No.04 Draw the Future未来を描く

ヒーローズジャーニーとは?人生を物語で捉える

ヒーローズジャーニーとは、神話学者キャンベルが示した、世界の英雄物語に共通する旅の型です。12の段階の意味、人生を物語として捉えることの心理学的な意味、自分の出来事を段階に重ねるワーク、使うときの注意まで紹介します。

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この記事の結論

ヒーローズジャーニーとは、神話学者ジョーゼフ・キャンベルが示した、世界中の英雄物語に共通する「旅立ち・試練・帰還」の型です。自分の人生をこの型に重ねてみると、今の苦しさや迷いを、物語の途中の一場面として捉え直す手がかりになります。

  • 英雄の物語は、日常からの旅立ち、試練、帰還という共通の流れをもつ
  • 人生を物語として語り直すと、出来事のつながりや意味が見えやすくなる
  • 型に当てはめすぎず、苦しみを美化せず、ふり返りの地図として使う
目次 Contents
  1. ヒーローズジャーニーとは? 一言でいうと
  2. ヒーローズジャーニーの12の段階
  3. 人生を物語として捉えると、何が変わるのか
  4. 自分の人生にヒーローズジャーニーを重ねるワーク
  5. 今の苦しさを、物語の一場面として見る
  6. ヒーローズジャーニーを使うときの注意
  7. あなたの物語は、まだ途中にある

うまくいかない時期が続くと、自分の人生がどこにも向かっていないような気がしてきます。同じ失敗を繰り返し、周りに置いていかれ、出口が見えない。そんなとき、今の苦しさに意味があるとは、とても思えないかもしれません。

でも、好きな映画や小説を思い出してみてください。主人公が順調なまま終わる物語は、ほとんどありません。たいていの主人公は、途中で迷い、つまずき、もうだめだと思う場面をくぐり抜けています。

ヒーローズジャーニーは、そうした物語に共通する流れを示した型です。この記事では、ヒーローズジャーニーとは何か、12の段階の意味を紹介します。人生を物語として捉えることの心理学的な意味と、自分の出来事を段階に重ねるワーク、使うときの注意もまとめました。

ヒーローズジャーニーとは? 一言でいうと

ヒーローズジャーニー(英雄の旅)とは、世界中の神話や英雄物語に共通する「旅立ち・試練・帰還」の流れのことです。

この型を示したのは、アメリカの神話学者ジョーゼフ・キャンベルです。キャンベルは、1949年の著書『千の顔をもつ英雄』で、文化や時代の違う数多くの神話を比べました(Campbell, 1949)。そして、英雄の物語が驚くほど似た流れをたどることを示しました。

その流れを一言でいえば、こうなります。主人公は慣れ親しんだ日常を離れて、未知の世界へ旅立つ。そこで試練をくぐり抜け、何かを手に入れる。そして、それを携えて元の世界へ帰ってくる。

キャンベルの考え方は、映画や小説の世界にも大きな影響を与えました。映画『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカス監督が、キャンベルの影響を受けたことはよく知られています。

ヒーローズジャーニーの12の段階

キャンベルの原著では、17の段階が示されています。のちに脚本家のクリストファー・ボグラーが、物語づくりに使いやすいよう12の段階にまとめ直しました(Vogler, 2007)。ここでは、ボグラーの12段階を、人生に重ねた例とあわせて紹介します。

段階物語の中では人生に重ねると
1. 日常の世界主人公の、ふだんの暮らし慣れた仕事や生活。小さな物足りなさがある
2. 冒険への誘い何かが起き、旅立ちを促される異動、別れ、病気、心に引っかかる出会い
3. 誘いの拒否怖くて、旅立ちをためらう「今のままでいい」「自分には無理」
4. 賢者との出会い導き手が現れ、助言や道具をくれる先輩、本、先生、友人のひと言
5. 第一関門の突破未知の世界へ一歩を踏み出す転職、引っ越し、挑戦を決める
6. 試練・仲間・敵新しい世界のルールを学ぶ慣れない環境での苦労、新しい仲間
7. 最も危険な場所への接近最大の試練に近づく避けてきた問題に向き合う準備
8. 最大の試練死と再生を思わせる危機大きな失敗、挫折、自分を見失う時期
9. 報酬試練を越えて、何かを手に入れる気づき、新しい力、自分への信頼
10. 帰路元の世界へ戻る道を歩む得たものを日常に持ち帰ろうとする
11. 復活最後の試練で、生まれ変わる古い自分のくせが顔を出し、それを越える
12. 宝を持っての帰還得たものを世界と分かち合う経験を人に手渡す。誰かの賢者になる

この表で注目したいのは、物語の多くが「つらい場面」でできていることです。誘いの拒否、試練、最大の危機。順調な場面より、迷いや苦しみの場面のほうがずっと多いのです。そして、それらの場面がなければ、主人公は変わることができません。

もう一つ、最後の段階が「帰還」であることも大切です。英雄の旅は、宝を手に入れて終わりではありません。得たものを元の世界に持ち帰り、誰かと分かち合うところまでが旅なのです。

人生を物語として捉えると、何が変わるのか

ヒーローズジャーニーは、もともと神話や物語の研究から生まれた型です。それを人生に重ねることに、どんな意味があるのでしょうか。

人は、自分の人生を物語として理解している

心理学者のダン・マクアダムスらは、人が自分の過去と未来を一つの物語としてまとめていると考えました。その物語によって、「自分は何者か」を理解しているというのです。これを「ナラティブ・アイデンティティ(物語としての自己)」と呼びます(McAdams & McLean, 2013)。

同じ出来事でも、どんな物語の中に置くかで、意味は変わります。たとえば、会社を辞めた経験は、「挫折の物語」の一場面にも、「新しい道を見つけた物語」の始まりにもなりえます。

マクアダムスは、つらい出来事が、のちに良いことにつながったと語られる流れを「救済の物語」と呼びました(McAdams, 2006)。こうした語り方をする人は、幸福感が高い傾向があると報告されています。

英雄の旅として語り直すと、意味を感じやすくなる

2023年には、ヒーローズジャーニーそのものに注目した研究も発表されました(Rogers ら, 2023)。自分の人生の物語に、英雄の旅の要素がより多く含まれていると感じる人ほど、人生に意味を感じている傾向が見られました。さらに、自分の人生を英雄の旅の要素に沿って語り直すよう促すと、人生の意味の感覚が高まったと報告されています。

ただし、こうした研究はまだ多くありません。また、物語の語り方を変えれば、つらい現実がすぐに変わるわけでもありません。人生を見つめ直すための一つの視点として受け取ってください。

自分の人生にヒーローズジャーニーを重ねるワーク

ここからは、自分の人生の出来事を、ヒーローズジャーニーの段階に重ねてみます。人生全体でも、ここ数年の出来事でも、一つの挑戦の経験でもかまいません。

小さな旅にも、同じ流れがある

ヒーローズジャーニーは、人生を揺るがすような大きな出来事だけに当てはまるものではありません。新しい趣味を始める、初めての部署で働く、苦手な人と話してみる。そんな小さな挑戦にも、誘い、ためらい、試練、手応えという流れが見つかります。

小さな旅をいくつもふり返ってみると、自分がどんな場面でためらいやすいか、誰に助けられてきたかが見えてきます。書き出す習慣をつけたい人は、ジャーナリングとは?書く瞑想のやり方と効果も参考になります。

今いる段階を探してみる

すでに乗り越えた経験で慣れたら、今の自分にも重ねてみてください。今のあなたは、どの段階にいるでしょうか。

誘いを受けながら、まだ踏みだせずにいるのかもしれません。それなら、今は「誘いの拒否」の段階です。物語の中で、この段階はとても自然なものです。ためらいがあるからこそ、旅立ちには意味が生まれます。

今が「最大の試練」の真っただ中だと感じる人もいるでしょう。そのとき、物語の型は一つの希望を示してくれます。試練のあとには、報酬と帰路が続いている、ということです。人生の迷いの時期に向き合う方法は、人生に迷ったときに立ち止まって考えたいことでも紹介しています。

今の苦しさを、物語の一場面として見る

ヒーローズジャーニーの視点は、今の苦しさとの距離のとり方を変えてくれます。

「主人公の自分」を少し離れて眺める

苦しい状況の中にいると、その状況しか見えなくなります。でも、自分を物語の主人公として眺めると、少し離れたところから自分を見ることができます。「この主人公は、今、試練の場面にいるんだな」。そう思えるだけで、ほんの少し息がしやすくなることがあります。

同じ出来事を、別の枠組みで捉え直すことは、心理学やNLPで「リフレーミング」と呼ばれます。詳しくはリフレーミングとは?見方を変えて心を軽くするをどうぞ。

賢者を探す

物語の主人公は、一人で旅をするわけではありません。多くの物語で、旅の途中に導き手や仲間が現れます。

今のあなたにとっての賢者は誰でしょうか。人生の先輩、本の著者、カウンセラー、昔の自分の経験。身近にいなければ、「あの人ならどうするだろう」と想像するだけでも、賢者の力を借りることができます。憧れの人の考え方を自分の中に取り入れる方法は、モデリングとは?憧れの人から学ぶ方法で紹介しています。

今の経験は、いつか誰かへの宝になる

英雄の旅の最後には、得たものを分かち合う「帰還」があります。今あなたが味わっている苦しさや迷いも、いつか、同じ道を歩く誰かを支える宝になるかもしれません。そう考えると、今の時間の見え方が少し変わってきます。

ヒーローズジャーニーを使うときの注意

ヒーローズジャーニーは心強い視点ですが、使い方を誤ると、かえって自分を苦しめることがあります。

型に当てはめすぎない

現実の人生は、物語のようにきれいな順番では進みません。段階が入れ替わったり、同じ段階を何度も行き来したりします。型に合わないからといって、自分の人生が間違っているわけではありません。

苦しみを美化しない

「試練には意味がある」という考え方は、ときに、つらい経験を無理に前向きに捉えさせる圧力になります。理不尽な出来事や、深い傷になった経験に、急いで意味を見いだす必要はありません。過去のつらい記憶との向き合い方は、嫌な記憶を書き換えるには?過去との向き合い方で紹介しています。

英雄でなくてもいい

キャンベルの型は、世界の神話に共通する流れとして広く知られる一方、批判もあります。一つの型ですべての物語を説明しようとしている、男性の英雄の物語に偏っている、といったものです。作家のモーリーン・マードックは、女性の内面の旅に焦点を当てた「ヒロインズ・ジャーニー」を提案しました(Murdock, 1990)。

あなたの人生は、勇ましい英雄の物語である必要はありません。静かな日常を守る物語も、誰かを支える物語も、立派な一つの旅です。心理療法家のスティーブン・ギリガンとNLPのロバート・ディルツも、共著の中で、この旅を自己発見の旅として描いています(Gilligan & Dilts, 2009)。物語の型は、あなたらしい旅を見つけるための手がかりの一つです。たとえ話や物語が心に働きかけるしくみは、メタファーとは?たとえ話が心を動かす理由で詳しく紹介しています。

あなたの物語は、まだ途中にある

物語の途中で本を閉じると、主人公は苦しいままです。でも、ページをめくれば、物語は続いていきます。今がどんなにつらい場面でも、それはあなたの物語の最後のページではありません。

今の自分が、どの段階にいるのかを考えてみてください。答えがはっきりしなくてもかまいません。「今は物語の途中にいる」と思えるだけで、少し先を見る余裕が生まれることがあります。

そしていつか、この旅を終えたとき、あなたが手にした宝を、誰かに手渡す日が来るかもしれません。人生を通して何を手渡したいのかを考えたい人は、人生の目的の見つけ方|生きる意味に迷ったらも読んでみてください。

A question for you

あなたへの問い

今のあなたは、自分の物語のどの場面にいると思いますか?

このメモは、あなたのブラウザの中だけに保存されます。誰にも送信されません。

よくある質問

ヒーローズジャーニーの段階は、12ですか? 17ですか?

キャンベルの原著では、旅立ち・試練・帰還の3つの大きな流れの中に、17の段階が示されています。12の段階は、脚本家のクリストファー・ボグラーが、映画や物語づくりのためにまとめ直したものです。この記事では、わかりやすい12段階で紹介しています。

自分の人生が、ヒーローズジャーニーの型に当てはまりません。

当てはまらなくても問題ありません。すべての段階がそろう必要も、順番どおりに進む必要もありません。いくつかの段階が同時に起きたり、同じ段階を何度も繰り返したりするのが、現実の人生です。型は、ふり返りのための地図として使ってください。

つらい経験を、無理に前向きに意味づけしないといけませんか?

その必要はありません。つらい出来事を急いで意味づけしようとすると、かえって苦しくなることがあります。意味は、時間がたってから自然に見えてくることもあります。今はまだ意味が見えない、という段階があってもかまいません。

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References

  • Campbell, J. (1949). The Hero with a Thousand Faces. Pantheon Books.
  • Vogler, C. (2007). The Writer's Journey: Mythic Structure for Writers (3rd ed.). Michael Wiese Productions.
  • McAdams, D. P., & McLean, K. C. (2013). Narrative identity. Current Directions in Psychological Science, 22(3), 233–238.
  • McAdams, D. P. (2006). The Redemptive Self: Stories Americans Live By. Oxford University Press.
  • Rogers, B. A., et al. (2023). Seeing your life story as a Hero's Journey increases meaning in life. Journal of Personality and Social Psychology.
  • Gilligan, S., & Dilts, R. (2009). The Hero's Journey: A Voyage of Self-Discovery. Crown House Publishing.
  • Murdock, M. (1990). The Heroine's Journey. Shambhala.
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」

本当の人生を生きる 編集部

コーチング・NLP・心理学の書籍や研究をもとに、自分を知るための知恵を、やさしい言葉でお届けしています。記事は編集方針に沿って作成し、定期的に見直しています。