にしている人が、仕事で数字をごまかすよう求められ続けたとします。どれだけ給料がよくても、どこかで苦しくなるはずです。逆に、地味な仕事でも、自分の価値観に沿ってできていれば、手ごたえを感じられます。自分らしさの感覚は、何をしているかより、価値観と行動がそろっているかどうかに左右されるのです。

心理学でいう「本来感」

心理学では、こうした感覚を「本来感(オーセンティシティ)」と呼んで研究してきました。心理学者のアレックス・ウッドらは、本来感を3つの要素でとらえる尺度をつくっています(Wood ら, 2008)。

要素中身低いときの感覚
自己疎外自分が何者で、何を感じているかがわからない感覚「自分が自分でない気がする」
本来的な生き方自分の価値観や信念に沿って行動していること「本心と違うことばかりしている」
外からの影響の受け入れ他人の期待に従うべきだと感じる度合い「人の期待どおりにしないといけない」

この研究では、本来感の高さが、自尊感情や人生の満足感の高さと関連していました。日本でも、伊藤正哉と小玉正博が、「自分らしくある感覚」が心の健康と結びついていることを報告しています(伊藤・小玉, 2005)。

人は、最後に何を後悔するのか

オーストラリアで緩和ケアの介護をしていたブロニー・ウェアは、人生の終わりを迎える人たちの言葉を本にまとめました。そこで最も多く聞いた後悔として挙げているのが、「他人の期待ではなく、自分に正直な人生を生きる勇気があればよかった」というものです。

これは統計をとった研究ではなく、一人の介護者の記録です。それでも、多くの人の胸に響いたのは、その言葉に覚えがあったからではないでしょうか。

「自分らしさ」についての3つの誤解

「自分らしく生きる」という言葉は、ときに人を追いつめます。よくある誤解を整理しておきます。

誤解1:いつも同じ自分でいるのが、自分らしさ

職場と家で性格が違う。友人によって話し方が変わる。それを「自分がない」と悩む人がいます。でも、場面によって違う顔を見せるのは、ごく自然なことです。

作家の平野啓一郎は、人は相手や場面ごとに異なる「分人」を持っていて、そのすべてが本当の自分だと論じました。心理学の研究でも、人は場面によってかなり違うふるまいをしていることがわかっています。そして、ふるまいが場面ごとに変わることは、本来感を損なうとは限らないと報告されています(Fleeson & Wilt, 2010)。

誤解2:自分らしく生きるとは、人に合わせないこと

自分らしさを、人と距離をとることだと考えると、孤立してしまいます。本来感の研究者マイケル・カーニスらは、本来感の要素のひとつに「関係の中での正直さ」を挙げています(Kernis & Goldman, 2006)。親しい人に、取りつくろわない自分を見せられることです。

つまり、自分らしさは人との関係の中でも育つものです。合わせるか、合わせないかの二択ではありません。

誤解3:自分らしさは、どこかで「見つける」もの

「本当の自分」がどこかに完成品として存在していて、それを見つければ迷いが消える。そう考えると、探しても探しても見つからない苦しさが続きます。

研究では、人が「本来の自分でいる」と感じやすいのは、自分の理想や価値観に沿って行動できているときだと考えられています(Sedikides ら, 2017)。自分らしさは、見つけ出すものというより、日々の選択で表していくものなのかもしれません。見失った感覚が強い人は、本当の自分とは?見失ったときに立ち返る場所もあわせて読んでみてください。

なぜ、他人の期待に合わせてしまうのか

自分の気持ちより、人の期待を優先してしまう。その癖は、どこから来るのでしょうか。

「こうすれば愛される」という条件

心理学者のカール・ロジャーズは、子どもが育つ過程で「価値の条件」を身につけると考えました。「いい子にしていれば認めてもらえる」「成績がよければほめてもらえる」。愛情や承認が、何かの条件つきで与えられる経験です。

こうした経験が重なると、人は自分の感覚よりも、その条件を満たすことを優先するようになります。本当は嫌だと感じても、「嫌だと感じてはいけない」と、自分の感覚を打ち消してしまうのです。

取りこんだ「べき」は、自分の声に聞こえる

心理学の自己決定理論には、「取り入れ」という考え方があります(Ryan & Deci, 2000)。外から取りこんだ価値が、自分のものになりきらないまま心に残っている状態のことです。取り入れられた価値は、守れないと罪悪感や恥を生みます。

「ちゃんとしなきゃ」という声は、自分の声のように聞こえます。でもよく聞くと、親や先生の口調に似ていることがあります。

ここで知っておいてほしいのは、期待に合わせる癖は、弱さではないということです。それは、かつてのあなたが、周りとの関係を守るために身につけた、精いっぱいの生き方でした。だから責める必要はありません。今の自分にはもう合わなくなった服を、少しずつ脱いでいけばいいのです。

変わろうとしても戻ってしまう理由

「これからは自分らしく生きよう」。そう決めても、数日たつと元の自分に戻っている。そんな経験はありませんか。それには、いくつかの理由があります。

ホメオスタシス:元の状態に戻ろうとする力

ホメオスタシス(恒常性)とは、体温や血液の状態などを一定に保とうとする、体のしくみのことです。生理学者のウォルター・キャノンが名づけました。

コーチングでは、この考え方を心にも当てはめて、「人は慣れた状態に戻ろうとする」と説明することがあります。これは生理学の用語を比喩として使ったもので、心理学で確かめられた法則ではありません。ただ、変化しようとすると居心地の悪さが出てきて、元に戻りたくなる。その感覚を理解する助けにはなります。詳しくはホメオスタシスとは?変われないのは脳の仕組みで扱っています。

セルフイメージ:「自分はこういう人間だ」に合わせようとする

もうひとつの理由は、セルフイメージ(自分についてのイメージ)です。心理学者のウィリアム・スワンらは、人は自分の見方を裏づけてくれる情報を求める傾向があることを示しました(Swann ら, 1992)。自分を低く見ている人は、ほめ言葉よりも、その低い見方に合う評価を選びやすいこともあるのです。

「私は人に合わせる人間だ」と思っているとします。すると、自分の意見を言った瞬間に「らしくない」と感じて、元の振る舞いに戻ってしまいます。セルフイメージの変え方は、セルフイメージとは?書き換えて自分を変える方法で紹介しています。

揺り戻しは、失敗のしるしではありません。変わろうとしている証拠です。あらかじめ「戻りたくなるのは当然」と知っておくと、戻ってしまった自分を責めずに、また一歩を踏み出せます。

他人の期待を降りる5つのステップ

ここからは、他人の期待を少しずつ降り、自分の基準に戻っていくための具体的なステップです。一度に全部やる必要はありません。

ステップ1:「誰の期待か」を書き出す

まずは、自分がどんな期待に応えようとしているのかを、目に見える形にします。

すべてを手放す必要はありません。◎がついた期待は、あなた自身の価値観と重なっている期待です。それは、これからも大切にしていいものです。

ステップ2:自分の価値観を確かめる

期待を降りたあとに、何を基準に選ぶのか。そのよりどころになるのが、あなた自身の価値観です。心が動いた場面や、腹が立った場面をふり返ると、大切にしているものが見えてきます。体験から価値観を言葉にする方法は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークで紹介しています。

ステップ3:いちばん小さな「ずれ」から直す

価値観と今の暮らしを見比べると、いくつも「ずれ」が見えてくるかもしれません。そのとき、いちばん大きなずれから手をつけたくなります。でも、最初に選ぶのは、いちばん小さなずれです。

「家族との時間を大切にしたいのに、夕食中もスマホを見ている」なら、夕食の間だけスマホを別の部屋に置く。小さなずれを直せたという経験が、次の一歩を支えてくれます。

仕事でも同じです。「人の役に立ちたい」のに、数字を追うだけの毎日になっているなら、転職を考える前にできることがあります。週に一度、自分の仕事で助かった人の顔を思い浮かべる。お客さまの声を読み返す。小さな工夫で、価値観と仕事のずれは少し縮まります。

ステップ4:「いったん保留」の言葉を持つ

期待に応えてしまう人の多くは、頼まれた瞬間に「いいよ」と答えています。自分の気持ちを確かめる時間がないのです。

そこで、すぐに答えないための言葉を用意しておきます。「少し考えてから返事してもいい?」「予定を確認してから連絡するね」。この一言で、自分の気持ちを確かめる時間が生まれます。断るか引き受けるかは、そのあとで選べばいいのです。人との境界の引き方は、自分軸で生きるには?他人軸との違いと整え方でも詳しく紹介しています。

ステップ5:揺り戻しを、あらかじめ予定に入れる

自分らしい選択をしたあとには、たいてい不安や罪悪感がやってきます。「やっぱり引き受ければよかった」「わがままだと思われたかもしれない」。

これは、前の章で見た「戻ろうとする力」です。あらかじめ「3日くらいは落ち着かないだろう」と予定に入れておくと、その気持ちに飲みこまれにくくなります。不安が来たら、「来たな」と心の中でつぶやいてみてください。

自分らしく生きるうえで、気をつけたいこと

人を切り捨てることと、混同しない

自分らしく生きようとするとき、「合わない人とは縁を切ればいい」という極端な考えに引っぱられることがあります。もちろん、自分を傷つけ続ける関係からは、離れることも大切です。

でも多くの場合、必要なのは関係を断つことではなく、関係の中で少しずつ本音を出していくことです。期待を降りることと、相手を大切にすることは、両立できます。

比べる相手は、ほかの誰かではなく昨日の自分

SNSを開くと、自由に生きているように見える人たちが目に入ります。仕事を辞めて旅に出た人、好きなことで暮らしている人。それと比べて、「自分はまだ全然自分らしく生きられていない」と落ちこむことがあるかもしれません。

でも、その人たちの「自分らしさ」は、その人の価値観に沿ったものです。あなたの価値観が「安心」や「家族」なら、同じ道を選ぶ必要はありません。比べるなら、昨日の自分と比べて、ひとつでも自分で選べたことがあったかどうかです。人と比べて苦しくなる人は、他人と比べてしまうのをやめる方法も参考にしてください。

「自分らしくない自分」も、自分の一部

緊張して言いたいことが言えなかった日。人に合わせてしまった日。そんな日の自分を、「自分らしくなかった」と切り離したくなるかもしれません。

でも、迷い、揺れ、ときどき元に戻る自分も含めて、あなたです。自分らしさは、一貫性の高さで決まるものではありません。揺れながらも、自分が大切にしたい方向を何度でも選び直せること。それが、自分らしく生きるということなのだと思います。

「本当の人生」は、今日の小さな選択から始まる

自分らしく生きることは、ある日を境に生まれ変わるような、大きな変化ではありません。今日の昼食、今夜の過ごし方、明日の返事。そうした小さな選択のひとつひとつを、誰かの期待ではなく、自分の基準で選ぶ。その積み重ねが、気づけば「自分の人生」になっていきます。

全部を変えなくていいのです。期待に応えることを選ぶ日があってもかまいません。大切なのは、「今、自分で選んでいる」という感覚を取り戻すことです。

今日、ひとつだけ試してみてください。何かを選ぶとき、ほんの一瞬だけ立ち止まって、「これは、誰のための選択だろう」と自分に聞いてみる。その一瞬が、本当の人生への入口になります。

A question for you

あなたへの問い

今日の選択のうち、誰の期待でもなく自分で選んだものはどれですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

自分らしく生きるのは、わがままではないですか?

わがままとは違います。わがままは、自分の都合のために相手の気持ちを無視することです。自分らしく生きることは、自分の価値観を大切にしながら、相手の価値観も尊重することです。研究でも、本来の自分でいる感覚は、人とのよい関係と両立しうると考えられています。

そもそも「自分らしさ」がわかりません。

自分らしさは、最初からはっきりわかっている人のほうが少ないものです。心が動いた瞬間や、つい腹が立つことを手がかりに、自分が大切にしているものを少しずつ言葉にしていくところから始めてみてください。

仕事では、どうしても自分らしくいられません。

仕事には役割があるので、すべてを自分の好みで決めることはできません。それでも、仕事の進め方、人への接し方、言葉の選び方など、自分の価値観を反映できる部分は残っていることが多いものです。全部ではなく、選べる部分をひとつ見つけるところから始めてみてください。

親や家族の期待を裏切るのが怖いです。

怖いと感じるのは、それだけ家族を大切に思っているからです。期待を降りることは、家族を捨てることではありません。いきなり大きな決断をするのではなく、自分の考えを小さく伝えることから始めると、関係を保ちながら自分の道を選びやすくなります。

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References

  • Wood, A. M., Linley, P. A., Maltby, J., Baliousis, M., & Joseph, S. (2008). The authentic personality: A theoretical and empirical conceptualization and the development of the Authenticity Scale. Journal of Counseling Psychology, 55(3), 385–399.
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  • 伊藤正哉・小玉正博 (2005). 自分らしくある感覚(本来感)と自尊感情がwell-beingに及ぼす影響の検討. 教育心理学研究, 53(1), 74–85.
  • Sedikides, C., Slabu, L., Lenton, A., & Thomaes, S. (2017). State authenticity. Current Directions in Psychological Science, 26(6), 521–525.
  • Fleeson, W., & Wilt, J. (2010). The relevance of Big Five trait content in behavior to subjective authenticity: Do high levels of within-person behavioral variability undermine or enable authentic self-expression? Journal of Personality, 78(4), 1353–1382.
  • Rogers, C. R. (1959). A theory of therapy, personality, and interpersonal relationships, as developed in the client-centered framework. In S. Koch (Ed.), Psychology: A Study of a Science, Vol. 3. McGraw-Hill.
  • Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
  • Swann, W. B., Jr., Stein-Seroussi, A., & Giesler, R. B. (1992). Why people self-verify. Journal of Personality and Social Psychology, 62(3), 392–401.
  • Cannon, W. B. (1932). The Wisdom of the Body. W. W. Norton.
  • Ware, B. (2012). The Top Five Regrets of the Dying. Hay House.
  • 平野啓一郎 (2012). 『私とは何か――「個人」から「分人」へ』講談社現代新書.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。