No.05 On Coachingコーチングを知る

コーチングの種類目的別にわかる主な手法

コーチングの種類を、形式・テーマ・アプローチの3つの軸で整理しました。グループ、システム、ポジティブ心理学、認知行動、解決志向、オントロジカルなど主な手法の特徴と研究の状況、悩み別にどれを選ぶかがわかる早見表も紹介します。

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この記事の結論

コーチングの種類は、1対1かグループかという「形式」、人生全般か仕事かという「テーマ」、どんな理論にもとづくかという「アプローチ」の3つの軸で整理するとわかりやすくなります。ただ、成果を大きく左右するのは種類よりも、コーチとの信頼関係です。

  • 種類は「形式」「テーマ」「アプローチ」の3つの軸で見ると整理しやすい
  • 研究の蓄積は手法によって差がある。認知行動・解決志向は比較的多い
  • 種類は入口の目安。決め手は、そのコーチと安心して話せるかどうか
目次 Contents
  1. コーチングの種類は、3つの軸で整理できる
  2. 形式で選ぶ:1対1・グループ・チーム
  3. テーマで選ぶ:人生全般から仕事まで
  4. アプローチで選ぶ:主な手法の特徴
  5. 悩み別:どの種類を選ぶ? 早見表
  6. 種類よりも大切なこと
  7. 地図を手に入れたら、あとは自分の感覚で

コーチングについて調べはじめると、聞きなれない名前がたくさん出てきます。コーアクティブ、オントロジカル、インテグラル、システム、ポジティブ心理学。どれも良さそうに見えて、かえって何を選べばいいかわからなくなった。そんな人も多いのではないでしょうか。

名前の多さに戸惑うのは、あなたが慎重に選ぼうとしている証拠です。そして実は、コーチングの種類は、いくつかの軸で見ると、すっきり整理できます。

この記事では、コーチングの種類を「形式」「テーマ」「アプローチ」の3つの軸で整理します。主な手法の特徴と、研究でどこまでわかっているかを紹介したうえで、悩み別にどれを選べばいいかがわかる早見表も用意しました。

コーチングの種類は、3つの軸で整理できる

コーチングの種類を表す言葉は、実は違う次元のものが混ざっています。「グループコーチング」は形式の話、「ライフコーチング」はテーマの話、「コーアクティブ・コーチング」は考え方や手法の話です。

軸何で分けるか主な種類
形式誰と、何人で受けるか1対1(パーソナル)、グループ、チーム
テーマ何について話すかライフ、キャリア、ビジネス、エグゼクティブ、メンタル
アプローチどんな理論や考え方にもとづくかコーアクティブ、NLP、ポジティブ心理学、認知行動、解決志向、オントロジカル、インテグラル、システム

**同じコーチングでも、「1対1で、人生全般を、コーアクティブの考え方で」というように、3つの軸の組み合わせで成り立っています。**この見方をもっておくと、コーチのプロフィールを読むときにも迷いにくくなります。

コーチングそのものの意味や効果を先に知りたい人は、コーチングとは?意味・効果・受けて変わることをどうぞ。

形式で選ぶ:1対1・グループ・チーム

パーソナルコーチング(1対1)

コーチとクライアントが1対1で対話する、もっとも一般的な形です。自分のテーマを、自分のペースで深く掘り下げられます。人に聞かれたくない話もしやすいのが利点です。

グループコーチング

それぞれ別の目標をもつ数人が集まり、コーチの進行で対話する形です。ほかの参加者の話を聞くうちに、「悩んでいるのは自分だけじゃない」と気づいたり、自分にはない視点をもらえたりします。1対1より費用を抑えやすいこともあります。

一方、一人ひとりが話せる時間は短くなります。人前で話すのが苦手な人は、最初は聞き役からでもいいかを確かめておくと安心です。

チームコーチング・システムコーチング

同じ目標をもつチームや組織そのものを対象にする形です。個人の成長だけでなく、メンバーどうしの関係や協力のしかたを扱います。チームのリーダーだけでなく、チーム全体を一つの単位として見るのが特徴です。

さらに、人と人の「関係」そのものを一つのシステムと捉える考え方もあります。関係性に焦点を当てたシステムコーチングと呼ばれ、チームのほか、共同経営者や夫婦などの関係にも使われます。

テーマで選ぶ:人生全般から仕事まで

ライフコーチング

仕事に限らず、生き方、人間関係、健康、お金の使い方など、人生全体を扱うコーチングです。「やりたいことを見つけたい」「自分らしく暮らしたい」といったテーマが中心になります。自分探しをしている人に、いちばん身近な入口です。くわしくはライフコーチングとは?人生全体を整える対話で紹介しています。

キャリアコーチング

転職、独立、働き方の見直しなど、仕事人生の選択を扱います。なお、キャリアの相談には、国家資格をもつキャリアコンサルタントという専門家もいます。

ビジネスコーチング・エグゼクティブコーチング

管理職や経営者を対象に、リーダーシップや意思決定、部下との関わり方などを扱います。会社が費用を出して導入することも多い分野です。経営者や役員を対象にしたものは、エグゼクティブコーチングと呼ばれます。くわしくはビジネスコーチングとは?個人と組織での活用をどうぞ。

メンタルコーチング

スポーツ選手や、試験・発表などの本番を控えた人を対象に、緊張や集中といった心の状態を整えることを扱います。スポーツ心理学の知見が使われることも多く、日本スポーツ心理学会には「スポーツメンタルトレーニング指導士」という資格があります。

アプローチで選ぶ:主な手法の特徴

ここからは、理論や考え方による主な手法です。実際には、一人のコーチが複数の考え方を組み合わせていることがほとんどです。

コーアクティブ・コーチング

「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」という前提に立つ手法です。仕事だけでなく、その人の人生全体を扱うことを大切にします。コーチとクライアントが、ともに(co)能動的に(active)関わる関係を重んじます。くわしくはコーアクティブ・コーチングとは?特徴と考え方をどうぞ。

NLPコーチング

NLP(神経言語プログラミング。優れた心理療法家の観察から生まれたコミュニケーションと自己変容の手法)の技法を取り入れたコーチングです。言葉の使い方や、心と体の状態の整え方などを扱います。

ただし、NLPの理論や技法の多くは、科学的な裏づけが十分ではありません。研究をまとめた論文でも、その主張の多くが支持されていないと指摘されています(Witkowski, 2010)。内省のきっかけとしては役立ちますが、効果をうたう宣伝は割り引いて受け止めてください。NLPそのものについては、NLPとは?神経言語プログラミングの基本と活かし方で紹介しています。

ポジティブ心理学コーチング

人の弱さを直すより、強みやよい感情、意味ややりがいに目を向けるポジティブ心理学の知見を使うコーチングです。強みの見つけ方や、日々の満足感を高める工夫などを扱います。自分の強みを知りたい人は、強みの見つけ方|資質と才能を言葉にするもあわせてどうぞ。

認知行動コーチング

心理療法の認知行動療法をもとにしたコーチングです。出来事そのものより、その受け止め方(考え方のくせ)が感情や行動に影響する、という考えに立ちます。「失敗したら終わりだ」といった考えを見直し、現実的な行動計画を立てていきます。

解決志向コーチング

問題の原因を深く掘るより、「うまくいっているとき」や「望む未来」に目を向ける手法です。短期療法の一つである解決志向ブリーフセラピーから生まれました。「今の状態を10点満点で表すと何点? 1点上がると何が違う?」といった問いが特徴です。

オントロジカル・コーチング

オントロジー(存在論)という言葉どおり、その人の「あり方」に焦点を当てる手法です。言葉、感情、体の3つの領域から、その人がどんな見方で世界を捉えているかを探ります。行動を変える前に、行動を生み出している「観察者としての自分」に気づくことを大切にします。

インテグラル・コーチング

哲学者ケン・ウィルバーの統合理論をもとにした手法です。心の内面、行動、人間関係や文化、環境や仕組みといった複数の側面から、人を全体として捉えようとします。一つの見方に偏らず、全体を見渡したい人に向いた考え方です。

悩み別:どの種類を選ぶ? 早見表

ここまでの内容を、悩み別の早見表にまとめました。

こんな悩み・望み合いやすい種類理由
やりたいことがわからないライフコーチング、コーアクティブ人生全体を扱い、価値観から考えられる
転職や独立で迷っているキャリアコーチング、解決志向選択肢を整理し、具体的な一歩に落としこめる
考えすぎて動けない、自分を責めがち認知行動コーチング考え方のくせを見直し、行動につなげる
自分の強みを生かしたいポジティブ心理学コーチング強みとやりがいに焦点を当てる
部下やチームとの関係を変えたいビジネスコーチング、システムコーチング立場や関係そのものを扱える
本番で実力を出したいメンタルコーチング緊張や集中の整え方を扱う
同じ悩みの仲間と学びたいグループコーチング他の人の話からも気づきが得られる
生き方そのものを問い直したいオントロジカル、インテグラル「あり方」や全体像に目を向ける

この表は、選ぶときの目安として整理したもので、研究で確かめられた対応ではありません。同じ悩みでも、合う手法は人によって違います。

種類よりも大切なこと

ここまで種類を紹介してきましたが、最後にひとつ大切なことがあります。コーチングの成果を左右するのは、手法の名前より、コーチとの関係の質だということです。

コーチングの研究をまとめた分析では、コーチとクライアントの信頼関係が、成果と結びついていることが示されています(Graßmann ら, 2020)。どんなに評判のよい手法でも、そのコーチの前で安心して話せなければ、力を発揮しにくいのです。

また、多くのコーチは一つの手法だけを使うわけではありません。相手やテーマに合わせて、いくつかの考え方を組み合わせています。手法の名前は、そのコーチがどんな人間観を大切にしているかを知る手がかりとして受け取るのがよいでしょう。

プロフィールの手法名は、こう読む

コーチのプロフィールには、学んだ手法や資格の名前が並んでいることがよくあります。名前だけで判断せず、次のように読んでみてください。

  • その手法で、どんな人のどんなテーマを扱ってきたか書かれているか
  • 手法の説明が、専門用語ではなく、ふつうの言葉で書かれているか
  • 「この手法なら確実に変われる」のような、言いきりの表現がないか

手法の名前が多いことより、自分の言葉で考え方を説明できることのほうが、信頼の手がかりになります。気になったら、体験セッションで「その手法を、私のテーマにはどう使いますか?」と聞いてみるのもおすすめです。

具体的なコーチの選び方は、コーチの選び方|後悔しないための7つのポイントで詳しく紹介しています。

地図を手に入れたら、あとは自分の感覚で

コーチングの種類は、たくさんの道が描かれた地図のようなものです。地図があれば、迷いにくくはなります。でも、どの道を歩くかを決めるのは、最後はあなた自身の感覚です。

名前や理論に詳しくなる必要はありません。「この人と話していると、自分の言葉が出てくる」。その感覚を信じて大丈夫です。

まずは、さっきのワークでつくった一文を手もとに置いてみてください。それが、あなたに合うコーチングを探すときの、小さな羅針盤になります。

A question for you

あなたへの問い

いまのあなたが、いちばん話したいテーマは何ですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

初めてなら、どの種類のコーチングがおすすめですか?

まずは手法より、テーマで選ぶのがおすすめです。人生全般を考えたいならライフコーチング、仕事のことならビジネスやキャリアのコーチングが入口になります。手法は、体験セッションで話しやすさを確かめながら、あとから意識すれば十分です。

グループコーチングとチームコーチングは、何が違いますか?

グループコーチングは、それぞれ別の目標をもつ人が集まり、互いの話からも学ぶ形です。チームコーチングは、同じ目標をもつチームそのものを対象にし、関係や協力のしかたを扱います。参加者どうしの関係があるかどうかが大きな違いです。

メンタルコーチングは、カウンセリングと同じですか?

同じではありません。メンタルコーチングは主に、試合や本番で力を発揮するための心の整え方を扱います。心の不調の回復を支えるのはカウンセリングや医療の役割です。気分の落ちこみが続くときは、そちらを先に考えてください。

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References

  • Cox, E., Bachkirova, T., & Clutterbuck, D. (Eds.). (2018). The Complete Handbook of Coaching (3rd ed.). SAGE Publications.
  • Palmer, S., & Whybrow, A. (Eds.). (2019). Handbook of Coaching Psychology: A Guide for Practitioners (2nd ed.). Routledge.
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  • Neenan, M., & Palmer, S. (Eds.). (2012). Cognitive Behavioural Coaching in Practice: An Evidence Based Approach. Routledge.
  • Berg, I. K., & Szabó, P. (2005). Brief Coaching for Lasting Solutions. W. W. Norton.
  • Green, L. S., Oades, L. G., & Grant, A. M. (2006). Cognitive-behavioral, solution-focused life coaching: Enhancing goal striving, well-being, and hope. The Journal of Positive Psychology, 1(3), 142–149.
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  • Graßmann, C., Schölmerich, F., & Schermuly, C. C. (2020). The relationship between working alliance and client outcomes in coaching: A meta-analysis. Human Relations, 73(1), 35–58.

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。