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スコトーマとは?心の盲点に気づく方法

スコトーマとは、目の前にあるのに思い込みや慣れのせいで見えなくなっている「心の盲点」のこと。盲点が生まれる理由と身近な例、自分では気づきにくいわけ、問い・他者の視点・ゴールで盲点に気づく方法をワークとともに紹介します。

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この記事の結論

スコトーマとは、もとは視野の一部が欠ける「暗点」を指す医学用語で、コーチングでは「目の前にあるのに、思い込みや慣れのせいで認識できないもの」、つまり心の盲点を指します。前提を疑う問い、他者の視点、今の延長ではないゴールの三つが、盲点に気づく手がかりになります。

  • スコトーマは、目の前にあるのに見えていない「心の盲点」のこと
  • 思い込み・慣れ・目標・感情が、盲点をつくる主な原因になる
  • 問い・他者の視点・ゴールを変えると、見えなかったものが見えてくる
目次 Contents
  1. スコトーマとは? 一言でいうと
  2. スコトーマが生まれる4つの理由
  3. スコトーマの身近な例
  4. なぜ自分の盲点は、自分では見えにくいのか
  5. スコトーマに気づく3つの方法
  6. 盲点があるのは、恥ずかしいことではない
  7. 「見えていないものがある」と知るだけで、景色は変わる

探していた鍵が、何度も見たはずの机の上にあった。何年も通っている道に、知らないお店があると人に言われて驚いた。そんなことはありませんか。

同じことは、心の中でも起きています。「自分には特別な強みなんてない」「この仕事しか選べない」。そう思いこんでいるとき、目の前にある可能性が、まるで存在しないかのように見えなくなります。

やっかいなのは、見えていないものは、見えていないことにも気づけない点です。だから、自分を変えたいのに何から手をつければいいかわからない、という状態が続きます。

この記事では、そんな心の盲点を表す「スコトーマ」という言葉を手がかりにします。盲点が生まれるしくみを心理学の実験から見たうえで、盲点に気づくための三つの方法とワークを紹介します。

スコトーマとは? 一言でいうと

スコトーマとは、**目の前にあるのに、思い込みや慣れのせいで認識できなくなっている「心の盲点」**のことです。

もともとは医学の言葉で、ギリシャ語の「暗闇」に由来します。眼科では、視野の一部が欠けて見えなくなる部分を「暗点(スコトーマ)」と呼びます。

コーチングでは、この言葉を心のはたらきにたとえて使います。アメリカのコーチ、ルー・タイスらの教育プログラムで使われ、日本でもコーチングの本を通じて広まりました。心理学の正式な用語ではありませんが、近い現象は、確証バイアスや非注意性盲目といった名前で研究されてきました。

目の盲点を、脳は「穴埋め」している

実は、誰の目にも盲点があります。眼球の奥で視神経が束になって出ていく部分には、光を感じる細胞がありません。そのため、視野の中に、見えていない小さな領域があるのです。

それでも、ふだんの生活で視野に穴が開いていると感じることはありません。脳がまわりの情報から推測して、穴を自然に埋めているからです(Ramachandran, 1992)。

紙の左に「+」、右に「●」を10cmほど離して書きます。左目を閉じ、右目で「+」を見つめてみてください。紙を顔に近づけたり離したりすると、ある距離で「●」がふっと消えます。消えた場所は、黒い穴ではなく、まわりの紙の白で埋まって見えます。

心の盲点も、これとよく似ています。見えていない部分は、空白として感じられるのではなく、「いつもの景色」で埋められてしまうのです。

スコトーマが生まれる4つの理由

心の盲点は、注意力が足りないから生まれるわけではありません。むしろ、脳が効率よくはたらこうとする結果として生まれます。主な理由を四つ見ていきます。

1. 思い込みが、合う情報だけを集める

人は、自分の考えに合う情報を集めやすく、合わない情報を軽く扱いがちです。これは「確証バイアス」と呼ばれ、さまざまな場面で確かめられてきました(Nickerson, 1998)。

「私は人づきあいが苦手だ」と信じていると、会話がぎこちなかった場面ばかりが記憶に残ります。楽しく話せた場面は、「たまたま」として流されてしまう。こうして思い込みは、自分で自分を裏づけながら強くなっていきます。

2. 慣れたやり方が、ほかの方法を隠す

心理学者ルーチンスは、水がめの問題を使った実験を行いました(Luchins, 1942)。参加者は、決まった手順で解ける問題をくり返し解いたあと、もっと簡単な方法でも解ける問題に取り組みます。

すると多くの人が、簡単な方法に気づかず、慣れた手順を使い続けました。中には、慣れた手順では解けない問題に、手が止まってしまう人もいました。一度うまくいったやり方が、ほかの道を見えなくしてしまうのです。

似た例に、ドゥンカーの「ろうそく問題」があります。画びょうの入った箱を「入れ物」と見ているうちは、それを台として使うアイデアが浮かびにくいのです(Duncker, 1945)。経験や知識は頼りになりますが、ときに盲点もつくります。

3. 今の目標が、それ以外を見えにくくする

人は、今の目標や関心に関係する情報を優先して見ています。これは便利なしくみですが、裏を返せば、関係ないと判断されたものは見えにくくなるということです。

ボールのパスを数えることに集中していた人の約半数が、画面を横切るゴリラの着ぐるみに気づかなかった。そんな実験もあります(Simons & Chabris, 1999)。脳が情報を選ぶしくみについては、RAS(網様体賦活系)とは?見たいものしか見えない脳で詳しく紹介しています。

4. 見たくないものから、目をそらす

自分の欠点や、関係のほころびなど、向き合うのがつらいことも盲点になりやすいものです。心が自分を守ろうとして、気づきにくくしている面があります。

一方で、自分の良いところが見えていない人も少なくありません。「こんなの誰でもできる」と思っていることの中に、人からは驚かれる力が隠れていることがあります。強みの見つけ方は、強みの見つけ方|資質と才能を言葉にするで紹介しています。

スコトーマの身近な例

心の盲点は、特別な場面だけでなく、毎日のあちこちにあります。たとえば、こんな形で表れます。

場面見えていない例気づくための問い
自分について当たり前にできていることが、強みだと気づかない人によく頼まれることは?
人間関係苦手な人の、良い面や事情が目に入らないあの人が大切にしているものは?
仕事・キャリア今の会社や業界以外の選択肢が浮かばない制約がなかったら、何を試したい?
暮らし「時間がない」と思いこみ、空いている時間に気づかない昨日の24時間を書き出すと?

表の問いは、研究にもとづくものではなく、ふり返りのための目安です。答えがすぐに出なくても、問いを持っているだけで、ふとした瞬間に見えてくることがあります。

なぜ自分の盲点は、自分では見えにくいのか

人の盲点にはすぐ気づけるのに、自分の盲点にはなかなか気づけない。これには理由があります。

プロニンらの研究(2002)では、参加者にさまざまな偏りについての説明を読んでもらいました。そのうえで、自分と平均的な人が、それぞれどれくらいその偏りの影響を受けているかを答えてもらったのです。

すると多くの人が、「ほかの人は偏っているが、自分はそれほどでもない」と答えました。この傾向は「バイアスの盲点」と呼ばれます。自分の心の中をのぞいても、偏りのしくみそのものは感じとれないため、「自分は公平に見ている」と思いやすいのです。

このことは、盲点に気づくには、自分の内側を見つめるだけでは足りないことを教えてくれます。外からの視点や、ふだんとは違う問いが必要になるのです。

スコトーマに気づく3つの方法

盲点を完全になくすことはできません。それでも、気づくための方法はあります。ここでは、「問い」「他者の視点」「ゴール」の三つを紹介します。

1. 前提を疑う問いを立てる

盲点の多くは、疑ったこともない「前提」の中に隠れています。「どうすれば今の仕事で評価されるか」と考えているとき、「今の仕事を続ける」という前提は疑われていません。

前提に気づくには、「本当にそう?」「ほかの可能性は?」「もし逆だったら?」という問いが役立ちます。自分を縛る前提については、ビリーフとは?自分を縛る思い込みの外し方もあわせて読んでみてください。

たとえば、「経験はゼロだ」という前提を疑ってみます。すると、学生時代のアルバイトや趣味の活動に、求められる経験と重なる部分が見つかるかもしれません。前提が一つゆるむだけで、見える選択肢が変わります。

2. 他者の視点を借りる

自分では見えない盲点も、人からは見えていることがあります。信頼できる人に、「私がよく人から頼まれることって何だと思う?」「私が気づいていない、私のクセってある?」と聞いてみてください。

人の言葉をそのまま受け入れる必要はありません。ただ、自分とは違う角度からの見え方として、いったん受け取ってみる。自分と他人の見え方を整理する方法は、ジョハリの窓とは?4つの窓でする自己分析で紹介しています。

身近に聞ける人がいないときは、相手の立場に立って、自分を眺めてみる方法もあります。NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)の「ポジションチェンジ」がその一つです。詳しくはポジションチェンジとは?相手の立場で見る練習をどうぞ。

3. 今の延長ではないゴールを置く

コーチングでは、「ゴールを変えると、見えるものが変わる」と考えます。今の延長線上のゴールだけを見ていると、今と同じものしか目に入りません。

「もし何の制約もなかったら、本当はどうなっていたい?」。そんな問いから、少し遠くにゴールを置いてみる。すると、それまで関係ないと思っていた情報や人が、急に意味をもって見えてくることがあります。

この考え方は、コーチングの現場で使われてきたもので、実験で確かめられた理論ではありません。それでも、注意が目標に引っぱられるという心理学の知見とは、よく重なります。考え方の詳細は、現状の外側のゴールとは?本気の目標設定で扱っています。

番外編:いつもの行動を少しだけ変える

三つの方法に加えて、手軽にできることがもう一つあります。いつもの行動に、小さな変化を入れることです。

ふだんと違う道で帰る。書店で、一度も足を止めたことのない棚を見てみる。いつもは話さない部署の人と、昼食をとってみる。同じ道、同じ人、同じ情報の中にいると、見えるものも固定されていきます。行動を少し変えると、入ってくる情報が変わり、思わぬところで盲点に光が当たります。

盲点があるのは、恥ずかしいことではない

盲点の話を聞くと、「自分はこんなにも見えていなかったのか」と落ちこむ人がいます。でも、盲点は誰にでもあります。目に盲点があるのと同じで、それは脳が効率よくはたらいている証拠でもあります。

大切なのは、盲点をなくすことではなく、「自分にも見えていないものがある」と知っておくことです。そう思えている人は、人の話に耳を傾けやすく、新しい情報にも開かれています。

人から盲点を指摘されて傷つくこともあるでしょう。そんなときは、すぐに受け入れるか拒むかを決めなくてかまいません。「そう見えることもあるのか」と、いったん手元に置いておく。それだけで十分です。

「見えていないものがある」と知るだけで、景色は変わる

鍵が机の上にあったように、探しているものは、案外すぐそばにあるのかもしれません。見えなかったのは、そこにないからではなく、まだ目が向いていなかっただけです。

今日、自分が「当たり前」だと思っていることを一つだけ選んで、「本当にそう?」と問いかけてみてください。答えが出なくてもかまいません。

問いを持ったまま過ごすうちに、いつもの景色の中に、小さな違和感や新しい発見が混ざりはじめます。それが、盲点の向こう側が少しだけ見えはじめた合図です。

A question for you

あなたへの問い

あなたが「当たり前」だと思っていることを、一つ疑うとしたら?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

スコトーマは心理学の正式な用語ですか?

心理的な盲点という意味での「スコトーマ」は、主にコーチングの分野で使われる言葉です。心理学では、確証バイアスや非注意性盲目など、近い現象がそれぞれ別の名前で研究されています。この記事では、それらの研究をもとに、心の盲点のしくみを紹介しています。

スコトーマを外すと、何が変わりますか?

それまで選択肢に入っていなかった道や、自分の強み、人の良い面などが目に入るようになります。ただ、盲点がすべてなくなるわけではありません。一つの盲点に気づいても、別の場所にはまた盲点があります。ときどき見直す習慣をもつことが、現実的な付き合い方です。

自分の盲点を人に指摘されると落ちこみます。どうすればいいですか?

落ちこむのは自然な反応です。指摘をすぐに受け入れるか決めず、「そう見えることもあるのか」といったん預かってみてください。複数の人から似たことを言われたら、考えてみる価値があります。信頼できる相手を選んで聞くことも、心の負担を減らします。

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References

  • Luchins, A. S. (1942). Mechanization in problem solving: The effect of Einstellung. Psychological Monographs, 54(6), i–95.
  • Duncker, K. (1945). On problem-solving. Psychological Monographs, 58(5), i–113.
  • Nickerson, R. S. (1998). Confirmation bias: A ubiquitous phenomenon in many guises. Review of General Psychology, 2(2), 175–220.
  • Pronin, E., Lin, D. Y., & Ross, L. (2002). The bias blind spot: Perceptions of bias in self versus others. Personality and Social Psychology Bulletin, 28(3), 369–381.
  • Simons, D. J., & Chabris, C. F. (1999). Gorillas in our midst: Sustained inattentional blindness for dynamic events. Perception, 28(9), 1059–1074.
  • Ramachandran, V. S. (1992). Blind spots. Scientific American, 266(5), 86–91.

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。