No.05 On Coachingコーチングを知る

コーアクティブ・コーチングとは?特徴と考え方

コーアクティブ・コーチングとは、「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」という前提に立つコーチングです。4つの礎、3つの聴き方、充足・バランス・プロセスの原則、自分探しとの相性と学び方を紹介します。

公開 更新 読了 約7分 PR:書籍の紹介に Amazon アソシエイトのリンクを含みます

この記事の結論

コーアクティブ・コーチングとは、コーチとクライアントが対等に、ともに能動的に関わるコーチングです。「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」という前提に立ち、仕事だけでなく人生全体を扱い、その人らしい充足に向けた変化を後押しします。

  • 中心にあるのは「人はもともと欠けるところのない存在」という前提
  • 4つの礎、3つの聴き方、充足・バランス・プロセスの原則で成り立つ
  • 直す対象ではなく一人の全体として扱うため、自分探しと相性がよい
目次 Contents
  1. コーアクティブ・コーチングとは? 一言でいうと
  2. 中心にある前提:「人はもともと、欠けるところのない存在」
  3. 4つの礎(コーナーストーン)
  4. コーアクティブを形づくる関わり方
  5. 3つの原則:充足・バランス・プロセス
  6. 自分探しとの相性と、知っておきたい限界
  7. コーアクティブ・コーチングの学び方
  8. 直される人ではなく、すでに力をもった人として

自分を変えたいと思ってコーチングを調べたのに、どこか身構えてしまう。足りないところを指摘されて、直されるのではないか。そんな不安を感じたことはありませんか。

コーアクティブ・コーチングは、その出発点が少し違います。あなたを「直すべき問題」としてではなく、すでに力をもった一人の人として扱うところから始まるのです。

この記事では、コーアクティブ・コーチングの中心にある考え方と、それを形づくる礎や聴き方、原則を紹介します。自分探しとの相性や、学び方についてもまとめました。

コーアクティブ・コーチングとは? 一言でいうと

コーアクティブ・コーチングとは、コーチとクライアントが対等なパートナーとして、ともに能動的に関わるコーチングです。「コーアクティブ(Co-Active)」は、「ともに(co)」と「能動的な(active)」を組み合わせた言葉です。

この手法は、米国のローラ・ウィットワース、ヘンリー・キムジーハウス、キャレン・キムジーハウスらによって体系化されました。1990年代には、養成機関CTI(現在のCo-Active Training Institute)が設立されました。1998年には、考え方をまとめた本も出版されています。日本語訳は『コーチング・バイブル』の名で知られています。

コーアクティブという言葉には、もうひとつの意味が込められているとされます。「行動(doing)」と「あり方(being)」の両方を大切にする、ということです。何をするかだけでなく、どんな自分としてそれをするのか。その両方に目を向けます。

中心にある前提:「人はもともと、欠けるところのない存在」

コーアクティブ・コーチングの土台には、次の前提があります。人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である。

この前提は、ときどき誤解されます。「あなたは完璧だから、変わらなくていい」という意味ではありません。変化や成長の出発点を、「足りないもの」ではなく「すでにあるもの」に置く、という意味です。

たとえば、「人前で話すのが苦手」という悩みがあるとします。苦手を直す対象と見ると、話し方の欠点探しから始まります。この前提に立つと、問いが変わります。「一対一なら、どんなふうに話せている?」「どんなテーマなら、自然に言葉が出てくる?」。すでにある力に光を当て、そこから広げていくのです。

この人間観は、心理学者カール・ロジャーズの考え方とも響き合います。ロジャーズは、人には自ら成長しようとする力が備わっていると考え、その力を信じて関わることを大切にしました。

4つの礎(コーナーストーン)

コーアクティブ・コーチングは、4つの「礎」の上に成り立っています。

礎意味
人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在であるクライアントの力を信頼することから始める
全人的に関わる目の前のテーマだけでなく、その人の人生全体を見る
変化を呼び起こす小さな改善にとどまらず、その人らしい深い変化を後押しする
今この瞬間からつくる計画どおりに進めるより、対話のその瞬間に起きていることを大切にする

「全人的に関わる」は、特に自分探しと深く関わります。仕事の悩みを話しているうちに、家族との関係や、子どものころからの思いが見えてくることがあります。コーアクティブでは、それを「テーマから外れた話」として切り捨てず、その人の全体の一部として扱います。

コーアクティブを形づくる関わり方

関係を一緒にデザインする

コーアクティブ・コーチングでは、コーチとクライアントの関係そのものを、二人で話し合ってつくります。どんなふうに関わってほしいか。耳の痛いことも言ってほしいか。話しにくいテーマのときはどうするか。

関係のルールをコーチが一方的に決めるのではなく、最初に一緒に「デザイン」し、必要に応じて見直します。クライアントもまた、関係をつくる対等な当事者だという考え方です。

3つのレベルの聴き方

コーアクティブでは、聴き方を3つのレベルで捉えます。

  • レベル1(自分に向いた聴き方):相手の話を聞きながら、意識は自分の考えや感想に向いている
  • レベル2(相手に集中した聴き方):意識が相手に向き、言葉や表情、声の調子を受け取っている
  • レベル3(場全体を感じる聴き方):二人の間の空気や、言葉になっていないものまで感じとっている

ふだんの会話では、多くの時間をレベル1で過ごしています。それが悪いわけではありません。ただ、コーチングの場では、レベル2と3で聴くことが、相手が自分の言葉を見つける助けになります。聴くことそのものについては、傾聴のコツ|聴くことで人とつながる方法も参考になります。

5つの要素

コーアクティブでは、コーチが大切にする要素として、傾聴、直感、好奇心、行動と学習、自己管理の5つが挙げられます。ここでいう自己管理とは、コーチ自身の意見や感情をいったん脇に置き、クライアントに集中し続けることです。

直感と好奇心は、特にコーアクティブらしい要素です。コーチは、ふと浮かんだ感覚を「間違っているかもしれませんが」と添えて差し出すことがあります。当たっているかどうかより、それをきっかけにクライアントが自分の感覚を確かめられることに意味があります。好奇心は、答えを探るためではなく、相手という人そのものへの関心として向けられます。

3つの原則:充足・バランス・プロセス

コーアクティブ・コーチングの対話は、3つの原則を軸に進みます。

  • 充足:その人にとって「満ちている」と感じられる生き方は何か。価値観や、生きる目的を探ります。
  • バランス:迷ったとき、どんな見方や選択肢がありえるか。視点を広げて、自分で選び直せる状態をめざします。
  • プロセス:喜びも、つらさも含めて、今この瞬間に起きていることに寄り添います。

この中で「充足」は、何かを手に入れたときの満足とは違います。今この瞬間にも感じられる、自分の価値観に沿って生きている手応えのことです。自分の大切なものを言葉にしたい人は、価値観の見つけ方|大切なものを言葉にするワークもあわせてどうぞ。

自分探しとの相性と、知っておきたい限界

コーアクティブ・コーチングは、自分探しをしている人と相性のよい考え方です。「やりたいことがわからない」「自分らしさを取り戻したい」といった悩みは、仕事の目標だけでは扱いきれません。人生全体を見て、その人の価値観から考える姿勢が、そうした悩みにはなじみます。

一方で、知っておきたい点もあります。

  • 研究の蓄積:コーチング全般の効果を調べた研究はありますが、コーアクティブという手法に絞った比較研究は多くありません。研究では、手法の違いより、コーチとクライアントの信頼関係が成果と結びつくことが示されています(Graßmann ら, 2020)。
  • 合う・合わない:具体的な助言や、決まった手順を求める人には、まわり道に感じられることがあります。
  • 治療ではない:心の不調の回復を目的とするものではありません。気分の落ちこみが続くときは、医療機関やカウンセリングを先に考えてください。

ほかの手法と比べてみたい人は、コーチングの種類|目的別にわかる主な手法で、主な手法を一覧で紹介しています。

コーアクティブ・コーチングの学び方

コーアクティブに触れる方法は、大きく3つあります。

  1. 本で考え方を知る:提唱者たちの本は版を重ねており、日本語訳もあります。まずは考え方に共感できるかを確かめるのに向いています。
  2. コーチングを受けてみる:コーアクティブを学んだコーチのセッションを受けると、考え方を体で理解できます。
  3. 講座で学ぶ:CTIが運営する養成講座があり、日本でも開かれています。修了後には、CPCCという独自の認定資格に挑戦する道もあります。

講座の内容や費用、資格の条件は変わることがあります。学びたい場合は、運営団体の公式情報で最新の内容を確かめてください。コーチングの資格全般については、コーチング資格の選び方|ICF認定ACC・PCCとはで紹介しています。

直される人ではなく、すでに力をもった人として

コーアクティブ・コーチングの前提は、コーチングを受ける人だけでなく、ふだんの自分への見方にも使えます。うまくいかないとき、私たちはつい、自分の欠けているところばかりを数えてしまいます。

そんなときは、問いを一つだけ変えてみてください。「何が足りない?」ではなく、「私の中に、もうあるものは何だろう?」。

答えはすぐに出なくてもかまいません。その問いを持ち歩くだけで、自分を見るまなざしが、少しやわらかくなるはずです。

A question for you

あなたへの問い

あなたが「満ちている」と感じるのは、どんな瞬間ですか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

コーアクティブ・コーチングとCTIは、どんな関係ですか?

CTIは、コーアクティブ・コーチングの提唱者たちが設立した養成機関です。現在はCo-Active Training Instituteという名称で、コーチの養成講座や、CPCCという独自の認定資格を運営しています。日本でも講座が開かれています。

「欠けるところのない存在」なら、成長する必要はないのですか?

そういう意味ではありません。足りない部分を外から埋めるのではなく、その人がすでにもっている力や知恵を土台に変化していく、という考え方です。成長を否定するのではなく、成長の出発点を「欠け」ではなく「力」に置いています。

コーアクティブ・コーチングの効果は、研究で確かめられていますか?

コーチング全般の効果を調べた研究はありますが、コーアクティブという手法に絞って、ほかの手法と効果を比べた研究は多くありません。考え方として役立つ部分は多いものの、手法の名前そのものが成果を約束するわけではないと理解しておくと安心です。

もう一歩深めたい人へ

PR・Amazonへのリンクを含みます
  • コーチング・バイブル 人の潜在力を引き出す協働的コミュニケーション

    ヘンリー・キムジーハウス、キャレン・キムジーハウスほか(著)/東洋経済新報社(2020年)

    コーチングを本格的に学びたい人へ。コーアクティブ・コーチングの考え方と、傾聴・質問・承認などのスキルが体系的にまとめられた定番の教科書です。

    Amazonで見る

References

  • Kimsey-House, H., Kimsey-House, K., Sandahl, P., & Whitworth, L. (2018). Co-Active Coaching: The Proven Framework for Transformative Conversations at Work and in Life (4th ed.). Nicholas Brealey Publishing.
  • Whitworth, L., Kimsey-House, H., & Sandahl, P. (1998). Co-Active Coaching: New Skills for Coaching People Toward Success in Work and Life. Davies-Black Publishing.
  • Rogers, C. R. (1961). On Becoming a Person: A Therapist's View of Psychotherapy. Houghton Mifflin.
  • Graßmann, C., Schölmerich, F., & Schermuly, C. C. (2020). The relationship between working alliance and client outcomes in coaching: A meta-analysis. Human Relations, 73(1), 35–58.

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。